黒執事のアッシュに成り代わった彼の話   作:アルトリア・ブラック(Main)

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第5話

暇な日々が続き、アッシュは流石に退屈になって来た時、寄宿学校で消えたエリック・アーデン?だったか、その人物の捜索に乗り出したらしい。

 

まぁ、別にエドワードの執事として学園内に入る必要なんてなかったから、普通にミッドフォード家にいた為、学園に行けたのはクリケット大会の時だった。

 

「なかなかに生きた人間のようになりましたね…」

 

アッシュは一人、本物のシエルがいる地点にやってきていた。

 

葬儀屋とセバスチャンが追いかけっこしている間、シエルを連れてある地点まで連れてきた。

 

シエルを葬儀屋が迎えにくる地点にまで案内し、部屋に入れると鍵を閉める。

 

一応、完璧に近づいてきてはいるが、この学園の副校長に比べれば、まだ弱い

 

「…死体に仕えるのはそれはそれで嫌ですが、まぁ、良いとしましょう」

 

今後の楽しみのために

 

「…早く戻りますか」

 

葬儀屋とアッシュが協力者だというのは公にはなっていないが、セバスチャンは薄々勘づきそうなところがある。

 

早足で戻ってくると

 

「アッシュ、どこに行ってたのですか」

 

フランシスが冷静に息子を観察しながら言ってくる。

 

「失礼致しました。少し仕事をしておりました」

 

「…そうですか、犯罪行為をしていない限り見逃しましょう」

 

「御冗談をフランシス様。私は犯罪行為は最も嫌いですよ」

 

フランシスの後ろに控え、クリケット大会が終わるのを黙って見ていた。

 

「…しかし、ファントムファイヴ卿も、先代と対して変わりませんね、まぁ、あの頃より少しキツめの対策をしてますね」

 

「………」

 

フランシスがプイッと顔をそらす。

 

ヴィンセントが学生時代を思い出す。

 

料理に下剤を忍ばせるなんでゲスいことはしていないが、なかなかエゲツない手法をヴィンセントから命令され、実行に移したことがある。

 

「まぁ、私もかなり骨を折りましたからねぇ…あの頃の旦那様は笑い転げてましたが」

 

アッシュ・ランダースとは別の形態であるアンジェラ・ブランに変わって、いろいろ根回しした過去がある。

 

(…懐かしいなぁ、マジで、恥ずかしかったわ…)

 

アンジェラ・ブランになった際のヴィンセントの反応がまさに、坊ちゃんとそっくりだった。

 

『天使ってなんでもアリだねぇ』

 

笑い転げるヴィンセントを思い出し、遠い目をする。

 

「わぁぁあ!!青寮が勝ったぞ〜!!」

 

歓声にアッシュは『まぁだろうな』と思っていると…

 

「アッシュー!!シエルが勝ったわ〜!」

 

笑顔で手を振ってくるエリザベスに手を振り返す

 

 

 

 

 

消えた校長の報告をシエルにしていたセバスチャンは、天使・アッシュについての報告をする。

 

「今回の件、あのアッシュが絡んでいる可能性が高い?」

 

「はい。関わっているという証拠はありませんが、状況証拠ならあります」

 

「言ってみろ」

 

ベットに座り直し、話し始める。

 

「葬儀屋とアッシュ・ランダースは先代ファントムファイヴ家当主である、ヴィンセント・ファントムファイヴ卿を通しての関係があったと思われます。ミッドフォード家へ行った理由も明らかになっていませんし…」

 

「…まぁ、可能性があるとしても証拠が無いしな…何より、葬儀屋と関係があったとしても、今回の件とは関係はなさそうだし…」

 

デリック・アーデンとアッシュ・ランダースに関係なんて微塵もなかった。

 

結果的に今回の件には関与していないのだろう。

 

しかし…

 

「ビザードルについての関係性は否めません。何しろ、天使は人を蘇生させることはできますから」

 

「なんだと…?」

 

忌々しげにセバスチャンはアッシュを思い出す。

 

「天使は人間を蘇生する力を持っています。ですが、ビザードルにつきましてはあの天使の仕業にしては荒々しいと思うのです」

 

葬儀屋とアッシュ・ランダースが何かしら関係があるとしても、女王の御前に突き出すにしては証拠が少ない。

 

それに…

 

「天使というのは悪魔よりずる賢い生き物です。それに、人間をいかに理解している上で相手の望むものを与えるでしょう」

 

無条件に、人間世界をかき回すだけかき回して放置したりもするだろう。

 

その点においては悪魔よりタチが悪い。

 

悪魔は自分達の行いを悪だと思っているが、天使たちは違う。

 

自分の行いを正しいことだと信じて疑わない。

 

結果的に、大惨事を引き起こしても、それが人間自身が招いた罰だとするだろう。

 

 

エリザベスと共に何度目かのスフィア・ミュージックホールに来たアッシュ

 

エリザベスは日に日に悲しげな表情になるが、アッシュにしてみればひどくどうでもよかった。

 

(うーん。冷たいなぁ)

 

ひとごとのように緑茶を啜りながら賑わう人間たちを見ていた。

 

「!」

 

人混みの中にエドワードがおり、どう見てもエリザベスを探しているようだった。

 

パチンと指を鳴らすと、目の前をエドワードが通り過ぎる。

 

(便利な能力…)

 

悪魔には無効だろうが、普通の人間なら姿を見えなくすることは可能である。

 

他の人間には見えているが、エドワード本人には見えていないだろう。

 

「エリザベス様はひどく混乱していますね」

 

隣に来たのはブラバットで、まぁ胡散臭い笑顔で見てくるがそこは無視する。

 

「それもそうでしょう。自分の婚約者が自分自身が心底愛して堪らない、シエル・ファントムファイヴだと思っていたのですから、偽物に恋をしてしまった自分と、偽物を責める自分の醜さに打ちひしがれているんでしょう。大方」

 

偽物に罪はない。

 

だけど、自分の中で偽物に対して『なんでシエルじゃなかったの?なんで貴方だけ帰ってきたの?』と思ってしまう自分がいたことに対する醜い感情に対する嫌悪。

 

いろんな感情が混ざり合っているのだろう。

 

「全ては青き星のために、シリウス様が幸せになれる未来のためならば、仕方ないでしょう」

 

そう言うブラバットに苦笑いする。

 

 

 

 

 

 

「エリザベスが消えた!」

 

エドワードは従弟であるシエルの元に来て事情を説明する。

 

「「スフィア・ミュージック」」

 

二人の声が揃い、エドワードはハッとなる。

 

シエルが知っていると言うことは、女王の番犬としての仕事関連の可能性があるのだろう。

 

「女王陛下からの御命令で、スフィア・ミュージックホールについて調べて欲しいという依頼が来た」

 

スフィア・ミュージックホールについての黒い噂はいくつかあるが、女王陛下自身は一気に勢力を拡大しつつあるミュージックホールに対する懸念だろう。

 

「エリザベスが消えた日のことを教えてくれないか?」

 

「!あぁ…失踪したと言ってもミュージックホールに行けば会えるんだ。でも『私の求めるキラキラはここにあるの』と言って動かないんだ」

 

「キラキラ…?」

 

首を傾げるシエルをよそにセバスチャンは

 

「そのミュージックホールにエリザベス様が行かれたとお話しされていましたが、その時にアッシュ・ランダースさんは共に行かれたのですか?」

 

「…あぁ、エリザベスと共に向かった。アイツも帰って来ていないんだ。それが何か関係あるのか?」

 

「「……」」

 

シエルとセバスチャンは顔を見合わせた後、シエルが口を開く

 

「アッシュ・ランダースが今回の件に関わっている可能性が高い」

 

「!!」

 

「関わっている可能性があるだけで、証拠はない。何しろ、あっちは証拠を掴ませないからな」

 

「……」

 

エドワードが何か考えているのを見てシエルは『何か違和感はあったか?』と問いかける。

 

「…怪しいところなんて微塵もなかった。いつものように執事として勤めてたな…俺より、どっちかというとお母様が知ってるはずなんだ」

 

「フランシス叔母様が?」

 

「アッシュがミッドフォード家に来たのも、ヴィンセント叔父様からお母様に直接話があったからなんだ」

 

「だが、実際に来たのはあの日以降なんだろう?」

 

ファントムファイヴ家襲撃事件の後にミッドフォード家執事長として入ってきた。

 

「あぁ、あれ以降も特に変わった様子は…あ」

 

「?なんだ?」

 

「アッシュが指にはめていた指輪が消えてたぐらいだな」

 

『アッシュ。薬指に付けてた指輪はどうしたんだ?』

 

『あぁ、大事なところに預けて来たのです。無くしたらダメなので』

 

そう言うアッシュの表情を思い出し説明する。

 

「…セバスチャン」

 

セバスチャンを手招きして呼ぶ

 

セバスチャンは近づいてくると、エドワードにギリ聞こえない声で話し始める。

 

「…天使が指輪をはめる理由わかるか?」

 

「…天使は悪魔と違い、魂を対価にはしません。しかし、天使も無条件で従う者はいません。契約者の魂を指輪に入れ、保存することが多いです」

 

「…なんのために?」

 

「さぁ、それについては分かりかねます」

 

「分かった。ミュージックホールについては僕も調べる。フランシス叔母様についてはエドワードから聞いてくれ」

 

「あぁ、分かった、よろしく頼む」

 

 

 

「やっと、ファントムファイヴ伯爵は来ましたか、まぁ、あの格好でバレないと思ったんでしょう」

 

坊ちゃんがスフィアに入って来た報告はブラバットから聞いた。

 

ベットの足場にあるソファに座り爪を研いでいた。

 

「…あの子は…立派に女王の番犬として勤めていたかぃ?」

 

聞き覚えのある声に嗤い「えぇ」と答える。

 

「…それなら良かった…まだ本調子じゃないからシエルのこと頼むよ」

 

その言葉に起き上がり、ベットの方に向けて頭を下げる。

 

部屋を退出し、歩いていると…

 

「おや」

 

シリウスの部屋から出てきたエリザベスと目が合う。

 

「もう終わりましたか?エリザベス様」

 

自分でも、この切り替わりの早さには驚く

 

「…うん」

 

元気のないエリザベスの後ろを着いて行く

 

「坊ちゃんがつい先ほど、ここに潜入されましたが、会いに行かれますか?」

 

「…!…行かない、行かないわ」

 

ブンブンと首を振る。

 

「左様ですか」

 

「…アッシュも、どうして、ここに残ってるの…?私が、いるから…?」

 

「いえ、私もエリザベス様と同じ理由で、と言っておきます」

 

エリザベスは俯きながら部屋から出て行く

 

シリウスの部屋が閉まり、アッシュもエリザベスと着いて行こうとすると…

 

「アッシュ」

 

カノープスから声をかけられ、足を止める。

 

目だけ、カノープスのドアを見る。

 

「真のシリウス様の容態はどうだったの?」

 

その言葉に前を見て

 

「全快とは行きませんが、体調は良くなってきていましたよ、あなた方と違い、一応魂はありましたから、まぁ肉体は死んでいたので完全復帰するにはまだまだ時間はかかりますがね」

 

そう言うとカノープスは「そう」とだけ返し、声が聞こえなくなる。

 

(…マイペースだなぁ、カノープス)

 

カノープスの部屋の前から歩いて去って行く

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