奏視点
鎧塚先輩の覚醒から数日が経ち、いよいよ関西大会の日がやってきた。
「うわ〜、可愛い子がいっぱい‼︎どの子にしようかな〜⁉︎」
「月永君とかいいんじゃない?」
「お前は腐女子か⁉︎」
コンクール当日なのにいつも通りのバカはさておき、ここが全国への登竜門。全国大会金賞を取るには、まずここを突破しなきゃいけない。落ち着いて、深呼吸だ。
「見てみて、龍聖だね〜。」
「あれが源ちゃん先生じゃない?」
「あれが有名な月永源三郎先生か………」
他校の人が言う感じだと、月永の出身の龍聖も来てるみたい………って、先生の苗字が月永?気になって見てみると、そこには白髪で顔の凛々しいおじいちゃんがいた。どこか雰囲気が似てると思ったら、うちの月永だ。もしかしたら親戚?いつもだったら彼を揶揄うけど、今はコンクールの邪魔になる。余計なことは考えないように………っと!
「北宇治〜、そろそろ入りま〜す!移動中迷子にならないように〜!」
そんな中、見た目はキャピキャピ、中身は男前な吉川先輩の合図の元、私たちは会場の中に入………
「あっ、いたいた〜!お〜い!」
「あっ、香織先輩〜☆マジエンジェル♪晴香先輩もお久しぶりです!」
「久しぶり!部長、大丈夫そ……?」
「はい‼︎」
ろうとしたら、異変が起きたんだけど⁉︎えっ、あれ吉川先輩だよね⁉︎こんな甲高い声出せるの⁉︎というかこんなアイドルオタクみたいなテンションの上がり方したっけ⁉︎
「おい久石‼︎あれ何⁉︎優子先輩がめっちゃ可愛いJDに興奮してるんだけど⁉︎」
「私も分かんないんだけど。吉川先輩があんなキャピキャピするなんて………」
「おっ、1年生は初めてか!」
「葉月先輩、あれなんなんです⁉︎」
「あの人が去年のトランペットの3年生、香織先輩!優子先輩はあの人の大ファンなんだよ‼︎で、隣にいるのが去年の部長、バリサクの小笠原晴香先輩ね‼︎」
「まさか吉川先輩に限ってそんなことが………」
なんとも意外は意外。あの男前で竹を割ったような性格の部長が、去年はあんなキャピキャピ取り巻きガールだったなんて………。ついびっくりしてしまった。
「黄前ちゃん………よっ!」
「あすか先輩………っ!」
「来ちゃったよ〜♪本当は顔見せたくなかったんだけどね〜。」
更には久美子先輩*1までもが目を輝かせる先輩の出現。この大人なお姉さん、さてはユーフォかな?
「久美子先輩、もしかして低音の先輩ですか⁉︎」
「そ〜だよ〜。OGのあすか先輩。ユーフォ担当で、低音はこの人だけかな。」
「マジっすか⁉︎」
私が聞く前に大輝が聞いちゃった。まあそうだよね。
「俺、荒川大輝っていいます!チューバの一年です!今度一緒にデートしましょう‼︎」
そしていつもの如くこのアホは………っ‼︎
「すいません、彼のことは変な生き物くらいに思ってもらって結構です。私以外の全ての女性にこんな感じなので。ユーフォ1年の久石奏です。よろしくお願いします。」
「変な生き物はコイツもです‼︎」
「おぉ〜!癖強い子ばっかだね〜♪」
「あすか先輩がそれ言いますか………」
なんか癖強いでコイツとまとめられたし。癪なんだけど………
「おっと、長居したら邪魔になっちゃうね!それじゃあバイバイ!」
「あっ、ちょっ、あすか先輩!」
「あれ〜、久美子ちゃ〜ん?そんなに私のこと恋しかったの〜?」
「いや、まあ………」
「仕方ないな〜。黄前ちゃんには特別、この魔法のチケットを授けよう!それじゃあまたね!」
そうしてあすか先輩は風のように去ってしまったのだった。
「なんか凄い人ですね、久美子先輩。」
「本当に、ね…………」
「くそぉ〜、俺もあと1年早く入学したかったぁ〜‼︎」
「大輝に留年は出来ても飛び級は無理でしょ。」
「やかましいわ‼︎」
去年の北宇治もきっと凄かったんだろうな。もちろん良い意味でも悪い意味でも。そんな事を思いながら、私たちは全国への切符を掴むために、サポートメンバーと別れ、中に入った*2のだった。
中に入ると、まず私たちは管楽器置き場に辿り着いた。ここは学校ごとに楽器を置く場所が決まっており、管楽器の人の荷物もここに置いている。なお楽器は出せるものの、音出しは禁止。見つかったら減点対象だ。
「久石、音出すなよ?出すなよ?」
「出さないから。私ユーフォ何年目だと思ってるの?4年目だよ?」
ちなみに金管楽器は息を入れて楽器を温める都合上、間違って音が鳴りやすい。ただ楽器を温めないと音が出にくいため、温めないわけにはいかない。今は夏だけど部屋のクーラーで冷えかねないため、要注意だ。
「おっ、じゃあ私の先輩じゃん!久石先輩、よろしくお願いします♪」
「夏紀先輩まで揶揄わないでください!」
「夏紀先輩、この先輩パワハラで訴えましょう!」
「カワハラ?可愛いハラスメントの略かな?」
「ちょっと先輩⁉︎///」
つーか夏紀先輩も変なこと言わないでくれるからなぁ⁉︎なんか恥ずかしいんだけど⁉︎久美子先輩なら上手く茶化せるのに、夏紀先輩に急に言われると恥ずかしい‼︎
「お〜、夢ちゃんガチガチじゃん!どしたん、話聞こか?」
「あっ、荒川君………」
「何よそのパートにちょっかい出してんの?ごめんね、夢。このアホは無視していいから。」
「ありがとう………」
「感謝は違くねえか⁉︎」
しかも大輝はよそのパートにちょっかい出してるし‼︎本当に女の子好きすぎるでしょ‼︎コンクール本番だよ?ちょっとは自重しろ‼︎
それはさておき、大輝が話しかけたのはトランペットの小日向夢。彼女は下手というわけではない。それどころか1年では大輝の次に上手い。だが引っ込み思案で、おまけに緊張しやすい。それを心配した大輝が話しかけたのだろう。
「で、夢ちゃん。大丈夫そ?」
「うん、多分………目立たなければ……」
「大丈夫だろ!お前上手いし‼︎それに、楽観的にやった方が、かえって上手くいくぜ?」
「アンタは楽観的過ぎるけどね。」
「そう、かな………」
「もちろん!」
一朝一夕でなんとかなるわけないけど、少しは良くなるといいな。
「おっ!小日向と久石と荒川、同級生同士仲良くやってるね〜。」
「羨ましいわ〜。私も同級生と仲良くなりたいな〜。特に部長とか♪」
「アンタが悪いんでしょ。」
「荒川、いい奴だね。」
「気のせいですよ、高坂先輩。」
「優子先輩に麗奈先輩‼︎そうなんです‼︎俺、いい奴なんです‼︎」
「彼はそういう妄想の元生きてるので、お知りおきください。」
「妄想じゃねえ、これが現実だ‼︎」
「なら、とんだ悪夢だね。」
「ありがとう………荒川君と久石さん………」
「ど〜も。」
「はいよ‼︎」
そう思い、私たちは彼女の元を離れた。
しばらくすると、いよいよリハーサル室でのリハーサルの時間となった。管楽器全員で集合して行くと、そこの部屋の前で打楽器とサポートメンバーが既に待機していた。
「なんかこの部屋、無駄に緊張するんだよな〜。」
「ステージ袖のが緊張するでしょ。」
「いや、あそこはもう練習出来ねえじゃん。でもここは最後に練習出来るとこじゃん。だからやれるだけのことは全部やり切らないとな、って思っちまって。」
「最終確認程度だけどね。」
15分程度の最終確認。といっても、軽く音出ししてチューニング*3して重要箇所を確認するだけで終わってしまう。本当に短い時間だ。しかもコンクール会場に着いてから唯一音を出せる時間がこれ。本当に厳しいな世界だ。
「練習はこれで終了です。では、部長。」
「はい、ちゅうも〜く!」
「してるって。」
それも終わってしまった。そして部長と副部長の本番前最後のイチャイチャ。本当に私と大輝に似てるのか、と思いつつ、私は部長の話を聞いた。
「去年の冬から部長になって、色んなことがありました。1年生、2年生、3年生、それぞれ大変なこともあったと思います。」
確かに。主にあのアホの後始末とか。
「でも、みんなで支え合って、最高の形でここまで来れたと思います!それと副部長。」
「はぁ?」
「ありがとう。」
「なっ、なんで今なの⁉︎///」
あっ、夏紀先輩照れてる〜♪後で揶揄おっと♪
「この最高のメンバーで、私はずっと演奏していたい。これで終わりになんかしたくない。全員で、全国行こう‼︎」
「「「はい‼︎」」」
「北宇治ファイトー、」
「「「「オー‼︎」」」」
それはさておき、いよいよ出陣の時となった。
「それじゃあ………葉月先輩!美玲‼︎さっちゃん‼︎行ってきます‼︎」
「行ってらっしゃい‼︎」
「楽しみにしてるよ!」
「来年は絶対そっち行くから。」
「はいよ‼︎」
全国、取りに行くぞ‼︎