もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

1 / 5
性懲りもなく書きました。今回は短めに終わります。


奴隷として生まれた半神

それは最高神ゼウスの気の迷いから生まれた子供であった。

 

―…………………………―

 

ギリシャ神話のオリュンポス十二神のトップとして君臨する雷神ゼウス。彼は予想されていた来たるべき巨人達との決戦……ギガントマキアに向けて準備を進めていた。

 

―…………………………―

 

ガイアの加護を受けた巨人達を殺すのには神の力だけでなく人間の協力が必要不可欠である。だが常人では神々の戦いで役に立つわけもなく、その為ゼウスは自分の血を分けた子供を作り巨人達と戦うつもりであった。

 

地上に降臨して大英雄ペルセウスの子孫アルクメネという絶世の美女と致し候補となる子供を仕込んだゼウスは上機嫌でオリュンポス山に帰還しようとする。だが帰還する途中でとある宮殿の厨房に目を向けるとそこには忙しそうに働く奴隷の少女がいた。

 

―……………………ふむ―

 

奴隷の少女は比較的可愛らしい顔立ちをしていたがゼウスが普段抱いている美女達に比べれば美貌は大きく劣っていた。普段のゼウスなら見向きもしない存在であったが絶世の美女を存分に堪能した直後のゼウスはどういうわけか彼女に興味を抱いてしまう。

 

―そうだな、美食ばかりも飽きるし偶には粗食もいいだろう!―

 

そして血迷ったゼウスは奴隷の少女を軽い気持ちで抱く事にしたのであった……客観的に見ればただの強姦であったがギリシャ神話ではよくある話である。

 

ゼウスに抱かれた奴隷の少女は呆然としつつも、主神が自分なんかを抱くわけがないと思いあれは夢だったのだろうと忘れていつも通り仕事に励んでいた。だが突如として現れた自分に対して激しい怒りを向ける女神に気付き同僚達と一緒に震え上がるのであった。

 

 

 

 

ゼウスの正妻であり結婚の女神ヘラは激怒していた。それはもう滅多に見ない程に怒り狂っていた。夫の浮気については何度目か数えるのも面倒になるほどされていたが、浮気相手への怒りは衰える事はなかった。

 

そしてヘラを特に怒らせていたのは今度のゼウスの浮気相手がただの奴隷の少女であった事だ。自分という存在がありながら奴隷なんかに目移りするとは何を考えているのかと怒りに震えていたのだ。

 

もちろん奴隷の少女が純然たる被害者であり、ゼウスの要求を拒否できるわけがない事はヘラも当然理解していた。だが奴隷の少女を許すつもりは一切なく、せめてもの慈悲として苦痛は与えず一瞬で殺すつもりであった。

 

そんなヘラに対してとある女神が制止する。彼女はヘラと同じオリュンポス十二神の一人であるヘスティアであった。ヘスティアは敬虔な自分の信者である奴隷の少女を憐れみヘラに慈悲を求めたのだ。

 

自分と同格の神であるヘスティアに制止されたヘラは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべつつも、最終的に子供の命だけは助ける事にし、奴隷の少女も赤子が助かるのならと自分が死ぬ事を受け入れた……ヘラとしては非常に寛大な対応でありヘスティアも安堵したのであった。

 

 

 

10ヶ月後、奴隷の少女は元気な赤子を産む。雷光を纏った不思議な赤子を抱きしめた少女は満足しつつヘラの制裁を黙って受け入れ死んでいった。そして残された赤子は少女の同僚である奴隷達によって育てられる事になった。

 

「モスコス。これを運んでくれないかい?」

「うん、わかった」

「よしよし、いい子だねぇ」

 

赤子はすくすく成長していった。同年代の子供達より一回り以上大きな体をもっていた半神の子は穏やかな性格であり牛のように大人しいのでモスコスと名付けられた。モスコスはいつものんびりしており力仕事も文句を言わずに行ない育ての親である奴隷達から可愛がられていた。

 

「ねぇ、あの子の父親の事は本当に報告しなくていいの?」

「ヘスティア様の御言葉を疑うのかい?あの子の出生についてはいずれ時が来るまで喋るなと仰っていただろう?」

「それはそうだけど……」

 

モスコスの父親が最高神ゼウスだというのはあの時立ち会っていた極小数の奴隷達しか知らない事であった。ヘスティアから出生の事を秘密にするよう命じられた奴隷達は誰にも教えるつもりはなくモスコス本人も知らない事であった。だがモスコスが齢6歳となった頃、自由民の子供達がモスコスにちょっかいをかけた結果秘密は露見してしまうのであった。

 

 

 

 

「……この奴隷の子が勇士達を蹴散らしたと?」

「はい、信じられませんが証人達がおります。勇士達が雷光を纏った子供に軽く一蹴されていたと」

 

部下から報告を受けたミュケナイの支配者であるステネロス王は、鎖に繋がれつつも一切怯えることなく呑気な様子で周囲を見回している奴隷の子供を注意深く観察していた。

 

「これは、ただの人間ではないな。雷光を纏っていたというが……まさか?」

「王よ、お耳に入れたい事が」

 

側近から耳打ちされたステネロス王は思わず目を見開く。

 

「それは確かなのか?」

「子供の育ての親である奴隷達はそう話しております。私達としては噓八百だと考えておりますが」

「だがあの子供は類まれなる力を持っている。主神の種から生まれたと言っても納得できるな」

「で、ですが王よ!そんな事はあり得ません!奴隷が、奴隷如きが主神の寵愛を受けるなど考えられませぬ!あの奴隷の子供は恐らく怪物の血を引く呪われし子……一刻も早く処分するべきかと!」

 

奴隷の子供が最高神ゼウスの血を引いているかもしれないと聞いたステネロス王は冷静に受け入れていたが、側近達はモスコスを恐れ処刑するべきだと主張していた。彼らが頑なになっていたのはモスコスの力を恐れたのもあるが、奴隷が最高神の寵愛を受けた事実を認めたくなかったからだろう。

 

そんな側近達の様子を見たステネロス王は苦笑しつつもモスコスを有効活用できないかと考えていた。

 

「落ち着け、大人が童のように怯えるな……ふむ、そうだな。これ程の力を持つ子をただの奴隷として扱うのはあまりにも勿体ない。私の息子に仕えさせるとしよう」

 

最終的にステネロス王は自分の息子であるエウリュステウスの部下にする事を決意したのであった。得体の知れない子供でもあっさり受け入れたのは流石大英雄ペルセウスの息子である。

 

 

 

 

「ご主人さま、これからよろしくおねがいします」

「ふぅん……」

 

エウリュステウスは自分の部下となったモスコスを見て興味深そうな様子を見せていた。

 

「なぁ、お前奴隷なのに主神の血を引いてるって本当か?」

「わかんないです」

「はぁ?お前自分の事なのに知らないのか?」

「ご、ごめんなさい」

「チッ、まあいい」

 

少し話して奴隷の子供が素直で穏やかな性格だが頭が悪い事を察したエウリュステウスは自分に忠誠を誓うのなら寛大な精神で見逃してやるかと思い直す。

 

「そうだ、お前の名前は?」

「モスコスです」

「なんだそのつまらない名前は?僕の部下に相応しくないなぁ……そうだ、これからはマカリオスと名乗れ!ミュケナイの王の地位を約束されている僕に仕えられるなんてお前は本当に幸運な奴だ!その幸せをしっかりと嚙みしめ僕に一生仕えるんだぞ!」

「……はい!」

 

王子の部下として新たな名前をもらったモスコス、いやマカリオスは笑顔を浮かべエウリュステウスに生涯使える事を誓った。そしてエウリュステウスとマカリオスの主従関係が始まったのであった。

 

 

 

 

「よしマカリオス!まずはお前の強さを確認したい。兵士達と戦い僕の護衛に相応しい力を持っているか証明してみろ!」

「はい!」

 

宮殿の近くにある訓練場に連れてこられたマカリオスは吞気な様子で兵士達と相対していた。

 

「あ、でも兵士達を殺すなよ!殺したら僕が父上に怒られるんだからな!」

「はいわかりました!」

 

最初は困惑していた兵士達であったがエウリュステウスとマカリオスの会話を聞き自分達が侮辱されたと顔色を変える。こんな小さな子供に負けるわけがないと怒りを露わにマカリオスに挑みかかる。

 

「えいっ!……あっ」

 

だがマカリオスは兵士達の攻撃を軽く躱し反撃する。最初は隊長格の男を殴りつけたが、力加減を間違えたのか顎を砕き吹き飛ばしていた。

 

「ご、ごめんなさい」

「いや死んでないなら別にいいぞ。僕は嫌な思いしてないし」

「わかりました」

 

マカリオスはやりすぎたかもしれないと謝るが、エウリュステウスの言葉を聞き安心して攻撃を続ける。残った兵士達は投げ飛ばされ蹴り飛ばされたりしていたが、マカリオスは手加減を覚えたようで大きな怪我もなく気絶し呻き声を上げていた。しかし途中でマカリオスは手を止めてエウリュステウスを見る。

 

「どうしたんだ?さっさと続けろよ」

「でもご主人さま、この人達はもう戦うつもりはないみたいです」

「あー……確かに。ビクビクして怯えてるからなぁ。フン!情けない奴等め、父上に言ってクビにしてやる!」

 

残された兵士達が心が折れているのを察したエウリュステウスはこれ以上はいいかと思い直す。そして自分の想像以上に強いのがわかったマカリオスに上機嫌に話しかける。

 

「しかしお前は本当に強いなぁ!確かにゼウス様の血を引いているみたいだ!フフン!僕の部下に相応しいな!」

 

マカリオスの圧倒的な強さを見たエウリュステウスは非常に上機嫌であった。半神の子が元奴隷として自分の部下になった事実はエウリュステウスの自尊心を満足させていたのだ。

 

「いや当然だな!次期ミュケナイの王であるとゼウス様の太鼓判をいただいたのだし半神が部下になるのも当たり前か!ハハハ、僕はオリュンポスの神々に愛されているみたいだ!」

「よかったですねエウリュステウス様!」

 

自分が選ばれし人間だと確信し無邪気に喜ぶエウリュステウスを見てマカリオスは我が事のように喜んでいた。こうして強さを証明したマカリオスはエウリュステウス王子の正式な臣下となり、後にミュケナイの王が最も信頼する男と後世で呼ばれる事になるのであった。




FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。

ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。



感想・評価くれると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。