奏視点
府大会も無事突破し、私たちは関西大会に向けて、山の青年施設に合宿に来ていた。
「お盆はしっかり休んだかい?はしもっちゃんですよ〜♪やぁ〜、今年は海外の仕事が多くて〜、中々来られなくてごめんね〜♪」
「はしもっちゃん、英語喋れるんですか⁉︎」
「I"ll be back!」
「長話はやめてくださいね。」
なんか陽気なおっちゃん先生、橋本先生。どうやら人気らしい。これはモテそう。ということは、大輝が嫉妬するはず。なのに大人しいな。なんでだろう?
「新山です。今年も合宿頑張りましょう。」
そういうことか。美人の先生が居たからか!ホントしょうもない人。頼むから大人しくしてて………
「うわをっ、すっげえ美人!新山先生、今晩2人でお喋りしませんか⁉︎」
くれないかなぁ⁉︎ったくこのアホは‼︎すぐナンパするんだから⁉︎
「ごめんなさい、夜は先生達で打ち合わせがあるので。」
「なんですとっ⁉︎それなら……」
「はいはい、ナンパはやめ。新山先生、すいません。彼にはあとでキツく言っておきます。」
「そ、そうですか………」
「久石さん、ありがとうございます。荒川君、余計なことは謹みましょう。」
「くっそ………っ‼︎」
つーか左手の薬指、見えないのかな?あの人結婚してるし。しかも独身だったとて、こんなアホには靡かない。いい加減現実を見てほしいと、つい思ってしまう。
しばらく練習した後、私たちは夕食の時間を迎えた。パートの皆でご飯を食べていたのだが………
「わぁ〜、コロッケ〜♪緑コロッケ大好きです!」
「僕もです!」
「俺は緑先輩が大好きです!」
「ええっ⁉︎///」
「お前は黙ってろ、大輝‼︎」
「そうですよ〜。
「お前も‼︎」
「ええ、せっかくフォローしたのに〜。ちぇっ。」
「こら、求君‼︎そんな言い方しちゃダメ。」
「はい‼︎緑先輩、すいません!」
相変わらず月永はよく分かんないこだわりを持っていた。というか川島先輩じゃなくて私に謝れよ、と思いつつ、どう彼を揶揄おうか考えてると………
「そうだ、求。お前に久石の取り扱い説明書をやるよ。」
大輝がまた調子乗り始めた。私の取り扱い説明書?何考えてるの、コイツ?
「もしかして、その紙が説明書か?」
「いや、これは昨日買ったエロ本のレシート。」
「要らねえ‼︎」
「それより、アイツの取り扱いなんだが………とにかく、大人な対応をしよう、ってこと!」
大人な対応?自分が一番出来てなくない?すぐ彼女持ちに嫉妬するわ、女の子をナンパするわ、勉強する気ないわ………。本当に意味が分かんない。
「どういうこと?」
「アイツは多分、お前が下の名前で呼ばせてることに気に食わないんだよ。あと、すぐ調子に乗りたがる!だからああやって人の嫌がる事をする‼︎アイツ、中身はガキなんだよ。」
「それで………?」
「だから求には、苗字で呼ばれても全く気にすることのない態度をとってほしい。すると奴はなんか負けた気がして、すぐ拗ねるから!」
「そういうことなのか………」
なのに、なんかむず痒い事を言いやがって………っ‼︎別にそんなんじゃないし‼︎自分も大して器大きくないくせに偉そうに‼︎あったまきた‼︎やり返してやる‼︎
「荒川君、そんな事言っちゃいけませ……」
「ねえ、
「えっと………」
「うるせえ、カス石‼︎今は俺が求と喋ってるんだ‼︎」
「人の悪口は言うなって、川島先輩に言われなかったかな〜?」
これでよし‼︎月永も納得してくれたでしょう‼︎
「なんかやっぱ、似てるな。」
「「似てない。」」
「あっ、ハッピーアイスクリーム。」
「「
誤解されてるし‼︎だから似てないっつーの‼︎コイツはクソガキナルシストで、私は冷静に頭で考えて行動するタイプだから‼︎
「2人とも、仲良しなのはいい事ですけど、騒ぎすぎちゃダメですよ?」
「「はい、すいません………」」
しかも川島先輩にまとめて怒られたし。あぁ、もう‼︎大輝が居なかったらこんな事にはならなかったのに‼︎そんな事をつい思ってしまった。
その日の夜、
「消灯後に飲み物とは、悪い子ですねぇ〜。」
「それじゃあ共犯だね、梨々花♪」
梨々花と私でこっそり飲み物を買っていると………
「くそっ!靖也の奴、先に寝落ちしやがって!一緒に女子部屋遊びに行くんじゃなかったのかよ!」
アホが出現した。
「梨々花、変態発見。早く警察に突き出さなきゃ。」
「それじゃあ奏〜、逮捕よろ〜。」
「私はアイツの警察じゃない!」
「俺がむしろコイツの警察だよ、りりりん。」
「どこが⁉︎」
法なんか気にしなそうなコイツが警察を気取るとか、冗談でもやめてほしい。私利私欲まみれの小物がやったらダメな職業でしょ。いずれ速攻でニュースになるだろうね。その時は知り合い代表として、絶対言おう。やると思ってましたって。
「そういや、りりりん。」
「なんだね〜、荒川君?彼女の前でナンパ〜?」
「「違う‼︎」」
そんな事を思ってると、大輝が梨々花に話しかけた。流石にナンパじゃないよね?
「来年ここ来る時は、一緒の舞台に立とうな!」
よかった、ナンパじゃなかった。オーディション落ちた梨々花への励ましか。
「ありがと〜!荒川君は優しいね〜。」
「アンタ、人の心とかあったんだ。」
「俺の心は慈悲で満ちてるからな!」
「悪意の間違いでしょ。」
意外とそういうところはちゃんとしてるんだね。オーディションに落ちた直後も梨々花のこと励ましてたし、なんならチューバの落ちた3人にも同じような事言ってたし。その時は私が『大輝が落としたんでしょ。』って言ったっけ。直後に『人の心とか無いんか?』って返されたけど。
「ちなみに、みぞ先輩を留年させるのは……?」
「おお〜!その手があったか〜!」
「大輝じゃないからしないでしょ。」
「確かに〜♪」
「確かにって何⁉︎俺はそんなバカじゃねえだろ‼︎」
「バカでしょ。あと留年したら私に敬語使ってね。」
「それだけは絶対嫌だ‼︎」
にしても、本当に留年しそうだなぁ。むしろしてほしい。コイツが後輩になったらさぞ面白いこと………いや、生意気だからやめとこ。そんな事を思った日だった。
そして、今話題になった鎧塚先輩なんだけど………合宿から帰った後に事件が起きた。
「みぞ先輩‼︎さっきのソロ、エグかったっすね!めちゃくちゃ興奮しましたもん‼︎」
「ありがとう………」
「もしよろしければ、俺とデートして下さい‼︎」
「それは無理………」
「嘘だろ⁉︎これはいける流れだったのに‼︎」
「今のでよくいけると思えたね。」
なんと突如覚醒したのだ。今までは高校生にしては上手い、くらいのレベルだった。それが突然音大レベル、或いはプロも唸るくらいの腕前に覚醒したのだ。
「そういや、希美は………?」
「希美先輩ですか?あれ、見ないっすね〜。どっか行っちゃったかな?俺、呼んできましょうか⁉︎」
「いや、いい………」
「分かりました!」
これはこれは、関西大会が楽しみだ。そう思った日だった。