黒執事のアッシュに成り代わった彼の話 作:アルトリア・ブラック(Main)
[chapter:天使で執事]
フランシスからの命でファントムファイヴ家に向かうことになったのだが…
「…エリザベス様。遊びに行く訳ではないのですが…」
馬車の中にて、エリザベスが嬉しそうな顔でいた。
「お仕事の邪魔はしないわ、アッシュの仕事が終わったらで良いの!」
エリザベスの笑顔にため息をつきたくなるが、ギリ堪える。
フランシスは今行くのはやめなさいと言っていたのだが、エリザベスはどうしてもと言い聞かなかった。
『くれぐれも、エリザベスに怪我をさせないように!』と念を押されてしまった手前、守らねばならない。
(…契約上、どうしても範囲外になるんだけど…まぁ、ギリだから良いか…)
ヴィンセントとの契約内容にエリザベスは入っていない。
守る範囲内がフランシスと坊ちゃんしかいないのだから無理もない。
(…はぁ、仕方ないとしても、今考えれば割と乗せられてたな…)
綺麗にした指輪を見ていると…
「アッシュの指輪ってすごく綺麗よね!」
指輪を見て言うエリザベス
「ありがとうございます。主人から貰いましたので」
「…!そうなんだ、ごめんなさい。不躾に聞いちゃって」
エリザベスが申し訳なさそうに言って来る。
「お気になさらないでください」
指輪は確かにヴィンセントから貰った。
『ほら、似合うじゃないか』
ある日の仕事の最中に、女王から睨まれた貴族の家から拝借した指輪だが
『……坊ちゃん。大人になってから性格悪くなりましたね』
『失礼だなぁ、性格がマシになったと言って欲しいよ』
子供の頃のヴィンセントは本当に坊ちゃんそっくりだった。
あの余裕のなさから、大人になろうと背伸びしている感じも
大人になってやっとあの裏表の激しい感じになった。
女王の番犬らしい残忍なところも
馬車が止まり、エリザベスより先に降りる。
セバスチャンが出迎えており、エリザベスと共に執務室近くにまで行く
「終わったら教えてね!」
そう言って隣の部屋に入るエリザベス
(…さてさて、分かってはいても、こう実際に見ると緊張するというか…アニメの俺、橋に串刺しにされてたからなぁ…)
まぁ、串刺しにされるつもりなんて毛頭ないのだが
坊ちゃんに手紙を渡すと、真剣に読んでいた。
「…なるほど、事情はある程度理解した。女王陛下からの依頼もあるから、この件も同時にやろう、いいな?」
セバスチャンの方を見て言う坊ちゃん。
「かしこまりました。坊ちゃん」
シエルとセバスチャンが出かける事になり、エリザベスはシエルが帰って来るまで屋敷にいると言った為、アッシュも残る事になった。
「行ってくる」
馬車に乗り込む前のシエルの言葉にエリザベスが『行ってらっしゃーい!』と元気に手を振っていた。
「アッシュさん。留守をお願いします。あぁ、坊ちゃんの部屋は掃除をしなくても大丈夫ですからね、"汚れ仕事はフィニ達に任せてください"」
(遠回しに屋敷を歩くなって言ってるなぁ〜)
「御心配無用ですよ、私はあくまでも、ミッドフォード家の執事ですので」
火花が飛び交う
坊ちゃんは『…お前ら相変わらず仲悪いな…』と呟きながら馬車に乗る。
「………」
久しぶりのファントムファイヴ家
あの頃と違うのは、使用人の少なさだが、その使用人達がことごとく失敗しまくり使用人達なのだ。
「すまねぇですだ!今拭きます〜!」
「わぁぁああ、庭のお花からしちゃいました〜!」
厨房は爆発するわ、庭園の花は全部枯れるわ、洗濯室は泡だらけになるわ
まぁ、大惨事である。
「…またですか」
洗濯室を片付けた後、早々に庭の方に行く
「すみません〜!アッシュさん、お花からしちゃいました。どうしたら良いですか〜セバスチャンさんに怒られちゃいます」
(…そんな泣きつかれても)
まぁ、エリザベスが滞在している間はフォローしようと決めていたので、指輪をしまい、手袋を付け直す。
枯れた庭を勢いよく片付け、フィニに見えない勢いで花を再生させる。
「わぁ!すごいです!セバスチャンさんみたいですね!」
「次行きますよ」
「ラジャー!」
テキパキと指示を出し、昼食が作られていない厨房に入ると、ある食材だけで作り始めると…
「すげぇ…」
バルドロイが感心してる声が聞こえる。
(…あ、こんな下にワインがあった)
味付けに良いかなと思っていると…
ガァン!!というテーブルが破壊される音が聴こえてくる。
「………」
なんとなくわかってはいるが、そっちを見ると、バルドロイが何故かチェンソーでテーブルをぶち抜いていた。
(?何故?)
何故料理にチェンソーが出てくるのやら
「バルドロイさん」
「は」
ワインをテーブルに置きバルドの方に行く
「何故チェンソーが厨房にあるのかはこの際聞かないとして、貴方は料理を運んでください」
「はい」
「くれぐれも、料理に触らないように」
「わ、分かったよ」
「くれぐれも!」
「な、なんで二回言ったんだよ…」
小さい声で「マジでセバスチャンみてぇじゃねぇか」と言ってくる。
[newpage]
一連の流れも終わり、使用人達も寝静まった後…
(…実際、見てみると本当に賑やかだなぁ)
先代と違うのは、本当に彼ら使用人も家族のように扱っているんだろう。
灯りを持って一応念のために見回りをしていると…
「おや、タナカさん」
いつも通りの大きさに戻ったタナカが緑茶を淹れていた。
タナカもアッシュも緑茶が好きなので、よく日本に行っては(走って)取り寄せて飲んでいた。
「あの頃と違い、賑やかになりましたでしょう、アッシュ殿」
そう言って緑茶を進めてくる。
「ありがとうございます。本当にあの頃と打って変わって賑やかな屋敷になりましたね」
(まぁ、家事全般の能力はからっきしだが、戦闘面にフル活用しているから良しとしよう)
このファントムファイヴ家において、戦闘が出来ないというのは致命的だ。
先代・ヴィンセントの頃も戦闘が出来る人間は二、三いた。
まぁ、ほとんどアッシュ自身がなんとかしていたから大丈夫だったのだが
二人で緑茶を飲みながら話す。
「坊ちゃんは本当にあの頃の旦那様と瓜二つですね、あの余裕のなさが」
「ふふ、そうですな」
ヴィンセントの子供の頃を知っている二人は懐かしい話をしていた。
そして、セバスチャンの正体についてタナカは知っているような口ぶりだった。
それでも、アッシュという前例があることから、あまり聞こうとしていないのだろう。
二人で話していると…
カランカランと呼び出し鈴の音が鳴る。
「おや、こんな時間に珍しい。お茶ありがとうございます」
そう言って立ち上がり、エリザベスの寝室に向かう。
シエルとセバスチャンが戻ってきた後、エリザベスはいつものように、セバスチャンにデザートの話をしていた。
賑やかな使用人達を見てため息をつく坊ちゃん。
「あまりため息をつくと幸せが逃げますよ、坊ちゃん」
そう声をかけると坊ちゃんが『放っておけ』と言ってくる。
「まぁ、傍らに悪魔を従えている分ため息をつきたくなる気持ちも分かりますが」
「お前…」
人がいる前で悪魔どうのこうの言って欲しくないのか、怪訝な目で見られる。
「そう怒らないでください。心配しなくても言いませんよ、坊ちゃん」
「坊ちゃんって言うな、お前の主人じゃないんだぞ」
「ならばーーーー様とお呼びしましょうか?」
「!貴様」
キレてくる坊ちゃんに嗤う。
坊ちゃんの本名、あの時に捨てた本当の名前
坊ちゃんはエリザベスに聞かれていないか、見ていた。
「大丈夫ですよ、エリザベス様はそこまで聴覚の良い方ではございませんから」
「………」
「アッシュ〜!帰りましょう〜!」
「かしこまりました」
そう言ってエリザベスの方に歩いて行く
「では、お荷物をお持ちします」
そう言って、先に馬車に向かって行く
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[chapter:ファントムファイヴ家の為に]
黒執事という物語上、ファントムファイヴ家に属するなら、どちらかの陣営に入らないといけないのだが、基本的にアッシュはどっちでもよかった。
コツコツとスフィア・ミュージックホール内を歩く
ブラバットに出迎えられ、お星様達がいる部屋の前まで行く
「まぁ、私はあなた方なんてどうでもいいんですが、面白いから執事をして差し上げましょう」
「「「「………」」」」
五人中三人は話せるだろうが、アッシュの言葉に無言で返してくる。
その星の部屋前を通り過ぎ、階段を登った先にある部屋の前に立つ。
白い扉の上には青い星が一つ飾ってあった。
ガチャリと部屋に入り、中央のベットに行く
そこにはヴィンセントの死体があった。
「あの死神は貴方のことを生き返らせたいと思ってるようですよ、せっかく休めたのに残念ですね」
そう言って指輪をヴィンセントの指にはめる。
「……ん…」
ヴィンセントが目を開けるが、白い羽で周囲を覆う
「まだ、起きてはいけませんよ、坊ちゃん」
そう言って自分もベットに座る。
「まだまだ、物語は進んでませんからねぇ」
ちゃんと、佳境に入るまで待たせなければ
(…物語は佳境に入るまでが長いのだから)
それから何もない時間が過ぎ、豪華客船・カンパニア号に搭乗する日になった。
「…まぁ、私は関与しませんけどね」
氷山に激突してからアッシュは高台から逃げ惑う人々を見ていた。
フランシスやエドワード、エリザベスは平気だろう。
無論、危険に陥れば契約上助けに行かなければならないのだが
一人、黙って見つめていると、下をグレルとロナルドが走って行くのが見えた。
「………」
グレルが明らかに睨んできて、ロナルドが「え?!」みたいに首を傾げていた。
「おや、怖い。ただ眺めているだけだというのに」
グレルとロナルドは船の中を走っていた際に高台から見物していた天使の存在を確認する。
「ちょっ、先輩っ!あれって…!」
ロナルドが動揺する中、グレルは舌打ちしながらため息をつき
「…あんなのはほっといていいわ、高みの見物を決め込む悪趣味な堕天使だから」
「え?天使っすよね?」
天使と堕天使じゃ大幅に意味が違うっすよと言うロナルドに「細かいことは気にしない!」と怒鳴る。
現世に関わったら厄介な存在がいるだけで、始末書確定なのだ。
「いい加減、上もアレに対する対抗策練ってくれないかしら、本当に嫌になるんだけど」
「ほんとっすよね、八つ当たりこっちにくるし」
船内にいる肉人形達を倒し続けながら話していた。
お上はあの天使、アッシュ・ランダースに対する対応をこまねいている。
悪魔のように魂を掠め取る真似はしないものの、邪魔はしてくる。
結果的に死神にしてみれば大迷惑なのだが、上は無視しなさいとしか言わない。
「早く回収してとっとと終わらせるわヨ!!」
「了解っす!!」
足場を崩し、最下層に向かって行く