たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

62 / 62
練習番号O しょうわのラブソング

  奏視点

 

 私たちは吹部コンクールシーズン唯一の休み期間、お盆に突入した。お盆初日、私は梨々花の家に来ていた。

 

「お邪魔します。」

「いらっしゃ〜い、奏〜!」

「おや、奏先輩じゃのぅ。くつろいでくだされ。」

「ありがとうございます、小百合さん。」

「おばあちゃんもこっち来て〜!」

「はいよ〜、梨々花〜!」

 

 更にそこには、小百合さんの姿もあった。確か北宇治に進学する時に、梨々花の家に住むことになったらしい。

 

「あれ〜、大輝君は〜?」

「男子で山登りだって。」

「あら〜、残念〜!寂しい?」

「ちっ〜とも。」

「素直になりなよ〜!おそろのネックレス付けちゃってさ〜!」

「これは先輩方からのプレゼントが被っただけだから。何回も言ったでしょ?」

「そうだっけ〜?」

「小百合さん、梨々花ボケてるみたいです。」

「それは気のせいじゃのぅ〜。」

 

 それにしても、本当に似たもの親子……というかお婆ちゃんと孫だな。ゆるい雰囲気とか口癖とか。まあ、こんなお婆ちゃんだったら梨々花も懐くか。

 

「おばあちゃんの言う通り!早く告りなよ〜!」

「梨々花の言う通り。早く言うべき事は言わんと後悔するのぅ〜。」

「告白しませんから‼︎///」

 

 にしても、この2人はどれだけ私と大輝をくっつけたいのだろうか。本当に、余計なお世話だ。

 

 

 

 

 

  小百合視点

 

 最近若い子たちを見てると思い出しますの。あなたとの、あの懐かしい日々を。

 

 

 

 私とあなたとの出会いは、確か暑い日のお見合いの時でしたよね?

 

「初めまして〜。吉永(よしなが)小百合で〜す。」

 

 その時の私は14歳。正直に言うと、あまりお見合いにやる気はありませんでした。まだ若いですし、もう少し自由に遊びたかった………なんて思ってましたっけ。それでこの日も、適当にやり過ごそうと思ってましたの。そしたら………

 

「ははは、初めまして!けっ、剣崎です‼︎あとっ、辰五郎(たつごろう)です‼︎」

 

 そしたら、あなたはものすごく緊張してましたね。その姿がなんだか面白くて、ちょっと揶揄おうと思っちゃいましたっけ。

 

「私も言い直しますね〜。吉永です〜。あと、小百合です〜。よろしくお願いしますね〜。」

「真似しなくてもいいのに‼︎///」

「辰五郎さんが可愛らしくて、つい♪」

「かかか、可愛い⁉︎俺が、可愛い………だとっ⁉︎///」

「ふふっ♪」

「あ〜、俺を揶揄ったな〜!許せん!俺の凄さを見せてやる!この後川に来い!特上の魚を釣ってやんよ‼︎」

「それは楽しみですな〜♪」

 

 最初はあなたといるとなんか面白くて、楽しい。それで、しばらく一緒にいることにしましたっけ。そんな軽い気持ちでしたのに、気がつけばあなたのことが気になってしまいましたね。どこか抜けていて、揶揄いやすいのに、

 

「私、ちょっと疲れましたの〜♪」

「そっか、じゃあ俺の背中に乗れ!ほら!」

「えっ⁉︎ちょ、ちょっと………っ!///」

「それに………こうした方が、花火も見やすいだろ?」

「でも、辰五郎さんが見えにくくなるんじゃ………?///」

「花火見てるよりお前背負ってる方が……いや、なんでもない‼︎///」

「そう………ですか………///」

 

 なんか惹かれてしまう魅力がある。だからか、気がついたら結婚してたような気がします。

 

 

 

 結婚してからも、本当にあっという間でした。大地*1と康太*2が産まれて、大きく育って、そして2人とも可愛いお嫁さんを連れてきてくれて、梨々花が産まれて、そして高校生になりましたね。

 

「おじいちゃ〜ん!おばあちゃ〜ん!私高校生になったよ〜!」

「おお、梨々花はすごいのぅ。」

「高校か。懐かしいのじゃ。楽しかったのぅ!」

「あたしゃ通っとらんけどねぇ〜。」

「通ったらどうじゃ?」

「そうだよ〜!おばあちゃんも一緒に行こ〜♪」

「流石にこの歳では、ちと厳しいのぅ〜。」

「おじいちゃんも〜、おばあちゃんのJK姿見たいでしょ〜!」

「それは………そうじゃな///」

「こらこら梨々花〜、お爺さんを揶揄うんじゃないよ〜。」

「誰が言っとんじゃか!」

 

 こんな日々がいつまでも続くと、思っておりました。

 

 

 

 

 それから1年後のこと。ちょうどあなたに癌が見つかった時でしたね。

 

「あなた………」

「大丈夫じゃ、小百合。梨々花が大人になるまでワシは死ねん!」

「そ、そうじゃのぅ………」

 

 この時は、なんだかんだあなたなら治して、また元気になると思っておりました。でも、後から冷静に考えると、あなたは80歳。もうそんなに若くなかったのです。

 

 そして、私はそのまま半年後に、あなたと永遠に別れることになってしまいました。

 

「あなた…………」

 

 呼びかけても、返事がない。もうあなたと会話することもできない。色々充実した日々を送っていたはずなのに、もっと何か言えることがあったんじゃないか。もっと何かできたんじゃないか。梨々花に言われたあの時に受験をしていたら、あなたに女子高生としての姿を見せられたんじゃないか。心の中で、どこか後悔が残ってしまいました。

 

 

 

 その後、1人になった私は梨々花たちが住む家に引っ越しました。そして、あなたに見せられなかった高校生の制服姿で、梨々花と同じ高校に通っております。表向きは充実しておりましたが、心の奥底にはぽっかりと穴が空いてしまいました。

 

「おばあちゃ〜ん!お盆の墓参りなんだけど〜。」

「どうしたのじゃ、梨々花?」

「おばあちゃんはお家で待ってて〜!出来れば制服姿で〜!」

「わ、分かったのぅ。」

 

 そしてそのまま、初盆の時期を迎えました。梨々花に言われるまま、家で待つこと数十分…………

 

「おばあちゃ〜ん!おじいちゃん連れて帰ってきたよ〜!」

【帰ったぞ、小百合。】

 

 梨々花が持つ提灯の後ろには、なんだか昔のあなたがいるような、そんな気がしました。そして、あなたが亡くなって以降全く聞けなかった声が、なんだか聞こえるような気がしました。

 

【制服、似合ってるな……///】

「ありがとう……っ!そして、おかえりなさい、あなた///」

 

 それがとても嬉しかったのです。本当に本当に、帰ってきてくれてありがとう。気がついたら涙が止まらなくて、思わず皆をびっくりさせてしまいました。そんな、初盆の初日でした。

 

 

 

 

  奏視点

 

 私は梨々花の家で、線香をあげていた。

 

「いいの、梨々花?おじいちゃんの初盆に私が来て?」

「いいのいいの〜!私の友達ってことで〜!」

「それに、2人を見てるとなんか思い出すのぅ。」

「何をです?」

「若かった頃のあたしとおじいちゃんじゃ。」

「おお〜‼︎」

「だから付き合ってないですってば‼︎///」

 

 当たり前のことなんだけど、人はいつまでも生きていられるわけじゃない。それに、生と死じゃなくたって、出会いと別れは沢山ある。今の北宇治吹部の皆とも、あと少しでお別れ。そう思うと、ちょっぴり寂しくなった日だった。

*1
梨々花の父

*2
梨々花の叔父

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

カリスマチート転生者先輩 in 北宇治(作者:山田太郎)(原作:響け!ユーフォニアム)

カリスマチート転生者先輩を小笠原世代に生やして、早いうちに吹奏楽部を改革します。▼ガールズラブタグは超保険です。必須タグなので入れましたが、殆ど0です。そこを期待している方はすみません。▼テンポ優先のため、アニメで描かれた部分は必要な部分だけ書きます。未視聴の方はアニメを観ましょう。▼原作2年目で完結しました。3年目はあまり書けるパートがなさそうなので、思い…


総合評価:1853/評価:8.49/完結:8話/更新日時:2026年02月20日(金) 20:00 小説情報

世界一幸せな男(作者:トトロのとろろ)(原作:響け!ユーフォニアム)

3年生になり部長になった黄前久美子の前に現れたのは、新入生のサックス奏者だった。ただその新入生の希望する楽器はユーフォニアムだった。そんな新たな仲間達を迎えた北宇治高校吹奏楽部の物語。▼この作品は、アニメ展開を元に原作展開やオリジナル展開を混ぜた話になってます。また一部キャラについては、設定から性格や口調を予想したりしていますが、そもそも性格や口調の予想がで…


総合評価:28/評価:-.--/連載:10話/更新日時:2026年08月10日(月) 10:53 小説情報

いつか途切れた、音の続きを(作者:いつかの音色)(原作:響け!ユーフォニアム)

 中学二年生のあの時、私は間違えた。私の行動一つで部が崩壊してしまうと、あの時の私は知らなかった。そして、私は逃げてしまった。▼ 周囲への気配りが足りなかった。みんなが何を考えているか、なんて全然考えていなかった。何より、心が弱かった。▼ もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。私はもう絶対に、逃げたりしない。▼ ▼△▼ 南中出身、音楽チートの主人公を黄前世代に…


総合評価:3855/評価:9.01/連載:24話/更新日時:2026年07月26日(日) 21:30 小説情報

響け!元野球部のクラリネットパート!!(作者:桜紅月音)(原作:響け!ユーフォニアム)

中学では野球部だった主人公の工藤浩輔。▼北宇治に入学し、野球部に行くつもりが、気づいたら吹奏楽部に入っていた。▼知識はあるものの、吹部自体は初心者である彼は、無事に吹奏楽部でやっていけるのか▼不定期更新▼*小説タイトル変更有り▼


総合評価:28/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年06月16日(火) 00:00 小説情報

想いを音色に乗せて(作者:猫柳/nekoyanagi)(原作:響け!ユーフォニアム)

▼ 両親を早くに亡くし、バイトと勉学、音楽の両立に四苦八苦しながら北宇治高校吹奏楽部で己の理想の音色をトランペットで表現しようと頑張る男の子の物語。▼ 原作終了後、大学以降の物語も書きたいなぁと思っております。▼ クロスオーバーは迷っているので念の為です。原作の間に出すことは恐らくないです。▼ キャラタグ一旦消去させていただきます。▼ 青のオーケストラ要素ち…


総合評価:1847/評価:8.96/連載:18話/更新日時:2026年03月09日(月) 19:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>