もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。貴重な有給を生かして投稿できましたが次回の投稿は少し遅くなるかもしれません。


マカリオスとギガントマキア②

「……………」

 

それは本来ならばまだ起きるはずのない存在であった。本来であればギガントマキアが終結した後に目覚めるはずであったそれは、母なる大地の女神であるガイアによって強制的に叩き起こされる事になった。巨人達があまりにも一方的に倒される光景を見たガイアは自分の子供達を助けるべく最強の存在であるそれを起こしたのだ。

 

「……………」

 

それとしては巨人達の事などどうでもよかったのだが、ガイアの頼みを無視する事はできず本調子とはいえない身体を動かして大地の裂け目から飛び出し神々と対峙する事にした。

 

「……―――‼」

 

オリュンポスの神々を見回したそれは翼を広げて咆哮する……ギリシャ神話最強の怪物テュフォンは神々を打倒すべく動き出すのであった。

 

 

 

 

「ああ帰りたいなぁー、なんなのさあの怪物は?神々でも荷が重いよあれは?いくらヘラクレスや旦那様がいてもキツイってば。なんでガイアも今出してくるのかなぁ……そんなに子供達の事が心配なら最初から出してこればよかったのに。巨人達とテュフォンが同時に向かってくれば神々でも逃げ出すしかないしガイアの完全勝利だったのに。戦力の逐次投入は愚策だと良妻賢母な大魔女の私でもわかるんだけどなー。あの竜相手に人間ができる事なんて殆どないでしょ。いや旦那様達は大神の血を引く半神だけどさ。あーあ、誓いがなかったらヘラクレスを囮にして旦那様連れてさっさと逃げてたのになー」

「落ち着いてくれキルケー。それとヘラクレス殿を囮にするのはよくないと思うぞ」

 

一方その頃、不貞腐れた顔で体育座りしてぶつぶつと文句を言い続けるキルケーをマカリオスは必死に宥めていた。

 

「キルケー、あの怪物を見て君が気後れするのは仕方ないが大丈夫だ。俺が絶対に君を守るから安心してくれ。それに君がいるならあの恐ろしい怪物だって倒せると俺は信じているよ」

「そ、そうかなぁ?」

「ああそうだ、君は世界で一番素晴らしい大魔女だし俺の自慢の妻だ。君のような素敵な女性が妻になってくれて俺は本当に幸せ者だといつも思っているよ」

「そ、そうかー……そうかー!いやー旦那様からそこまで想われているだなんて私も幸せだよ!かーっつらいなー妻として恵まれすぎてつらいなー!よぉしいいだろう!私と旦那様の愛の力をあの竜に見せつけようじゃないか!」

 

「……あの言葉を本心から言えるのだから大した奴だよあの阿呆は」

「うん、そうだな、キルケーさんと夫婦をやれるマカリオスのオッサンってスゲエよな」

 

キルケーの説得に成功し胸をなでおろすマカリオスをヘラクレスとアキレウスは称賛の目で見つめていたがマカリオスがそれに気づく事はなかった。

 

「すまないヘラクレス殿、時間を取らせてしまった。作戦を話してほしい」

「うむ、いいだろう。あの怪物は私が今まで見てきた怪物共よりも遥かに恐ろしい敵だ。並大抵の攻撃は通用しないだろうし、普通ならば近づく事もままならないだろう。だが奴は今神々の方に意識を向けていて隙を見せている今なら機会がある」

 

マカリオスから問われたヘラクレスは作戦を説明する事にした。

 

「ただの武器による攻撃では奴を殺しきる事はできないだろう。だが幸いにもこちらには神々や巨人にも通用する致命的な毒がある」

「あの毒矢か」

「そうだ、ヒュドラの毒ならばあの竜にも通用するはずだ」

 

必殺の武器であるヒュドラの毒矢を取り出したヘラクレスは自分ともう一人に矢を持たせた上で説明を続ける。

 

「我々は神々が奴の注意を引き付けている間に、奴の隙を突いて攻撃する。マカリオス、貴様は最初に突撃して奴を思いっきりぶん殴ってくれ」

「おお、わかった!怪物退治の達人であるヘラクレス殿の指示に従おう!」

「よし、では私はマカリオスが攻撃した直後に斬りかかり奴の傷を広げてからヒュドラの毒矢を突き刺す。キルケーはマカリオスと私に強化魔術をかけて援護を、アキレウス、君はいざという時の保険として待機だ」

「はいはいわかったよー」

「任せてくれよ!」

 

―うむ、お前達の考えはわかった。それでいいだろう。では我々はあの竜の注意を引くとしよう―

 

ヘラクレスの作戦を聞いた大神ゼウスは了承しヘラクレス達を援護する事にした。そして神々の援護を受け姿を隠したヘラクレス達は覚悟を決めてテュフォンに近づいて行くのであった。

 

 

 

 

 

「……あの竜め、こちらに気付いているな」

「流石にこれ以上は隠密行動は無理か」

「ああ、一気に出るしかないな。マカリオス、いけるか?」

「よし!任せてくれ!行くぞぉッ!」

 

テュフォンに捕捉されたのを察したヘラクレス達は一気に飛び出す事にした。当然テュフォンが迎撃するが神々の妨害によって攻撃をそらされ先陣を突っ走るマカリオスに直撃する事はなかった。キルケーの全力の支援を受けたマカリオスは凄まじい勢いでテュフォンに突撃していく。

 

―受け取れ、マカリオスよ!―

「オ、オオオオオッ!」

「…………!」

 

テュフォンに雷撃を浴びせつつ大神ゼウスは自分の神の力を込めた雷撃をマカリオスに当てる。マカリオスはいつも以上に激しい雷光を身に纏い、雷光に身を焼かれつつも突進をやめず全身全霊の一撃をテュフォンにブチ当てた。大神の雷を纏ったマカリオスの一撃によってテュフォンは無視できないダメージを受け、テュフォンも思わず怯んでしまう。

 

「大神よ、どうか私にも!」

―うむ!―

「感謝いたします!いくぞ竜よ!このマルミアドワーズならば!」

「…………!?」

 

そしてマカリオスが攻撃した直後にヘラクレスが追撃を行う。自分が持つ最高の剣……マルミアドワーズに大神の雷を纏わせたヘラクレスは、激しい雷光に身を焼かれながらもマルミアドワーズでテュフォンを斬りつけ傷を大きく広げていた。大きく開かれた傷からは脈動する心臓が見えており、ヘラクレスはこの好機を見逃さずすぐさま弓矢に持ち替え致命の一撃を入れようとする。

 

「これで終わりだ!」

「!!」

「……心臓を動かすのは反則だろう」

 

だが危機感を覚えたテュフォンは身体の内部を操作して心臓を動かし、毒矢の直撃を免れる。そして毒矢が刺さった箇所を瞬時に切り離したテュフォンは迎撃しようと動き出し……

 

「…………!?!?!?」

「だが今度こそこれで終わりだ。よくやったぞアキレウス。君は素晴らしい大勇士だ」

 

その直後に透明化して忍び寄っていたアキレウスがヒュドラの毒矢をテュフォンの心臓に突き刺したのであった。

 

 

 

 

 

「っ、しゃあっ!やった、やったぞ!」

 

自分の全身全霊を込めた毒矢の一撃がテュフォンの心臓に突き刺さったのを見たアキレウスは歓喜し名乗りを上げる。

 

「どうだ見たか竜よ!覚えておけ、俺がアキレウスだ!……まあキルケーさんやヘカテー神が協力してくれたお陰だけどな。ハァ、上手くいってよかったぜ。でもこのハデス神の兜はすごいな!」

 

アキレウスは自分の存在を完全に隠匿したハデス神の兜に感嘆し溜息をつく。

 

「あの大勇士ペルセウスが使っていた兜を自分が使う事ができるだなんて。このまま自分の物にしたいけど……神々は今回特別に貸すと仰ってたし無理だろうなぁ」

 

かの大勇士が使っていた伝説の兜が自分の物にできない事を残念に思いつつも、苦しそうに悶えるテュフォンを見て安堵していた。

 

「よし、ちゃんとヒュドラの毒は効いているみたいだ。こんな恐ろしい怪物にも効くだなんてヒュドラの毒スゲエな……そしてそのヒュドラを狩ったヘラクレスさん本当にスゲエな!それと先陣を切ってぶん殴ってたマカリオスのオッサンもスゲエや!俺は、俺はあの二人に並びたてる大勇士に絶対になるぞっ!」

 

二人に並ぶ大勇士になると改めて誓うアキレウスであったが、テュフォンが苦しみつつも起き上がるのを見て緊張が走る。

 

「おいおい、ヒュドラの毒を受けてるのに動けるのかよ!巨人だって悶え苦しんで死ぬ代物なんだぞ!?」

「こらこら落ち着きなよアキレウス君……あーこれヤバいね、一旦退避しようか」

 

キルケーは魔術を使い負傷したヘラクレスとマカリオス、そしてアキレウスを退避させる。

 

「あの竜、自分を改造してヒュドラの毒に適応しようとしてるね。おおスゴイな、神々でもそんな事は出来ないのに大したものだよ」

「えっ、いやそれかなりヤバいんじゃないか!?」

「うん、滅茶苦茶ヤバいね。恐らく完全に適応したらヒュドラの毒が効かなくなるし、全身からヒュドラの毒を撒き散らす最凶最悪の怪物が生まれるだろうね」

 

テュフォンがヒュドラの毒に適応しようとしている事を冷静に話すキルケーに対してアキレウスは顔を青褪め激しい焦燥に駆られていた。

 

「お、おいまずいぞ!?どうするんだよキルケーさん!ヘラクレスさんとマカリオスのオッサンは雷に全身を焼かれて動きが鈍いし、ヒュドラの毒が効かなくなればもう打つ手がないぞ!?」

「うん、そうだね。旦那様もヘラクレスもギリギリだしこれ以上戦うのは厳しいだろうね」

「いや落ち着きすぎだろ!?」

「おやおや?慌てすぎだよアキレウス君。君がそこまで慌てるなんて珍しいな。まだ子供なんだねぇ」

 

慌てるアキレウスを見たキルケーは苦笑しつつ落ち着かせようと言葉を続ける。

 

「確かにもう私達にできる事はもうないだろう。私達はね。けどもう十分だよ。もうこちらの勝利は約束されたからこれ以上働く必要はないよ?」

「えっ?」

「んー、まだ気づかない?本当に焦ってるんだねー……ここにいるのは私達四人だけじゃないだろう?」

 

―ヘラクレス、マカリオス、アキレウスよ、よくやったぞ―

 

苦しみながらも起き上がろうとしていたテュフォンだが、雷撃の強烈な一撃を受けて再び地面に倒れ伏す。そしてテュフォンの周囲をオリュンポスの神々が取り囲む。

 

―お前達の働きは見事であった。後は我々に任せるがよい―

 

そして苦しむテュフォンに対して大神ゼウス達は一斉に攻撃を開始し袋叩きを始める。海神ポセイドンはテュフォンを押さえつけ逃げられないようにしヘカテーが魔術で拘束を強化する。アテナが斬りつけて露出した心臓に大神ゼウスが雷撃を浴びせ、半神達に負けるものかと軍神アレスは雄叫びを上げてテュフォンを滅多打ちにし他の神々も袋叩きに参加する。神々の集中攻撃によって深刻なダメージを受けたテュフォンは動きを大きく鈍らせ、そこにヘパイストス神が造った神造製の鎖がテュフォンを縛り付けて拘束する。テュフォンは拘束から逃れようとするも動きは弱々しく鎖を破壊できず、誰が見てもこの戦いは神々の勝利だという事は明らかであった。

 

―よし、ではこの竜をエトナ火山に封印せよ……この戦い、我らの勝利だ。皆の者、勝鬨をあげよ―

 

そして勝利を確信した大神ゼウス達は、オリュンポスの神々は勝鬨を上げる……予想外の出来事が起こったものの最終的にギガントマキアはオリュンポスの神々の完全勝利で終わったのであった。

 

「よし、これでお終いだね!じゃあ怪我した旦那様を治療してあげないと……いやーしかし私の旦那様は最高だったなー!あの大神の雷を身に纏った姿は本当にカッコよかったし惚れ直したよ!かーっつらいなー!旦那様がカッコよすぎてつらいなー!おっといけない、旦那様も怪我してるし疲れてるだろうから早く治療してあげないと。フフフ、こういう時は私の特製キュケオーンを食べさせてあげようじゃないか!あのキュケオーンを食べたら怪我なんてすぐに治るだろうさ!あ、でもヘラクレスも治療しないといけないか。私の特製キュケオーンは旦那様にしか食べさせたくないんだけどなー、まあヘラクレスには普通のキュケオーンでいいかな」

「お、おぅ。あのキルケーさん、特製キュケオーンってなんだ?」

「ウフフ、知りたいのかな?」

「……いや、やっぱりやめておくぜ」

 

 

 

 

「おお見ろヘラクレス殿、神々が勝鬨をあげておられるぞ。よかった、俺達の働きは無駄ではなかったようだ」

「ああそうだな、あの竜に勝てたようだ」

 

神々が勝鬨をあげるのを見たマカリオスとヘラクレスは安堵しつつ起き上がる。二人は大神ゼウスの渾身の雷を身に纏ったせいで少なくないダメージを受けていたが命に別状はなく平然としていた。これが他の者であったら雷を身に纏った直後に即死していただろう。

 

「恐ろしい敵だった、もう二度とは戦いたくないぞ……でもこれで俺も怪物退治の功績をあげたわけだな!」

「いやダメだろうな。他人の手を借りた怪物退治は個人の功績とは認められないんじゃないか?私がヒュドラを討伐した時は従者の手伝いがあったから無効と判断されたぞ。今回は私やアキレウスや貴様の妻、それに大神ゼウスの協力もあったし個人で倒したとは認められんだろう」

「そ、そうか。残念だなぁ」

「フッ、冗談だよ」

 

残念そうにするマカリオスを見てヘラクレスは思わず笑ってしまう。穏やかな様子で会話をする二人であったが、今回の戦いで一番役に立ったヒュドラの毒について話題が及ぶ。

 

「なあヘラクレス殿、そのヒュドラの毒矢はどうするつもりだ?いやヘラクレス殿が好きにするべきだとはわかっているが危険すぎるのではないか?」

「む、貴様もそう思うか」

「うん、巨人達やあの竜にも効く猛毒の矢は俺から見ても危険すぎると思うし、あんな物使わなくてもヘラクレス殿なら大抵の敵は余裕で倒せるだろう?できれば神々に預けるべきじゃないか?」

「ぬぅ、そうか……まあ確かにこれは危険な代物だ。神々に渡した方がいいかもしれん」

 

マカリオスの言葉を聞いたヘラクレスは少し考えた末にヒュドラの毒矢を神々に渡すべきだと決める。そして肩の力を抜いた二人は向かってくるキルケーとアキレウスを見て笑顔を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

「まあ毒矢について考えるのはここまでにするか。貴様の妻が向かってきているし私達の怪我を治療してもらうとしよう」

「おお、妻が笑顔を浮かべている!キルケーが嬉しそうなのを見ると俺も嬉しくなってしまうよ。そうだヘラクレス殿、これから一緒に妻特製のキュケオーンを食べようじゃないか。そうだ!アキレウス君も頑張っていたし一緒に食べないか誘ってみるか!仲間はずれはよくないからな!」

「うむそうか、気持ちはありがたいが遠慮しておこう。私やアキレウスは邪魔しないから夫婦で仲良くキュケオーンを食べればいい」




勝因はテュフォンが本調子じゃなかったのと速攻勝負でケリをつけたのと神々の袋叩きとヒュドラの毒です。竜退治には毒が有効だって古事記にも書かれています。ちなみに速攻勝負で片をつけなければジリ貧になって敗北していました。

この世界のカルデアに呼ばれたテュフォンは起きた直後に袋叩きは理不尽だろと非常に納得がいかない模様。何故呼ばれているのかはいずれ書くかもしれません。



FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。

ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。



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