たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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 2日おきに投稿します!よろしくお願いします!


練習番号T いきなりゲネラルパウゼ

  奏視点

 

 大輝が倒れた………?嘘でしょ………?

 

「かなぴ〜、大丈夫⁉︎」

「だっ、大丈夫大丈夫。きゅ、救急車は呼んだ⁉︎」

「会場の人が呼んでくれたよ。今から出るとこ!大輝君のお父さんと松本先生が同乗してるかな………」

「私も乗れるかな⁉︎」

「奏〜、落ち着いて〜。救急車に4人は無理だよ〜。」

「でも…………っ!」

 

 そんな、なんで…………?調子悪かったって、そんな、倒れるほどだったの?普通に元気にしてたじゃん?しかも今回は交通事故とかじゃないし………。そんな、急過ぎるって………

 

「久石さん、居ましたか。」

「はい。」

 

 そんなことを思っていると、滝先生が慌てて私のところへ駆けつけた。

 

「今から荒川君のお母さんが車で向かうそうです。久石さん、同乗しますか?大輝君もあなたがいてくれた方が嬉しいはずです。」

 

 どうやら私も行けるみたい。今はとにかく隣に居たい。早く大輝の状況が知りたい。

 

「お願いします!」

「分かりました。」

「奏〜、行っておいで〜。片付けは部長に任せとけ〜!」

「ありがとう、梨々花。」

「かなぴ〜、お願いね。」

「「大輝を頼んだ。」」

「分かった!皆ありがとう!」

 

 梨々花や他のみんなは快く私を送り出してくれた。皆、ありがとう。私が必ず大輝を連れて帰ってくるから。そう心に誓い、私はホールを旅立った。

 

 

 

 

 その後、私は大輝のお母さんの車で病院に行き、そのまま手術室へと辿り着いた。

 

「荒川さん、お疲れ様です。そして久石、お疲れ。」

「お疲れ様です、松本先生に大輝のお父さん。」

「奏ちゃん、来てくれてありがとねぇ。」

 

 そこには、救急車で同行していた松本先生と大輝のお父さんが待っていた。2人の表情からは焦りが見えており、そこから大輝があまり良くない状態だと察することができた。

 

「いえいえ!それで、大輝の方は………⁉︎」

「恐らく、急性のくも膜下出血らしい。今手術中だ。」

「「えっ………?」」

 

 急性のくも膜下出血。まだ高校生なのに、そんな事があるのか。でも、どうして大輝なの?そんなに身体弱かったわけじゃないよね?健康診断でも特に何も言われてないよね?そんな、なんで急に………?

 

「家でも変わった様子はありましたか?」

「いや、そんな事は無いんだけどね………」

「あの子、特に頭痛持ちでも無かったのに………」

「松本先生。ちなみに、倒れる直前は………?」

「猛烈な頭痛からそのまま倒れ込んだんだ。そばにいた月永とアルトの鈴木*1が伝えてくれた。」

「そう………ですか………。ありがとうございます。」

「ちなみに、手術の成功率は2/3。ただその半分で後遺症が残るって言われてな………」

 

 更には大輝のお父さんから告げられる、衝撃的な事実。そんな、嘘でしょ………?大輝が………死ぬ?そんな、なんで、どうして………?さっきまで普通に笑ってたじゃん?ねえ、返事をしてよ?お願い、大輝………!こんな事になるなら、もっと色んなことをしておけばよかった。もっと色々喋っておけばよかった。心なしか、お盆の時の小百合さんの言葉が思い浮かんでしまった。

 

「大輝…………」

 

 冷たい扉の向こうで、大輝が生死を彷徨っている。そして、こんな時に思い出す。

 

 

 

 

 

 大輝と初めて会ったのは、中学に入ったばかりの時だったなぁ。

 

「ねえ、君可愛いね!俺の彼女にならない?」

 

 気持ち悪い顔でニヤリと笑う君は、本当に頭がおかしいのかと思った。もちろん、私の答えは決まっていた。

 

「いえ、結構です。」

「嘘だろ⁉︎なんでだ⁉︎」

 

 そしたら信じられない、といった雰囲気で返事をしてきた。どうやら、よほど自分に自信があったのだろう。その見た目でよくそう思えたのだと、感心した記憶がある。とりあえず、適当に社交辞令でも言ってあしらうか。そう思った私だったが………

 

「私よりもいい人がいっぱいいると思うので、是非そちらの人に声かけてください。」

「マジか⁉︎やっぱ俺はイケメンだったんだな‼︎よしっ、次はもっと可愛い子に行こう‼︎」

 

 なんだが無性に腹が立ってきた。なんだよその言い草。もはや誰でもよかったじゃんか。だからか、つい皮肉を口にしてしまった。

 

「まあ、どうせ失敗すると思いますけどね。」

「はぁ⁉︎何言ってんだお前は⁉︎どう見ても可能性の塊だろ⁉︎」

「はいはい。それじゃあ頑張って。私は応援しないけど………」

「お前なぁ………ホント性格悪いな‼︎」

「アンタには言われたくない。」

 

 そこから、私と大輝の喧嘩生活は幕を開けた。目が合えば喧嘩し、また揶揄い、揶揄われ、そんなこんなで中学の吹部生活を過ごした。なんでこんな奴と出会ってしまったんだ。この時はそう思ってた。

 

 

 

 

 そして、中2のコンクールの終わりのこと。実力主義を謳う学校だったので、当時そこそこ上手かった私は先輩を押し退けてメンバーになった。しかし、コンクールでは結果が振るわなかった。先輩たちのために一生懸命頑張ったからこそ、その事実が悔しかった。のだが………

 

「こんなんなら、久石じゃなくて明美をコンクールに乗せればよかった〜!」

「それな〜。どうせダメだったんだし、3年生が出るべきだったっしょ。」

 

 あろうことか先輩方は、私をコンクールに出したことを非難し始めた。嘘でしょ?それじゃあ私、頑張らない方がよかったの?それがショックで、流石の私でも落ち込んだのを覚えている。

 

 だが次の瞬間………

 

「おいおい、ちょっと待って下さいよ〜⁉︎俺たち全国目指してたんじゃないんですか⁉︎それなのに、そんな思い出作りのためだけに、上手い久石を押し退けて下手な明美先輩を乗せたら、やってることチグハグじゃないっすか〜?」

 

 大輝がものすごい勢いで、そして大声で先輩方に毒づき始めた。あまりに急だったので、私もびっくりしてしまった。しかもその先輩は、大輝がいつもナンパしてる先輩方だった。

 

「はぁ⁉︎荒川、アンタ口の利き方がなってないわよ⁉︎」

「それに、私たちは負けて落ち込んでるのに〜。」

「落ち込んでるなら久石に当たらないで下さいよ!アイツ確かに性格は悪いけど、先輩達のために頑張ったんですよ⁉︎それをなに、結果が出なかったら思い出作りを優先させた方がいいって………アホですか?アホですよね!」

「「はぁ⁉︎」」

「ちょっと大輝、落ち着いて………っ!」

 

 とりあえず、大輝を宥める事にしたけど………。彼の怒りは、全然収まらなかった。

 

「まあ、そんな人らは居なくなるからオッケー!明日からは俺が本物の全国を目指すバンドを作りますわ〜♪とにかく………次久石のせいにしたら、OGとして来ないで下さいね♪」

「「言われなくてもそうするよ!」」

 

 こうして、大輝は当時の3年生に火の玉ストレートをぶち込んだのだった。そのせいか、先輩方の涙は引っ込み、ただ黙るだけとなったのだった。

 

 

 

 

 その日の帰り、大輝は私に話しかけてくれた。

 

「久石、スッキリしたか?」

「………多少は。」

「そっか。」

 

 その優しい笑顔に、私は初めて大輝にもいいところがあるのだと、思ってしまったのだった。そしてその日以降、無意識に大輝を見つけたら側に寄り、話しかけることが増えていった。口や気持ちでは嫌々言いながらも、身体は自然と彼の近くに寄っていた。そんな私の状態を、梨々花たちは気づいていたのかもしれない。

 

 

 

 そんな彼は、今生死を彷徨っている。まだ高校生だというのに、急性のくも膜下出血になるなんて。ねえ神様、お願い。大輝を生かして。まだアイツには、やりたいことがあるの。アイツには夢があるの。私や他のみんなと一緒に、全国金を獲るという。

 

 そして大輝へ。お願い、生きて戻ってきて。そしてまた一緒に楽器を吹こう。一緒に過ごそう。たわいのない馬鹿話をして、お互い貶しあって助け合って、生きていこう。こんなところで終わりなんて、あんまりだよ。もっと話したいこと、色々あったのに………

*1
大輝の親友、鈴木靖也のこと。




 病状はネットの記事と、プロ雀士の浅井堂岐さんが倒れた時の記事を参考に書いてます。
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