たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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練習番号H せいしゅんブートキャンプ

  奏視点

 

 府大会も無事突破し、私たちは関西大会に向けて、山の青年施設に合宿に来ていた。

 

「お盆はしっかり休んだかい?はしもっちゃんですよ〜♪やぁ〜、今年は海外の仕事が多くて〜、中々来られなくてごめんね〜♪」

「はしもっちゃん、英語喋れるんですか⁉︎」

「I"ll be back!」

「長話はやめてくださいね。」

 

 なんか陽気なおっちゃん先生、橋本先生。どうやら人気らしい。これはモテそう。ということは、大輝が嫉妬するはず。なのに大人しいな。なんでだろう?

 

「新山です。今年も合宿頑張りましょう。」

 

 そういうことか。美人の先生が居たからか!ホントしょうもない人。頼むから大人しくしてて………

 

「うわをっ、すっげえ美人!新山先生、今晩2人でお喋りしませんか⁉︎」

 

 くれないかなぁ⁉︎ったくこのアホは‼︎すぐナンパするんだから⁉︎

 

「ごめんなさい、夜は先生達で打ち合わせがあるので。」

「なんですとっ⁉︎それなら……」

「はいはい、ナンパはやめ。新山先生、すいません。彼にはあとでキツく言っておきます。」

「そ、そうですか………」

「久石さん、ありがとうございます。荒川君、余計なことは謹みましょう。」

「くっそ………っ‼︎」

 

 つーか左手の薬指、見えないのかな?あの人結婚してるし。しかも独身だったとて、こんなアホには靡かない。いい加減現実を見てほしいと、つい思ってしまう。

 

 

 

 

 しばらく練習した後、私たちは夕食の時間を迎えた。パートの皆でご飯を食べていたのだが………

 

「わぁ〜、コロッケ〜♪緑コロッケ大好きです!」

「僕もです!」

「俺は緑先輩が大好きです!」

「ええっ⁉︎///」

「お前は黙ってろ、大輝‼︎」

「そうですよ〜。()()()の言う通りです。」

「お前も‼︎」

「ええ、せっかくフォローしたのに〜。ちぇっ。」

「こら、求君‼︎そんな言い方しちゃダメ。」

「はい‼︎緑先輩、すいません!」

 

 相変わらず月永はよく分かんないこだわりを持っていた。というか川島先輩じゃなくて私に謝れよ、と思いつつ、どう彼を揶揄おうか考えてると………

 

「そうだ、求。お前に久石の取り扱い説明書をやるよ。」

 

 大輝がまた調子乗り始めた。私の取り扱い説明書?何考えてるの、コイツ?

 

「もしかして、その紙が説明書か?」

「いや、これは昨日買ったエロ本のレシート。」

「要らねえ‼︎」

「それより、アイツの取り扱いなんだが………とにかく、大人な対応をしよう、ってこと!」

 

 大人な対応?自分が一番出来てなくない?すぐ彼女持ちに嫉妬するわ、女の子をナンパするわ、勉強する気ないわ………。本当に意味が分かんない。

 

「どういうこと?」

「アイツは多分、お前が下の名前で呼ばせてることに気に食わないんだよ。あと、すぐ調子に乗りたがる!だからああやって人の嫌がる事をする‼︎アイツ、中身はガキなんだよ。」

「それで………?」

「だから求には、苗字で呼ばれても全く気にすることのない態度をとってほしい。すると奴はなんか負けた気がして、すぐ拗ねるから!」

「そういうことなのか………」

 

 なのに、なんかむず痒い事を言いやがって………っ‼︎別にそんなんじゃないし‼︎自分も大して器大きくないくせに偉そうに‼︎あったまきた‼︎やり返してやる‼︎

 

「荒川君、そんな事言っちゃいけませ……」

「ねえ、()()。大輝の取り扱いなんだけど………彼はリア充とイケメンが大嫌いなの。だからむしろ自分の顔の良さを誇りに持ってアピールしよっか。そうしたら大輝の奴、すぐキレて怒るから!ほら、やってみて!」

「えっと………」

「うるせえ、カス石‼︎今は俺が求と喋ってるんだ‼︎」

「人の悪口は言うなって、川島先輩に言われなかったかな〜?」

 

 これでよし‼︎月永も納得してくれたでしょう‼︎

 

「なんかやっぱ、似てるな。」

「「似てない。」」

「あっ、ハッピーアイスクリーム。」

「「(おまえ)が言うなぁぁぁ‼︎」」

 

 誤解されてるし‼︎だから似てないっつーの‼︎コイツはクソガキナルシストで、私は冷静に頭で考えて行動するタイプだから‼︎

 

「2人とも、仲良しなのはいい事ですけど、騒ぎすぎちゃダメですよ?」

「「はい、すいません………」」

 

 しかも川島先輩にまとめて怒られたし。あぁ、もう‼︎大輝が居なかったらこんな事にはならなかったのに‼︎そんな事をつい思ってしまった。

 

 

 

 

 

 その日の夜、

 

「消灯後に飲み物とは、悪い子ですねぇ〜。」

「それじゃあ共犯だね、梨々花♪」

 

 梨々花と私でこっそり飲み物を買っていると………

 

「くそっ!靖也の奴、先に寝落ちしやがって!一緒に女子部屋遊びに行くんじゃなかったのかよ!」

 

 アホが出現した。

 

「梨々花、変態発見。早く警察に突き出さなきゃ。」

「それじゃあ奏〜、逮捕よろ〜。」

「私はアイツの警察じゃない!」

「俺がむしろコイツの警察だよ、りりりん。」

「どこが⁉︎」

 

 法なんか気にしなそうなコイツが警察を気取るとか、冗談でもやめてほしい。私利私欲まみれの小物がやったらダメな職業でしょ。いずれ速攻でニュースになるだろうね。その時は知り合い代表として、絶対言おう。やると思ってましたって。

 

「そういや、りりりん。」

「なんだね〜、荒川君?彼女の前でナンパ〜?」

「「違う‼︎」」

 

 そんな事を思ってると、大輝が梨々花に話しかけた。流石にナンパじゃないよね?

 

「来年ここ来る時は、一緒の舞台に立とうな!」

 

 よかった、ナンパじゃなかった。オーディション落ちた梨々花への励ましか。

 

「ありがと〜!荒川君は優しいね〜。」

「アンタ、人の心とかあったんだ。」

「俺の心は慈悲で満ちてるからな!」

「悪意の間違いでしょ。」

 

 意外とそういうところはちゃんとしてるんだね。オーディションに落ちた直後も梨々花のこと励ましてたし、なんならチューバの落ちた3人にも同じような事言ってたし。その時は私が『大輝が落としたんでしょ。』って言ったっけ。直後に『人の心とか無いんか?』って返されたけど。

 

「ちなみに、みぞ先輩を留年させるのは……?」

「おお〜!その手があったか〜!」

「大輝じゃないからしないでしょ。」

「確かに〜♪」

「確かにって何⁉︎俺はそんなバカじゃねえだろ‼︎」

「バカでしょ。あと留年したら私に敬語使ってね。」

「それだけは絶対嫌だ‼︎」

 

 にしても、本当に留年しそうだなぁ。むしろしてほしい。コイツが後輩になったらさぞ面白いこと………いや、生意気だからやめとこ。そんな事を思った日だった。

 

 

 

 

 そして、今話題になった鎧塚先輩なんだけど………合宿から帰った後に事件が起きた。

 

「みぞ先輩‼︎さっきのソロ、エグかったっすね!めちゃくちゃ興奮しましたもん‼︎」

「ありがとう………」

「もしよろしければ、俺とデートして下さい‼︎」

「それは無理………」

「嘘だろ⁉︎これはいける流れだったのに‼︎」

「今のでよくいけると思えたね。」

 

 なんと突如覚醒したのだ。今までは高校生にしては上手い、くらいのレベルだった。それが突然音大レベル、或いはプロも唸るくらいの腕前に覚醒したのだ。

 

「そういや、希美は………?」

「希美先輩ですか?あれ、見ないっすね〜。どっか行っちゃったかな?俺、呼んできましょうか⁉︎」

「いや、いい………」

「分かりました!」

 

 これはこれは、関西大会が楽しみだ。そう思った日だった。

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