たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

62 / 67
練習番号O しょうわのラブソング

  奏視点

 

 私たちは吹部コンクールシーズン唯一の休み期間、お盆に突入した。お盆初日、私は梨々花の家に来ていた。

 

「お邪魔します。」

「いらっしゃ〜い、奏〜!」

「おや、奏先輩じゃのぅ。くつろいでくだされ。」

「ありがとうございます、小百合さん。」

「おばあちゃんもこっち来て〜!」

「はいよ〜、梨々花〜!」

 

 更にそこには、小百合さんの姿もあった。確か北宇治に進学する時に、梨々花の家に住むことになったらしい。

 

「あれ〜、大輝君は〜?」

「男子で山登りだって。」

「あら〜、残念〜!寂しい?」

「ちっ〜とも。」

「素直になりなよ〜!おそろのネックレス付けちゃってさ〜!」

「これは先輩方からのプレゼントが被っただけだから。何回も言ったでしょ?」

「そうだっけ〜?」

「小百合さん、梨々花ボケてるみたいです。」

「それは気のせいじゃのぅ〜。」

 

 それにしても、本当に似たもの親子……というかお婆ちゃんと孫だな。ゆるい雰囲気とか口癖とか。まあ、こんなお婆ちゃんだったら梨々花も懐くか。

 

「おばあちゃんの言う通り!早く告りなよ〜!」

「梨々花の言う通り。早く言うべき事は言わんと後悔するのぅ〜。」

「告白しませんから‼︎///」

 

 にしても、この2人はどれだけ私と大輝をくっつけたいのだろうか。本当に、余計なお世話だ。

 

 

 

 

 

  小百合視点

 

 最近若い子たちを見てると思い出しますの。あなたとの、あの懐かしい日々を。

 

 

 

 私とあなたとの出会いは、確か暑い日のお見合いの時でしたよね?

 

「初めまして〜。吉永(よしなが)小百合で〜す。」

 

 その時の私は14歳。正直に言うと、あまりお見合いにやる気はありませんでした。まだ若いですし、もう少し自由に遊びたかった………なんて思ってましたっけ。それでこの日も、適当にやり過ごそうと思ってましたの。そしたら………

 

「ははは、初めまして!けっ、剣崎です‼︎あとっ、辰五郎(たつごろう)です‼︎」

 

 そしたら、あなたはものすごく緊張してましたね。その姿がなんだか面白くて、ちょっと揶揄おうと思っちゃいましたっけ。

 

「私も言い直しますね〜。吉永です〜。あと、小百合です〜。よろしくお願いしますね〜。」

「真似しなくてもいいのに‼︎///」

「辰五郎さんが可愛らしくて、つい♪」

「かかか、可愛い⁉︎俺が、可愛い………だとっ⁉︎///」

「ふふっ♪」

「あ〜、俺を揶揄ったな〜!許せん!俺の凄さを見せてやる!この後川に来い!特上の魚を釣ってやんよ‼︎」

「それは楽しみですな〜♪」

 

 最初はあなたといるとなんか面白くて、楽しい。それで、しばらく一緒にいることにしましたっけ。そんな軽い気持ちでしたのに、気がつけばあなたのことが気になってしまいましたね。どこか抜けていて、揶揄いやすいのに、

 

「私、ちょっと疲れましたの〜♪」

「そっか、じゃあ俺の背中に乗れ!ほら!」

「えっ⁉︎ちょ、ちょっと………っ!///」

「それに………こうした方が、花火も見やすいだろ?」

「でも、辰五郎さんが見えにくくなるんじゃ………?///」

「花火見てるよりお前背負ってる方が……いや、なんでもない‼︎///」

「そう………ですか………///」

 

 なんか惹かれてしまう魅力がある。だからか、気がついたら結婚してたような気がします。

 

 

 

 結婚してからも、本当にあっという間でした。大地*1と康太*2が産まれて、大きく育って、そして2人とも可愛いお嫁さんを連れてきてくれて、梨々花が産まれて、そして高校生になりましたね。

 

「おじいちゃ〜ん!おばあちゃ〜ん!私高校生になったよ〜!」

「おお、梨々花はすごいのぅ。」

「高校か。懐かしいのじゃ。楽しかったのぅ!」

「あたしゃ通っとらんけどねぇ〜。」

「通ったらどうじゃ?」

「そうだよ〜!おばあちゃんも一緒に行こ〜♪」

「流石にこの歳では、ちと厳しいのぅ〜。」

「おじいちゃんも〜、おばあちゃんのJK姿見たいでしょ〜!」

「それは………そうじゃな///」

「こらこら梨々花〜、お爺さんを揶揄うんじゃないよ〜。」

「誰が言っとんじゃか!」

 

 こんな日々がいつまでも続くと、思っておりました。

 

 

 

 

 それから1年後のこと。ちょうどあなたに癌が見つかった時でしたね。

 

「あなた………」

「大丈夫じゃ、小百合。梨々花が大人になるまでワシは死ねん!」

「そ、そうじゃのぅ………」

 

 この時は、なんだかんだあなたなら治して、また元気になると思っておりました。でも、後から冷静に考えると、あなたは80歳。もうそんなに若くなかったのです。

 

 そして、私はそのまま半年後に、あなたと永遠に別れることになってしまいました。

 

「あなた…………」

 

 呼びかけても、返事がない。もうあなたと会話することもできない。色々充実した日々を送っていたはずなのに、もっと何か言えることがあったんじゃないか。もっと何かできたんじゃないか。梨々花に言われたあの時に受験をしていたら、あなたに女子高生としての姿を見せられたんじゃないか。心の中で、どこか後悔が残ってしまいました。

 

 

 

 その後、1人になった私は梨々花たちが住む家に引っ越しました。そして、あなたに見せられなかった高校生の制服姿で、梨々花と同じ高校に通っております。表向きは充実しておりましたが、心の奥底にはぽっかりと穴が空いてしまいました。

 

「おばあちゃ〜ん!お盆の墓参りなんだけど〜。」

「どうしたのじゃ、梨々花?」

「おばあちゃんはお家で待ってて〜!出来れば制服姿で〜!」

「わ、分かったのぅ。」

 

 そしてそのまま、初盆の時期を迎えました。梨々花に言われるまま、家で待つこと数十分…………

 

「おばあちゃ〜ん!おじいちゃん連れて帰ってきたよ〜!」

【帰ったぞ、小百合。】

 

 梨々花が持つ提灯の後ろには、なんだか昔のあなたがいるような、そんな気がしました。そして、あなたが亡くなって以降全く聞けなかった声が、なんだか聞こえるような気がしました。

 

【制服、似合ってるな……///】

「ありがとう……っ!そして、おかえりなさい、あなた///」

 

 それがとても嬉しかったのです。本当に本当に、帰ってきてくれてありがとう。気がついたら涙が止まらなくて、思わず皆をびっくりさせてしまいました。そんな、初盆の初日でした。

 

 

 

 

  奏視点

 

 私は梨々花の家で、線香をあげていた。

 

「いいの、梨々花?おじいちゃんの初盆に私が来て?」

「いいのいいの〜!私の友達ってことで〜!」

「それに、2人を見てるとなんか思い出すのぅ。」

「何をです?」

「若かった頃のあたしとおじいちゃんじゃ。」

「おお〜‼︎」

「だから付き合ってないですってば‼︎///」

 

 当たり前のことなんだけど、人はいつまでも生きていられるわけじゃない。それに、生と死じゃなくたって、出会いと別れは沢山ある。今の北宇治吹部の皆とも、あと少しでお別れ。そう思うと、ちょっぴり寂しくなった日だった。

*1
梨々花の父

*2
梨々花の叔父

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。