もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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番外編となる続きです。

評価数が100,お気に入り件数が2000を超えていました。ありがとうございます。


マカリオスの悩みを聞くエウリュステウス王

ミュケナイの神前競技が開催された数日後、ミュケナイは平静を取り戻していた。ミュケナイを訪れた人々は半神二人の競い合いを見れてよかったと満足して帰国し、市民達もマカリオスが負けたのを少々残念に思いつつも普段通りの生活を送っていた。

 

「ぬぅ、どうすればいいのだ。あの化け物め、まさか私のマカリオスを圧倒するとは」

 

しかし宮殿にいるミュケナイの支配者エウリュステウス王は忌々し気な表情を浮かべて考え込んでいた。

 

ヘラクレスが神前競技の翌日にミュケナイを出発しているのはエウリュステウス王も当然把握しており、ヘラクレスにミュケナイを乗っ取られる心配がない事は王も理解していたが、自分が信頼しているマカリオスがヘラクレスに敗北した事実は王を不機嫌にさせていたのだ。

 

「チッ、わかってはいるのだ、十二の難行を成し遂げた化け物とミュケナイから出る事のなかった阿呆では経験の差が大きすぎるのは」

 

エウリュステウス王はマカリオスが負けた原因を冷静に把握し悩む。神前競技が終わった直後は少々荒れていた王であったが、数日が経過し頭を冷やした結果苦い顔をしつつも現実を受け入れていた。

 

「化け物に対抗できるようにするには阿呆にも経験を積ませる必要があるのは理解しているが、阿呆はミュケナイの国防の要だ。たとえ一時的だとしても国外に出すわけにもいかぬし、何より阿呆は王の臣下として私を護る義務がある」

 

マカリオスに経験を積ませようにも国外に出すのは論外だと考えたエウリュステウス王は眉間に皺を寄せて考え込む……一番大きな理由としては自分を護らせる為であったがエウリュステウス王としては当然の事であり何一つ疑う余地はなかった。

 

「では高名な勇士を呼んで師事させるか?だがケイローン殿は既に帰国しているし、ケイローン殿以上の教育者などいるはずがない。化け物に対抗できるようにするには並の武芸者では参考にならんだろう」

 

もう一つの案である高名な勇士へ師事させる案もダメだと頭を抱える。八方塞がりなエウリュステウス王であったが、その時ふとある事を思い出す。

 

「そうだ、阿呆の妻である大魔女に補佐させればよいではないか。化け物から見てもあの大魔女は脅威だろうし、阿呆にベタ惚れな大魔女は夫を助けようと全力を出すだろう。なんだ、何も問題ないではないか!」

 

別に悩む必要などなかった事を理解したエウリュステウス王は明るい表情を浮かべていた。

 

「フハハッ、私とした事がそんな事もわからなかったとは随分と焦っていたようだ。一人で悩み込んでいたのが馬鹿馬鹿しいな……しかしよく考えてみれば阿呆が負けなかったら私も悩む必要などなかったのではないか?」

 

マカリオスのせいで数日間悩み続けていた事に腹が立ってきたエウリュステウス王は阿呆を呼び出し軽く制裁しようと決意するのであった。

 

「私も最近奴を甘やかしすぎていたようだ。ちゃんと躾けておかねばな」

 

 

 

 

「……我が王よ、何なりと御命令を」

「う、うん?ど、どうしたのだ私のマカリオスよ?妙に気が沈んでいるようだが貴様らしくもない」

 

目の前に跪いたマカリオスを見たエウリュステウス王は、マカリオスが妙に沈んだ顔をしている事に気付き困惑する。

 

「いえ、大した事ではございませんので。王に御心配をおかけして申し訳ありません」

「いや大した事あるだろうが!何があったのだマカリオスよ!言え!正直に申せ阿呆が!私相手に隠し事など許さんぞ!」

「も、申し訳ありません我が王よ」

 

何かあったのだと察したエウリュステウス王は制裁するより前に確認しておかなければならないと問い質す事にした。王の優れた直感がこれを放置したらマズイと警報を鳴らしていたのだ。

 

「その、妻と少々口論になりまして……」

「よぉしわかった!なるほど夫婦喧嘩というわけだな!そうかそうか!では王として一肌脱ごうではないか!」

「えっ、い、いえ、王の御手を煩わせるわけには」

「なぁに気にするな!臣下の悩みを聞き解決に導くのも王の務めだ!貴様は何も遠慮せず私に話せばよいのだ!」

「わ、我が王よ……!」

 

大魔女と口論したというマカリオスの言葉を聞いたエウリュステウス王は最優先で対処しなければならない問題だと理解する。引きつった顔を浮かべつつも自分の為に動いてくれるエウリュステウス王を見て、なんと素晴らしい主君なのだろうとマカリオスは感動し更なる忠誠を誓うのであった。

 

 

 

 

「それで?口論になった経緯を申してみよ」

「は、はい」

 

その後エウリュステウス王から問われたマカリオスはぽつぽつと話し始める。

 

「お恥ずかしながら娘の事で妻と口論してしまったのです」

「ふぅむ、子供の事で口論か。まあよく聞く話ではあるな」

 

娘の件で口論になったというマカリオスの言葉を聞いてエウリュステウス王はよくある話ではないかと考えるが、この呑気な阿呆が口論するとは余程の事があったのだろうと察していた。

 

「だが貴様が口出しするとは珍しい。一体何があったのだ?」

「ええと、妻がイェラを豚にしたいと言い出しまして」

「……………なんて?」

 

だがマカリオスの言葉を聞いた王は話を理解できず思わず困惑してしまう。王の傍で話を聞いていた侍従や臣下達も困惑し互いに顔を見合わせていた。

 

「え、自分の娘を豚にしたい?え、何故だ?」

「その、妻はイェラがこんなに可愛いのだから豚にしたらもっと可愛いと言いまして。豚にしてもっと沢山愛でたいと」

「いや何故そうなるのだ……?あの大魔女の思考が理解できんのだが?」

 

マカリオスから説明されてもエウリュステウス王はまったく理解できず首を傾げて困惑していた。

 

「妻はとてもいい笑顔を浮かべて提案していまして、私としても否定したくはなかったのですが、娘を豚にするのはダメではないかと思い口論となってしまったのです」

「うむ、それは貴様が正しいと思うぞ?娘を豚にするのは誰が聞いてもおかしいと思うし、誰だって止めるだろうな、うむ」

 

これはマカリオスが止めようとするのは当然だと納得したエウリュステウス王は何とも言えない顔をする。

 

「妻は少しの間豚にして愛でるだけで、ずっと豚に変えるわけじゃないから問題ないし安心してほしいと言ってましたが、止めた私が狭量なのでしょうか?」

「いやそういう問題なのか?自分の娘を豚に変えるのが問題だと思うのだが?それと貴様は阿呆だが狭量ではないと思うぞ。あの大魔女と夫婦をやれるのだからな」

 

エウリュステウス王は思わず真顔でツッコミを入れつつマカリオスを肯定するが、同時に大魔女の機嫌を取る必要があると理解していた。

 

「よし、こういう時は何か贈り物を携えて謝ればいい。宮殿の宝物庫から何か一つ持って行く事を許そうではないか。あの女は貴様からの贈り物なら何でも喜ぶとは思うが、念には念を入れて財宝を贈るべきだ。ああでも他人に任せず自分で決めるのだぞ?大魔女はお前が自分で選んだ物しか受け取らないだろうからな」

「お、王よ、多大な御厚意を賜り私は非常に感激しておりますが、ただの夫婦喧嘩にそこまでしていただくわけには」

「よい、かまわぬ。というか貴様らが仲良くしてもらわなければミュケナイの民や何より私が安心できんのだ」

 

恐縮するマカリオスに対してエウリュステウス王は思わず本音を漏らしつつも、マカリオスとキルケーが上手くいくように取り計ろうとしていた。

 

「ううむ……仕方ない。私が貴様の屋敷に直接乗り込み和解の執り成しをしてやろうではないか。ほらマカリオスよ、さっさと行くぞ」

「お、王自らですか!?そんな恐れ多い!」

「いや私だって本当は嫌なのだがな?でも貴様だけだと上手くいく気がしないし、私は大神に認められし王としてミュケナイの平和を守らればならんのだ。では行くぞ、ついてまいれ!」

 

そしてエウリュステウス王は嫌嫌ながらもミュケナイの平和を守る為に夫婦喧嘩の仲裁をしようとマカリオスの屋敷に乗り込むのであった。

 

 

 

 

「あー、わざわざ喧嘩の仲裁の為に来てくれたの?迷惑をかけてゴメンね、もう大丈夫だから王様は心配しなくてもいいよ。旦那様もゴメンね?」

「「えっ?」」

 

いざ屋敷に乗り込んだエウリュステウス王とマカリオスであったが、二人を出迎えたキルケーがションボリした様子をしているのを見て困惑していた。

 

「お、おい何があったのだ大魔女よ。そんな悄気た顔を見せるなど貴様らしくもない」

「キルケー、一体何があったのだ?君がそんな顔をしてるなんて君らしくないぞ。俺は君のそんな顔は見たくないし何時も笑顔を浮かべてほしいんだ。朝の一件は俺が悪かったし謝罪しよう。それと頭の悪い俺でも君の為に何かできる事はないだろうか?」

 

ションボリしたキルケーを見たマカリオスは心から妻の事を案じていた。そんな夫の姿を見たキルケーは瞳を潤ませると、やがて涙をポロポロと流しながらマカリオスに抱きついて泣き始めた。

 

 

 

 

「旦那様ぁッ!聞いておくれよぉ、今朝の口論についてお師匠様に愚痴ったらさぁ!「お前何を考えてるんだ」って呆れられた上に説教されてさぁ!それは旦那様が正しいとか、お前は優秀だが性癖は理解できないとか、お前変なキュケオーンでもやってるのかとか、キュケオーンばかり食べてるからそうなるのだとかさぁ!酷くないかなぁ!?キュケオーンを変な薬扱いとか酷くないかなぁ!?旦那様もそう思うだろう!?」

「うん、そうだな。それは言い過ぎだと思う。君の作るキュケオーンは何時も美味しいし全然飽きないぞ」

 

「そうだよね!?やっぱり旦那様もそう思うよね!?キュケオーンは美味しいし朝昼晩毎食キュケオーンでも大丈夫だよね!よかったぁ……あ、それとお師匠様以外にも色々言われてさぁ!両親からも注意されたし大神にも釘を刺されたんだよぉ。愛娘を豚にして愛でるってそんなにダメかなぁ?」

「いや、君の趣味は否定しないぞ。だがイェラ本人の了承を得ずに豚にするのはよくないと思う。あの子はまだ幼いしいきなり豚に変えられたら泣いてしまうだろうからな。そうだ、そんなに豚にしたいのなら俺が代わり豚になればいいのではないか?そうだそうしよう」

 

「だ、旦那様ぁ!旦那様は優しいなぁもぉ~!流石私の旦那様だよ!あーもう好き!すっごい好き!魂まで好きだし死後はアイアイエー島で誰にも邪魔されず一緒に過ごそうね!約束だよ!……ああでも旦那様を豚に変えるのは無理かな。私も旦那様を豚にして愛でたいけど旦那様を豚にするのはかなりの労力が必要だろうし、それに大神様との約束があるからね。気持ちはありがたく受け取っておくよ。ありがとね旦那様。じゃあ仲直りの証として一緒にキュケオーン食べる?」

「そうだな、一緒に食べようか。君の作ったキュケオーンが食べたいな」

「うんわかったとも!旦那様の為に私の特別な血が入った特製キュケオーンを作るから期待して待ってておくれよ!」

 

 

 

(いやそれでいいのか?その豚にして愛でたいという執念は何処からくるのだ……?)

 

マカリオスとキルケーが和解しイチャつくのを見たエウリュステウス王は色々とツッコミたい気持ちを抑えつつも、命が惜しいので沈黙していた。そして二人が仲直りした事に安堵しさっさと宮殿に戻る事にした。

 

「ふぅ、世話が焼ける二人だな。もう私が出張る必要はなさそうだし宮殿に帰るぞ。二人とも今後も仲良くするのだぞ」

「御手を煩わせてしまい申し訳ありません。お詫びに妻の作る特製キュケオーンはいかがでしょうか?」

「いやいらん。お前は食べても平気だろうが私は豚になりそうだからな」

「そうだねー、これから作る私の特別な血が入った特製キュケオーンを王様が食べたら身も心も豚になって二度と戻らなくなるだろうしやめた方がいいよ?」

「なんだその恐ろしい呪物は。というか特別な血とはなんなのだ……?いや、多分ろくでもない物だろうし教えなくてもよいぞ。ではな」

 

エウリュステウス王は空気を呼んで屋敷から出る事にした。そして宮殿に戻った王は大きく溜息をつくと疲れた様子で今日は早めに就寝する事を決意した。

 

……こうして後世ではエウリュステウス王の仲裁と呼ばれる一件は幕を閉じた。その後妻が第二子を妊娠したとマカリオスから報告を受けたエウリュステウス王は少し呆れつつも二人がこちらに迷惑をかけず仲睦まじいのならいいかと思い直すのであった。




キルケーの特製キュケオーン:キルケーの特別な血を使った特製キュケオーン。旦那様にしか食べさせない特別なキュケオーンであり非常に美味だが、豚になる呪いは通常のキュケオーンとは比較にならない程強力。普通の人間が食べたら身も心も豚になり二度と元には戻らない。特別な血は何なのかと聞いてもキルケーはただ微笑むだけで教えてはくれない模様。



FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。

ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。



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