奏視点
お盆も明け、いよいよ私たちは最後の合宿を迎えた。
「久石、見ててくれ!俺が新山先生に告白する姿を‼︎」
「はいはいダメダメ。山に捨てるよ。」
「ふざけんな‼︎」
大輝が新山先生にちょっかいかける姿が見れるのも、もう最後か。そう思うと、少し寂しく………なんかないね。コイツの後始末をしなくてよくなるんだから。
そして、いよいよ新山先生への迷惑、最終回の時がやってきた。のだが…………
「今年は例年より多くの先生に来ていただいております。まずはいつもの橋本先生。」
「おいおい滝君、スペシャルゲストがいるからって雑すぎるよ〜。はいどうも、はしもっちゃんです!皆よろしくね〜!」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「続いては新山先生。」
「今年もよろしくお願いします。皆さん、最高の演奏を目指しましょう!」
「「「「はい!」」」」
なんとスペシャルゲストがいるらしい。一体誰なんだ?
「続いては鎧塚先生。」
「皆さん、よろしくお願いします………」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「今回は友人の方にも来ていただいております。」
「ど〜も〜!この間ぶり、フルートOG傘木希美で〜す!」
まずは鎧塚先輩と傘木先輩。この2人はいつもセットなのだが…………
「ユーフォOGの中川夏紀で〜す!あとプラスアルファがこれね。」
「誰がプラスアルファだ⁉︎え〜、妹が大変お世話になっております、トランペットOGの吉川優子です!」
なんと華子の両親までついてくるという。この人ら、完全に遊びに来ただけじゃん‼︎
「なんで来てんのよ、このクソババア⁉︎」
「うるっさいわね、華子‼︎」
「久石先輩、アイツどっか捨てて下さい。」
「お姉さんにそんな態度とらないの。」
「え〜‼︎」
そして案の定華子はお怒りモードだ。本当に仲悪かったんだな、この2人。まあ、気が合うとも思えないけど。
「最後に、もう1人の特別コーチです。」
そんな事を思っていたら、もう1人コーチがいるらしい。一体誰なんだろう…………?
「トランペットの高坂先生です。」
「皆さん、お久しぶりです。よろしくお願いします。」
それはなんと、去年の鬼ドラムメジャーだった。
「皆!麗奈先輩を呼んだのは彼氏である、この俺さ!」
「彼氏じゃない。私は滝先生と荒川から頼まれて来ました。今年はトランペットとホルンが特別難しいそうなので、主にその2パートを指導したいと思います。」
「「「「よろしくお願いします‼︎」」」」
大輝の戯言はさておき、確かにこの人選は分かる。それに、高坂先輩はアメリカの音大に通う都合上、入学する9月までは暇だし。にしても、来てくれると思わなかったな。
「ちなみに友人が着いてきましたが、特に気にしないでください。」
「麗奈〜、それは酷いんじゃないの〜?ど〜も〜、去年の部長でユーフォの黄前久美子で〜す。よろしく。」
そしてなんと、久美子先輩まで来てくれた。これは本当に嬉しかった。府大会の時は大学のテスト期間と被ってて来れなかったし。久しぶりに、色々話しちゃおっと!そうして最後の合宿は、豪華コーチ陣の元幕を開けた。
合宿早々、私は久美子先輩。ではなく………
「吉川先輩、お疲れ様です。」
「お疲れ、久石!ごめんね、妹が迷惑をかけて。」
「本当に大変ですよ。」
吉川先輩と話すことにした。
「そんな事言っちゃダメだよ、久石ちゃん!優子と違って華ちゃんはいい子だから!」
「夏紀先輩、頭大丈夫です〜?」
「アンタマジでぶっ飛ばすわよ⁉︎」
「クソ姉貴も久石先輩もマジあり得ない‼︎夏紀先輩、本当に色々大変でしたね!心中お察しします♪」
「ほ〜ら、やっぱいい子だ〜♪」
「「どこが(です)⁉︎」」
にしても、本当に夏紀先輩のこと好きなんだな。さっきから夏紀先輩と佳穂の間に挟まりっぱなしだし。まあいっか。
「佳穂ちゃん、なんか賑やかだね。」
「そうなんですよ、久美子先輩。でも華子ちゃんはいい子ですし、奏先輩も相変わらず大輝先輩とラブラブなんで、安心してください!」
「そっか。それはよかった。」
「佳穂、嘘は教えない。あと久美子先輩、全く良くないですよ?」
「あ^〜ん、やっぱ佳穂先輩マジ天使♪好きです〜♪」
「えへへ……///」
「うわっ、優子先輩そっくり。」
「だよね!」
「ですよね。」
「違うでしょ!」
「違います‼︎」
そして、久美子先輩が相変わらず失言していた。この人本当に思ったことが口に出るなぁ。そして、華子はやっぱりお姉さん似だな。そっくりの顔に色違いのデカリボン。着ている服を変えたら普通に間違えそうだ。
「そうだ、佳穂ちゃん。だいかな恋愛譚の続きは?」
「ありますよ!はい、どうぞ!」
「ありがとう!」
「なになに〜、久石ちゃんと荒川君のラブ漫画⁉︎私も見た〜い!」
「私も私も!」
「佳穂ちゃん、お2人の連絡先はこれだよ。」
「はい!今から送りますね!」
「送らなくていいから!」
あと、佳穂のクソ漫画が仲良し川にバレた。マジでめんどくさい。やっぱり全てのデータを削除させるか。そう思った日だった。
最初はOGとのわちゃわちゃから始まったものの、気がつけば合宿はいつもの雰囲気に戻っていた。
「滝先生、ちょっといいですか?」
「いいですよ、高坂さん。」
「トランペット、高音を出す時に力まない。音が潰れる。」
「「「「はい!」」」」
「滝先生、自分も言います!」
「荒川君、いいですよ。」
「クラ、そこもっと出してくれ!特に3番*1!」
「「「「はい!」」」」
なんなら高坂先輩と大輝という2大鬼ドラムメジャーが集結したことにより、とても張り詰めた空気が流れていた。去年だったらここでギスギスしたのだが、今年はリベンジ心が強いからか、皆覚悟を決めて厳しい指摘も受け入れていた。
「なんか、今年は雰囲気が違うね〜。いいよ〜!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
その雰囲気を感じ取った橋本先生も、その事に感心していた。
ただ、雰囲気だけでなんとかならないのがギルガメッシュ。練習終わり、私と大輝は久美子先輩や高坂先輩から、その事を指摘されていた。
「今年の曲難しすぎない?私の代じゃなくてよかったよ〜。」
「久美子の言う通り。だけど滝先生がこの曲でやると決めた以上、完成させなきゃいけない。今のままじゃ正直厳しいのは、2人とも分かっているよね?」
「そうですね。全国出場自体、危ういと思っています。」
ちなみに部長の梨々花は鎧塚先輩に色々聞いている最中だ。だからここには居ない。
「マジでムズいっすわ〜。ドラムメジャーが去年の人だったらな〜♪」
「私より自信あったくせに、よく言えるね。」
「そこは俺と麗奈先輩の仲じゃないですか〜!」
「私が久石さんを差し置いて、荒川と仲良くなった覚えないんだけど。」
「仲良くなってもいいんですよ?」
「嫌。」
「そんなぁぁぁぁぁぁ‼︎」
相変わらず高坂先輩にフラれている大輝。一応私の前でのみナンパするという、約束は守ってるだけマシか。
「そういや、麗奈よく引き受けたね。完璧になるまで滝先生に会わないとか言ってたのに。」
そんな事を思っていると、久美子先輩が意外な事実を口にした。
「えっ、そうなんです?」
「そうだよ。だから大輝君からレッスンの話が来た時も、断ろうとしてたんだよ。ね、麗奈。」
「うん。でも、滝先生からも直接頼まれたのと、やっぱり私を必要としている理由が明白だったから。それに………」
「「それに…………?」」
「全国金を獲るために必死な姿が、とても良かったから。」
「「「おお!」」」
そして、高坂先輩から更に意外な事を言われた。まさかこの人がこんな事を言うなんて。思わず大親友の久美子先輩も驚いていた。
「それはつまり、俺に惚れたということですね!」
「全然違う。久石さん、責任取って荒川と付き合って。」
「絶対に嫌です。」
「あと久美子、だいかな恋愛譚の続き………」
「あるよ!はい!」
「「渡さないでください‼︎」」
「2人とも。私たちの代わりに………全国金、獲って。」
「夢を託した!」
「「はいよ‼︎」」
そして、改めて先輩方から託された夢。これを叶えるべく、使えるものは何でも使う。改めて、そう決意したのだった。