放課後のチャイムが鳴り響いた瞬間、俺は俊敏な動作でカバンを掴み教室を脱出した。重い足取りで向かったのは、カフェ『パレット』だ。 ガラス張りの店内を覗くと、奥のテーブル席にすぐにお目当ての人物が見つかった。
窓際の席に座り、アイスカフェオレに唇を寄せている少女、一之瀬帆波。 西日に照らされたピンクの髪と整いすぎた容姿。ただそこに座っているだけで一枚の絵画のように絵になる。通りかかる生徒たちが思わず振り返るほどの存在感だ。だが、俺にとっては「美しい絵画」などではなく、足を踏み入れたら二度と出られない「底なしの沼」にしか見えない。
「……ハァ」
意を決して中に入りると一之瀬は俺に気づき、ぱっと花が咲くような笑顔で手を振った。
「和泉くん、こっちこっち!」
周囲の生徒からの刺さるような視線を背中で受け止めつつ、俺は向かいの席へと腰を下ろした。
「……待たせたか?」
「ううん、全然! 私も今来たところだよ」
定番のセリフだが、彼女の笑顔には一切の嫌味がない。むしろ完璧すぎる。 俺は店員に目に映った水出し和紅茶のアイス(ガムシロ付き)を注文し、緊張で強張りそうになる表情を必死に繕った。
「春になってあったかくなったけど、夕方はまだ寒いね」
俺の強ばった緊張を察してか、一之瀬は当たり障りのない世間話で距離を埋めようとしてくる。それが恐ろしい.....お前が目の前にいる時だけ俺の体感温度はオイミャコンかヤクーツクと同レベルだ。そう喉まで出かかったが、当然口に出せるはずもない。
「確かにな……油断してたら、すぐに体調を崩しそうだ」
「そうだね。あ、そういえば和泉くんも、ジムに通ってみたりしない? 私は去年の冬辺りから気分転換も含めて通い始めたんだ。結構しっかり体も鍛えられるし、おすすめだよ」
「ジムか……いや、俺は中学の時まで陸上をやってたから、高校に入ってからはのんびり運動せずに過ごしたい派なんだ」
一之瀬は「おっ」と目を輝かせた。
「和泉くんも陸上部だったんだ? 実は私も中学の時は陸上だったんだよね。納得だなぁ、何ていうか……和泉くんって、見た目はのんびりしてそうだけど、実は結構体動かすの得意そうって思ってたんだ」
一之瀬の何気ない観察眼に俺の内心で小さく警報が鳴る。 確かに俺は、自分で言うのもなんだが、身体を動かすこと自体は嫌いじゃない。OAAのパラメータを見返してみれば、学力やらが平々凡々なのに対して、身体能力の項目だけは唯一『B+』というハイスコアを叩き出している。
ただ、俺の最も得意分野は陸上部でやってた長距離走というよりも、もっとアクロバティックなジャンル――それこそ、小学校で体操教室に通わされ、中学時代にこっそり練習したバク転、バク宙とかハンドスプリングといった、器械運動系のキレと身軽さなのだが。
ちなみに、このステータスを突き詰めていけば、あの龍園の身体能力の項目すら密かに凌駕しているのを俺は誇りにしている。綾小路には勝てるのかって?無理に決まってんだろ。アイツに勝てるなら俺はアイツをぶん殴ってる。
「それなりにな.......それで、俺に何か用か?一之瀬に感謝されるようなことした覚えはないんだが....」
できる限り核心へと切り込む。早く話題を終わらせて撤退するためだ。一之瀬は両手でグラスを包み込むように持ち、首を少し傾けた。
「ふふ、とぼけちゃって。あの時の放課後のことだよ。軽井沢さんを病院に連れってくれたでしょ?」
やっぱりそれか……!
心の中で冷や汗が噴き出す。
「あの時、私すごく心配だったんだ。軽井沢さん、綾小路くんと別れたばっかりで……ずっと辛そうだったから。話を聞いてあげなきゃって思ってたの。でも、あの時の私じゃ、きっと上手く話を聞いてあげられなかったと思う」
思ってもねぇことペラペラ喋りやがって....思わず俺の口が滑りそうだった為、確固たる意思で黙り込む。一之瀬はどこか遠くを見るような目で、寂しげに微笑んだ。
「だからね、和泉くんが助けてくれて良かったよ。普段はすごく冷めてるように見えて、実はクラスメイトのこと、よく見てるんだね」
「……いや、買い被りすぎだろ」
ここで下手に「そうだな」なんて認めようものなら、どんな追撃が飛んでくるか分かってもんじゃ無い。この手の人種に『優しい人』と認定されるのは、死亡フラグでしかないのだ。
「相変わらず謙虚だね」
だが、一之瀬は俺の否定を「照れ隠し」と受け取ってくれたらしい。柔らかい笑みを崩さない。 そして、すっと目を細め声のトーンをわずかに落とした。
「ねえ、和泉くん……軽井沢さん、何か言ってたかな?」
放課後のカフェ。テーブルを挟んで向かい合う一之瀬が静かに切り出してきた。
――こっからが本題だ。
表向きは「友達としての心配」を装っている。だが、その澄み切った瞳の奥には、綾小路という存在に対する凄まじい執着と、自分以外の女子が彼とどう関わっていたのかを知りたがる、底知れない探究心がゆらゆらと揺らめいていた。
ここで、軽井沢が「綾小路に振られた」と泣いていたことを話せば、一之瀬はどう反応する? 喜ぶのか? 安堵するのか? それとも――どのルートを選んでも、その先に地獄しか見えない。
「別に」
俺は運ばれてきたばかりの和紅茶にガムシロップを落とし、くるくるとスプーンを回しながら素っ気なく答えた。あくまでも、何事もなかったかのように平然を装うのだ。
「何も言ってなかったぞ。ただ腹が減ったからサンドイッチ食って、愚痴に付き合っただけだ。そもそも振った振られたの話なんて、俺みたいな部外者に話すわけないだろ」
嘘である。
軽井沢はボロボロになりながら本音をこぼしていた。だが、あの繊細な少女の秘密を、目の前にいる「猛毒を秘めた聖母」に切り売りするつもりは毛頭ない。それがマウンテンデューで彼女の愚痴に付き合った男としての、最小限の義理というやつだ。
「……そっか」
一之瀬は俺の目をじっと見つめてきた。嘘を見抜こうとするような、吸い込まれそうなほど強く澄んだ視線。だが俺は無表情を貫き、和紅茶を一口含んだ。やがて、一之瀬は「ふふっ」と小さく笑って視線を外した。
「和泉くんって、本当に口が堅いんだね……」
その時の一之瀬の顔は優しかった。それと同時に心底恐ろしかった。一之瀬はもう分かっているのだ。俺の言ったことなんて透けて見える嘘であることも、本当は軽井沢が俺に恋愛云々の重い話を打ち明けていたことも。
そして俺も確信した。一之瀬は本気で綾小路に恋――もはや依存という域にまで達しているということを。今後、絶対に関わるべき相手ではないということを。
――けれど、こうして一方的に言われっぱなしなのも、なんだか性に合わない。俺は和紅茶のグラスを静かに戻し少しだけ探りを入れにいくことにしたが、俺はこの選択を死ぬほど後悔する事になる。
「軽井沢は愚痴の相手に偶然近くにいた俺を選んだだけだろ?……そっちこそ、わざわざ俺に軽井沢……いや、綾小路関連の事を聞くなんて、随分捻ったやり方だな」
俺の言葉に、一之瀬の顔からふっと甘さが消えた。今までの「誰にでも優しい一之瀬帆波」からは想像もできないほど、その目が一瞬だけ鋭く尖る。
「あはは、なんのことかな? 私は軽井沢さんを心配してたんだよ?」
「そうなのか……ならあの時、軽井沢と接触したあと、誰と待ち合わせてたんだ?」
あの放課後、寮へ向かう途中で聞こえていたかすかな足音と、一之瀬が誰かを待っているような発言。あのルートにいたのは俺、軽井沢、そして一之瀬の3人だ。一之瀬はあの時、軽井沢と接触して何かを起こすはずだったのだろう。
そして、脳内で考えた一番最悪なパターンは――待ち合わせていた綾小路との仲睦まじい姿を見せつけることで、未練を残していた軽井沢の心を完全にへし折ること。
それを、俺という余計な存在が割り込んだせいで邪魔されたのだとしたら……俺の脳裏に、あの日の光景がフラッシュバックする。あの時、一之瀬が携えていたあの柔らかな笑顔の裏にあったのは、偶発的な親愛などではなく、残酷な演出だったのではないか。
「……和泉くん」
不意に、一之瀬がクスリと乾いた笑い声を零した。彼女はグラスに置くと、わずかに身じろぎし、その瞳の奥の色をすうっと深める。
「少し感心しちゃったな。そこまで私が何を考えていたのか、正確に辿り着いちゃうなんて思わなかったから」
「……褒め言葉には聞こえないな」
「本当だよ?」
一之瀬の声音には全く隙がなかった。彼女は逃げ道をあらかじめ予測し、そのすべてのルートを美しい網の目で塞いでいくような、そんな息苦しいほどのプレッシャーを纏っている。
「私が綾小路くんの隣に並ぶために、どんな手段を選ぼうと……和泉くんは見ないふりをしてくれる?」
問われているのは、共犯関係への誘いではない。「黙認」という名の絶対服従の契約だ。俺がここで「ふざけるな」と変な正義感を気取れば、この女は――聖母の仮面をかなぐり捨てたこの怪物は、俺というイレギュラーをどう排除すべきか、秒速で計算し始め最も嫌なタイミングで実行するだろう。逆に、あまりにもあっさりと迎合しすぎれば、それはそれで彼女の好奇心を刺激し、より深い沼へと引きずり込まれる。
「……勘違いすんなよ一之瀬」
俺はあえて、わずかに冷笑を浮かべてみせた。一応言っておくが、俺は別に冷笑系じゃないし、そもそも、こんな役は似合わない。今のはただの恐怖に震えている内臓と精神と神経を無理やりねじ伏せて、精一杯に「ただの偶然」を演じきるための不格好な虚勢にすぎない。
後で黒歴史として死ぬほど恥ずかしい思い出になるパターンだ。
「お前のその壮大な恋愛劇に付き合わされるこっちの身にもなってくれ。俺が首を突っ込まないのは、関わったら間違いなく俺の寿命が縮むからだ……それの何が不満なんだよ」
「不満なんてないよ?」
一之瀬は首を横に振った。その頬に浮かぶ笑みは、どこまでも愛らしく、そして残酷なまでに理知的だった。
「むしろ、安心したよ。和泉くんが『損得』でも動いてくれる人で本当に良かったって。綺麗事ばかり言う人って、一番予測がつかなくて厄介だからね」
背筋がぞっと粟立った。
こいつは俺が「保身」で動いていると確信したから、こそ安心しているのだ。利害が一致している限り、俺は彼女にとって「安全な知人」であり続ける。だが、一歩でもそのバランスが崩れれば、いつ牙を剥かれるか分からない。
しかも、以前の彼女なら、どれだけ泥臭くてもどれだけ理想論だと言われても、自分の掲げる「綺麗事」をその優しさのままにどこまでも貫こうとする人間だったはずだ。あの優しくも強い聖母のような一之瀬帆波が、目の前にいる女の姿ではない。
それなのに、今の彼女は「綺麗事」という言葉を冷徹に、迷いもなくバッサリと切り捨ててみせた。かつての彼女を支えていた純粋な光はすっかり失われ、その足元には欲しいものを手に入れるためなら何でもする冷酷な現実主義だけが広がっている。
「……お前の安心のために、俺が胃薬を何包消費してると思ってんだ」
「そこは感謝してるよ。和泉くんのおかげで、私は次の手を考えられるんだから」
一之瀬はふっと目を細め、まるでお気に入りの道具を眺めるような、そんな底冷えのする眼差しを俺に向けた。
YesともNoとも言ってないが、この回答で俺は確信した。この女は本気で軽井沢の心を砕くつもりだったのだ。そして、その障害になり得るものは、優しさという名の下にすべて排除していく覚悟を持っている。たとえそれが異性だとしても.....
そんな彼女の姿を見つめながら、俺の脳裏に少し昔の記憶がかすめた。俺は一之瀬に向かって、『コイツ』とか『この女』とか『お前』とかで呼んだ事も思った事などなかったはずだ。 無意識に敬意を払っていたし、心の中でも冷めた目を向けたことなどなかった。それが消え失せる程に俺は彼女を警戒しているのだろう。
一年の頃の俺はどこにでもいる普通の男子高校生で、明るくて一緒にいて楽しい女の子が好みだった。無論、クラスの垣根を越えて有名だった一之瀬や、一之瀬と同じクラスの網倉や、誰にでも人当たりのいい櫛田、同じクラスの佐藤とか一応……軽井沢なんかも。あの頃は華やかな女子の一人として普通に好意的に見ていた気がする。
もっとも、クラスメイトの松下あたりはいつだってどうも人を上から見下ろしているような感覚があって苦手意識があった。一之瀬の同じクラスの姫野に至っては、そもそも会話のキャッチボールのテンポが独特すぎて、恋愛とか以前にどう接していいか分からず思考の圏外だった。
だが――この高度育成高等学校という、底なしの悪意と謀略が渦巻く特殊な環境で丸三年も揉まれ、櫛田の底知れない本性を知ってしまってからというもの俺の中の女子に対する認識はすっかり卑屈なものへと変貌してしまった。
今じゃ派手なタイプや表面的に愛想の良い人間を見ると、無意識に裏の顔を疑ってしまう。心の底から安心できるのは、誰とも群れずにおとなしくしている女子、いわゆる「おとなしい女子」が一番だという結論に至っている。
……もっとも、世の中そんなに甘くなくて、仮にそのおとなしそうな女子の裏にすらエグい性格が隠されていたりしたら、俺はいよいよ人間そのものを信じきれなくなってしまいそうだが、なにも女子だけに限った話ではない。男だって警戒しなければいつか自分の首を絞める事になる。綾小路がいい例だ。人畜無害みたいな顔をして、腹の中はドス黒いなんて言葉じゃ生ぬるいくらいに真っ黒だ。
自クラスだって警戒しなきゃいけない。何せ、俺は現在進行形でクラスから「Dクラスのリーダーである一之瀬と2人で親しげに話している」という、周りから見れば裏切りかましていると言われてもおかしくない現場を押さえられているのだ。
辛い.....
だからこそ、部活などで他クラスの生徒と壁を作らずに仲良くできる奴らはすごいなと心から思っていた。俺なら変に気を遣いすぎて確実に浮くし、精神が持たない自信がある。
「この学校に3年間も居れば、嫌でも鍛えられると思うぞ」
俺は自嘲気味に呟き、和紅茶を喉の奥へと無理やり流し込んだ。
「あはは、確かにね」
グラスの氷をカラランと響かせながら笑う一之瀬の瞳には、もはや隠そうともしない強烈な意志と、俺に対する新たな興味の光が宿っている。
「邪魔されちゃったのは少し残念だったけど……でも、代わりに和泉くんっていう、すごく面白くて頼りになる『お友達』を改めて見つけられたから、プラスマイナスゼロかな」
一之瀬は首を少しだけ傾けた。 その可憐な仕草とは裏腹に発せられた言葉が重すぎる。プラマイゼロ? ゼロどころか、俺にとっては大損以外の何ものでもないんだが?
「……俺としてはこれ以上一之瀬と関わるのは勘弁したいな」
「冷たいなぁ。でもね和泉くん」
一之瀬はテーブル越しに、さらに身を乗り出してきた。甘い香りが鼻腔を掠め、彼女の大きな瞳が逃げ場を消すように俺の視線を捕らえて離さない。
「私が綾小路くんを手に入れるために何をしようと、和泉くんは『何もしない』んでしょ? 軽井沢さんを守ったみたいに、私の邪魔も……わざわざ自分から首を突っ込んでまで止めたりしない。そうだよね?」
胃が雑巾みたいに固く絞られるような感覚がした。俺が自分からトラブルの渦中に飛び込む度胸も正義感もないことを、彼女は完璧に見抜いているのだ。軽井沢の秘密を守ったのは優しさでも何でもなく「ただの保身と義理」であり、それ以上踏み出す気がないことも。
「……買いかぶりすぎだ。俺はただ、平和にAクラスで卒業したい生徒だ」
俺は和紅茶を無理やり喉に流し込みながら、ポケットの中でそっと胃薬の小袋を握り締めた。
「そういうところ、すごく好きだな」
「……ブッ!?」
流石に予想外過ぎて、危うく紅茶を吹き出すところだった。以前の彼女ならこんな簡単に『好き』という単語なんて出さなかっただろう。喉を鳴らして必死に飲み込み、ゴホゴホと激しく咳き込む。そんな俺を見て、一之瀬はいたずらっぽく微笑んでいた。
「あ、ごめんね! 変な意味じゃなくて、人間として魅力的だなって意味だよ?」
「……心臓に悪いから、紛らわしい言い方はやめてくれ」
クッソ……俺のシリアスムードを返してくれ。
「ごめんごめん。でも、本当だよ?」
一之瀬はグラスの中の氷をカラランと音を立てて鳴らし、テーブル越しに身を乗り出してきた。フルーティーな甘い香りが鼻腔をくすぐり、男子高校生としての理性が全力で危険信号を打ち鳴らす。
「今は、すごく大事な時期なの。クラスのためにも、私自身のためにも……絶対に手に入れたいモノがあるから」
その目の奥に宿る揺るぎない意志。かつての「善意の塊」だった一之瀬帆波は、もうどこにもいない。綾小路という男によって覚醒させられ、目的のためなら手段を選ばなくなった女が、そこにいる。
「だからね、和泉くんみたいな『客観的に物事を見られる人』と、たまにこうやってお話しできたら嬉しいなって……これからも、たまにお茶に付き合ってくれる?」
上目遣いと完璧な角度に完璧な声音。 断ることすら容易ではなく、受け入れれば綾小路と軽井沢の泥沼に両足を踏み入れることになる。あ、もう片足突っ込んでるか.....
おい綾小路……マジでどうなってんだよお前の人間関係は!! 爛れてるぞ!!
俺は心の中で、別のクラスにいる元凶の男へ向かって全力で呪詛を吐き捨てた。
「……気が向いたらな。放課後の俺は基本寝たい派なんだ」
限界ギリギリの引き分け――というか、単なる回答の引き伸ばし。それが、今の俺にできる精一杯の抵抗だった。
「ふふ、約束ね」
一之瀬は嬉しそうに微笑むと、カバンから携帯を取り出した。
「今日は私のおごるね。お礼だから」
「自分の分くらいは――」
「ううん、ダメ。人に気を使わせちゃうのは私の本意じゃないから」
そう言って可愛らしく首を横に振る一之瀬を前に、俺はただ脱力するしかなかった。この底知れない少女の手のひらの上で、俺はしばらく転がされ続ける羽目になりそうだ。そう言ってスマートに会計を済ませる一之瀬の背中を見ながら、俺は和紅茶の残りを飲み干した。放課後カフェデートと言えば青春かも知れないが得られたのは胃の激痛と、今後の学校生活に対する絶望的な予感のみ。
俺の高校生活三年目は、あまりにも前途多難だった。
和泉灼のモデルは寄生獣の『泉新一』とPSYCHO-PASS 3の主人公の1人『慎導灼』。元々は『泉灼』と言う名前にしてたんですが、名字を変換した時に間違って『和泉』にしてしまい、そのミスに気づかないまま投稿というどうでもいいエピソードがあります。