奏視点
いつもの帰り道。幹部3人の話題は、美玲の落選でもちきりだった。
「みっちゃんが落ちるなんて………」
「正直意外というか………」
「美玲も下手になったわけじゃない。むしろちゃんと練習して、上達してたしな。」
皆が予想外という感想を抱く中………
「もしかして〜、受験との両立が上手くいってないのかな〜?」
梨々花が核心を突いた。思えば美玲は最近塾に入り、とても忙しそうにしていた。更には修学旅行中に焦りながら勉強するほどに。受験の上手くいかなさから、演奏にも支障が出たのかもしれない。
「そう………かもね。」
「それに加え、チューバの他の子が爆発的に成長。結果として、美玲が追いつかれかけた。」
「「かけた?」」
でも、それでも大輝の中では美玲は2番手らしい。では何故………?
「メンバー同士の組み合わせだ。今回のギルガメッシュにおいて、すずめちゃんの迫力はかなり武器になる。ただし弱点として、繊細な表現が苦手だ。それを補うのがさっちゃん。」
「2人でバランスを取る作戦ね。でもそれなら、オールラウンダーの美玲の方が無難なような………」
「俺&美玲&杏奈ちゃんのオールラウンダー3人の組ませ方もありだと思う。ただ今回は、さっちゃんとすずめちゃんの組み合わせを滝先生が選んだ。それを補うオールラウンダーは、せいぜい1人で充分。」
「だとしたら〜、大輝君になるね〜。」
「美玲が順調に上手くなってれば、選ばれたんだろうけどな。スランプとバランス。この2つが合わさって、落ちたと俺は考えてる。」
奏者間のバランスか。実力が同じくらいなら、曲との相性や作りたいサウンドで選ぶ。その方が結果として、上手い演奏になるから。そういう考えもあるのか。
「とりあえず、なんとか美玲を助けたいが………」
「練習は俺が面倒見るとして………」
「勉強を教えてあげないと〜。」
「でも美玲は文系だし………」
「本人が望むなら、パートリーダーを求やさっちゃんに変えてもいい。だけど………」
「「望まなそうだね。」」
そして、美玲へのサポートをどうすべきか。このままだと、本人も引きずってしまうだろう。しかし、勉強を教えようにも文系が大輝しかいない。当然美玲に大輝が教えるのは無理。音楽面なら大輝がいるけど、果たして問題はそこなのか………
「本人のメンタルケアをしなきゃだね〜。」
「それはさっちゃんに頼むしかねえな。」
「だね。」
ひとまず、さつきを頼ってみよう。彼女なら美玲との付き合いも長いし、メンタルケアも上手い。もしそれで解決できるなら、そうしてみる価値はあるな。
帰宅後、私はさつきに電話した。
『かなぴ〜?もしかして、大輝君と間違えた〜?』
『そんなわけないでしょ。美玲のことで相談があって。』
『もしかして、オーディションのこと?』
『そう。』
『みっちゃん、皆の前ではあまり出してなかったけど、結構追い詰められてるの。模試の判定も悪くて、練習もうまくいかなくて……』
やっぱり、美玲は追い詰められていた。受験と部活の両立。やはり悩みの種があると、それが演奏にも出てしまう。
『やっぱりそうだよね。なんかさつきの方でケアとかしてる?』
『隣にいて励ますくらいしか………』
『うん。それ助かる。』
『そうかな〜?あんまりみっちゃんの状況、変わってない気がする……』
メンタルケアは流石さつき。既にやっててくれてた。となると、やっぱり悩みの種を解決しないと意味ないか………
『演奏は大輝が見てくれるって。ただ、勉強は………』
『う〜ん。私も教えられないし〜、かなぴ〜とりりりんは理系だもんね〜。』
『そうなんだよ。理系科目ならまだ教えられるけど、文系科目は習ってないこともあるし……』
演奏面は大輝がいればオッケー。だけど、勉強は………
『文系の頭いい子に頼るか!』
『誰かいたっけ?』
『特進の文系クラス*1に同じ小学校の子がいるよ!しかも私たちと仲良かったし!』
『ホント⁉︎ありがとう‼︎』
『こっちこそありがとね!』
と悩んでいたら、まさかの救世主が現れた。さつきと美玲の友達。これはラッキー‼︎これで美玲の悩みが解決できるなら、万々歳だ‼︎
それから数日後のこと。なんとも意外な事実が判明した。
「ね〜ね〜、みっちゃん!あの子とはどうなったの⁉︎」
「いや、その………オッケーだって///」
「やった〜♪おめでと〜♪」
「えっ、何?もしかして恋バナ?」
「うん♪」
「ちょっとさつき、恥ずかしい………///」
さつきが紹介したのは、まさかの男の子だった。しかも恋愛に発展。いや、そんなことってあるの⁉︎
「付き合ったのか………俺以外の男と。」
「当たり前でしょ。」
勉強を教えてもらうだけの予定だったのに、まさかの進展。もしかして、さつきはこれも狙っていたの?だから友達を紹介したの⁉︎
「かなぴ〜、ありがとね!2人をくっつける方法にも悩んでたんだよね!」
「ど、どういたしまして………」
狙ってたじゃん‼︎いや、美玲が困ってたのはさつきのせいじゃないけれど………さつきめ、いい機会だと思ってくっつけたな!
「おい久石‼︎テメェが俺のリア充チャンスを奪ったのか⁉︎」
「大輝にそんなチャンスは無いでしょ。」
「はっ⁉︎まさか、かなぴ〜なりのライバルを減らすための方法だったのか………っ‼︎」
「違うから。」
「さつき。久石と大輝は元から付き合ってるから関係なくね?」
「私もそう思う。」
「確かに‼︎」
「「だから違うって‼︎」」
そして、ついでに私たちまでくつっけないよね⁉︎そうだよね⁉︎そんな事を思いながら、私は楽器を取り出したのだった。
それから2週間くらい、私たちはコンクールに向けて最後の追い込みをしていた。
「コンクールメンバーだけになって、演奏の質が上がったと思います。ですが、それでもまだ満足するレベルではありません。ドラムメジャーはどう思いますか?」
「はい!演奏のレベルは………曲の難易度もあり、正直例年に比べると微妙です!ですが、焦らない事。このままでも関西大会には行けます。だから特に金管!この直前期に唇切ったりしたら洒落にならないから、気をつけて!丁寧にいこう!」
「「「「「はい!」」」」」
メンバーを絞ったものの、関西大会にはなんとかいけるレベル。逆に言えば、その先はもっと努力しないと全国大会は難しいということ。コンクール直前になれば難しく感じなくなると思っていたギルガメッシュだが、現実はそう甘くはなかった。府大会直前の今でさえ、この難曲を吹きこなせていなかった。
「久石先輩、ここどうでした?」
「ちょっと微妙かも。もっと息を流し込むしかないね。」
「ありがとうございます。」
「華子、逆に私に対して何か無い?」
「う〜んと、もう少し高音に伸びが欲しいです。」
「ありがとう。」
そんな状況を分かっているからか、普段とにかく生意気な華子も真剣な顔が増えた。こうして隣にいると、良きライバルのように感じる。あと、前の私だったら後輩に教えてもらうなんてなかっただろうな。かつてあった惨めなプライドも、大輝とギルガメッシュのおかげですっかり消えたのだった。
梨々花と別アニメのキャラ(アルねこ)が頭の中で混ざって大変でした。