たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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練習番号G あたふたオーディション

  奏視点

 

 中間テストも無事終わり、そこから2週間ほど経ち、いよいよコンクールメンバーのオーディションの時期が近づいていた。

 

「あがた祭りでナンパ祭り〜⁉︎何それ〜⁉︎」

「たりめえよ‼︎俺と靖也(せいや)*1でナンパしたんだけどよ〜、どっちも全敗だったぜ………。さっちゃん、慰めて♪」

「かなぴーがいるのに、そんな事しちゃダメだよ!」

「私関係ないでしょ!」

「奴は(おもり)か‼︎」

「奏は軽いと思うけど……」

「重さの問題じゃねえよ、美玲‼︎」

「祭りで何してんだよ………」

「求、お前はなんで来なかったんだよ⁉︎お前の顔がありゃ、女釣れたんだぞ‼︎」

「「「「サイテー。」」」」

「みんな揃って⁉︎」

 

 今は低音1年で談笑中。オーディションが近づいてきたのに、よくもまあ、呑気な雰囲気だ。

 

「ちなみにテストは大丈夫だったの?」

「私はオッケーだったよ〜♪荒川君は?」

「全部30点台。ギリギリ赤点、回避だぜ!りりりんと久石には感謝だな!」

「ホントギリギリじゃん。どういたしまして〜。」

「仲良しだ………」

「「違う!」」

 

 まあ、先輩方が居ないからかな。後輩が受かって先輩が落ちる問題を心配しなくていいし。実際北宇治にはありそうなんだよな。実力主義とは言いつつも、なんだかんだ先輩が選ばれた方がいいという雰囲気が。私の心配が気のせいだったで済むことを願う。

 

 

 

 

 練習後、私は大輝や梨々花とファミレスに来ていた。

 

「それじゃあ、荒川君の赤点回避を祝して〜♪」

「「いただきます!」」

「イタダ………キヤス。」

 

 元気な女子2人に対して、めちゃくちゃ元気が無い大輝。コイツがしょげてる理由はたった一つだ。

 

「どうしたの、大輝?何かあったの♪」

「奢りくらいでそんな萎えてちゃ〜、モテないよ〜?」

「俺だってりりりんみたいな普通の人ならテンション上がるんだよ‼︎」

「良かったね、奏。特別だって♪」

「なんか嫌〜。」

「うるせえ‼︎テメェがファミレスで1万円以上使わなきゃ、こんな気分になんねえっつーの‼︎」

 

 それは2人の分を奢るから。今回はテスト対策で散々お世話してあげた分ということで、こうなってる。ちなみに私はちょっと大食いで、気づいたら1万円くらい使っちゃうんだよね♪

 

「ごめんね、ちょっと食いしん坊なもので♪」

「ちょっとで済むかぁぁぁぁあ‼︎俺のお年玉、もう無くなるぞ‼︎」

「そんなに奏にお金使ってるんだ〜。」

「それ‼︎だから嫌なんだよ‼︎」

 

 ちなみに今までも何回か大輝のために何かして、その度に奢ってもらってる。自分で払うと厳しいからね!女の子の特権、仕方ない♪

 

「それじゃあ、注文をお願いします!」

「私はこのパフェで〜♪」

「俺はこのプリンで…………」

「私はドリア3つとカルボナーラとピザ2枚とステーキとサラダとパフェとプリンとケーキで♪」

「えっ⁉︎か、かしこまりました‼︎」

 

 ということで、楽しい楽しいタダ飯タイムが幕を開けました!

 

 

 

 

 しばらく話していると、私が愚痴りたい気分になってきた。

 

「ねえ〜、愚痴聞いて〜。」

「嫌だ。」

「じゃあお金だけ払ってから帰って〜。」

「テメェふざけんなよ‼︎」

「も〜も〜、喧嘩しないで〜!奏〜、話してみな?」

「ありがと〜!梨々花は優しいね〜、どっかの誰かさんと違って!」

「「それほどでも〜。」」

「アンタは言うな!」

 

 ので、愚痴ることにした。

 

「で、何の話だ?」

「中川先輩のことなんだけど………」

「副部長がどうしたの〜?」

「なんなの、あの人⁉︎後輩に教えを乞うなんて、プライドというものがあるでしょ‼︎大輝みたいに圧倒的に上手いならまだしも、私だよ⁉︎」

 

 話題はもちろん中川先輩のこと‼︎前からずっと気になってたし、自分の中で溜め込むのも正直しんどくなってきた。だからこれを機に、2人に言うことにした。

 

「まあまあ〜、あの人いい人だし〜、そんなの気にしてないんじゃな〜い?」

「つーか、そんなプライドはむしろ捨てとけ。全国金取る上で邪魔だ。来年お前より上手い後輩が入ってきたらどうすんの?」

「そういうことじゃなくて‼︎」

 

 なんか2人とも要領を得ない回答ばかり‼︎そういうことは求めてないし‼︎

 

「じゃあ何?もしかして………中学の時のこと、気にしてんの?」

 

 って思ってたら、大輝は分かってくれてた。ちょっと嬉しい。湧いてた怒りも少しおさまった気がする。でも、愚痴はこれじゃ言い足りない。

 

「うん。正直今の北宇治は実力主義を名乗ってるだけで、実は先輩の方を大切にします的な雰囲気がぷんぷんしてるし。」

「あ〜、オーディションで先輩を優遇するってこと〜?確かにあの時、変な間があったよね〜。」

「確かにユーフォの実力順なら、久美子先輩→久石→夏紀先輩になる。それにぶっちゃけ、ユーフォ3人は多い。」

「だから落ちるとしたら、中川先輩になる。」

「そ〜だよね〜。」

「もしそうなったら、あんなに慕われてて神のような人間性の夏紀先輩が、皆に嫌われててゴミのような精神性の久石に蹴落とされたってなるな‼︎」

「大輝、一言余計‼︎」

「てへっ♪」

「褒めてない‼︎」

 

 去年のトランペットのソロ騒動だって気になる。私たちは居なかったけど、あんまりいい雰囲気にならなかったのは想像がつく。大輝は大袈裟に言ってるけど、実際私と夏紀先輩だったら後者の方に吹いてほしいってなるだろう。

 

「言っておくけど、わざと落ちるような真似すんなよ?俺遠くにいても、お前の音分かるから。」

「分かってる。」

 

 全く、なんで音楽の時だけは確信を突いてくるかな、コイツは。私がやろうとしてたことモロバレじゃん。

 

「あと、部の雰囲気を心配するなら、俺が暴れるから安心しとけ‼︎先輩だろうが女の子だろうが知ったこっちゃねえよ‼︎全国金という目標を自分たちで決めたんだからな。それに反するなら、俺は許さねえ‼︎だから………」

「だから………?」

「お前が全力を出したら、俺はお前の味方する。どんな奴だろうと反論して、お前が正しいって認めさせる。中学の時みたいに。だけど手を抜いたら………お前の退部届、勝手に出すからな?」

「………分かったよ。そこまで言うならやるよ。」

 

 普段は見れない真剣な目。実際に中学の時先輩らに文句を言いまくったアホな奴。そんな奴にそこまで言われたら………やるしかないか‼︎

 

「知らないよ?アンタの大好きな夏紀先輩が落ちても?」

「舐めんなよ‼︎俺は今まで何人もの可愛い先輩方を、この手で落としてきたんだからな!」

「その言い方だと恋に落ちた、って意味になるね〜。」

「梨々花、コイツがそんなモテるわけないでしょ。オーディションで落としてきたって意味だよ。」

「冷静に言うなや‼︎せっかく俺がカッコつけてるのに‼︎」

「ほんと、バカみたい………いや、バカそのものか♪」

「うるせぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

 その日以降、私は吹っ切れることができた。自分の全てを出し切る。それで部の雰囲気がおかしくなろうが、知ったこっちゃない!だって私のそばには、心強いアホがいるんだもの‼︎

 

 

 

 

 その後、私は無事オーディションを終えた。そこから数日後、運命の結果発表。

 

「オーディション結果を発表します。トランペット……」

 

 ただでさえ緊張の空気が流れている音楽室に、松本先生の凛々しい声が更に緊張を加速させる。私はどうなったのか?そして中川先輩はどうなるのか?更にいえば、その後の雰囲気はどうなるのか………

 

「続いてユーフォニアム。」

 

 そんな事を思っていたら、いよいよユーフォの番になった。呼ばれるとしたら学年順。さあ、どうなる………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中川夏紀。」

「………はい!」

 

 良かった、中川先輩、受かってた。本当によかった。

 

「黄前久美子。」

「はい!」

 

 黄前先輩も受かってた。あとは私だけ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久石奏。」

「はい!」

「以上3名。」

 

 良かった、受かってた。本当に本当に、心の底からホッとした。今まで入部してから張り詰めてた糸が、なんだか解けたような気がした。

 

「絶対、金取ろうね。」

「はい。」

 

 そして、中川先輩が小さい声で、だけど強い声で言ってくれた。私に向かって。その言葉で、次の目標へと意識が改まったのだった。

 

 そういや、チューバはどうなるだろう?

 

「続いてチューバ。後藤卓也。」

「はい。」

「長瀬梨子。」

「はい。」

 

 3年生2人は合格したけど、他のメンバーは………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「荒川大輝。」

「はい!」

「以上3名。」

 

 大輝の予想がドンピシャだった。人数は3人の、しかも上手い順。

 

「やったじゃん!」

「頑張ります!」

 

 大輝が小声で加藤先輩に励まされていた。中川先輩がもし落ちてたら、ああいうやりとりをしてたのかな?そんな事を考えながら、残りのメンバーのオーディションを聞いたのだった。

*1
アルトサックスの1年男子

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