もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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番外編となる続きです。


とある未来での一幕【聖杯戦争に参加する若き魔術師】

「お、おぉ。これが大英雄を呼ぶ為の触媒なのか」

 

マカリオス達が生きた神代の時代から数千年が経過した現代世界にて、イギリスにある魔術師達の総本山である時計塔ではとある触媒を偶然手に入れた若き魔術師が興奮した顔をしていた。

 

「す、すごい神秘だ。かのギガントマキアに参加しトロイア戦争で大活躍したあの大英雄の遺物を取り寄せる事ができるだなんて流石は時計塔のロードだなぁ」

 

ギリシャ神話でも有数の大英雄の遺物を手に入れた若き魔術師はうっとりとした表情を浮かべ古びたマントの切れ端を眺める。濃密な神秘を内包した遺物は魔術師として未熟な彼から見ても素晴らしい触媒であった。

 

「いや待てよ、これがあれば、これがあれば僕でも大英雄を呼び出せるんじゃないか?これを使えば僕でも聖杯戦争で優勝できるんじゃないか!?」

 

未来の自分が聞けば「おいやめろ」と絶叫しそうな事を言いつつ若き魔術師は手元の触媒を見つめる。偶然とはいえ大英雄の触媒を入手してしまった事で未熟な若き魔術師は冷静な判断ができなくなっていたのだ。

 

「そうだ、これは運命なんだ!この触媒は僕が聖杯戦争で優勝して先生や他の奴等を見返す為に僕の手元に来たんだな!よぉし、いいじゃないか!やってやる、やってやるぞ!僕はこの触媒を使って大英雄を呼び出し聖杯戦争で優勝してみせる!そして時計塔のわからず屋共に僕が優秀な魔術師だって証明してやるんだ!」

 

若き魔術師は興奮で顔を赤くしつつ極東で開催される聖杯戦争に参加し優勝する事を決意した。傍から見れば完全に魔が差して冷静な判断力を失っており、未来の自分が見ていたら奇声をあげて殴りかかるくらい酷い有様であったが、この場には若き魔術師の他に誰もいないので大丈夫だ、問題ない。

 

「じゃあ行くぞ!僕の輝かしい未来はこれから始まるんだ!」

 

若き魔術師は急いで準備を済ませると極東行きの飛行機に乗り、聖杯戦争が開催される地に向かう事にした……これが後に略奪者と呼ばれる魔術師が聖杯戦争に参加した経緯であり、未来の彼が当時を思い返して懐かしく思いつつも、その都度悶絶する事になる黒歴史であった。

 

 

 

 

 

―素に銀と鉄。礎に石と契約の大公―

―降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ―

 

 

 

 

―……抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!―

 

 

 

 

「お前が俺を呼んだマスターか?一応自己紹介しておくぜ。俺はアキレウスだ。今回はアサシンのクラスで呼ばれたぞ。コソコソ隠れて騙し討ちするのは勇士として気に入らないが、戦争なんだしある程度は妥協するさ」

「ヨシ!この戦い、僕達の勝利だ!」

 

 

 

 

 

 

「いやぁー、やっぱり僕はついてるなー!運命に味方されてるんだなー!自分の運の強さには我ながらビックリだよ!」

 

聖杯戦争の開催地である冬木に到着し無事サーヴァントを召喚できた若き魔術師……ウェイバー・ベルベットは冬木での拠点として潜り込んだ老夫婦の家で上機嫌な様子を浮かべていた。

 

「おいおい呑気だなマスター、もう優勝した気でいるのかよ。しかしこの飯美味いな。おばあちゃんご飯お代わり」

「はいはいどうぞ、いっぱいお食べ」

「ハハハ、食べ盛りなんだから遠慮しなくていいさ。孫だけじゃなく孫の友達も来てこの家も賑やかになったなぁ」

 

呑気なマスターを見たアサシンのアキレウスは呆れつつも現代の食事に舌鼓を打つ。アサシンが美味そうに夕飯を食べるのを見てマーサ夫人はニコニコしながらご飯のお代わりをよそい、夫のグレンは妻が明るい顔をしているのを見て喜んでいた。

 

(得体の知れない俺を疑わず笑顔で歓迎してくれるとは、この爺さん夫婦はいい人達みたいだなぁ。おいマスター、この二人を戦争に巻き込むつもりなのか?)

(えっ、い、いやそんな事するわけないだろう!?ここは仮の拠点でいい場所があればすぐそこに移るつもりだし、ここで戦ってお爺さん達を巻き込むつもりはないぞ。そ、それに戦争に巻き込まれて死んだら後味悪いし)

(おおそうか。じゃあマスター、後で部屋に戻ったらこれからについて話し合おうじゃないか)

(うん、わかった)

 

老夫婦に聞かれないよう念話で話し合うウェイバーとアサシンは食事を終えて部屋に戻る事にした……ちなみにウェイバーが老夫婦を巻き込む事に躊躇いを見せなければ、アサシンは自分を従える資格がないと判断してマスターを暗殺しさっさと現世から退去するつもりであったのだが、調子に乗っているウェイバーがそれに気付く事はなかった。

 

 

 

 

 

「よっしゃあっ!」

「いや喜びすぎだろマスター。俺の宝具について説明しただけだぞ」

「いやこれで喜ばないマスターはいないだろ!」

 

その後部屋に戻りアサシンから宝具の説明を聞いたウェイバーは思わずガッツポーズを取っていた。

 

「暗殺者のクラスで呼ばれているし、子供の頃の姿で現界してるからもしやと思ってたけどやっぱりだ!今のアキレウスはギガントマキアに参加した時のアキレウスが呼び出されているんだな!」

「ああそうさ、俺としてはこの未熟な若い頃の姿は気に入らないけどな」

「いや謙遜するなよアサシン!ステータス見たけどお前普通に強いじゃないか!その気になれば三騎士クラスと正面からやり合えそうだ!」

 

ちょっと渋い顔をするアサシンとは対照的にウェイバーは素晴らしいサーヴァントを呼べたと興奮していた。ギリシャ神話でも五本の指に入る大勇士であるアキレウスは持ち前の高い知名度によりアサシンとは思えない程の高いステータスを誇っていた。特に敏捷についてはA+という非常に高い数値であり、流石はギリシャ神話最速の大英雄だとウェイバーは無邪気に感心していた。

 

「しかもステータスだけじゃない!スキルだって優秀だ!踵以外の攻撃を受け付けない不死身の肉体とか反則じゃないか!」

「これでも本来の力を全然出せてないんだけどな。愛用の戦車や槍もないし未熟な子供の頃の姿だとステータスも貧弱で情けないぜ」

「いやいや全然情けなくないだろ!もっと自信を持てよアサシン!」

 

全盛期に比べれば貧弱極まりないと不満気なアサシンであったがウェイバーはまったく気にしておらず有頂天なままであった。

 

「それにそれに!何と言ってもすごいのは宝具だよ!あの大英雄ペルセウスも使っていた自分の存在を完全に隠す事ができる冥界神ハデスの兜に!オリュンポスの神々も恐れた怪物テュフォンにも通じたヒュドラの毒矢が使えるだなんて!これならマスターどころかサーヴァントだって簡単に殺せるぞ!僕のアサシン強すぎるだろ!」

「これ自分の物じゃないんだけどなぁ。借り物なんだがアサシンのクラスだと持ってこれるんだな」

 

アサシンがギガントマキアで使っていた有名な宝具を二つとも持っている事を知ったウェイバーはハイテンションな様子で自分達の勝利を確信していた。

 

「勝った!勝ったぞアサシン!この戦い僕達の勝利だ!」

「いや調子に乗るなってマスター。このヒュドラの毒矢は三回しか使えないからな。この毒矢がなくなれば俺は決定打を失うんだぞ」

「いや十分じゃないかなぁ!?刺さればサーヴァントだろうが確実に殺せるだろう宝具が三回も使えるとか十分だって!」

 

もう自分達が優勝する事を疑っていないウェイバーは時計塔で拍手喝采を浴びる輝かしい未来を想像して思わずにやけ笑いをしてしまう。

 

「ありがとうアサシン!僕の召喚に応じてくれて本当にありがとう!お礼に優勝したら聖杯は好きにしていいぞ!僕は先生や時計塔の奴等を見返す事ができれば十分だしな!」

「へぇ、報酬よりも名誉の方が大事か……いいじゃないか、気に入ったよマスター。お前は未熟だが俺を従える資格はあるみたいだ。これからよろしく頼むぜ」

「ああ、よろしくなアサシン、いやアキレウス!」

 

アキレウスとからほんの少しだけ認められたウェイバーはこの聖杯戦争で優勝してみせると心の中で誓うのであった。

 

「よぉし!じゃあ今後の方針だけど他の参加者に見つからないよう潜伏しつつ力を温存し、他の参加者達が争って消耗しサーヴァントの数が減ってたのを見計らってからアサシンの毒矢で暗殺していくぞ!な、なんて完璧な作戦なんだ……!」

「いや普通にありきたりな作戦なんじゃないか?まあコソコソ隠れるのは気に入らないが、今の俺はアサシンだしアサシンらしく振る舞うとするか」

 

 

 

 

 

 

―なるほど完璧な作戦だねー、良妻賢母な私がいる時点で不可能な点に目を瞑ればねー。どうかなケイネス君、君の触媒を盗んだ子を見つけたけど―

―ふむ、先程から会話を聞いていましたが触媒を盗んだのはただの若気の至りか。まあ愚か者なのは変わらないが更生の余地はありそうですな。それに呼び出したアサシンのアキレウスの性能も中々優秀みたいだ……………聞こえているかねウェイバー・ベルベット君?君に話があるから私の拠点に来たまえ。ちなみに君に拒否権はないぞ―

 

 

 

 

 

「短い夢だったなぁ……」

「いや諦めるのが早すぎるだろマスター」

 

冬木ハイアットホテルの入口にやって来たウェイバーは先程とは打って変わって沈んだ表情を浮かべていた。

 

「仕方ないだろ、心臓に呪いをかけられて生殺与奪の権を完全に握られてしまったんだからさぁ。というかアサシンだってなんか諦めムードじゃないか。一応聞いておくけどアサシンはこの呪いを解けたりできないかな?」

「すまん、無理だ。俺は勇士であって魔術師じゃないしキルケーさんの呪いを解呪する方法なんて知らないぞ」

「だよなぁ」

 

打つ手がない事を再確認したウェイバーは大きな溜息をつく。

 

「神代の大魔女キルケーかぁ、先生もスゴいサーヴァントを呼んだもんだよ。潜伏していた僕達をあっさり見つけた上にマスターの僕に呪いをかけて何時でも殺せるようにできるとかスゴすぎるだろ。アサシンよりアサシンしてないか?……だがすぐには殺さないところをみると僕達に何か利用価値を見出しているのかもしれない。諦めるのはまだ早いかな」

「おぉ、その意気だぜマスター。絶体絶命のピンチだとしても最後まで諦めないのは勇士として評価できるな」

 

―何をしているのかね。辛気臭い顔をしてないで早く来たまえ―

「あ、はい」

 

ケイネスが自分達をすぐに処分しない事をウェイバーは不思議に思いつつ、冬木ハイアットホテルのスイートルームに向かう事にしたのであった。

 

 

 

 

 

「まさかアンタも呼ばれてるなんてな!マカリオスのオッサンが味方になってくれるならとても心強いぜ!いやキルケーさんも一緒にいるのか。アンタ達本当に仲の良い夫婦だよな」

「おお、君も来ていたのかアキレウス。一緒に戦う事ができて嬉しいよ……しかしそのオッサン呼びも久々に聞いたなぁ。トロイア戦争の時は俺はもう爺だったからな」

「おっと悪いな。精神が今のガワに引っ張られているみたいだ。なあマカリオス、この戦いが終わったら最後に俺と一騎打ちしてくれないか?トロイア戦争でできなかった決闘の続きをしたいんだ」

「おおいいぞ、望むところだ。君が満足するまでつきあうとも」

 

 

 

 

 

「……以上が私が把握している問題だ。ここまで説明すれば愚かな君でも理解できただろう。聖杯の汚染を解決するまでは君の処遇については保留としておこう。私の慈悲深い対応に伏して感謝しつつ馬車馬のように働きたまえよウェイバー君。さて、何か質問はあるかね?」

「ええと、この戦争の賞品である聖杯が大魔女の呪いとアンリマユに汚染されてて戦争どころではないのはわかりましたが、それとは別に言いたい事があるのですがズルくないですか?あの大英雄マカリオスを呼んだら大魔女キルケーのサポートがオマケで付いてきたとかズルくないですか?実質サーヴァントを二基所持しているようなものですよズルくないですか?」

「黙りたまえウェイバー君……まあ君が愚痴りたい気持ちは少しわかるがね。私が君の立場だったら同じような事を言っていたかもしれん」

 

マカリオスとアキレウスが再会して呑気に会話していた頃、冬木ハイアットホテルのスイートルーム……ケイネスの魔術工房兼大魔女キルケーの仮工房にて事情を説明されたウェイバーは、確かにこれは聖杯戦争どころではないし問題解決を優先するべきだと納得しつつもズルくないかと思わず真顔でツッコミを入れていた。

 

「それと先生、神代の大魔女がいるなら僕の手助けなんかなくても聖杯の浄化なんて簡単な事なのでは?」

―今の私は旦那様の召喚に無理矢理付いてきた形だから本来の力が出せなくて聖杯の汚染除去に時間がかかるんだよねー。それに何故私がそんな面倒な事をしないといけないのさ?確かに私は旦那様と新婚旅行に行く為に聖杯を使うつもりだけど、私ならそのまま聖杯を使えるからわざわざ聖杯の汚染を取り除く必要もないし浄化してあげる義理もないよ?とりあえず浄化の手順については教えておくしマニュアルを作って渡すから自分達でやりなよ。大丈夫、良妻賢母な大魔女の私の言う通りにすれば時間と手前がかかるけど君達でも安全に聖杯を浄化できるさ!―

 

「……そういう事だ。納得できたかねウェイバー君?」

「アッ、ハイ」

 

大魔女が聖杯の浄化を手伝う気がないのを理解したウェイバーは思わず天を仰いでいた。その後ウェイバーはケイネスに服従する形で協力する事になり、マカリオスとアキレウスのコンビの圧倒的強さに感嘆しつつも聖杯浄化の為に扱き使われる事になったのであった。




というわけでウェイバーが呼んだのアサシンのショタアキレウスでした。でも感想欄で先に書かれててバレバレでしたね……アキレウスの願いは生前叶わなかった完全な形での決闘をする事です。

ショタアキレウスは戦車を持たずステータスもライダーの時より貧弱ですが燃費がかなりよくなっていますし、ハデスの兜とヒュドラの毒矢(回数制限あり)を宝具として所持しています。

この後は番外編をいくつか書いて第三章もとい最終章となる予定です。




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