黒執事のアッシュに成り代わった彼の話 作:アルトリア・ブラック(Main)
ジャック・ザ・リッパーの事件はファントムハイヴの手腕により片付いた一方、アンジェリーナ・ダレスの死因は別の物として公表された。
犯人であるという事実を知るのはシエルだけで良いという判断なのだろう。
「アン叔母さま…」
「……」
泣くエリザベスと相反し、アッシュはアンジェリーナの哀れな死に少し同情していた。
(ヴィンセントってホント魔性の男だよなぁ…)
"ただ"挨拶しただけで相手を魅了するとか…
左手人差し指につけた指輪がキラッとなる
「……?」
数回そこを見たが特に何もなく、下ろすと、後方から真っ赤なドレスを持って入ってくるシエルがいた。
「…シエル…」
「死に燃えるリコリスの色だ。アン叔母さま」
そう言って口添えするシエル
アッシュにとってアンジェリーナは遠目から見た存在でしかなく、なおかつ、ヴィンセントから『どっちが良いと思う?』とお菓子を選ぶような感覚で写真見せられた時しかまともに見たことがなかった。
馬車の中でヴィンセントが「将来の嫁探し」というのをまじめにしているのを見て苦笑いが溢れる。
ヴィンセントは確かに人へ愛情を向けることは出来るが、そこに普通の愛情など等を向けてはいけないだろう。
笑いかけるだけで相手の人生を狂わせるなんて相当なものだ
「坊ちゃんはどちらがお好きなのですか?」
「んー?どっちだろうなぁ〜第一印象は明るい印象のこの子かな」
そう言ってレイチェルの写真を見せる。
「あぁ、坊ちゃんの趣味らしい」
フランシス様とは真逆を行きますねと言うと『フラニーは厳格すぎるよ』と笑う
「まぁ、私が求めてるのは将来の足枷にならないような人だったら誰でも良いかな、善人ぶらない家庭的な人とか」
ヴィンセントの番犬の表情にアッシュは苦笑いする。
「ならば、この方がよろしいかと思いますよ」
「そう?」
そう言ってアンジェリーナの写真を渡してくる。
「この写真はどうしますか?」
「捨てといて」
簡潔に言ってくるヴィンセントに「かしこまりました」と言ってその場で破り燃やす。
「……」
葬式に出席できなかったフランシスから「花を添えるように」と言われてしまった手前、仕方なくアンジェリーナ・ダレスと書かれた墓の前に花を添える。
すると、横からシエルとセバスチャンがやってくる。
花を添えたアッシュを見たのか、セバスチャンが怪訝な表情をし、シエルは何も言わずにアンジェリーナの墓の前にくる。
警戒しているセバスチャンと無警戒のシエル
「……フランシス叔母様からは何かあったか」
冷静な声に
「お悔やみ申し上げると、それと、いつでも頼るようにとの事です」
「…そうか」
そう言って坊ちゃんにお辞儀をし、横を通る。
アッシュの仕事は簡単に言えば、かなり暇だった。
ミッドフォード家での執事の仕事は他の使用人でも事足りる分、かなり暇だった。
暗殺者なんてミッドフォード家は大体来ない
シエルが仕留め損ったおこぼれが来るぐらいで、それ以外は本当に暇すぎて天に帰りたくなった(物理)
そんな中、エリザベスがファントムハイヴに行く時だけは本当に暇じゃなかった。
何よりもセバスチャンをいじり倒すのが楽しくて仕方ないし、坊ちゃんの進捗を見れるのは素直に楽しかった。
「本当にランダースさんは先回りして仕事をこなすのが本当にお好きなようですね…そんなにヒマなのですか?」
↑結構イラついてる
「エリザベス様をお守りするのが仕事とはいえ、ただ立っているのも申し訳ないと思いましてね」
↑悪意しかない笑み
「…お前ら、笑顔貼り付けてればバレないとか思ってるのか?」
「もう、アッシュ。セバスチャンに意地悪しちゃダメよ」
「…坊ちゃん」
「失礼致しました。後輩に指導しなければと思いまして」
にこやかな笑顔で言うアッシュにエリザベスが「まぁ」と微笑み、何故かソーマが「先輩らしく後輩を矯正してくれ!」とか言ってセバスチャンにジト目で見られていた。
「そういえばアッシュ殿はシエル様のお父上の代からお仕えしておられるのですね」
「そうだ!ならシエルの父親も同然じゃないか!」
「いえ、私が"坊ちゃん"にお会いしたのはあの事件以降でして、私が旦那様から聞いていたのは子供がいるということだけでして」
「……」
含みのある言い方をするアッシュを睨むシエル。
「…僕もお父様からは知らされてなかったな、コイツの存在は」
「それだけ影が薄かったと言うことでしょう」
↑ここぞとばかりに嫌味を言う
「…言い負けたからって突っかかって来るとはまだお若いですね」
「「……」」
↑笑顔で睨み合う二人
「…息するように歪み合うな」
苦笑いするアグニ
「で、幾つなんだ?お前達って?」
ソーマの質問に無言になる二人
「「忘れました」」
「…こう言う時だけ本当に息が合うな…」
シエルがため息をつき、目の前のケーキを食べ始める。
ファントムハイヴ家にエリザベスが泊まってから数日間、本当に飽きもしない日々だった。
セバスチャンとシエルが仕事でいなくなると大体、使用人たちがドタバタしており、厨房破壊、庭園を枯らしたりなど大暴れだった。
まぁ、そんな光景を見るのは愉快で、その片付けをアグニもしていたから必然的にアッシュもすることになり、壊れた階段を直し終えると…
「アッシュ殿、お疲れ様です」
そう言って現れたアグニの手には緑茶と紅茶があった。
お茶でもしませんか?とアグニからの誘いを受け入れて、使用人専用のところで休んでいると…
「セバスチャン殿はどうしてあそこまで、アッシュ殿を嫌うのでしょうか」
その質問にキョトンとなるが、笑い
「性質的に嫌いなんでしょう。元から合う合わないのはありますし」
天使と悪魔が仲良いなんて普通にあり得ないことなのだ。
人間も一緒で目があった瞬間に「絶対に気が合わない」と思うように、天使と悪魔にもあるのだ。
悪魔達の根幹には天使に対する嫌悪や憎悪はあるし、天使にだって不浄でしかない悪魔を嫌う傾向にある。
人間の魂を積極的に食べるのを好む獣のような悪魔を嫌う天使ならば、人間の魂を運ぶだけの存在でしかない癖に悪魔を一方的に殺す力を持つ存在を嫌悪する悪魔だっているのだ。
「そういうものなのでしょうか」
アグニが紅茶を飲みながら言う。
「まぁ、私は楽しいからいじっているのですがね」
そう言って笑うアッシュに「…そういう所も嫌われているのでは…?」と小声で言ってくる。
「ファントムハイヴ家の執事としては合格しているとは思いますが」
いかんせん天使に対しての苛立ちを隠せないあたりまだまだだが
「アッシュ殿はシエル様のお父上の時代からお仕えしているのですよね?シエル様が御帰還した際にもどられなかったのですか?」
アグニの質問に「旦那様の遺言にはフランシス様の元に行くようにと言われましたから」と言うと「そうなのですか…」と言ってくる。
そうこう話していると、外から敵の気配を感じ取り、飲み終わった皿を綺麗に片付け手袋をし直す。
手袋の上から付けた指輪にアグニが綺麗な指輪ですねと褒めてくる。
「ありがとうございます」
そう言って扉に向けて歩く
数日後…
ゴシャッと侵入者の頭を潰したアッシュは、血で汚れた手袋をその場に捨てる。
「アッシュさん!お怪我はねぇですか?」
メイリンがやってくる。
「ありませんよ、しかし、エリザベス様しかいないというのに襲って来るとは…最近はこうなのですか?」
その質問にメイリンも「最近はほとんどなかったけと、たまにあるんですだ」と言ってくる。
持ち場に戻った方が良いと言うと、メイリンが走って持ち場に戻って行く
アッシュも屋敷に戻ると、見覚えのある死体を見て「おや」と言う。
「…見たことがあると思ったら彼らでしたか」
サーカス団員達の死体を見る。
フィニに殴り殺されたであろうジャンボの死体を見る。
「そうなれば早く部屋に戻らねばなりませんね」
エリザベスの部屋に向けて歩き始める。
目線を感じ上を見ると、グレルが嫌味ったらしくこっちを見ていた。
ちょうどエリザベスの部屋の近くに行くと、ガシャン!と窓から子供の死体が突っ込んで来る。
その死体の横を通り、エリザベスの部屋のドアを開ける。
「アッシュ。なんか凄い音しなかった?」
「きっと夢の中のことでしょう」
そう言って死体が見えない位置に立つと、納得したのか「私夢見ちゃったのかな」と言う。
「さ、エリザベス様。お身体が冷えますよ」
そういうと「うん」と言ってベットに戻って行く
[newpage]
[chapter:天使で執事]
ヴィンセントがまだ伯爵時代の話…
まだシエルのように人をあんまり信用していない時代はかなり大変だった。
仕込みしたり、敵を処理したり、無茶振りするヴィンセントに答えたり、ある程度の教養を教えたり、やることが山のようにありすぎて大変だったが、14歳あたりになってからだいぶ柔軟的な考えになったのか、使用人達を雇うようになった。
「…だからと言って使用人の選定までやるとは思いませんでしたが…」
そう呟くとヴィンセントが「アッシュの眼鏡に叶うなら良いだろう?」と言って来る。
「30人ほど雇えばよろしいかと、結婚して家庭を持つことを考えれば」
「うーん、つまりは別邸の方で仕事すれば良いか」
「仕事は家庭に持ち込まないがモットーですからね」
「せめて家庭では安心したいしね」
そう言って笑うヴィンセント
という感じで本邸では表の良い父親の姿を見せ、裏の顔は女王の番犬としての顔を見せていた。
「…少年少女連続誘拐事件…あんまり良い話題じゃないね」
別邸での仕事にて、女王からの依頼の内容を読んでいたヴィンセントに紅茶を出す。
「犯人は複数犯でしょうね」
「そうだろうね、こうも連続して起こってたら組織的犯罪と見て間違いないだろう」
ヴィンセントはアッシュに新聞を渡す。
「ディーデリヒは今回使えないし…うーん。どうしようか」
「最近、イギリスに出入りしている貿易会社の方々を使ったらいかがですか?」
「あぁ、彼らなら使えるだろうけど、まだ統制が取れてないしねぇ、下手したらこっちが不利になる」
ヴィンセントが悩む姿を見て、アッシュになるべく頼らず、自分の頭脳だけで解決しようとしている姿勢には素直に感心出来た。
書類を机に広げ、悩むヴィンセント
「……あぁ!!ダメだ、どのパターンも上手くいかない」
ダラけるヴィンセントに「はしたないですよ」と言うと、姿勢を直し
「どれも犯人を追い詰めるには足りないなぁ…しょうがない…アッシュ。目星がついてる犯人がいるんだ、その人物達について調べて来てくれないかな?」
ヴィンセントから渡された書類を見て「わかりました」と言って脇に書類の束を持つと、ヴィンセントがガッカリしたような雰囲気を出す。
「どうしました?坊ちゃん」
「…頑張って考えたんだけど、やっぱり、自分の力だけじゃどうにもならなくてさ…アッシュに頼るのは最後の最後にしたかったんだよね」
「何故です?昔は考える前に命令していたではありませんか」
今更?と首を傾げるように言えばヴィンセントが「10代の頃の話じゃないか」と苦々しい顔をしていた。
「大人になったんだ。それぐらい考えないといけないし、何より全部アッシュ任せだったら身にならないだろう?」
「おや、自分の手を汚す決意が出来たわけですね」
そう言うとヴィンセントは悪魔的な微笑みを浮かべ
「いつまでも子供ってワケにはいかないだろう?それに、私はチェスはあんまり好きじゃないんだ。どうせなら、演劇を見てた方が楽しい」
その言葉に微笑みながらため息をつき
「悪魔みたいになりましたねぇ…坊ちゃん」
「天使と悪魔、凄い響き良いよね」
そう言ってドアの方に向かう
「では行って参ります」
そう言って礼を取ると「行ってらっしゃい」と返してくる。
その翌日、アッシュは少年少女連続誘拐事件の首謀者達を突き止め、遠目からその敷地を見てため息をつく
「…これはまた刺激的な…子供をいたぶり殺す趣味なんて悪魔でもしないと言うのに…」
やっぱり人間は不浄だと思いながら、木の上から彼らの、首謀者達の様子を眺めていた
「……これは坊ちゃんのトラウマを刺激してしまうでしょうかね…」
アッシュがヴィンセントの元に来た時もこんな感じだった。
本来なら悪魔が出てきてもおかしくない状況だったのだが、暇を持て余していたアッシュが近くにいたのか、あるいは頭の中でヴィンセントかシエルに会いてえとか思ってたから自動召喚されたのだろうか
「…まぁ、天使も悪魔も対して変わりませんけどね」
アメリカ人かイギリス人かの違いでしかない。
アッシュは確かに天使だが、悪魔のような事をしても正直言って罪悪感も嫌悪感もない。
まぁ、根幹にある『不浄な者達を壊したい』という思いの方が強いが…
「…あぁ、なるほどそう言う事でしたか」
ヴィンセントの元にアッシュが呼ばれた理由がわかり嗤う。
「運命なんて本当にあるんですね」
[newpage]
ヴィンセントはアッシュの報告を聞き、頭を抑える。
「私が殲滅して参りましょうか?」
「…いや、今回は女王の番犬としての任務だ。伯爵である私が、後ろで震えているワケにも行かないだろう」
そう言って立ち上がる。
「他の使用人達を呼んで突入しよう、この怪物達の元に」
「イエス、マイロード」
ー数時間後…ー
犯人達のアジトにつき、大方片付いたアッシュは返り血で汚れた服を見てため息を見る
「…この服、そんな安いものではないですがね…」
早く洗いたいと思いながら部屋の奥に進むと、そこは地獄の沙汰と化していた。
他の使用人達も慣れてはいるとはいえ、目の前にならぶホルマリン漬けにされた子供達の遺体は相当堪えるのか視線を逸らしていた。
少し奥に行けば、そこは何かミサでも行われていたような会場だった。
「旦那様。ご無事ですか?」
そう問いかけると、杖で殴り殺したのか突き刺したのか分からないが、相手の脳天から杖を引き抜く
「…問題ないよ」
少し暗い表情をするヴィンセント
「各地方から攫って来た少年少女を殺し合わせて、最後の最後まで生き残った人間は悪魔召喚の儀式に、ハァゴールがそれではあまりにも救いがありませんね」
「………」
黙るヴィンセントと裸で狼狽える貴族
「さて、首謀者は見つけましたし、終わりにしましょうか旦那様」
ヴィンセントは深呼吸をし「そうだね」と返す
「ま、まってくれ!!今回の儀式に必要なのは全部揃えた…!なのに、何故、悪魔達が来てしまったんだぁ!!」
ヴィンセントとアッシュを指差しながら後退して来る。
アッシュは周りにある光景を見て「え?これ天使召喚の儀式だったの?と」と言いそうになったのは悪くない。
「幼い子供達の魂を欲しがる天使なんていませんよ、そもそも、天使はだいぶ気まぐれですよ、人間からの救済の声だって聞こうとしていない。分かります?その意味が」
その男の目の前に立つと
「大した理由じゃないから雑音と同じもの、鳥が泣く程度の音にしか聞こえない。だから興味なんてない」
「……」
「まぁ、私はそう言うのに飽き飽きしていたので、坊ちゃんの元に来ましたが」
「く、クソ…!」
男が拳銃を向けて発砲してくる。
しかし、その弾はヴィンセントに当たる事なく、アッシュが掴む。
「この世に天国も地獄もありはしません。天使であろうと悪魔であろうと死ぬ時に待っているのは"無"だけです」
白い羽が男の周囲を囲う、拳銃を鷲掴みにしたアッシュ
拳銃がみるみる内に溶け落ちる。
羽で作ったナイフで男を殺す。
「終わりましたよ、坊ちゃん」
笑みを浮かべて言うとボーとしていたのか、ヴィンセントが「…え?あ」と答える
「どうされました?昔でも思い出しましたか?」
「………」
そう言うとヴィンセントは辺りを見渡し、暗い顔をする。
「燃やそう」
「燃やす?よろしいのですか?また女王陛下から殺されかけますよ?」
「今回は問題ないよ、生き残った子供もいない」
ヴィンセントが背を向ける。
「………」
少し考えた後、後ろに違和感を感じると…
ドーン!!と言う音が辺りに響き渡る。
「!旦那様!!」
外にいたタナカと使用人達が驚愕の声を出す。
「平気だよ、怪我してないさ」
そう言って屋敷の裏手から現れたヴィンセントとアッシュにタナカが駆け寄り、至急撤退するようにと指示を出し終わった後…
「…アッシュ、今助ける気なかっただろう…」
久しぶりに昔の坊ちゃんの顔をしているヴィンセントに微笑み
「仕事中に過去のことを思い出して動揺されているからです。私はただの執事ですから」
挑発するように言うとヴィンセントが深いため息をつき、頭を掻く
「…だからって済んでのところまで守らない執事もどうかと思うけど」
「消して差し上げましょうか?その過去」
「!」
ヴィンセントがハッとなるが、アッシュの手を掴み
「いらないよ、その必要は」
「つらい記憶は必要ないでしょう?」
「今みたいに危機判断が遅れることだってあるかもしれない。だけど、決して忘れないよ過去のことは」
そう言ってアッシュの手を離し、馬車の方に向かって歩いて行く
「過去を後悔しても捨てない。それが俺の選択だ、お母様の事も何もかも、背負って生きていくと決めたんだからね」
「…そうですか、ならばこれからもお気をつけて」
ニコリと笑うアッシュに「気をつけるけど、今ここで私が死んだらまたつまらなくなるのはお前だからね」と言って来る。
「善処します」
フランシスからリジーに剣の稽古を頼まれた時、全然本気を出さないつもりだったが、予想以上に強く、剣の振り方に華麗さもあり、少しだけ本気を出してちょうどよかった。
「そこまで!」
フランシスの声にリジーの剣が止まる。
「お疲れ様です。エリザベス様」
礼を取るとポーラがエリザベスにタオルを持って行く
「そんな事より!アッシュごめんなさい!」
そう言って破けた腕の部分をみて来る
「怪我は…!?」
「しておりませんよ」
そうにこやかに言うと「本当?」と不安そうにみて来る。
「ご覧になりますか?」
そう言って腕まくりすると怪我一つしていないのを見てホッと胸を撫で下ろしていた。
「お嬢様、着替えましょう」
そう言ってポーラと共に居なくなったのを見てフランシスがやって来る。
「本当に怪我していなかったのか?」
その質問に「えぇ」と返事する。
「フランシス様、紅茶を淹れてまいります」
そう言うと「よろしく頼む」と返って来る。
廊下を歩きながらため息をつく
「……本当にミッドフォード家は努力の天才ですね…」
少々油断していたとはいえ、人外に怪我を負わせるとか異常にも程がある。
エドワードは努力の天才だとするなら、エリザベスは母方譲りの才能と言えるだろう。
服を直し、紅茶を持って部屋に行く
「失礼致します」
部屋に行くとエリザベスとエドワードがおり、仲良さげに話していた。
「エリザベス様、エドワード様、おやつをお持ちしました」
そう言って出すとエリザベスが「ありがとー!」と言って来る。
「やーん、アッシュのデザート美味しそう〜」
「ありがとうございます」
エリザベスがどれにしようかと選んでいる中、エドワードが鍛錬の話をして来る。
「エリザベス様の剣の振り方は美しいですね、割と容赦のないものを感じますね、エドワード様は剣の動きに焦りが見られます」
そう言うとエリザベスが「そ、そんな私容赦ないかしら?」とワタワタしながら言って来る。
「焦りがあると、剣の威力も落ちるのか?」
「落ちますよ、焦りが生まれれば剣先も鈍ります。エリザベス様は覚悟を決め、剣を振るう意味も理解しておられますし」
「シエルのために頑張ってるの!女王の番犬の妻として!」
笑顔で言うエリザベスにエドワードが「シエルのための剣なのか…!」と何故か悔しそうな顔をしていた。
「"シエル様のために"頑張っておられるのですね」
「うん!」
笑顔で言うエリザベスに嗤う