雨降りの約束 ―壊した才能と、もう一度走る理由― 作:九頭T
九頭は例の飲み屋にいた。
カウンターで、安いウイスキーを煽る。氷が溶けて、味が薄まっていくのも構わずに、ただグラスを傾け続ける。
「最近、毎日来てるな」
「金があるうちに飲んどかないとな」
九頭は、グラスを煽った。
白根から受け取った30万円。北川への返済に充てて、残りは生活費と酒代に消えている。
また、金がなくなる。
また、借金が増える。
どうせ、そういう人生だ。
「なぁ、バーテン」
「ん?」
「……才能ってなんだと思う?」
「急にどうした」
「いや、ちょっと気になってさ」
九頭は、グラスを見つめた。
「才能がない奴が、どんなに頑張っても無駄なのかな」
「……誰かのこと?」
「まぁな」
バーテンダーは、グラスを拭きながら答えた。
「才能ってのは、確かにある。でも、努力も大事だろ」
「努力じゃ補えないこともある」
「それはそうだ」
バーテンダーは、九頭のグラスに酒を注いだ。
「でも、努力しなきゃ、才能も開花しない」
「……そうかね」
「そうだよ」
九頭は、また一口飲んだ。
ルイテンキューの顔が、頭に浮かんだ。
毎朝、必死に走る姿。
転倒しても、立ち上がる姿。
遅くても、諦めない姿。
「……馬鹿だよな」
「誰が?」
「いや、独り言だ」
九頭は、煙草を取り出した。
火をつけて、深く吸い込む。
煙が、肺を満たす。
そして、吐き出す。
「……俺も、昔は信じてたんだよ」
「何を?」
「努力すれば、なんとかなるって」
九頭は、煙草を灰皿に置いた。
「……ならなかったけどな」
「……」
バーテンダーは、何も言わなかった。
九頭の言葉は続かなかった。
グラスを置いた。
「……もう帰る」
「まだ残ってるぞ」
「いいんだよ」
九頭は、金を置いて、店を出た。
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夜の道を、一人で歩く。
街灯の光が、地面に長い影を作る。
九頭は、ポケットに手を突っ込んで、前を向いた。
ハナハルカ。
才能に溢れた、あの子。
九頭が、全力で育てた、あの子。
事故で、全てを失った、あの子。
レースも。
未来も。
全部、あの日で終わった。
「……クソが」
九頭は、拳で壁を殴った。
痛い。
でも、心の痛みには及ばない。
無理をさせた。
限界を超えさせた。
勝利を求めすぎた。
――だから壊れた。
九頭は、ずっとそう思っている。
「……もう、二度と……」
九頭は、空を見上げた。
星が、いくつか見えた。
「二度と、本気でトレーナーなんかやらない」
そう誓ったはずだった。
でも——
ルイテンキューの顔が、また浮かんだ。
「……関係ねぇ」
九頭は、歩き出した。
あいつには、才能がない。
どうせ、すぐに諦める。
そうなれば……
なのに、妙にあの顔が頭に残る。
それが、腹立たしかった。
休みの日にまとめて投稿してるから不定期投稿になっててすまない
週1くらいを目安に時間作って5日分くらいを投稿してるけど
読み込んで、修正入れながらの投稿になるからまとまった日に
頑張って2週間分くらい投稿予約ためておきたい…
5月21日21時には投稿できるようにしたい
夜寝る前にやれる時間あるけど原神が忙しい……