黒執事のアッシュに成り代わった彼の話   作:アルトリア・ブラック(Main)

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第3話

 

シエルがファントムファイヴ家に戻り、セバスチャンは執事として学ぶ中、シエルの許嫁となっているエリザベスの母であるフランシス・ミッドフォードの執事であるアッシュ・ランダースは苦手な存在だった。

 

苦手というより、天敵に近い

 

ミッドフォード家がやってきた時に『執事同士握手したら?』とエリザベスに言われ、嫌々ながらも握手した際に手袋越しに思いっきり焼かれた記憶がある。

 

(…第一、天使が気まぐれに執事をしているなど…)

 

セバスチャンは手袋の下で焼け爛れた皮膚を見る。

 

「………」

 

セバスチャンは紅茶などを置いた台車を持って主人の元に向かう。

 

主人であるシエルが言うファントムファイヴ家襲撃事件の際、あの天使は遠出していたらしく、難を逃れたらしい。

 

だが、天使ならば、早急な対応を出来たはずだ。

 

それをあえてしなかったと言うことは襲撃犯と関わりがあるか…

 

(…いや、あの感じだとないな…)

 

当然、シエルからもアッシュに話を聞いていたが、嘘をついている表情はしておらず、本当のことを言っているようだった。

 

しかし…

 

「…どうにも引っかかりますね」

 

襲撃犯に加担するような真似はしていないが、襲撃を知っていて黙っていたような感じだろう。

 

「悪趣味ですね…」

 

悪魔ほど分かりやすいものはないが、天使ほど残酷な生き物はいないだろう。

 

「坊ちゃん。紅茶をお持ちしました」

 

朝7時になり、シエルを起こしに来る。

 

 

 

 

 

 

 

「だから僕はそんなのは着ない!」

 

「いいじゃないシエル。一回だけ!ねっ?」

 

「ねじゃない!」

 

シエルとエリザベスが仲良さげに話しているのを見つめていた。

 

(…こう見ると、ホント…シエルと違うよな…)

 

真シエルと坊ちゃんの区別は本当に分かりやすい。

 

まぁ、微妙な差しかないから普通は気づかないだろうが、マダムレッド辺りは気づいていそうだ。

 

「アッシュ〜!シエルにはどっちの花が似合うと思う〜?」

 

天真爛漫なエリザベスの表情に微笑み

 

「そうですねぇ、伯爵にはこの青紫の花がお似合いですよ」

 

そう言って花の髪飾りを出すとエリザベスがキラキラした顔で

 

「わぁ!ありがとうアッシュ!」

 

そう言って青紫の髪飾りをアッシュの手から受け取る。

 

え?どうやって出したか?頭の中で考えたものを適当に羽を媒介に出しただけ。

 

まぁ、深く考えない

 

「アッシュって本当になんでも出来るのね!」

 

キラキラした目に『滅相もございません』と返す

 

エリザベスの後ろでシエルが『まぁ、人外だからな』みたいな呆れ方をしている。

 

ちなみに、セバスチャンの正体を知っているというのはシエルが帰ってきた三日後に伝えた。

 

「エリザベス様。馬車の用意をしてまいります」

 

「もう?」

 

「はい」

 

「分かったわ、待ってる間シエルとお話してる!」

 

そう言ってシエルの方をキラキラした瞳で見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファントムファイヴ家からミッドフォード家に来てもあまり流れは変わらない。

 

というか、ミッドフォード家の方が暇なことが多い

 

(まぁ、敵が日常茶飯事で来るのが当たり前の家と比べてもな…)

 

「エドワード様、少しお強くなりましたね」

 

エドワードは汗を拭きながら立ち上がる。

 

「…一本もとれていないのに強くなれたなんて嫌味か?」

 

汗一つかいていないアッシュに嫌そうな顔をする。

 

「どうぞ」

 

そう言ってタオルを渡す。

 

素直に受け取り、汗を拭っていた。

 

「…お前は、ヴィンセント叔父様のところにいた時もこれぐらい強かったのか?」

 

「さぁ、どうなんでしょう」

 

「……話をはぐらかすな、こっちを見ろ」

 

「!」

 

目の前を通り過ぎた野良犬目掛けて体が動く

 

「おや、今日は黒犬がきたのですか、相変わらず毛並みが美しい」

 

「野良犬を撫でるな!話を聞け!」

 

アッシュになってから、犬が強烈なぐらい好きになり、野良犬を見ては撫でくりまわすことが増えた。

 

無論、野良犬なので噛まれるのだが、甘噛み程度だ(血が吹き出してても)

 

(…前世の頃も犬を飼ってたけど、相変わらず犬って可愛いなぁ…)

 

「!エドワード様。犬を飼ってよろしいですか!」

 

「この家は動物禁止だ!」

 

完全にツッコミに走るエドワードに笑う

[newpage]

 

「…はぁ、メイドも使用人もこれぐらい居れば暇にもなりますね…」

 

どこで誰が聞いているのか分からないので、常に敬語です。

 

大抵のことは使用人達に任せて、自分は彼らが出来ないところをやるのが流れになっている。

 

そして、何より、剣の鍛錬をエドワードに教えるようにと言われることが多い。

 

「エドワード様、紅茶をお持ちしました」

 

そう言って台車を持って部屋に入る

 

「あぁ、そこに置いておいてくれ」

 

「かしこまりました」

 

「あれ…寝る前にここに置いた服…」

 

エドワードが枕の横を触る

 

「あぁ、そちらなら…」

 

棚から出そうとすると、窓の外から殺気を感じ取る。

 

ミッドフォード家の人間じゃない誰かの気配。

 

「!」

 

ハンガーを掴み、勢い任せにエドワードの方にぶん投げる。

 

「はっ!?」

 

エドワードが驚くが、そのハンガーに命中した弾丸が逸れ、エドワードの横に着弾する。

 

「なっ、はっ?!なんだ今の…!」

 

動揺するエドワードをよそに窓の前に行く

 

(…逃げて行く男達三人…ライフルを持ってるな)

 

「エドワード様、失礼致しました。朝食の時間に遅れます。なので失礼します」

 

「なっ、ななな!!」

 

エドワードを瞬く間に着替えさせ、髪をとかし、いつもの装いにすると

 

「エドワード様がまいりました」

 

勢いよく、かつ酔わない勢いで広間に来ると、エドワードを椅子に座らせる

 

「……??」

 

放心状態のエドワードをよそにアッシュの勢いに何か察したのか、フランシスが見て来る。

 

「アッシュ、事情は後で話しなさい。行って来なさい」

 

流石、ファントムファイヴ家から嫁いできただけはある。

 

冷静な対応に笑顔で

 

「では行って参ります」

 

執事の礼を取り、その場から退出する。

 

「さて、久しぶりのゴミ掃除と行きましょうか」

 

白い手袋をし、玄関から外に出る

 

「さてと…」

 

庭師が視線を離した瞬間…

 

「あれ?さっきここにアッシュさんいなかったか?」

 

「俺は見てねぇぞ?」

 

 

(…うーん。やっぱり、ファントムファイヴに恨みがある人間か…)

 

アッシュは三人中二人を殺し、一人は生け捕りにした。

 

人間の視力で放つライフルなんて大したことなく、全弾避け、二人の男の脳天に銃弾より鋭利な羽で作ったナイフを突き刺す。

 

一人は足の骨を折って捕らえている。

 

「…フランシス様に報告しますか…」

 

埃を払っていると…

 

「あ、いけないいけない」

 

そう言って指輪に着いた血痕を綺麗に拭き取る。

 

男を荷物のように担ぎ、ミッドフォード家に向かう

 

「失礼します。フランシス様」

 

一応公爵にも声をかけたが、正直言って直属の主人であるフランシスを見る。

 

「今日の朝7:30、エドワード様を狙い発砲したと思われます」

 

男を片手で抑えながら言うと公爵は憤慨しているものの、フランシスは冷静そのものだった。

 

「ご苦労様です。アッシュ、狙った理由は分かりますか?」

 

「残り二人を倒した際に口走った言葉は"ファントムファイヴと深い関わりを持つものを殺してやりたかった"と言っていました」

 

「そうか…」

 

シエルが殺し損ねた可能性もなくはないが、おそらく身なりや殺した男の頭の中を覗いてみたのだが、どうやらアズーロ・ヴェネル?とかいう奴の配下の配下らしい。

 

要は末端の末端だろう。

 

「シエルが関係しているか…」

 

悩む公爵をよそにフランシスは

 

「アッシュ、シエルにこの手紙を持って行ってくれませんか?」

 

そう言ってフランシスは一枚の手紙を手渡して来る。

 

「これは?」

 

なんとなくわかっているが、聞くと

 

「お前は分かっているでしょう。わざわざ聴きますか」

 

その言葉に「失礼致しました」と頭を軽く下げる。

 

「では至急届けて参ります」

 

アッシュが立ち上がった流れで男もズリッと上にあがり、痛そうに悲鳴をあげるが、声は届かなかった

 

「…後始末は頼みましたからね」

 

「かしこまりました」

 

そう言って男を引きずって外に出る。

 

バタンと扉を閉め、ある程度離れると…

 

「…全く、貴方が暴れるから汚れたじゃありませんか」

 

指輪から魂を出し、口の中に入れる(食べてない)

 

「後で代わりを見つけないと葬儀屋に殺されますねぇ」

 

ヴィンセント愛が強すぎるあの葬儀屋を思い出し、少しため息をつく

 

「まぁ、私のものなんですけどね…」

 

叫ぶことが出来なくなった男を引きずりながら廊下の奥に向かって行く

 

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