もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら 作:名無しのマネモブ
「おお、ミュケナイが見えてきたな」
アタランテが這々の体でミュケナイから出て行ってから1年後、難行を終えてミュケナイに戻ってきたアルケイデス、いやヘラクレスは今回も無事に難行を乗り越えられてよかったと安堵していた。
「今回の難行が王や神々に認められればいいのだが、まあ大丈夫だろうな」
「グルルルルルル!!」
「落ち着け、無理矢理連れてこられて腹が立つのはわかるが我慢しろ。王に見せた後はすぐに冥界に戻してやるから後少しだけ耐えてくれ」
「グルゥ……」
檻の中で腹立たしげに唸り声をあげていた冥界の番犬ケルベロスをヘラクレスは苦笑しつつ落ち着かせていた。今回の難行ではケルベロスの捕獲を命じられていたのだがヘラクレスは苦労しつつも見事成し遂げていたのだ。冥府の神ハデスがヘラクレスに協力的だったのもあるが、単身でケルベロスの捕獲できる人間はヘラクレスくらいだろう。
「これならば王も満足するだろう……十の難行のはずが十二もこなす羽目になるとは」
今までの難行を振り返ったヘラクレスは十二回も難行を達成した事に何とも言えない顔を浮かべる。どの難行も達成するのに非常に苦労し大変だったのを思い出していた。
「どれもこれも一筋縄ではいかない難行ばかりだったな」
「ガウッ!!」
「ああすまん、私とした事が女々しく感傷に浸ってしまっていたか。よし、では行こうか」
ケルベロスに吠えられたヘラクレスは我に返ると、ケルベロスが入った檻を持ち上げてミュケナイに帰還するのであった。
「おおっ、戻ってきたのかアルケイデス殿!今回も無事に終えられたようでよかった」
「ああ、コイツの生け捕りは大変だったよ。それと今の私の名はアルケイデスではない。ヘラクレスと呼べ」
「あ、すまないそうだった。今の貴方はヘラクレス殿だったか。しかし本当に冥府に行ってケルベロスを捕まえるとは流石はアルケイデス殿だ。頭の悪い俺では無理だろうな」
「いや言った傍から間違えるな阿呆」
「あっ、す、すまないヘラクレス殿」
ミュケナイに帰還したヘラクレスを迎えたマカリオスは今回の難行も無事達成したヘラクレスを称賛し尊敬の眼差しを向ける。
相変わらず呑気で阿呆なマカリオスにヘラクレスは苦笑しつつ周囲を見回すと、ミュケナイの市民達は檻に入ったケルベロスを怖がりつつも興味深い様子で眺めていた。
「これでアルケイ、ヘラクレス殿の難行が全部達成されたわけだ。よかったなヘラクレス殿、いや本当によかったなぁ!」
「いやまだだ、まだ王に難行と認められてないからな」
「大丈夫だ、妻のキルケーは今回でヘラクレス殿の難行が全て終わると言っていたぞ。お祝いにキュケオーンを振る舞ってくれるそうだから楽しみにしててくれ」
「ほぅ、それはいい事を聞いた。これでようやく全ての難行を終える事ができて安心したぞ。それとキュケオーンについては遠慮しておこう」
今回の難行が無事認められると知ったヘラクレスは安心しつつマカリオスと共に宮殿に向かう事にした。
「ううっ、本当にケルベロスを連れてきおったぞあの化け物め」
マカリオスに先導されつつ宮殿に向かって来るヘラクレスを見たエウリュステウス王はヘラクレスは化け物だと再確認する。エウリュステウス王は冷や汗を流しつつ傍に待機させていた大魔女キルケーに再度確認していた。
「お、おいキルケーよ。本当に大丈夫なのだな?あのケルベロスがミュケナイで暴れる事はないのだな?」
「王様は心配性だなー、大丈夫だよ。ケルベロスが檻から逃げ出すことはないし、万が一脱走してもヘラクレスと私のマカリオス君がいるから王様は安心していいともさ」
「いやまったく安心できないぞ。もしもだ、もしケルベロスと化け物が結託したらマカリオスだけでは抑えきれんしミュケナイは滅茶苦茶にされるのだぞ!?」
「いやいやそれはないって、ようやく十の難行を終わらせる事ができるのに自分から台無しにするわけないだろうに」
最悪の事態を想定し震えるエウリュステウス王を見てキルケーは王様は本当に臆病者だなと呆れていた。
「い、いやそれよりも確認しなければならない事がある。難行を完遂した化け物がミュケナイを離れるというのは本当なのか?」
「うん、安心して王様。大魔女として保証するよ。ヘラクレスはミュケナイの王の座に興味はないし新天地に行く未来が視えたからね」
「そ、そうか……そうか!私の立場が脅かされる事はないのだな!フゥ、そうかよかった。本当に安心したぞ」
キルケーからヘラクレスは自分の立場を脅かす事なくミュケナイを離れると聞いたエウリュステウス王は心から安堵し肩の力を抜く事にした。
「ならば化け物が難行を達成した事を王として祝ってやるとするか。これで化け物とはお別れというわけだ。いやぁ私は本当に嬉しいぞ!もう二度とミュケナイに来ないというのなら餞別として幾らか財宝を与えてやってもいいかもしれんなぁ!」
「ヘラクレスがいなくなる事が本当に嬉しいんだね王様は。小物だなー」
「ハハハ何とでも言うがいい大魔女め!あの化け物ともう関わらなくてもいいとわかって私は実に気分がいいのだ!フハハハハハハ!」
上機嫌になったエウリュステウス王はキルケーから呆れられつつもまったく気にした様子を見せず高笑いするのであった。
「おおっ、我が王がお喜びになられている!ヘラクレス殿が難行を成し遂げたからだな!」
「いや、王が喜んでいるのはそれだけではないと思うのだが……まあそういう事にしておこうか」
その後ヘラクレスが全ての難行を終えた事を祝いミュケナイの宮殿にて盛大な宴が開かれていた。非常に上機嫌なエウリュステウス王から労われたヘラクレスは自分がいなくなるのがそんなに嬉しいのかと微妙な気分になりながらも、自分の為に宴を開いてくれた事には感謝しつつマカリオスと会話していた。
「そうか、ヘラクレス殿はすぐにミュケナイを離れるのだな」
「ああそうだ、暫く旅をしようと考えている。ミュケナイに戻る事は二度とないだろうし貴様とも会う事はないな」
「それは寂しいな、ヘラクレス殿がいなくなるとはミュケナイにとって大きな損失だ」
「大丈夫だ、貴様がいる限りミュケナイは安泰だとも。それに私がいなくなって王や民衆達はホッとするだろうさ」
ミュケナイから離れると聞いたマカリオスは残念そうな表情を浮かべるが、ヘラクレスは特に気にした様子もなく笑っていた。
「私はかつてミュケナイで発狂して暴れたせいで王や市民達から怖がられているからな。歓迎されていないのは知っているし、私がミュケナイに留まっていれば彼等も安心できないだろう」
「いやそんな事はな……ない……な……いやあるなぁ……」
「ハッ、相変わらず正直な男だな貴様は」
ヘラクレスがミュケナイで恐れられている事をマカリオスが否定しようとするが、途中で言葉に詰まり否定できなかった。そんなマカリオスの様子を見たヘラクレスはおかしく思い笑ってしまう。
(そういえばミュケナイで私を恐れずに接してくれたのはこの男だけだったか。この男は筋金入りの阿呆だが気のいい奴だ、もう二度と会う事もないのか)
ヘラクレスはマカリオスに奇妙な友情を抱いている事を自覚する。阿呆だが自分とほぼ対等の強さを持ち、自分を恐れる事なく接してくれたマカリオスともう二度と会えないと考えると少しだけ寂しく感じていたのであった……まあ未来では巨人達との決戦で再会し共に戦う事になるのだが当時のヘラクレスが知る由もなかった。
「俺とヘラクレス殿のどちらが強いか?」
「ええマカリオス様、マカリオス様とヘラクレス様は一体どちらがお強いのでしょうか?」
宴もたけなわになっていた頃、謎の美少女から突然話し掛けられたマカリオスは困惑しつつも美少女の疑問に応える事にした。美少女の疑問は大きな声で言われたわけではなかったものの、何故か宴に参加している者達全員に聞こえており、参加者達は会話を中断しマカリオスがどう応えるのかと興味深い様子で眺めていた。
「それはもちろんヘラクレス殿だよ。ミュケナイに引き籠もっていた俺より十二の難行を達成したヘラクレス殿の方が優れているのは誰が見てもわかるだろう?」
「そうでしょうか?マカリオス様は素晴らしい大勇士ですから十二の難行も容易く成し遂げていたのでは?」
「いや、無理だと思うぞ?私は確かに腕っ節には自信があるが頭がとても悪いからなぁ、ヘラクレス殿のように上手くやれる気がしないし、到底達成できないと思うぞハッハッハ」
「笑ってできないと言うなこの阿呆が!」
「も、申し訳ありません我が王よ」
自分では十二の難行を達成できないと言うマカリオスにエウリュステウス王は額に青筋を浮かべて叱責し、マカリオスは王に平謝りする。その光景を見た参加者達が思わず笑ってしまうが美少女は何故か微妙な表情を浮かべていた。
「ふぅん、マカリオス様は謙虚な御方なのですね。でも実際に確かめてみなければ御二人の優劣はわからないのでは?」
「そうは言ってもヘラクレス殿と闘うつもりはないぞ?」
「いえいえ、何も別に殺し合う必要はございませんわ」
マカリオスの言葉を聞いた美少女は苦笑しつつある提案をする。
「確かヘラクレス様は難行に勤しむ傍らで、オリュンピアにて盛大な競技会を行ったそうですね。それに倣って大神ゼウスの名の下に御二人が競い合えばよろしいのでは?」
「いやまあ、そういう事なら」
「私もそれなら別にかまわないが……」
美少女の提案を聞いたマカリオスとヘラクレスは競技で優劣をつけるという事に乗り気を見せ、参加者達も半神二人の競い合いを見てみたいと興奮した表情を浮かべる。これが殺し合いであれば参加者達は恐怖し受け入れられなかっただろうが、競技で勝負をつけるというのであれば止める理由がなかったのだ。
「おい!そこの小娘!王である私を差し置いて何を勝手に決めているのだ!衛兵!この愚かな小娘をつまみ出」
「はいはいちょっと静かにしようねー」
「モガッ!?モガモガ……!?モガ…………ムゥ」
ミュケナイの王である自分を差し置いて勝手に話を進める美少女にエウリュステウス王は怒りをみせるがキルケーが魔術で王の口を閉じてしまう。
キルケーに抗議しようとしたエウリュステウス王であったが、何時もとは違い真剣な表情を浮かべているキルケーを見た王は何か厄介事が起きていると察して沈黙する事にした。エウリュステウス王は賢王というわけではなかったが空気を読む事については人並み以上であった。
「よしよし、王様も落ち着いたみたいだね。ねぇ王様、殺し合いではなく競技で優劣を決めるというのなら別にやらせてもいいんじゃないかな?私の娘もパパの活躍が見たいだろうし」
「プハッ!…………ああもう、わかった、わかったとも!ミュケナイを破壊しないのであれば私も止める理由はない。好きにやればいい……おいマカリオスよ、私の臣下として競い合うであればヘラクレスに負ける事は許さんぞ!いいな!」
「はい!我が王よ!」
「ふむ、すぐミュケナイを出るつもりだったが面白い事になったな。私は負けるつもりはないぞマカリオス」
最終的にエウリュステウス王はヘラクレスとマカリオスが競技をする事を認め、参加者達は思わぬ一大イベントの開催に歓声を上げるのであった。
……二人の競い合いを提案した謎の美少女は忽然と姿を消しており、参加者達は何処に行ったのかと困惑し捜索しようとする。だがキルケーから何かを聞いたエウリュステウス王が青い顔で捜索をやめるように命じたため、参加者達はあの美少女は何者だったのかと不思議に思いつつも忘れる事にしたのであった。
不義の子達にちょっかいをかけた謎の美少女と
いい機会なので子供達の成長を確認する父親(大神)
FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。
ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。
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