……詰んだ。
脳内で即座に警報が鳴り響く。いいか和泉灼、落ち着け。ここで立ち止まったら終わりだ。 コイツと会話のキャッチボールを始めた時点で、俺の負けは確定する。どんな些細な相槌だろうと、コイツの手にかかれば瞬時に解読され、俺の思考や観察眼を丸裸にされる。
会話に応じること自体が、怪物に対する敗北を意味しているんだ。俺は歩調を一切緩めず、視線すら相手の顔に合わせない。ただの「イヤホンをしていて周囲の声が聞こえていない一般生徒」あるいは「完全に人違いだと思っているモブ」の演技を完璧にトレースする。
「少し話せるか」
綾小路がさらに踏み込み、俺の進行方向へすっと軸足をずらそうとした。だが、俺はその一歩が完成する前に、冷淡そのものの声を被せた。
「今日は帰る!」
足を止めるどころか、速度すら変えない。
「いや、昨日のカフェで池を宥めてくれた礼を...」
「急ぎの用事があってな!」
被せ気味に、徹底して無関心なトーンで言い捨てる。誰の影か、誰の謀略か、誰の執着か。そんな化け物どものおままごとに、俺を巻き込もうとするな!俺はただの胃痛に悩む一般人だ。お前の名前も、お前の思惑も、俺の人生には一ミリも必要ない。
綾小路の脇を、すれ違いざまに肩が触れ合うスレスレの距離でそのまま通り過ぎる。背中に、あの底知れない瞳がじっと向けられている感覚が刺さるように伝わってきた。だが、俺は一度も振り返らなかった。足を止めず、反応も示さず、ただひたすらにケヤキモールの自動ドアを目指して早足で突き進む。
あっぶねぇぇぇ!! 死ぬかと、マジで死ぬかと思った……!!
自動ドアを抜けて外の冷たい空気に触れた瞬間、俺は胸ポケットから手震える指で太田胃散の小袋を引っ張り出した。
「ハァ……ハァ……」
勝負には勝ったかもしれないが、胃壁は完全にボロボロだ。俺は逃げるように寮への道を急いだのだった。
そして次の日、ホームルーム終了の号令が鳴り響いた。俺はあらかじめカバンに詰めておいたラノベの角を確かめると、誰にも声をかけられないよう静かに、かつ一切の無駄がない滑らかな動作で席を立った。今日の目標は自室でキンキンに冷えたマウンテンデューを飲みながらゲームの続きをプレイすることだ。
よし、堀北は手元の資料に没頭しているし、軽井沢は女子グループと話している。俺はそそくさと教室から離れようとした瞬間
「――和泉。少しいいか?」
「……っ」
俺は凍りついたように動きを止め、ロボットのようなギチギチとした動作で振り返った。そこに立っていたのは、俺たちの担任である茶柱先生だった。教卓の上の書類を綺麗に整えながら、鋭い視線を真っ直ぐ俺に向けられている。
「あ、茶柱先生……今日はちょっと体調が……胃のあたりが……」
「元気そうだな。ちょうどいい、職員室までこの書類を運ぶのを手伝ってくれるか?」
「……」
嘘だろ。俺の完璧な脱出計画が、まさか担任の物理的な業務命令で打ち砕かれるなんて。
「あの先生。俺、これから大事な用事がありまして……」
「放課後に教員の業務を手伝うこと以上に重要な用事か? それなら堀北や平田に話を通して、明日からのクラス運営に支障がないか確認してもいいが」
「手伝わせていただきますっ!」
堀北の名前を出された時点で俺の選択肢は消滅した。俺は半ば絶望しながら教卓へと歩み寄り、茶柱先生から重厚な書類の束を受け取った。ズシリと手に伝わる重み。これ、全部職員室まで運ぶのか……。
「ついて来てくれ」
茶柱先生は一言そう告げると、カツカツとヒールの音を響かせて廊下へ歩き出した。俺はその後ろを、書類の束を抱えながらトボトボとついていく。夕暮れの静かな廊下。生徒たちの声が遠くから聞こえる中、俺たちの間には気まずい沈黙が流れていた。
はぁ……俺の平和な放課後が……心の中で涙を呑みながら、ふと目の前を歩く茶柱先生の背中に視線をやる。教員としての姿勢は相変わらず隙がなく、凛とした雰囲気を漂わせている。だが……俺たちが3年生になってからというもの先生の佇まいにはどこか微妙な陰りというか、痛々しいまでの切迫感が混ざっているような気がしてならなかった。
特に、綾小路がCクラスに移籍した日だ。あの時の茶柱先生の顔を俺は今でも忘れられない。教室に入ってきた瞬間、血の気が完全に引いて顔面蒼白になり、まるでこの世の終わりでも目撃したかのように茫然自失としていたのだ。
まぁ……あの綾小路が他クラスに移籍したんだもんな……担任の立場からすれば、クラスで影の絶対的エースであり最大の特異点を失ったのだから、ショックを受けるのも無理はない。
俺には先生の詳しい過去なんて知る由もない。昔どんな学生生活を送っていたのかも、なぜあそこまでAクラスという存在に固執しているのかも、俺には何一つ分からない。ただの一般生徒である俺にとっては、知る必要もない『大人の事情』だ。
茶柱先生は2年の後半あたりから1年の頃に見せていた「やる気のない生徒を見下すような冷淡さ」は消えていた。1年の頃なんて平気で「クズ」だの「不良品」だのと言われて、なんでこんな奴が教師になれたんだよと本気で胸ぐらを掴みたくなるほど理不尽に思ったものだ。
それと嘘か本当かは知らないが、あの綾小路を脅迫してまで自分の手駒として使おうとしていたなんて恐ろしい噂(もはや都市伝説レベルだが)を耳にしたこともある。
だが、今の茶柱先生は違う。不器用なりに、俺たち生徒の成長を真剣に見守り、クラスをAクラスへ導こうと必死に奮闘している。現に特別試験の概要を伝えた時も2年前を彷彿とさせる態度で接していたが、堀北はそれが裏返しである事を見抜いた。重すぎるくらいの熱量だけは嫌でも伝わってくる。
けど俺に仕事を振るのはやめてほしい。
「……何か言いたそうだな、和泉」
前を歩いたまま、茶柱先生がふいに口を開いた。俺の視線に気づいていたらしい。相変わらず観察眼が鋭い。
「何でもありません……ただ、書類が結構重いなと……」
俺は慌てて首を横に振った。余計な探りを入れられて「何か悩んでいるのか?」なんて深掘りされたら堪まったもんじゃない。
「そうか……苦労をかけるな」
苦労をかけるなら最初からかけさせないで下さいよ……心の中でそうツッコミを入れつつも、口には出さない。茶柱先生は短くそう言うと、ほんの少しだけ歩調を緩めてくれた。
職員室の扉が見えてくる。あと少しでこの重労働から解放され、俺の愛する自室へと帰ることができるのだ。
「……和泉」
職員室に入る直前、茶柱先生が足を止め、振り返って俺を見た。その瞳には担任としての深い意志と、どこか生真面目すぎるほどの情熱が宿っていた。
「お前達は今、大きな岐路に立っている。綾小路が抜け、他クラスとの競争はより過酷になるだろう……お前にも、無理のない範囲でいい、クラスを支えてもらえると助かる」
「……あ、はい。まあ、足だけは引っ張らないように努力します」
俺は引きつった笑顔で無難な返答を返すと茶柱先生はふっと目元を和らげ、どこか労うような口調で言葉を付け足した。
「お前も最近、何かと苦労してるらしいからな。無理はするなよ」
「……えっ」
えー茶柱先生にまで、俺の周りで起きてることバレてんの?どんだけ情報網広いの? 俺の胃薬の消費量とか個人情報まで学校側に筒抜けになってんじゃないの……?俺は背中に冷や汗をダラダラと流しながら、職員室のデスクに重い書類を降ろした。
「後もう一つ言っておきたい」
「なんですか?」
「胃薬の使いすぎは胃を逆に弱らせる事になるから、使用頻度を減らした方が良い」
「……なんで俺が胃薬飲んでる事知ってるんですか?」
「ドラッグストアに立ち寄った時に、偶然レジで大量の胃薬を買っているお前を見つけてな」
ガッツリ見られてたぁぁぁ!!休日にドラッグストアでまとめ買いしている姿を、まさか担任の先生にバッチリ目撃されていたとは。だから「苦労してる」なんて妙に優しい言葉をかけてきたのか……!
「何か辛い事があったら、相談ぐらいはしてくれ」
教員として、そしてどこか不器用な大人としての真摯な眼差しでそう告げる茶柱先生。
じゃあ先生、今すぐ最近覚醒して俺の胃を極限まで痛める原因になってる一之瀬と、彼女を覚醒させた全ての元凶たる綾小路を呼んでガッツリ説教してください!!喉元まで出かかったその悲鳴のような本音を、俺は必死で飲み込んだ。茶柱先生が綾小路関連で落ち込んでるのに追い討ちをかけるようなものだ。
「....失礼します」
先生からの追撃の問診を受ける前に、俺は深々と一礼し、脱兎のごとく職員室を後にした。寮へと向かう夕暮れの帰り道。春の冷たい風が頬を撫でるが、俺の胃のあたりは冷や汗とストレスで妙に熱を帯びていた。
「担任にまで『苦労してる』とか心配される生徒ってなんだよ……」
漸く茶柱先生の追及から解放されたものの、気力を削がれすぎて「部屋でゲームをしながらマウンテンデューを飲む」という完璧だった放課後の予定は完全に狂ってしまった。まだ時間はあるだろ?と思われるかもしれないが、人間一度予定を狂わされると、やる気がガッツリ減るものなのだ。
この重苦しい気分のまま部屋に帰る気にもなれず、俺は足を伸ばして図書館へと向かった。静まり返った館内で本棚を物色し、久しぶりに手にとったのは『僕らの七日間戦争』だ。文庫本を手に取り、静かな閲覧スペースの席に腰を下ろす。
ページをめくるにつれて、大人の身勝手な都合に反旗を翻す中学生たちの痛快な戦いにぐいぐい引き込まれていった。やはりこのシリーズは読んでいてスカッとする。この底無しの悪意と腹黒い裏切りばかりが渦巻く高度育成高等学校の連中も、少しは見習ってほしいくらいだ。
物語の世界に没頭している間だけは、綾小路の観察眼も、一之瀬の追及も、そして胃のキリキリとした痛みも綺麗さっぱり忘れることができた。気づけば一冊をすっかり読み終えており、窓の外はすっかり朱色へと移り変わっていた。
「……ふぅ」
軽く息を吐いて本を返却棚に戻し、俺は図書館を後にした。そのとき――廊下で、ある二人組が話している姿を見かけた。長谷部と綾小路だ。この二人は元「綾小路グループ」のメンバーだが、佐倉の退学によってグループは事実上崩壊しているはずだった。
俺は無意識のうちに自分でも理由はよく分からないまま物陰の角にサッと身を隠していた……こういう土壇場の嗅覚においては、本能に従った方が大概上手くいく。二人の会話がすべてハッキリ聞こえるわけではないが、過去の関係性から察するに話題はおそらく佐倉のことだろう。チラリと陰から伺ってみたが、長谷部が激昂して怒っているようには見えなかった。
物音を殺して耳をすませると、所々で途切れた会話が風に乗って聞こえてくる。
「……深夜の枠……テレビ……出られる……」
佐倉が深夜枠のテレビに出演……?気になった俺はポケットからスマホを取り出し、検索欄に指を走らせてみた。佐倉がもし本当にテレビに出演しているとすれば、現在の芸能界では中々に若い部類に入るはずだ。しばらくスクロールしながら探していると、ある芸能系の記事がヒットした。
『「雫」、復帰後初のテレビ出演決定!』
添付された画像を拡大してみると、そこには佐倉愛里にそっくりな――いや、間違いなく本人であるグラビアアイドルの女の子が映し出されていた。なるほど、長谷部はおそらくこのニュースを見つけ、そのことを綾小路に伝えたかったのだろう.......つか佐倉グラドルだったのか!?
俺は再び集中して耳を澄ませた。
「あっ……! ごめん、綾小路くん。つい長話しちゃって……どこか行く予定だったんじゃない?」
「別に構わない。久々に長谷部と話せて楽しかったし、佐倉のことを知れて嬉しかった」
「そ、そう? 本当はまだまだ愛里のこと語り足りないんだけど……良かった」
「差し支えないなら、今度どこかでまた時間を作るから話を聞かせてくれ。それか、Aクラスから反感を買わないように配慮するなら電話でも構わないし」
おいおい、マジかよ....仮にもかつての親友であり、佐倉を容赦なく退学へと追い詰めた張本人と話している割には、長谷部はあまりにも穏やかに、そして親しげに綾小路を昔通りの「あだ名」で呼んでいた。
和解してるからかもしれないが俺の捻くれ上がった観察眼には、どう甘く見ても綾小路の野郎が巧みな言葉で長谷部を懐柔し、自分の手元に手懐けようとしているようにしか見えなかった……相変わらず底が知れねぇ恐ろしい男だ。
さて、こういうヤバい現場に出くわした時、俺はどうするか?
決まっている。
2人が話してるところを敢えて無言で素通りし、『会話してる所を誰かに見られた』という決定的な印象を植え付けて、その場の空気を最高に気まずくさせる
これだ。しかも、俺から余計な言葉を投げかけるような真似は絶対にしない。あくまで「たまたま通りかかった無関係な一般生徒」の顔を決め込み、一切の言及をせずに去る。これが最大のポイントだ。
自分たちの後ろ暗い(あるいは複雑な)密談を他人に覗かれたという事実は、どれほど冷徹な綾小路であっても少なからず心理的なノイズになるはずだし、長谷部側にも我に返る隙を与えられる。
俺はポケットの胃薬の感触を指先で確かめ、呼吸を整えた。ポーカーフェイスを張り貼り直し、靴音を意図的に少しだけ響かせながら、角からすっと姿を現す。
「……あ」
長谷部がビクッと肩を揺らし、驚いたようにこちらを見た。綾小路の無機質な視線も、静かに俺の顔へと向けられる。俺は二人と目が合っても表情一つ変えず挨拶どころか会釈すら一切せずに、ただの「図書館から帰る通行人のIさん」として二人の目と鼻の先をスーッと素通りした。
静寂が支配する廊下に俺の足音だけが淡々と響く。すれ違いざま、二人の間に漂っていた甘やかな懐柔の空気が氷のように一瞬で凍りついたのが肌で分かった。背中に突き刺さる綾小路の粘着質な視線をスルーし、俺は一切振り返ることなく校舎の出口へと歩を進める。
……邪魔して悪かったな。だが、俺の平穏な放課後を狂わせたお返しだ。心の中で綾小路に小さな毒を吐き捨てながら、俺は冷え込んできた夕暮れの風の中へと足を踏み出していった。
校舎を出て冷たい夕暮れの風に当たると、火照っていた顔がすーっと冷やされていくのを感じた。
「……ふぅ」
背後に漂っていた綾小路のあの無機質で底知れない視線を思い出し、俺は小さく身震いをした。
まあ……あの二人からすれば、完全に『気まずい現場をクラスメイトに見られた』状態だからな。長谷部にしてみれば、佐倉を切り捨てた張本人と仲良く喋っているところを他人に目撃されたという後ろめたさが多分残るだろうし、綾小路にしてみれば、せっかく長谷部をいい感じに手懐けようとしていたペースを狂わされた形だ。
俺が何かを咎めたり、問い詰めたりしていたら、逆に綾小路の言い訳や誘導に利用されていたかもしれない。だが、「ただ無言でそのまま素通りする」という選択を叩き込んだことで、二人の間の甘っちょろい空気は完全に霧散したはずだ。
心の中でフンと鼻を鳴らし、俺は寮へ向かって足を進めた。
――ガサッ。
植え込みの影から落ち葉を踏むような微かな音が聞こえた気がして、俺は思わず足を止めた。
「……またお前か、山村」
自販機の件があったばかりだ。俺は半目で植え込みの影を凝視した。だが、そこからひょっこりと顔を出したのは、山村……ではなく、別の女子生徒だった。
「……な、なに? なんで私が隠れてるみたいな言い方すんのよ!」
「あ……佐藤か」
そこにいたのは、同じクラスの佐藤麻耶だった。なぜか植え込みの物陰から校舎の出口をじっと伺っていたらしく、俺に声をかけられてバツの悪そうな顔をしている。
「お前まで山村の真似してステルスごっこか? 今日の3年生女子にはメタルギアブームでも来てんのか?」
来てるなら是非とも俺を混ぜて欲しい。メタルギアシリーズは義務教育だからな。ダンボールに潜んで敵兵の目を盗む潜入ミッションなら、今の俺の隠密スキルを全力で発揮できる自信がある。ついでにTHE•BOSS、どうか綾小路の野郎にみっちりCQCを叩き込んでください。出来れば再起不能になるレベルにまで!
ピースウォーカーやりたかったなぁ....
「違うし! 私はただ……その、ちょっと……」
え、違うの?メタルギアブームじゃないの?
佐藤は気まずそうに視線を泳がせ、校舎の出口付近――さっき俺が出てきた方向をチラチラと気にしている。俺はなんとなく察した。佐藤はかつて綾小路に好意を寄せていた一人だ。そんな彼女が、佐倉を退学に追い込んだ綾小路と、そのグループだった長谷部が二人で話しているのを目撃してしまい、声をかけることもできずに物陰で見守っていた……というところか。
「……見たのか?」
「……うん。なんとなく、遠目からだけど……」
佐藤はキュッと唇を噛み締め、俯いた。その顔には、複雑な葛藤と、どこか割り切れない寂しさが浮かんでいる。
「長谷部さん……綾小路くんと普通に話してて……なんか、私、どういう顔して見ればいいか分かんなくなっちゃって……」
そりゃそうだ。外部から見れば、あれだけ憤っていたはずの長谷部が、あっさりと綾小路と仲直り(?)しているように見えたんだからな。戸惑うのも無理はない。
「……深く考えるな」
俺は静かに息を吐いた。
「人間の感情なんてな、割り切れるもんじゃないし、長谷部だって葛藤してんだろうし、綾小路の野郎がどういう口車を使ったかも分からん」
「……和泉くん」
佐藤は少し驚いたように目を見開いた後、へにょっと力なく笑った。
「和泉くんって……普段は冷めてるのに、たまにそういう優しいこと言うよね」
「よく言われる」
佐藤の表情から、少しだけ固さが取れた。よし、これで余計なトラブルに巻き込まれずに済みそうだ。
「うん……ありがとう、和泉くん」
佐藤に背を向け、俺は今度こそまっすぐ寮への道を歩き出した。
どいつもこいつも、綾小路っていう特大の不確定要素に振り回されすぎなんだよ……俺もだけどな!空を見上げると、群青色の夜空にぽつぽつと星が輝き始めていた。ポケットの中で、軽井沢からもらったイチゴキャンディの最後の1粒がコロリと転がる。
「……早く帰って、マウンテンデュー飲も」
俺は今日一番の深い溜め息を吐き出しながら、冷たい夜風の中を一人、急ぎ足で帰路につくのだった
僕らのシリーズって面白いですよね。