黒執事のアッシュに成り代わった彼の話   作:アルトリア・ブラック(Main)

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第10話

 

ヴィンセントを含めたお星様達の血液を集めに向かっている彼らをサポートする事になった。

 

流石に血液が不足してはヴィンセントの維持にも支障がある。

 

「何事も殺菌!!綺麗にしなければ良くなる物もならないだろう!!」

 

エイダの声が聞こえて来る。

 

完全な防護服を着て入る重装備さに笑けて来るが仕方ない。

 

バルドには顔を覚えられている為、アンジェラの姿で再び潜入する事になった。

 

「エイダさん、終わりました?」

 

そうノックして入る

 

「!」

 

エイダがビクつく

 

「初めまして、ここの院長として務めさせて頂いております。アンジェラ・ブランと申します」

 

笑顔で言うとバルドが「あ、あぁ…」とたじろぐ反面、ラウは何か考えているような素振りを見せる。

 

一方、バーグことバルドの医師として名乗ったロナルドがこっちをみて来る

 

「……」

 

エイダからカルテを見せられ、ある程度話も終わったのかその内容も話して来る。

 

「分かりました。また何かあればご相談ください」

 

ではと言ってその部屋から出る。

 

 

 

 

 

「……院長がいるのか?」

 

バルドの言葉にエイダが静かに頷く

 

「…ここを運営する資金を出してくれている方々の一人だ」

 

エイダはスッと背中を向ける。

 

部屋に案内しながらバルドはそれとなーく院長であるアンジェラについて聞く

 

「確か何処かの貴族様の元執事をしてたとか、看護師として長いこと仕事してたとか言ってましたよね〜」

 

ロナルドの言葉に無言を貫くエイダ。

 

「明日は早い。今日は休んで明日に備えてくれ」

 

バタンと扉が閉まる。

 

気配が遠ざかって行くのを感じたラウはいつも通りの笑顔で『あの院長間違いなく黒だよねぇ』と呟く

 

「今日の夜は様子見だ、明日から動き出す」

 

「りょーかい。我は別室で休ませて貰うよ」

 

ラウが手を振って部屋から出る

 

バタンと閉まり、ラウは「さてと」と独り言を呟く

 

「……あの白い執事君に兄弟でもいたのかなぁ」

 

ラウは与えられた部屋に向かう廊下、あの院長を思い出す

 

アンジェラ・ブラン

 

ファントムハイヴ家先代の執事にして、ファントムハイヴ家襲撃事件の際に遠出していた故に生存した存在であるアッシュ・ランダースとあまりにも似ている。

 

性別以外は

 

ギィと部屋の扉を開ける。

 

「…彼とは利害が一致しそうなんだよね」

 

そう呟き、後ろ手で扉を閉める。

 

 

 

 

 

 

アッシュことアンジェラは医学知識はないものの(知識はあるが)アテナ退役軍人療養施設の資金提供の話をエイダがしてくる。

 

「もう少し…!もう少し待って欲しい…!」

 

深々と頭を下げるエイダ

 

エイダから言われた言葉は血液の輸出量についてだ。

 

「分かっています。先日から患者達が数十人退院して輸血量に滞りが出てきたということは」

 

患者がいなければ血液は賄えない。

 

シエルの食料が無くなってしまえば、ここは正直に言って用済みである。

 

「きらきらがなくなりつつありますの、アッ…アンジェラさん、患者を他の地域からも受け入れるという体制はどうですの?」

 

やたら「の」を付けるレイラの言葉を素直に聞く

 

「…むやみやたらに患者を受け入れるのは足が付きますから、あまり賛同し難いですが、それも視野に入れましょうか」

 

「………」

 

レイラが元気にはーい!と手を挙げる反面、エイダ暗い顔をしていた。

 

「明日から実行しますの?」

 

「無茶言わないでください。下手に範囲を広げればヤードにも怪しまれますよ?」

 

「むー、ではどうしますの?すぐに煌めきが欲しいですの」

 

「そうですね…」

 

エイダの方をチラッとみて

 

「それでは、数日間は退院見込みの患者の退院日を先送りしますか」

 

「!それは…!」

 

一歩間違えればスフィアのようになってしまうのは明白だが、それでも、血液は多いに越した事はない。

 

「なんですの?」

 

レイラの圧力にエイダが黙る。

 

「ふふ、打開策がない以上そうするしか方法はないでしょう?それとも、何か他に方法があるのならお聞きしますわ」

 

慣れない女口調でエイダに問いかけると、唇を噛み締めながら「…いえ」と言って部屋から退出する。

 

レイラと二人きりになり、レイラが「あのナイチンゲールもどき、そろそろ切りどきではないですの?」と問いかけてくる。

 

見た目は上品ながらも時折見せる下品さに笑みが溢れる。

 

「そうですね…今のところは保留にしましょう。一応保険はありますから」

 

 

 

 

「………」

 

エイダは自室に戻ると、机をダンっと殴る

 

「…このまま、血液採取を続ければ患者の命が危うい!だが…」

 

彼らの資金提供がなければ患者は救えない。

 

板挟みの状態に叫びたくなる気持ちを堪える。

 

『エイダさん。バーグ氏の身辺について調べてもらえるかしら?』

 

「………」

 

エイダはバーグの素性について調べていると…

 

背後から物音が聞こえ振り返る

 

そこには銃を向けているバーグ氏がいた。

 

「やはり来たか」

 

「貴方はやはり、本物のマッシュ・バーグ氏ではないな」

 

「知っていたのか」

 

「あぁ、ここに何をしに来た」

 

二人の邂逅を窓の外から眺めている者に気づかず…

 

 

 

この展開は分かりきっていたので、別段驚きはしないが、思いの外保険がうまく行きそうでそこは想定外だった。

 

見学を終え、持ち場に戻ろうとすると…

 

「意外に早い」

 

バルドがレイラに襲撃されたのか、外を走っていた。

 

木の上に移り、そこから眺めていると…

 

「レイラのご飯ですの、あらやだ、はしたない。口から摂取してもなんの意味がないって葬儀屋さん言っていたのに」

 

バルドの血を存分に吸っていたレイラが口を拭きながらやって来る。

 

背後から来るのに気づかないあたり、本当に肉人形である。

 

 

 

 

 

「全然ご飯が足りないから様子を見に来てみれば…貯蔵庫にネズミが紛れ込んでいたなんて、もしかして警察かしら?」

 

レイラはバルドを眺めながら呟く

 

「血液採取の事を知っている方といえば、あの嘘つき伯爵の仲間かしら?」

 

ふむふむと考えるレイラ

 

(…クソ…)

 

バルドはなんとか意識を失わないように力を入れる。

 

「はしたないですよ、レイラ」

 

その声にバルドは目だけで対象を見る。

 

そこにいたのは、院長と言われていた女・アンジェラがいた。

 

「ご飯がいっぱいあってがっついてしまったですの」

 

そう言って口元を拭く

 

「デザートは程々にしないと太りますよ」

 

「はーい。気をつけますの」

 

(…何とかして、動かねえと…)

 

レイラはバルドを見て『コレどうしますの?』と踏みつけて来る。

 

「がっ…」

 

血を吐く

 

「足がついてしまった以上、片付けなければなりませんね」

 

その言葉にレイラはため息をつき

 

「我らがナイチンゲールモドギはネズミにたかられて汚れてしまったんですのね、だったらみーんな駆除ですの」

 

ナイフを構えて笑うレイラ

 

「………」

 

微笑みながらレイラを見るアンジェラ

 

「とりあえず、ネズミと一緒にいたもう一匹も駆除に行きますの」

 

「えぇ、行きましょうか」

 

アンジェラと共に歩いて行く

 

 

 

ラウはバルドと別れた後、一人で紅茶を飲んでいた。

 

紅茶を片手に本を読みながら先程持ちかけられた話に甘味しかないことに考えていた。

 

二口目を飲もうとした際、背後からする音に気づき、振り返りざまにメスを投げる。

 

「最初っから妙な気配がする子だと思ってたけど、やっぱりただのナースじゃないか、あの院長は明らかに怪しいからそっちばかりに気を取られてたけど」

 

「いたぁい…」

 

レイラが腕からメスを取り

 

「なんちゃって」

 

悪い笑みを浮かべ、痛がる様子など見せなかった。

 

「こんなの全然へっちゃらですの!!」

 

勢いよく間合いを詰めて来たレイラに驚き、ラウは慌てて防御するが腕を切られてしまう。

 

「あぁ、この味、貴方もレイラのご飯なのね!」

 

ニタァと笑うレイラ

 

「カラカラになるまで搾り取ってあげますの!!」

 

そう言ってナイフを向けて襲って来る

 

バンッ!!という銃声が響き渡り、レイラの心臓に命中する。

 

「あ、貴方…!」

 

レイラの後をつけて入って来たバルドを見て「何で生きてるんですの!?」と驚く

 

「オタクが頼りにしてた院長とやら、早々に切り上げてたぜ」

 

「!!そんなはずはないんですの!!」

 

怒鳴るように言うレイラ

 

「敵地に突入したアンタを見捨てたんじゃねぇのか?そもそも…さっきからおかしいと思ってるが、心臓に当たるなら普通なら死ぬぜ」

 

ラウはパッとレイラを見て生きていることに驚き、伯爵から聞いた動く死体の話に驚き、感動する。

 

「見た目はガキだし、気は進まねぇが…坊ちゃんのために死んでもらうぜ」

 

「っ…!助けて!!助けてアル!!」

 

「「!!」」

 

レイラはその瞬間に窓から抜け出し、走り去る。

 

 

 

 

 

アンジェラことアッシュはレイラが逃走しているのを黙って見ていた。

 

(…レイラを救出するメリットもないから、早々に帰っても良いけどな…)

 

「お待たせ」

 

眼下で戦っている二人を眺めていると、レイラがちょうどアルと交代したのか、好戦的な性格になり、小型のハサミでロナルドに突進する。

 

死神相手に善戦しているレイラを微笑みながら眺める

 

「…おや、もうですか」

 

ロナルドの左側を見てそう呟き立ち上がる。

 

「相変わらず仕事が早い」

 

そう嗤いながらその場から姿を消す。

 

 

 

 

 

「全く余計な手間を取らせないでください」

 

「スピアーズ先輩!?」

 

殺されかかったロナルドを救出したスピアーズはレイラを気絶させる。

 

「っぶねぇ…!助かりました先輩」

 

「害獣相手ならいざ知らず、人間相手に遅れを取るとは…突発的事態に対応出来てこそ回収課ではないのですか?」

 

「いやいや!人間っつても!魔改造済みの動く死体っすよ!?」

 

「……この件については管理課の私から上に報告しておきます。もちろん、貴方の失態についてもね」

 

「げっ!…っていうかスピアーズ先輩、どうしてここに?俺、鳩飛ばしてないっすよね?」

 

「日報の提出が二日間遅れています」

 

「そのために!?」

 

「…それと、上からの知らせがつい先程ありました」

 

そう言ってスピアーズは書類を出し

 

「天使の件は現状様子見ということです」

 

「ハァ!?あの天使、どう見ても害獣判定受けてもおかしくないっすよね?性別変えてまで、ここの血液採取の様子見に来ましたけど!?」

 

スピアーズはため息をつき、メガネをクイッと上げ

 

「上からの指示は以下の通りです。あの天使は魂をむやみやたらに取りません。それに"今現在"は人間の魂を奪ったり、殺したりはしていません」

 

その言葉に不満そうにロナルドは「お上からの指示なら仕方ないっすけど…」と返す。

 

「あの天使が掠め取ったヴィンセント・ファントムファイヴの件はどうなったんすか?」

 

「保留となりました。世界に有益となり得る存在の可能性が高いためという判断です」

 

「普通の貴族っすよね?何で世界に有益判定受けたんですか?」

 

「…天使という、爆弾を抱えているからですよ、害獣より厄介なモノでしかありません。魂を取らない代わりに仕事を大量に増やされる可能性があるとのことです」

 

「…まぁ、それは爆弾っすねー」

 

ため息をつき、頭を掻く

 

「……」

 

スピアーズはレイラを見つめ、落ちていた小型のハサミを取り、しまう

 

「私はこの動く死体を本部に連行し、科捜課に引き渡します」

 

そう言ってスピアーズは背を向ける。

 

 

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