雨降りの約束 ―壊した才能と、もう一度走る理由― 作:九頭T
それから、毎日が同じように過ぎていった。
ルイテンキューは、朝六時にグラウンドに来る。
九頭は、六時半頃にやってくる。時には七時になることもあった。
ルイテンキューは走る。九頭は見ている。
それだけの関係。
指導らしい指導はない。九頭は、時々「遅い」とか「フォームが悪い」とか言うだけで、具体的なアドバイスはしない。
それでも、ルイテンキューは走り続けた。
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六月に入った。
梅雨入りが宣言され、雨の日が増えてきた。
雨の日、練習は基本的に中止される。
でも、ルイテンキューは来た。
「おい、今日は雨だぞ」
九頭が、屋根のある場所から声をかけた。
「……走りたいんです」
「風邪引くぞ」
「大丈夫です」
ルイテンキューは、雨の中を走り始めた。
九頭は煙草を取り出したが、ライターが見当たらなかった。
「……チッ」
ポケットを探る。ジャージの上着を探るが、ない。
仕方なく、九頭は屋根の下にもたれたまま、ぼんやりとトラックを眺めた。
雨の中、ルイテンキューが一人で走っている。
水を吸った地面を踏みしめるたび、泥が跳ねた。
「……馬鹿だな」
呟く。
でも、止めはしなかった。
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ある日の朝練後、ダスタンテがルイテンキューに声をかけた。
「……最近、毎朝早いね」
「うん。練習してる」
「トレーナーと?」
「……まぁ、そう」
ルイテンキューは、曖昧に答えた。
本当は、一人で走っているようなものだ。九頭さんは見ているだけ。
でも、それでも。
一人じゃない。
誰かが見ていてくれる。
それだけで、少し心が軽くなった。
「……頑張ってね」
ダスタンテは、珍しく励ましの言葉をくれた。
「ありがとう」
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六月中旬。
学園で小さな模擬レースが開催された。
ルイテンキューも、エントリーした。
「出るのか?」
九頭が、面倒臭そうに聞いた。
「はい」
「……勝てると思ってんの?」
「思ってません」
ルイテンキューは、正直に答えた。
「でも、走りたいんです」
「……そうかよ」
九頭は、観客席に座った。
煙草を吸いながら、レースを見る。
スタート。
ルイテンキューは、いつも通り出遅れた。
中盤、少しずつ遅れていく。
コーナーで、脚が縺れた。
転倒。
九頭は、煙草を吸う手を止めた。
ルイテンキューが、立ち上がる。
また走り始める。
観客席から、ため息が聞こえる。
「またか……」
「可哀想に」
九頭は、煙草を強く吸い込んだ。
ルイテンキューは、最下位でゴールした。
失格ではなかった。完走した。
それだけが、せめてもの救いだった。
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レース後、ルイテンキューは着替え室で一人座り込んでいた。
膝が痛い。擦り傷だらけだ。
でも、それよりも心が痛かった。
「……やっぱり、ダメなのかな」
毎朝練習している。
でも、結果は変わらない。
やっぱり、才能がないんだ。
そう思った時、ドアが開いた。
「おい」
九頭が立っていた。
「……九頭さん」
「帰るぞ」
「……はい」
ルイテンキューは、立ち上がった。
二人は、無言で学園を出た。
夕暮れの道を、並んで歩く。
「……なぁ」
九頭が口を開いた。
「お前、なんで走ってんだ?」
「……前にも聞かれました」
「答えてなかっただろ」
「……分からないんです」
ルイテンキューは、空を見上げた。
「走りたい。ただ、それだけで」
「勝ちたくないのか?」
「……勝ちたいです」
「じゃあ、なんでそんな走りしてんだよ」
「才能が、ないからです」
「……そうかよ」
九頭は、それ以上何も言わなかった。
寮の前で、二人は別れた。
「じゃあな」
「……九頭さん」
ルイテンキューが、声をかけた。
九頭が振り返る。
「……ありがとうございます」
「は?」
「今日、見に来てくれて」
「……別に、暇だっただけだ」
九頭は、背を向けた。
九頭の背中が、遠ざかっていく。
ルイテンキューは、その背中を見送った。
それだけで、少し救われた気がした。
一応、なろう投稿だと予約投稿すらできなかった分があるので
25章までくらいあるけど
その先はまだ書いてないから投稿しきった後
反応次第で続き書こうかな…
あと更新ペース遅れてるのは
なろうの投稿内容に加筆修正行ってるので若干違ってます