もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。


ミュケナイを訪ねた英雄達①

「ほぅ、ここがミュケナイの王都か。中々賑わっているじゃないか」

 

ミュケナイ王都を訪れたとある青年は噂に聞くミュケナイの繁栄ぶりを見て感心したような表情を浮かべていた。

 

「少し観光してもいいかもしれないな。色々見て回るのも楽しそうだ……いやいやダメだ、俺には、私には使命があるのだ。物見遊山してる暇などないだろうが」

 

青年はとある国の王子であり複雑な事情があって国を離れていたのだが、王になる為に帰国しようとしていた。多少捻くれた性格の持ち主であったが、立派な王となり平和な国を作るという理想に燃える青年でもあった。

 

「本当ならすぐにでもイオルコスに帰国したかったのだが、でも先生はイオルコスに帰国する前にミュケナイの大勇士達を見ておくべきだと仰ってたしなぁ。まあここまで来たのだし彼等の顔を見ておくとするか」

 

自分の師からの提案を思い出しつつ青年は噂の大勇士二人を見ておこうと決意し情報収集を行う事にした。

 

 

 

 

「あぁ、アルケイデス様は今ミュケナイから離れてますよ。王様から難行を命じられてミュケナイから出国してるんですよ」

「むぅ、そうか」

 

露天の商人からアルケイデスは現在出国していると聞いた青年は少し残念そうにしつつも、商人が少し安心したような顔をしているのを察して不思議に思い尋ねる。

 

「お前は彼がいない事に安心しているようだが何故なんだ?」

「ああ、いえ、その……ここだけの話にしてくださいね?私はアルケイデス様の事が怖いのです。それに私だけじゃなくミュケナイに住む殆どの人間はアルケイデス様を恐れていますよ」

 

周囲を見回し小声で話す商人の言葉を聞いた青年は驚くが、とある一件を思い出し商人に確認してみる。

 

「ミュケナイの人間がアルケイデス殿を恐れるのは、やはりミュケナイでマカリオス殿と闘った一件があるからか?」

「ええ、そうです。血走って狂乱したアルケイデス様は本当に怖くて怖くて、アレを見た私はお恥ずかしながらいい歳して漏らしてしまいました。あの闘いを見たミュケナイの人間達がアルケイデス様を恐れてしまうのは当然です。あの時マカリオス様がいなかったらミュケナイは滅茶苦茶になってたと思うとゾッとしますよ」

「ふむ、なるほど」

 

思わず肩を震わせた商人を見た青年はミュケナイの人間達がアルケイデスを恐れるのも無理はないと納得する。そしてそのアルケイデスと互角だというマカリオスについて興味を持つ。

 

「その怪物を取り押さえ互角に闘ったというマカリオス殿は大したものだな」

「ええ、そうですとも!ミュケナイが平和なのはマカリオス様のお陰ですよ。マカリオス様がいるから賊もいませんし他の国も手を出してこないんですから」

 

笑顔でマカリオスを称賛する商人に青年はアルケイデスの時とは随分態度が違うなと思いつつも実際に会ってみたいと考える。

 

「私もマカリオス殿に会ってみたいのだが、何処に住んでいるかわかるか?」

「えっと、マカリオス様のお屋敷の場所は向こうの方ですが、やめといた方がよろしいかと」

「ん、何故だ?」

「いえ、マカリオス様は穏やかな方で来客を拒んだりはしないのですが……奥方様がねぇ」

「ああ、あの噂の大魔女か」

 

言葉を濁す商人を見た青年はマカリオスと結婚したという大魔女キルケーの事を思い出した。

 

「奥方様はマカリオス様と過ごす時間を邪魔されるのが大嫌いなようでして、余程の事がない限り屋敷に入れてくれません。強引に入ろうとした勇士が悲惨な事になっていましたし本当にやめた方がいいですよ?」

「悲惨な事になっていたとは何があったのだ?」

「豚に変えられて国外追放となりました」

「えっ、怖……」

 

青年はドン引きしてさっさとイオルコスに帰国するべきか考えるが、せめてミュケナイの守護者を一目見てからにしようと思い直す。

 

「ならばマカリオス殿の鍛錬を見る事はできるだろうか?噂ではマカリオス殿は山をも動かす事ができると聞いたのだが、それを実際に見てみたいのだ」

「ああそれなら大丈夫ですよ。マカリオス様は毎日早朝にあちらの方にある山を使って鍛錬されてます。近くに見晴らしのいい丘があるからそこから眺めるのがオススメですね。私もよくそこで見物客向けに商売しています」

「そうか、ありがとう。では明日まで待つとしようか」

 

商人から有用な情報を聞いた青年は翌朝まで宿に待機する事にした。

 

 

 

 

「……うわぁ、本当に山が動いてるぞ」

 

翌朝となり見晴らしのいい丘でマカリオスの鍛錬を見た青年は一人の人間によって大山が持ち上げられ動かされているのを見て感嘆の声をあげていた。

 

「どうですスゴいでしょう。マカリオス様とエウリュステウス様がおられる限りミュケナイは安泰ですよ!」

「うむ、そうだな。確かに彼がいる限り他の国も手出しはしてこないだろうな」

 

見物客相手に商売している商人の言葉に同意しつつも青年は周囲を見回す。周囲には青年の他にも大勢の人間が見物しており、青年のように素直に感嘆する者や驚愕し言葉を失う者、そして心が折られて膝から崩れ落ちる者など様々な反応があった。

 

「まあ本音を言えばもっと近くで見てみたかったのだがな」

「それは無理ですね。奥方様が結界を張ってて近寄れませんから。ここで見るのが一番です」

「そうか、それなら仕方ないな。この後は走り込みをするらしいがここからでも見れるか?」

「それは問題ありませんが、あまり見てても面白くないですよ?」

「どういう事だ?」

 

商人の言葉に困惑しつつも青年は引き続きマカリオスの鍛錬を見物する事にした。

 

 

 

 

「……これは、なるほど」

 

マカリオスの走り込みを見た青年は驚き感心していた。

 

「噂通り確かに速い、まるで稲妻の如き速さだが速すぎて殆ど見えないな」

「おぉ、少しでも見えるだなんてお客さんはスゴいですねぇ!私なんてまったくわかりませんよ」

 

大賢者に師事したお陰でマカリオスの動きを辛うじて捉えていた青年は、ミュケナイの守護者が力だけでなく足の速さも持っているのを見て思わず溜息をついていた。

 

「いや本当にスゴいな。先生が一度見に行けと言うわけだ。あれ程の大勇士から忠誠を誓われているミュケナイのエウリュステウス王が羨ましい」

―おーい、そこの君―

 

「はぁ、私もあんな大勇士を部下にしたいものだ。何処かにいないものだろうか?」

―おーい、聞こえてるんだろうイアソン君。イーアーソーンー君ー?―

 

「いや難しいか、半神なんて滅多にいないし、王でもない俺に従ってくれるような物好きなんていないよなぁ……だが王になれば話は別だ。よぉし、こんな所で呑気に見学してないで早くイオルコスに帰るとするか!」

―そろそろ返事をしないと豚にしちゃうぞー?―

「アッ、ハイ」

 

先程から聞こえてくる声を無視できなくなった青年……イアソンは諦めた表情を浮かべて大魔女の声に応える事にした。ちなみに商人や周囲の見物客は大魔女の声が聞こえた瞬間イアソンから大きく距離をとっており、イアソンを憐れみつつ遠巻きに眺めていたのであった。

 

 

 

 

「な、なんだ大魔女キルケーよ。わ、私を豚にしたって美味しくはないぞ!?」

―そんな震えなくてもいいよー。私は君に予言するだけだからね―

「はぁ?」

 

大魔女が自分に予言すると聞いてイアソンは困惑し何を言うつもりなのかと警戒していた。

 

―これから君は故郷に帰り試練を受ける事になる。詳しくは話せないけど君は大きな船の船長となり、大勢の英雄を率いて大冒険をし、英雄として歴史に名を残す事になるだろう―

「えっ、試練だと?い、いやそれよりも歴史に名を残すというのは本当なのか!?」

 

大魔女の言葉を聞いたイアソンは自分が名高き英雄として後世に記録されると聞き興奮した表情を浮かべる。イアソンも男なので後世に名を残したい気持ちはあったのだ。

 

「私は、俺は英雄になれるのか!?それに大勢の英雄達を率いると言っていたが、まさかマカリオス殿のような大勇士もいるのか!?」

―そうだねー、私の旦那様並に強い大勇士と君の為に何でもしてくれるかわいい女の子が君の下に来るよ!大魔女である私が保証するさ!―

「おおおおおっ!?」

 

あの大魔女から自分はマカリオスに比肩する大勇士を部下にすると聞いたイアソンは、自分が選ばれし英雄なのだと知り思わず歓喜の声をあげていた。

 

「フハハハハ!俺は、私は選ばれし者なんだな!教えてくれて感謝しますキルケー殿!」

―うんうん、喜んでくれよかった。じゃあ頑張ってね、それと女の子は大事にするんだよー?―

「ハハハ無論ですとも、私は私の為に尽くしてくれる子を無下に扱うような器の小さい男ではありませんよ」

―それはよかった、じゃあ安心だね―

 

大魔女からの忠告を笑って聞き入れたイアソンは意気揚々とした様子で一刻も早くイオルコスに帰ろうと決意するのであった。

 

 

 

 

「……そういうわけで私は大魔女殿の予言に従いイオルコスに帰国した。そして叔父上から王位を渡してもらう条件としてコルキスの秘宝である金の羊の皮を手に入れる為アルゴー号に乗り君達を集めたのだ」

「そうか、私がいない時にミュケナイを訪れていたのか」

 

「ああ、あの時君に会えなかったのは残念だが、こうして出会えたのだからよしとしよう。しかし大魔女殿の予言は正しかったな。君程の大勇士が私の下に来てくれたなんて僥倖だ。十二の難行を達成した君がいるなら私の成功は約束されたようなものだ」

「嬉しい事を言ってくれる。ではその信頼を裏切らないよう今後も頑張るとしよう」

 

「うむ、よろしく頼むヘラクレスよ……そして予言通り私に尽くしてくれる少女も来てくれた……来てくれたのだが……」

 

数年後、イアソンはキルケーの予言通りアルゴー号を結成し大冒険の旅に出ていた。当時を振り返っていたイアソンは懐かしく思いつつも現実逃避をやめ目の前の光景を直視する。

 

 

 

 

「イアソン様!私達の邪魔をする弟は無事八つ裂きにしました!私達を邪魔する者はもういません!さあ、イオルコスに行きましょう!」

「なあヘラクレス、あの子は私の手に負えるのかな……?いや、うん、私の為に一生懸命尽くしてくれているのはわかっている、わかっているのだが……やっぱり怖い!」

「まあそうだろうな、頑張れ」

 

自分の為に実の弟を八つ裂きにした純真可憐な女の子……メディアを見たイアソンはドン引きしており、ヘラクレスと呼ばれるようになったアルケイデスも気持ちはわかると同意していた。

 

「ああでもキルケー殿に啖呵を切った手前、捨てるわけにもいかないし、ここで捨てるのは流石に可哀想だから連れて行くしかないか」

「あれ?イアソン様は叔母様の事を知っているのですか?」

「えっ?」

 

メディアが不思議そうに聞いてきた言葉を聞いたイアソンは呆然となる。

 

「え、ええと、君はキルケー殿と知り合いなのかい?」

「はい!キルケー叔母様は私の魔術の師でもあります!今は結婚して幸せな結婚生活を送ってるそうですが、私もイアソン様と幸せな結婚生活を送りたいです!キャッ♡」

「そ、そうか……そうか……そうかぁ……」

 

ニコニコと笑顔を浮かべたメディアの言葉にイアソンは思わず顔を引きつらせてしまい頭を抱えてしまうのであった。

 

「この子はキルケー殿の姪なのかぁ……これ捨てたら大魔女に報復されるやつなんじゃないか!?お、おい!これどうすればいいんだヘラクレス!」

「結婚して幸せにすればいいんじゃないか?あのマカリオスでもできたし貴様もできるだろうさ」




FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。

ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。



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