もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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番外編となる続きです。一発ネタです。多分続きません。


とある未来での一幕【聖杯戦争に参加する時計塔のロード】

「これがあの神前競技で使われた大綱なの?」

「うむそうだ」

 

マカリオスが死に数千年の時が経過した頃、イギリスにある魔術師達の総本山である時計塔ではロードの一人が婚約者にアーチボルト家に伝わる秘宝の一つを自慢気に見せていた。

 

「これ程の神秘が内包されているなんて、確かにこれは本物なのでしょうね。こんなすごい物を持っているなんて流石アーチボルト家だわ」

 

婚約者は目の前にある引き千切られた大綱を見て尋常ではない程の神秘が内包されているのに気付き感心し、それを見たロードは満足気に頷く。

 

「ミュケナイの神前競技に使われた大綱……鍛冶の神が造りし神造物はギリシャのミュケナイ宮殿に安置されているが、大魔女キルケーが構築した魔術結界のおかげで今まで盗まれる事なく存在し、現在はギリシャ政府の管理下にある。だがもう一つの大綱はアレクサンドロス大王が持ち出した後行方不明となった。それは君も知っているだろう?」

「ええ、大王の死後に起きた後継者争いの中で紛失したとは聞いていたわ。でもまさかアーチボルト家が所有していたなんて」

「先々代の当主が私財を投げ打って手に入れた秘宝でね。当時のアーチボルト家が傾きかけたというが、それだけの価値がある逸品だよ……まあ家が傾きかける程入れ込むのはどうかと私も思うがね」

 

アーチボルト家が大綱を手に入れた経緯を語るロードは先々代当主の奇行に苦笑しつつも今こそ秘宝を触媒として使う時だと考えていた。

 

「トロイア戦争で活躍した大勇士の遺品は愚か者によって盗まれてしまったが何も問題はないさ。私は最初からこの秘宝を触媒としてサーヴァントを召喚するつもりだったのだよ」

「これを触媒に?まさか」

「ああそうだとも、私は呼ぶつもりだよ。ギリシャ神話を代表する大英雄ヘラクレスか、ミュケナイの守護者でヘラクレスと共にギガントマキアを戦ったマカリオスのどちらかをね!」

 

ロードは自信満々な様子でギリシャ神話の大英雄のどちらかを召喚すると宣言した。アーチボルト家の後継者で時計塔のロードでもある自分ならば大英雄を問題なく制御できるという自信があった。

 

「ヘラクレスとマカリオスか……確かに貴方なら彼らを呼び出し従える事ができるでしょうね」

「フフッ、当然だとも。アキレウスの触媒を盗んだ身の程知らずの愚か者とは違うのだよ!」

 

婚約者の言葉にロードは機嫌をよくする。自分ならギリシャ神話の大英雄を従えられると婚約者が認めた事を嬉しく思っていた。

 

「でもケイネスはどちらの英雄を呼び出すつもりなの?」

「気になるかね。そうだな、私としてはどちらでも構わないが……できればマカリオスの方がいいかもしれないな」

「え、マカリオスを?」

 

ロードは少し考えた後、できるならマカリオスを呼び出したいと答え婚約者を驚かせる。ヘラクレスとマカリオスを比較すればヘラクレスの方が優れているのは周知の事実であり、わざわざ弱い方を呼び出す理由が婚約者にはわからなかったのだ。

 

「ヘラクレスの方が優れているのに?」

「ヘラクレスがマカリオスより強いのは私も当然知っているさ。だがねソラウ、サーヴァントとして使役するなら強さ以外の要素も重要なのだよ」

 

不思議そうな表情を浮かべる婚約者にロードは苦笑しつつ自分の考えを説明する事にした。

 

 

 

 

「確かにヘラクレスはミュケナイの神前競技でマカリオスよりも優れている事を証明している。それに知恵を使って十二の難行を達成し多種多様な武器を使うヘラクレスに対して、マカリオスは頭が悪いと有名だし格下相手に素手で戦った逸話ばかりだ。客観的に見てもマカリオスがヘラクレスに武勇で勝てる点は殆どないだろう。だが武勇以外の要素でヘラクレスがマカリオスに絶対に勝てないものがある」

「それは?」

「信頼だよ、絶対に裏切らないという信頼だ。いくら神の干渉があったとはいえ何度も発狂して子殺しやミュケナイで暴れた男と、愚かだが王に絶対の忠誠を尽くし一度も暴れる事なく守護者としてミュケナイを守り続けた男のどちらを信頼するかといえばもちろん後者だ。エウリュステウス王がマカリオスを重用し続けたのは当然だな」

 

ロードはサーヴァントとして使役するならマカリオスの方が使い勝手が良いと考えていた。

 

「マカリオスなら従順で大人しく暴れる事もない理想的なサーヴァントになるだろう。ヘラクレスと比較すれば見劣りするのは確かだが、それでも並みの英雄なら簡単に倒せるのだから問題ないとも」

「それはそうね、ギガントマキアに参戦し神々と共に戦ったマカリオスに勝てるのはヘラクレスくらいでしょうね」

「うむ、愚か者が呼び出すアキレウスでは勝てないだろうさ。何せトロイア戦争では年老いたマカリオスに対して全盛期のアキレウスが押されていたというし何も心配していないよ。そもそも魔術師として三流の彼が大英雄を呼び出して維持できるとは思えないがね」

 

ロードは自分の所有物を奪って逃げた愚か者を嘲笑い、しかるべき対応を取る事を誓うのであった。

 

「私の物を奪った彼には惨めな死を送るとしよう。この私に舐めた真似をした事を後悔させてあげようじゃないか……私が裁く前に死ぬ可能性が高いだろうが、その時は仕方ないか」

 

 

 

 

―素に銀と鉄。礎に石と契約の大公―

―降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ―

 

 

 

 

―……抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!―

 

 

 

 

「サーヴァント、バーサーカーのマカリオスだ。貴方が今回の俺の主なのか。よろしく頼むぞ」

―そして私は旦那様のサポートをする良妻賢母な大魔女だよ。よろしくね―

 

 

 

 

「フン、ごちゃごちゃして見苦しい街並みだな。所詮は極東の田舎町か」

 

冬木ハイアットホテルの最上階にあるスイートルームから冬木市を見下ろした時計塔のロード……ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはイギリスのロンドンとは違い洗練されていない街並みを見て鼻を鳴らしつつも今後の事について考えていた。

 

「……サーヴァントの召喚は問題なく成功した。狂戦士のクラスで来たのは想定外だったが、マカリオス殿の意思疎通には何も問題がない事は確認できた。理性的な狂戦士とはおかしなものだが、私の指示に大人しく従ってくれるのだし文句はありませんよ」

―私の旦那様は基本的に素手で戦うからねー、余程の事がない限りバーサーカーで呼ばれる事になるのさ。でも旦那様は君が知っている通り大人しいし、トロイア戦争で出張して王様の危機を察した時にギリシア軍相手に大暴れした事くらいしか発狂エピソードはないから狂化スキルがかなり低いんだよねー。バーサーカークラスの恩恵を殆ど受けられないけど大した問題じゃないしまあいいか!―

 

「ええ、マカリオス殿のステータスは圧倒的だ。狂化の恩恵を受けていないのに殆どのステータスがA以上なのは驚きましたよ。彼に勝てるとすればかのヘラクレスくらいでしょう。今はソラウの警護を任せていますが彼なら安心して婚約者を任せられます」

―私の旦那様なら絶対に間違いは起きないから安心していいよ!なにせ私達はギリシャ神話を代表するおしどり夫婦だからね!―

 

「ええ、そこは少しも心配していません。私はマカリオス殿を呼ぶ事ができてよかったと思っていますよ」

―うんうんそうだね、君がヘラクレスではなく旦那様を選んだのは慧眼だったよ!これでヘラクレスが来なかったと嘆いていたら呪いをかけるつもりだったけど、これなら大丈夫そうだね―

 

「それは恐ろしい。かの大魔女殿から呪いをかけられるなど考えるだけでもゾッとしますな……ところでキルケー殿」

―なんだい?―

 

「何故貴方は私に干渉できるのでしょうか?」

―私はコンプリート大魔女だからね!召喚に応じた旦那様のサポートもバッチリなのさ!―

「……なるほど、大したものですな」

 

当たり前のように干渉してくる大魔女の声を聞いたケイネスは、流石神代を代表する大魔女の一人だなぁと遠い目をしつつも思わず感心してしまうのであった。

 

 

 

 

「ふむ、マカリオス殿の願いは特にないと」

―そうだねー、旦那様は王様を守り切れなかった事を後悔してるけど、ヒュロス君を恨んでるわけではないし過去に戻りたいわけでもないのさ。まあ王様は過去に戻ってヒュロス君を八つ裂きにしろってうるさいけどねー。聖杯は君が好きにすればいいよ―

「私も特に聖杯に願いがあるわけではないのですが。戦争に勝利し経歴に箔を付けたいだけですので」

―ふーん、そうなんだ。じゃあ聖杯はこちらが貰ってもいいかな?旦那様と一緒に受肉して生前行けなかった新婚旅行に行ってみたいかも。というか行きたいな。絶対行きたい。いいよね?―

「……どうぞご自由にお持ちください」

 

大魔女からの脅迫もといお願いを聞いたケイネスは少し冷や汗を流しつつも寛大な精神で聖杯を渡す事にした。決して神代の大魔女に恐れをなしたわけではないのだ。

 

―ホント!?いやーありがとうね!話の分かるマスター君で助かったよー!よーし何処に行こうかなー!やっぱり王道を往くハワイ?いやいや箱根で温泉旅行も捨てがたいよね。いっそオーストラリアに行こうかな?うーんどうしようかなー悩むなー!あ、でもこういうのは勝手に決めたらダメだよね。旦那様と相談してから決めようか!旦那様なら「君と一緒に行くのなら何処でも楽しいよ」と言ってくれるだろうけど、やっぱり一緒に考えて決めたいよね!かーっつらいなー!旦那様から愛されすぎてつらいなー!―

「……本当に仲睦まじい夫婦なのですね。羨ましいものですな。私もソラウとそうなりたいものです」

―フフン!そうだろうそうだろう!なかなかわかってるじゃないか、ご褒美にこの礼装をあげよう―

「おお、これは……!感謝しますキルケー殿!」

 

ケイネスの何気ない発言を聞いた大魔女は機嫌をよくして大魔女特製の魔術礼装をプレゼントする。神代の大魔女からプレゼントされた魔術礼装はケイネスから見ても超一流の礼装であり、ケイネスは思わず感嘆の声を上げ大魔女に礼を言う。現代では絶対に造れないであろう魔術礼装に興奮しつつも、ケイネスは大魔女が上機嫌な内に気になっていた事を確認しようと尋ねる事にした。

 

「しかしキルケー殿、マカリオス殿は何故私の召喚に応じてくれたのですか?聖杯に望みがないというのならば召喚に応じないのでは?」

―あー、それはねー、ちょっと私の我儘というか……―

 

 

 

 

―私の旦那様の墓を荒らしやがったクソッたれで恥知らずな墓泥棒共を制裁したかったからだよ―

「ッ!?」

 

上機嫌な様子から一転して強い怒りを含ませた大魔女の声を聞いたケイネスは僅かに怯んでしまう……怒れる大魔女のプレッシャーを浴びて僅かに怯むだけですむケイネスは流石時計塔のロードである。

 

―いやね?私がちゃんとお墓に魔術結界を張ればよかっただけなんだけどね?旦那様の魂を迎え入れてアイアイエー島で誰にも邪魔されずラブラブ生活を送れると浮かれてて忘れてたんだよねぇ。気が付いた時にはもう干渉できなくてさぁ。まあヒュロス君が丁重に埋葬してくれてたし大丈夫だと判断したんだよね。それに良妻賢母な大魔女である私の事を知っているのなら旦那様の墓を荒らしたら私に報復されるってわかるだろうと思ってたんだよ。いくらなんでもそんな大馬鹿野郎はいないって楽観視してたのさ……でもいたんだよねぇ。救いようのない大馬鹿野郎が。私ちょっと人間の愚かさを舐めてたよ。いやでもアイツら人間じゃないか。主人達がいなくなった後も勝手に動いてるホムンクルス共だったか―

「な、なるほど」

 

―アイツら墓を暴いて旦那様のお気に入りの衣装だけでなく、お義母様の形見まで持っていきやがってさぁ。王様もドン引きしてたし何より私の旦那様が悲しそうにしてたんだよ。許せないよねぇ?旦那様が許しても私は許さねぇよ?というかお義母様の形見まで持っていくとか何考えてるのかなぁ?旦那様を呼び出す触媒の予備ゲットだぜ!とか呑気に考えてたのかなぁ?ふざけやがって

「それは、お気の毒に」

 

―わかってくれるかい?君は優しいねぇ。もう一つ礼装をあげようじゃないか……そして大馬鹿野郎共は衣装を触媒として旦那様を呼び出そうとしたのさ。その時の私は怒りを通り越して無になってたよ。だから旦那様に許可を貰った私は旦那様の代わりに召喚に応じたんだよ。そして聖杯に呪いをかけた上で触媒となった衣装と形見を取り戻してマスターを豚に変えて解体してからさっさと帰還したのさ―

「そ、そうですか……礼装はありがたくいただきましょう」

―うん、大事にしなよ。それとちょっと怖がらせちゃってごめんねー?―

 

大魔女の話を聞き終えたケイネスは思わず天を仰ぐ。大魔女に制裁された愚か者達についてはどうでもよかったが、聖杯に呪いをかけたと聞き仮に聖杯を手に入れてもまともに使えないのだと理解してしまったからだ。

 

「大魔女の呪いですか。それは現代の魔術師達では解除できないでしょうな。彼等も愚かな事をしたものだ」

―そうだねー、今の聖杯は私の呪いとは別に、その後も大馬鹿野郎共が汚物も混入させたから願望器としてはまったく使い物にならないよ。私でもないと無理だろうね、私の姪っ子でもキツイかなー?―

「えっ?」

 

さらりと言われた大魔女の発言にケイネスは柄にもなく呆然としてしまう。

 

「え、えっと、キルケー殿?汚物とは一体何の事なのですか?」

―えっとねー、この世全ての悪なアンリマユって奴―

「えっ?」

―ああいや、本物じゃないよ。神霊ではなくただの生贄になった村人だよ。サーヴァントとしては滅茶苦茶弱いけど聖杯を汚染させる性質があったんだよね―

「えっ?」

―今の聖杯は願いを捻じ曲げて叶えるから願望器としては論外なんだよねー。ああでも根源に至るだけならギリギリ使えるかな?でも私なら問題なく使えるから君は安心していいよ!なんなら使い終わった聖杯は君にあげるね!―

 

 

 

「……………えっ?」

 

 

 

……その後ケイネスは予想外の障害に頭を抱えつつも聖杯戦争に参加し優勝を目指す事になる。ケイネスは額に青筋を浮かべつつも聖杯戦争の優勝以外にも事態解決の為に各方面に働きかけ奔走する羽目になるのであった。




(キルケーからみた触媒)
・人間が造った引き千切れた大綱:問題なし。夫が召喚に応じるのなら妻として支えるつもり

・夫のお気に入りの戦装束:殺すだけではすまない。たとえ夫が許しても私は許さないし呪う

・お義母様の形見:君さぁ、酷いよ。なんでそんな事するの?私とっても悲しいよ。旦那様がすごく悲しそうにしてたんだよ?妻として許せないし何されたって文句は言えないよね?もう殺すしかないよね?殺すだけではすまないし生まれてきた事を後悔させた上で呪いをかけるね?



番外編をいくつか書いて第二章となる予定です。

FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。

ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。



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