もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら 作:名無しのマネモブ
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「ふぅ……平和だな」
マカリオスとキルケーが夫婦喧嘩をして無事和解してから一ヶ月後、平和が戻ったミュケナイにてエウリュステウス王は刺激の少ない平穏な日常に少々退屈しつつも、平和が一番だと肩の力を抜いてリラックスしていた。
「あの阿呆と大魔女には迷惑をかけられたが無事に解決できてよかった。それに大魔女が第二子を妊娠したそうだし私を守る臣下が増えたのはよい事だ」
エウリュステウス王としては王である自分がわざわざマカリオスの屋敷に出向く羽目になったのは気に入らなかったものの、最終的に自分とミュケナイを守る臣下が増えたので終わり良ければ全て良しと考える事にした。
「あの阿呆達の二人目の子供もまともな性格で生まれてほしいものだ。父親のように私に忠誠を尽くすのであれば多少阿呆でもいい、忠誠心は何よりも重要だからな。あの突然発狂する化け物みたいな奴は論外だ…………さて、いい加減現実を見るか」
まだ生まれていないマカリオス夫妻の二人目の子供について考えていたエウリュステウス王であったが、やがて嫌そうな顔を浮かべつつも目の前に跪いている女戦士を見る。
「エウリュステウス王よ、どうかミュケナイの守護者の子種をいただく御許可を」
「貴様阿呆なのか?」
マカリオスの子種を欲する女戦士……アマゾネスを見たエウリュステウス王は命知らずにも程があるだろうと呆れてしまう。
「今の言葉は聞かなかった事にしよう。悪い事は言わぬからミュケナイからすぐに立ち去れ。あの大魔女に聞かれていたら貴様の命はないし悲惨な最後を迎える事になるのだぞ?わかったらさっさとミュケナイを去るがよい」
―それは冗談かな?面白い事言うなぁこのアマゾネスは。それが遺言でいいんだね?―
「ほぉら言わんことじゃない!身重の大魔女を刺激するなこの阿呆女がぁ!」
虚空から発せられる大魔女の静かにキレている声を聞いたエウリュステウス王は、折角大人しくなったのに余計な事をするんじゃないと思わず頭を抱えてしまうのであった。
―いやー、君達アマゾネスは本当に懲りないねぇ。私という妻がいるのを知っていながら旦那様の子種を欲しがるんだから。まぁね?君達から見ても旦那様がとても魅力的なのはわかるよ?旦那様の子種ならとても強い子が生まれるだろうと考えるのは理解できるよ?でもねー、既婚者に手を出すのは殺されても文句は言えないよねー?というわけで殺すね?それもただ殺すのではなく見せしめとしてお前の死体を故郷に送り付けるから惨たらしく殺すからね?じゃあどういう死に方がいいかな?まず豚にしてから丁寧に解体されたい?それとも穴という穴から血と臓物を吐き出して干からびた木乃伊にしようか?いや身体から骨だけ抜きとるのもいいかもね。ああでもこういう時はやはり王道を往く串刺しかなぁ?……………おい、何を黙って震えてるんだよ。せめて死に方は選ばせてやるからどんな死に方をしたいのか早く言えよ。おい―
「く、くぅっ」
「お、落ち着け大魔女よ。このアマゾネスはただ愚かなだけで悪気はないのだ。王として慈悲を見せてやらねば……というかここでやるつもりか?ここは玉座の間だからやめてほしいのだが?」
―ああ安心しなよ王様、片付けは全部こちらでやっておくからさ。王様は証人としてコイツの処刑に立ち会ってほしいんだ―
「いやそんなの見たくないのだが!?」
怒り狂う大魔女にエウリュステウス王は怯えてしまうが、惨たらしい処刑など見たくない王は自分が最も信頼する臣下を頼る事にしたのであった。
「ま、マカリオス!マカリオスよ早く来い!貴様の妻を宥めてくれ!」
「招集に馳せ参じました我が王よ。ですがこれはどういう状況なのでしょうか?この方は外から来た訪問者のようですが」
―旦那様の子種を欲しがった学習能力のない泥棒猫だよ!今から妻の私が責任を持って処刑するから旦那様は静かに見守ってほしいな!―
「ううむ、どういう状況なのかよくわからないが……落ち着いてくれキルケー。俺を想って怒ってくれるのは嬉しいがお腹の子に悪いから怒りを鎮めてくれ」
―あ、そうだった。ゴメンね―
夫の言葉を聞いたキルケーは少し落ち着く事にした。それを見てホッとしたマカリオスは訪問者であるアマゾネスに申し訳なさそうに答える。
「貴方はアマゾネスなのか。俺の為にわざわざ遠くからミュケナイを訪ねてきてくれたのが嬉しい。しかし申し訳ないが俺は既婚者だから貴方の要求には応えられないのだ」
「だ、だがマカリオス殿、キルケー殿。子種だけ、子種だけ貰うのなら浮気ではないとは思うのだ!子種さえ貰えればすぐに帰国するからどうか、どうかこの通りだ!」
―何だよそのふざけた理屈は?土下座しても許されるわけないだろ?まいったなぁ、ホントの本気で殺したくなってきちゃったよ―
「落ち着いてくれキルケー……何故貴方はそこまでして俺の子種が欲しいのだ?」
震えながらも必死に自分の子種を欲しがるアマゾネスを見たマカリオスは妻を落ち着かせつつ何故自分の子種が欲しいのか尋ねる。
「あの男に滅茶苦茶にされた国を立て直す為だ。あの男のせいでヒッポリュテ様が殺され戦士達も大勢死んでしまった。私としてはあの男に復讐したいがアマゾネスでも有数の戦士だったヒッポリュテ様を容易く殺していた大勇士に勝つ事は私では到底不可能だろう……そこで私は考えた。私では無理でも私の子に託せばいいと。そしてあの男に匹敵するというマカリオス殿の子種なら必ず強い子が生まれてくれると考えた私は故郷を離れミュケナイを訪れたのだ」
「おお、スゴい覚悟だな。貴方が真剣なのはわかるぞ。それと貴方の言うあの男とはヘラクレス殿の事なのか?」
「ああ、あの化け物の被害者か。そういえば難行の一つでアマゾネスの国からアレスの軍帯を持ってくるように化け物に命じておったな」
ヘラクレスに対抗できる強い子を生む為にマカリオスの子種を求めたと知ったマカリオスとエウリュステウス王はある程度納得するが、キルケーは知った事ではないと突き放す。
―うん、それお前の都合だよね?旦那様が付き合う義理はないよね?いい加減にしないと豚にして国外追放するよ?―
「キ、キルケー殿!どうか、どうか御慈悲を!私は国の為に、アマゾネスの未来の為にマカリオス殿の子種が必要なのだ!」
―はいっ、屑確定!生まれた事を後悔させてあげるよ覚悟しろ―
「だから落ち着いてくれキルケー」
大魔女を必死に宥めるマカリオスを見つつエウリュステウス王はどうすればいいのか悩んでいたが、やがて溜息をついてとある提案をする。
「ああもう、強い子を生む為に子種がほしいのならば別にマカリオスじゃなくてもよいだろうが。このままだと大魔女に惨殺されるだけだし、ならばあの化け物に子種を恵んでもらえばいいのではないか?」
「えっ?」
「何を呆けておるのだ。貴様はただ強い子を生みたいだけでマカリオスに情があるわけでもないのだろう?ならば化け物の子種でも別にかまわんだろうに。確か報告では不幸な行き違いで争う事になったが、最初は軍帯と引き換えに貴様等アマゾネスは化け物の子種を貰うつもりだったと聞いておるが?」
「そ、それはそうなのだが」
エウリュステウス王の提案に戸惑うアマゾネスであったが、そこにマカリオスが助け舟を出す。
「うむ、俺よりも優れたヘラクレス殿なら貴方も満足するだろう。俺の子種はあげられないが貴方がヘラクレス殿に会えるよう協力する事はできるぞ。アマゾネスの使命に真摯な貴方の為に紹介文を書こうじゃないか。キルケーもそれならいいだろう?」
―ふぅ~〜〜ッ……まあ、それならいいかな。じゃあ私は泥棒猫がヘラクレスと会えるよう案内してあげる。その後は自分で頑張りなよ―
「ふぅん、わざわざこの阿呆な女の為に紹介文を書くとは相変わらずお人好しだな。なら私からも書いてやろうか?私としては貴様がすぐミュケナイから出国するのなら書いてやってもいいぞ?貴様がいると大魔女が荒れて怖いのだ」
マカリオス達の言葉を聞いたアマゾネスは最初は困惑するも、やがて目を輝かせて感謝の言葉を述べていた。ちなみにエウリュステウス王は自分が命じた難行のせいでアマゾネスの女王が死んだ事については化け物がしくじったせいであり自分は悪いとはまったく思っていなかった。怒れる大魔女を大人しくできるのなら紹介文を書くからさっさと出て行ってほしいだけである。
「感謝する!確かにあの男は復讐相手だが、あの男の子種は是非とも欲しかったのだ!この恩は決して忘れないぞ!」
「いや貴様はそれでいいのか?アマゾネスの価値観はよくわからんなぁ……まあいい、紹介文を書いてやるから早くミュケナイから去るのだぞ?」
優秀な子種なら復讐相手でも全然かまわないというアマゾネスにエウリュステウス王は蛮族の価値観はわからんと呆れつつも紹介文を書く事にした。
「しかしまっすぐな目をしたアマゾネスだな。彼女が上手くいくようにアマゾネス達が信じるアレス神に祈るとしよう」
―旦那様はこんな泥棒猫にも優しいねぇ……やっぱりちょっとムカつくから嫌がらせしてやろうかなぁ―
マカリオスはアマゾネスが目的を達成できるよう彼女達が信仰するというアレス神に祈る事にした。
その後ミュケナイを出たアマゾネスは大魔女キルケーの案内の下ヘラクレスに会う為に様々な場所を旅する。キルケーから嫌がらせを受けつつもアマゾネスは決して挫ける事なく立ち向かい、最終的にアルゴー号に乗り込もうとしていたヘラクレスと会う事になる。エウリュステウス王とマカリオスの紹介文を見たヘラクレスは何とも言えない顔を浮かべつつもアマゾネスの努力を認めて彼女を抱く事にした。そして目的を果たしたアマゾネスは意気揚々と帰国した後待望の女児を産み、他のアマゾネス達からアマゾネスの鑑であり勇者だと称えられたのであった。
……そして数十年後、トロイア戦争にてトロイア軍として参戦したアマゾネス達の中に一際大柄で父親譲りの肌色をした美しい戦士がいた。アマゾネスの筆頭戦士である彼女は卓越した武勇を持ちギリシャ軍を圧倒する。自分に対抗できる大勇士を見たアキレウスは非常に興奮した様子でアマゾネスの筆頭戦士に挑みかかり昼夜問わず二日も続く激戦が始まった。
騎馬戦や射撃戦、パンクラチオンやその他諸々の形式で闘う二人を両軍が固唾をのんで見守る中、最終的にアキレウスが優勢だったが決着がつかず勝負は持ち越しとなる。アキレウスはミュケナイの守護者以外にも自分と闘える強者がいた事に喜びつつ再戦に胸を躍らせていた。だがアマゾネスの筆頭戦士が何故か帰国してしまいアキレウスの不戦勝となり、何故アマゾネスの筆頭戦士が突如帰国したのか後世の研究家は頭を悩ませる事になる。
ちなみに筆頭戦士の帰国についてはアマゾネス達を率いた女王ペンテシレイアは何故か笑顔で筆頭戦士を送り出していたとか、再戦を要求しに乗り込んだアキレウスが事情を聞いて何故か納得しつつも何とも言えない顔をしていたとか、その後のアマゾネスの新しい女王には何故かアキレウスの血が入っていたとか様々な風説があるが真偽は定かではない。
この世界のペンテシレイアは未来への希望を信じて笑顔で逝きました。
FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。
ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。
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