もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら 作:名無しのマネモブ
新たな冒険に出るヘラクレスと静かに暮らしているマカリオス
「これがアルゴー号か。噂通り立派な船じゃないか」
ミュケナイを旅立ってから数年後、各地を放浪していたヘラクレスは現在イオルコスに滞在していた。イオルコスの王子であるイアソンがコルキスの秘宝である金の羊の皮を手に入れる為にアルゴー号を建造し英雄達を集めている事はヘラクレスも知っており、興味を惹かれた彼はイオルコスを訪れていたのだ。
「あのアマゾネスは既に帰国したようだ。アルゴー号に乗り英雄として名を上げるよりもこれから生まれてくる子供の事が大事なのか。ククッ、本当に私の子種しか興味がないとは。エウリュステウス王が紹介文に書いてた通り阿呆だがある意味純粋な女だったな」
先程までいたアマゾネスの戦士がさっさと帰国したのを察したヘラクレスは苦笑しつつも目的を達成した彼女を称賛する。そんなヘラクレスを見た周囲の人間達は噂の大勇士がいると興奮した表情で話し合っていた。
「おい見ろ、ヘラクレスがいるぞ。スゴい威圧感だ」
「おお本当だな。あの大勇士がイオルコスに来るとはやはりアルゴー号に乗るつもりなのだろうか?」
「まあそうだろうさ。ヘラクレス殿がいるのならイアソン王子の成功は約束されたようなものだ」
「はぁ、俺も彼のような大勇士になりたいものだよ」
ゼウスの血を引く半神の偉丈夫であるヘラクレスは非常に目立っており、周囲の人間達から恐れられつつも畏敬の念を集めていた。各地を放浪する傍らで様々な偉業を成し遂げ再婚したりするなどヘラクレスの名声は更に高まっていたが、ヘラクレスとしては十二の難行に比べれば大した事ではなかったと驕る事なく平然としていた。
「おおっ!君はあの名高き大勇士ヘラクレスだな!」
周囲から遠巻きに眺められていたヘラクレスを見つけたアルゴー号の船長イアソンは、ギリシャ最強の大勇士がイオルコスを訪れている事に歓喜し臆する事なくヘラクレスに近寄っていく。
「ようこそイオルコスへ。私はイオルコスの王子イアソンだ。そしてこのアルゴー号の船長でもある。ヘラクレスよ、確認しておきたいのだが君がイオルコスを訪れたのは私のアルゴー号に乗る為かな?」
「うむ、まあそうだな。興味本位でイオルコスに来てみたが、中々面白そうだし参加するのも悪くない」
自分の事を恐れず話し掛けてきたイアソンに好印象を持ったヘラクレスは、他に用事があるわけでもないし別にいいかとアルゴー号に乗るのを了承する事にした。
「ッ!……そうか、そうかっ!よくぞ参加してくれた!君のような大勇士を迎え入れる事ができて俺は、私は本当に嬉しいよ!君が来てくれた事を神々に感謝しようではないか!これからよろしく頼むぞヘラクレス!」
「ああ、よろしく頼むぞ船長よ」
「よし!では早速アルゴー号を案内しようじゃないか!これから君が乗る事になる船について私自ら説明してあげよう!アルゴー号はいい船だ、きっと君も気に入ってくれると確信しているよ!」
ヘラクレスがアルゴー号に参加すると聞いたイアソンは、あの大魔女の予言通りだったと歓喜し非常に上機嫌な様子でヘラクレスを歓迎する。船長自ら船を案内するという特別待遇であったがギリシャ最強の大勇士なら当然だと船員や勇士達は文句を言わず受け入れていた。そしてこれがヘラクレスとイアソンの出会いであり、アルゴー号の大冒険の始まりでもあったのだ。
そんなヘラクレスが新たな大冒険に出ようとしていた頃、ヘラクレスには劣るが類稀な武勇を持つと評判のミュケナイの守護者マカリオスは何をしていたかというと……
「イェラ、キュケオーンを食べなさい。キルケーが俺達家族の為に作ってくれた美味しいキュケオーンだぞ」
「いやだ、食べない!」
「ううむ、困ったどうすればいいんだ」
キュケオーンを嫌がり駄々をこねる愛娘を前にマカリオスがどうすればいいのかと困った顔をしていたのであった。
「イェラ、じゃあこっちのキュケオーンはどうだ?キルケー新作の子供向けの甘いキュケオーンだぞ」
「やぁーーーだっ!」
「うーん、イェラはいったい何が気に入らないのだ?こんなに美味しいのに」
「ねーちゃんがいらないならボクがたべるー!」
「おおそうか、アクイラは新作キュケオーンが気に入ったみたいでよかった。でもイェラが食べないままだしどうしようか」
駄々をこねるイェラと違って弟のアクイラは新作キュケオーンを美味しそうに食べていた。息子がモキュモキュと口を動かして食べているのを見たマカリオスは微笑むが、娘にどうやってキュケオーンを食べさせようか頭を悩ませる。
「おやおや私の愛娘は我儘だなー。こんなに美味しいキュケオーンが気に入らないだなんてまだまだお子様だね。フフフ……キュケオーンは君の成長を助ける多種多様な栄養素と私の愛情がたっぷり含まれている完全栄養食なんだぁ。キュケオーンさえあれば他の食べ物なんて必要ないと断言できるし、キュケオーンを食べ続けていたら君は立派に成長できると大魔女として保証するよ!さあ、わかったら美味しいキュケオーンを一緒に食べようじゃないか!……………いい加減にしないと口に直接キュケオーンを捩じ込んじゃうぞー?」
「ヒエッ」
駄々をこねていたイェラであったが、最終的に母親のキルケーから笑顔で最後通告を受け渋々ながらもキュケオーンを食べる事にした。
「……うぅ、美味しい」
「うんうん、気に入ったみたいで何よりだね。君が急にキュケオーンを食べなくなった理由は察しているけど、無駄な足掻きはやめた方がいいよー?」
「い、いやだぁ!」
キルケーの言葉を聞いたイェラは思わず涙目になる。そんな娘を心配しつつも妻が娘の悩みを見抜いていると知り流石だとマカリオスは感心していた。
「キルケーはイェラが食べなくなった理由がわかるのか。流石だなぁ」
「フフン、私は良妻賢母な大魔女だからね。私に隠し事なんて不可能なのさ……イェラは自分の身体がこれ以上大きくなるのが嫌なんだろう?」
「う、うん」
「まあ気持ちはわかるよ?君は大神ゼウスの血を引く旦那様に似てるからか身体がすくすくと成長している。今の時点で同年代の女の子達より二回り程大きいし今後差は広がっていくばかりだ。このまま健やかに成長していけばきっと旦那様のような立派な体格に育つだろうけど、イェラが好きな可愛い服は着れなくなるだろうねぇ」
「う、うえぇ……」
「そんな泣くほどの事なのだろうか?大きく育つのはよい事だと思うのだが」
「だよねー、ボクもとーちゃんみたいに大きくなりたいな!」
「うむ、好き嫌いせずキュケオーンを沢山食べればアクイラもきっと大きくなれるから大丈夫だ」
「やった!」
イェラは母親の言葉にショックを受けてシクシクと泣き始めてしまう。その様子を見た父親と息子は呑気に会話していたがイェラにとっては死活問題であった。
「ほらほら泣かないの。可愛い顔が台無しだよ……だが安心したまえ。私に良い案がある!」
「えっ?」
「私に弟子入りして魔女になればいいのさ!魔女となれば身長体重匂いだって思いのままに変えられるようになる。私が見たところ君はアクイラ程じゃないが魔術の才能が豊かだし、私に弟子入りすればイェラは魔女として大成できるだろうさ。どうだい?魔女になりたいかな?」
「な、なる!私魔女になって身体を縮めて可愛い服を着れるようになる!」
「よしよし、君の覚悟はわかったよ。なら私も先輩魔女としてイェラを立派な魔女になれるようビシバシ指導しようじゃないか!じゃあこれからは魔女の修行中は私の事を師匠と呼ぶように、わかったかな?」
「はい、師匠!」
娘が本気で魔女になりたいとわかったキルケーは満更でもない表情で娘の弟子入りを認めたのであった。
「うん、いい返事だね。イェラは真面目でいい子だし教え甲斐のある弟子になりそうで私も楽しみだ。まあ性格が魔女には向いてはない気がするけど大丈夫だろうね。少なくともかつて教えていた妹弟子の姪っ子に比べたら本当にいい弟子になりそうだし安心してるよ。いや本当に妹弟子は大変だったからね……才能はあるし優秀だったけど色々とブッ飛んでたからね……精神的疲労が大きすぎて背中の羽が抜け落ちちゃったよ」
「うん、なにはともあれイェラが喜んでいるしよかった。娘が喜んでいる姿を見ると俺も嬉しいよ」
「ねーちゃんよかったね!でもわざわざ小さくなりたいからまじょになるってへんなのー!アハハ!」
「うるさい!ぶつよ!」
「うわぁん!ねーちゃんがこわいよー!」
「こらこら、喧嘩はやめるんだ二人とも」
「そうだよー、二人とも仲良くしなさい。仲良くしないと二人とも豚にして愛でちゃうぞー?」
「「ヒエッ」」
ギャーギャー騒いでいた姉弟は母親の言葉を聞いて大人しくなる。その様子を笑って見ていたマカリオスはこんな素晴らしい家族と一緒に平穏に暮らせる事を幸せに思い神々に、特に家庭を司る女神のヘラに感謝の祈りを捧げるのであった。
「そういう事で、娘は妻に弟子入りし魔女として修行する事になりました」
「お、おお、うむ……いや、私に忠誠を誓い私とミュケナイを守るのであれば魔女になってもかまわんが……身体を縮めたいからというふざけた理由で魔女になるのは大丈夫なのか?」
「妻によれば過去にも似たような理由で魔女を目指した者が少数いたそうです」
「そ、そうか、うむ……まあ本人が後悔してないのであれば別にいいか」
……大魔女キルケーに弟子入りしたイェラはその後真面目に修行に取り組んだ結果、魔女として高い実力を持つようになり父親と同じくミュケナイに仕える事になった。多種多様な呪文や薬の知識を習得した彼女は優秀な魔女として後世に名を残したが、何故か素手での格闘戦が最も得意だったという逸話が残っている。
伝説では彼女の容姿は可憐な美少女だったと伝えられている。だが後に大魔術師となった弟のアクイラが残したイェラを模したという石像は非常に大柄で筋骨隆々な美女であった。どちらが本当の姿なのか不明であるが石像は貴重な文化遺産として、現代ではギリシャの国宝としてギリシャ国営の美術館に展示されており、石像を見に世界中から大勢の見物客が訪れるのであった。
大神ゼウスの血には勝てなかったよ……
FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。
ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。
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