もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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番外編となる続きです。


天才魔術師兼大魔女のアクイラと皇帝ネロ

「うーん、何時来てもローマは賑わっていますねー、まあ帝国の首都なんですから当然ですけど」

 

神代の時代が終わり長い年月が過ぎた。世界に名だたる大帝国であるローマ帝国の首都ローマにてアクイラ(変装済み)は屋台で買った串焼きを食べつつブラブラと出歩いていた。

 

「ふむ、しつこく追ってきていた連中もようやく諦めたようですね。まったく迷惑な人達でしたねー。やれ弟子にしてくれだの、自分に仕えてほしいだの、不老不死にしてくれだの……もう本当にしつこかったなー。まあ熱意については評価しますが僕が付きやってあげる義理はないですよね」

 

自称天才魔術師兼大魔女のアクイラは神代の時代が終わった後も自由気ままに世界各地を放浪していた。行く先々で親切心から人助けをしたり、優秀な君主に仕えてみたり、気に入らない人物に悪戯をしたりして世界的に有名な存在となっていたが、本人は他人からの評価などまったく気にしておらず今後も気の赴くままに生きていくつもりであった。

 

「さてと、久々にローマを観光するとしましょうか!三十年ぶりに来ましたが色々と変わってますねー。おお、でもあそこの露天の商人さんは三十年前と同じ人ですね。あの立派に突き出ていたお腹も萎んでヨボヨボですけど元気そうでよかったですよ。お、おおっ!?占い師のお婆さんがまだ生きてました!うわー全然変わってませんねー!魔女でもないただのインチキ占い師なのに百歳を超えても元気そうですしまだまだ死にそうにありませんよ!うわぁ、人間ってスゴいなぁ……あ、こっち見て手を振ってますね。魔術を使って変装している僕の事を瞬時に見抜くだなんて流石だァ……しかし卓越した観察眼や直感があるのに何故占いの腕前は論外なんでしょうかねー?」

 

ローマを観光していたアクイラは古い知り合いであるインチキ占い師のお婆さんを見つけて久々に会話をするなど楽しい時間を過ごすのであった。

 

 

 

 

「ほほう、これが新しく即位した皇帝が造らせた神々の神殿ですか」

 

ひとしきりローマを散策したアクイラはローマ中心部に新たに建築された神殿を見学していた。本来は誰でも入れるわけではないのだがアクイラは魔術で自分を透明にし気配を遮断する事で誰にも邪魔されず神殿を見学する事ができた。

 

「お?この彫刻中々出来がいいですね!大神の姿を上手く再現していますよ。あちらにあるのはヘラクレスさんや父さんの石像ですか。ふむふむなるほど、これも中々いいとは思いますが、だけど筋肉が全然足りませんね!筋肉を追加しといてあげましょう!あ、姉さんの石像だ……ハァ、なんですかこのちんちくりんな美少女は?偽物と呼ぶのもおこがましい代物じゃないですか!ええい見てられません!一から作り直してあげますよ!それと僕や母さんの石像については別にそのままでいいですね」

 

神殿を見て回るアクイラは好き勝手な事を言いつつ石像を修正したり差し替えていく。そしてアクイラの手が加わった石像達は数奇な運命辿りつつも現代まで残りイタリアの国宝となるのだが当時のアクイラが知る由もなかった。

 

「さぁて、では最後に新しく即位した皇帝陛下を拝見しましょうかね!」

 

 

 

 

 

「えっ、なにっ、なんですかぁっ」

 

ローマ市民達に紛れて新しいローマ皇帝を拝見したアクイラは絶句し困惑していた。市民達は歓声をあげてローマ皇帝を称えていたがアクイラはある事に目を奪われてそれどころではなかった。

 

「な……なんて……」

 

宮殿から市民達に向けて手を降っている新しいローマ皇帝は可憐で美しい容姿をしていた。自分の美貌に自信を持っていた皇帝は堂々とした態度で群衆の前にいたが、アクイラからすれば正気の沙汰ではない行いであった。

 

「なんて舐め腐った男装なんですか……!え、あれで男装してると、男として見られてると本気で考えているんですか?うわ!?心を読んだけど本気で大丈夫だと思ってますよあの子!?周囲の人達は誰か止めなかったんですか!?あの子変な薬でもやってるんですか!?」

 

豊満な乳と尻が丸出しな衣装で男装と言い張るローマ皇帝を見て呆然とするアクイラであったが、やがて何か決心した様子を見せる。

 

「ええい!見てられません!僕が本当の男装、いや、本当の男に、ローマ皇帝に相応しい姿にしてあげますよ!久々に本気を出すとしましょう!待っててくださいねネロ君!」

 

見てられなくなったアクイラは親切心で新しいローマ皇帝……ネロ・クラウディウスに干渉する事を決意したのであった。

 

 

 

 

 

「スゥ……スゥ……」

「よし、すやすやと眠っていますね。じゃあ母さん譲りの催眠術で眠りを更に深くした上で、魔術結界を張って手術開始だあっ!……じゃあまずは性転換してと。ヨシ!ちゃんと穴が消えて棒が生えてきましたね!形と大きさについては後で調整するとしましょう!」

 

「ンッ……ン……」

「じゃあ今度は体格を調整しますよ!世界に名だたるローマ帝国の皇帝に相応しい体格……そう!父さんやヘラクレスさんのような筋骨隆々な肉体にしてあげましょう!ご飯と筋肉は盛れば盛るほど幸せになれますからね!いやー見事な筋肉ですねぇ!魔術で盛った偽りの筋肉ですが、これがこれでいいものです!筋肉に貴賤はありませんからね!」

 

「ムニャムニャ……」

「そして仕上げに威厳のある声帯もサービスでつけてあげたら……完成です!棒の大きさも体格に合わせて調整したのでヨシ!ううーん我ながら素晴らしい出来栄えだァ……天才魔術師兼大魔女の名に恥じない仕事をしたと確信できましたよ!これならネロ君も涙を流して喜んでくれる事でしょう!では魔術結界を解除してと……うん、誰も気づいていませんね!じゃあさっさとお暇するとしましょうか!それではネロ君さようなら!」

 

 

 

 

 

「というわけで僕はネロ君の為に一肌脱いあげたんですよ!」

「うんうんそうかい、やっぱりアンタの仕業だったのかい。アタシの勘が正しかったみだいだねぇ。皇帝陛下にお伝えしといてよかったよ」

 

数日後、自分のやった事を自慢気に話したアクイラに対して、知り合いのインチキ占い師の老婆はやっぱりコイツが犯人だったかと呆れた表情を浮かべていた。

 

「あー、僕がすぐに指名手配されてたのは貴方の仕業ですか。どうして僕がやったとわかったんです?」

「いやだってねぇ、厳重に警護された皇帝陛下の寝室に誰にも気付かれず入って陛下を筋骨隆々な大男に変える奴なんてアンタぐらいしか思い浮かばないよ」

「あっ、なるほど確かに。じゃあ周囲を包囲している兵士達や魔術師達は貴方の差し金ですか?」

「いいやぁ?それについてはアタシは知らないよ。兵士や魔術師如きがアンタを捕まえられるとは思ってないし、インチキ占い師に人を動かす力なんてあるわけないだろう?陛下の母君が勝手にやってるんじゃないかい?」

 

和やかな雰囲気で会話を続ける二人であったが、やがてインチキ占い師の老婆は笑顔である提案をする。

 

「じゃあそろそろネロ様を元の姿に戻してくれないかい?今のネロ様はずっと寝室に閉じ籠もって泣いておられるそうで可哀想だし戻してやっておくれよ」

「えーそんなー、今の姿もいいと思いますけど?」

「いやいやわかってないねぇ!ネロ様はねぇ、今の威厳に満ち溢れた御姿もいいけど、やっぱり元の御姿が一番美しいとアタシは思ってるんだよ!ああ、ネロ様の素晴らしい乳と尻……アタシが少女の頃だったら後先考えずにむしゃぶりついてたよ。あの乳と尻をなくすなんてとんでもない事だよ!ローマ帝国の損失だよ!世の男達やアタシのような人間が嘆き悲しむよ!アンタならアタシの思いが理解できるだろう!?」

「う、ううーん。まあ貴方からすれば元のネロ君の方がいいのはわかりますけどぉ」

 

真剣な表情で元のネロの姿の素晴らしさを熱弁する老婆にアクイラはタジタジとなる。

 

「それにネロ様の事をローマ皇帝らしくないと思っているみたいだけど、アンタにローマ皇帝の何がわかるっていうんだい?たとえ乳と尻が隠せていない男装だとしても神祖様なら笑って受け入れてくださるさね!」

「あーうん、まあそうですね……ロムルスさんなら受け入れますね。あの舐め腐った男装を見てもそれもまたローマであるとか言って笑って受け入れるでしょうね」

 

インチキ占い師の老婆の説得を受けたアクイラは最終的に渋い顔を浮かべつつもネロを元の姿に戻す事を決めたのであった。

 

「ハァ、本当に勿体ないなぁ……あの完成された身体をなかった事にするなんて。じゃあ兵士さん達に宮殿まで案内してもらいましょうか」

「ああよかった、これでネロ様に笑顔が戻るよ。それに兵士や近衛兵達もアンタを素通りさせた責任を問われて処刑される事もなくなったしねぇ」

「あぁ、道理で兵士さん達が皆必死な顔してたわけですね……いやそんな縄でぐるぐる巻きにしなくても逃げませんってば。僕の事を警戒し過ぎでしょう?」

 

 

 

 

……その後ネロの前に引きずり出されたアクイラはブーブー文句を言いつつもネロを元に戻す。元の可憐な姿に戻ったネロは安堵して号泣し、ネロの母親も滂沱の涙を流して喜んだのであった。

 

「いや号泣する程元の身体に戻れたのが嬉しいんですか?あの身体の方が威厳たっぷりでいいと思うんですけどねー。まあ親子仲良く抱きしめ合って喜んでるようでよかったですね!……こらこら、毒キノコを無理矢理食べさせたって僕には効きませんよ。まあ確かに本人の了承を得ずに姿を変えるのはよくなかったですね。次からはできる限り本人の意思を聞くようにします。じゃあお詫びに僕が暇つぶしに作った指に嵌めている限り若さを保ってくれる宝石指輪をどうぞ。ではさようなら」




ネロちゃま:今回の件が完全にトラウマになる。アクイラを見ただけで子犬のように震えるくらいトラウマになった。ドラコー状態になっても苦手意識があるようだ。

アクイラ:よかれと思ってやった。後悔はしていないがほんの少しは反省している。でもあれを男装というのは絶対無理があると思っている。



この後は番外編をいくつか書いて第三章もとい最終章となる予定です。




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