もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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番外編となる続きです。これで番外編は一旦終わり次は第三章となります。


とある未来での一幕【頭を抱える魔術師殺し】

「コンモドゥスさんの事が知りたいと?」

「ええ、セイバーは生前に彼と親交があったんでしょう?ローマ帝国最強の皇帝と名高い彼はどんな人物だったのか知りたいの」

 

日本の冬木市にて第四次聖杯戦争が開かれようとしていた頃、自分の表向きのマスターであるアイリスフィール・フォン・アインツベルンからコンモドゥスの事を教えてほしいとせがまれたセイバーは少し考え込む素振りを見せていた。

 

「そうですね……彼と出会ったのは私が子供の頃です。まだ幼なかった私はマーリンの誘いに乗ってとある泉へ遊びに行ったのですが、コンモドゥスさんとはそこで出会いました。彼は幼い私の剣の師匠や遊び相手になってくれて、剣や鎧を触らせてくれたり、ギガントマキアの映像を一緒に見たりしましたね。あの時の事は今でもはっきりと覚えています」

「コンモドゥスの剣と鎧……今の貴方が持っているその剣と鎧がそれなの?」

「ええそうです。私が選定の剣カリバーンを抜いて王になった時に、あの人は今の自分には必要ないものだから君が使うべきだと仰って私用に仕立て直したこちらの二つを譲ってくれたのです」

 

セイバーが取り出した剣と鎧を見たアイリスフィールはその素晴らしい出来栄えに感嘆する。泉の妖精が造った二つの武具は人間には決して造れない代物であった。

 

「わぁ!スゴいわねこれ!ヘラクレスの再来と呼ばれたコンモドゥスが使っていた聖剣と竜鱗の鎧……こんなスゴい武具をあっさり譲ってくれるなんてコンモドゥスはとても優しい人だったのね」

「はい、威力はエクスカリバーに劣りますが非常に頑丈で自己修復もできる聖剣と、ワイバーンやピクト人達の攻撃を通さず跳ね返し、そしてモードレッドの渾身の一撃にも耐えた竜鱗の鎧……私はこの剣と鎧に何度も助けられました」

 

セイバーはコンモドゥスから譲られた剣と鎧を見つつ自分の過去を振り返っていた。

 

「この二つがなければ私はカムランの丘でモードレッドと相討ちになっていたでしょう。まあその時に受けた傷のせいか私は病に冒され衰弱してしまい、内乱で壊滅状態となったブリテンをどうにか立て直した直後に死んでしまいましたが」

「そしてその後のブリテンは蛮族達の連合軍による一大攻勢で……」

「ええ、私の死後はベディヴィエール卿達が頑張ってくれましたがブリテンは最終的に滅びました。マーリンの予言通りに」

 

過去を思い返したセイバーは真剣な表情で自分の聖杯への願いについて話し始めた。

 

「私の願いは、聖杯を手に入れ過去に戻る事です。私は数多くの過ちを犯しましたが、ブリテンの王として最善の行いをしていたと死ぬ間際にマーリンに言われた気がします。もうこれ以上頑張る必要はないとも……ですが、私が死んだ後もブリテンを守ろうと最後まで戦った騎士達を私は見捨てる事はできません。たとえブリテンの滅亡は変えられないとしても、私は過去に戻りたいのです」

「そう、それがセイバーの願いなのね」

「はい、過去に戻り忠臣達と共に最後まで戦い抜くのが私の願いです。切嗣はどう思いますか?」

 

セイバーから問われた真のマスター……衛宮切嗣は面倒くさそうな顔をしつつもセイバーに返事をする事にした。本来なら一切会話をするつもりはなかったのだが、とある存在の介入によって渋々ながらセイバーと会話するようになっていた。

 

「……僕としてはどうでもいい話だ。僕が望む世界平和への願いを邪魔しないのであれば君が何を願おうがどうでもいいさ」

―コラッ!自分と一緒に戦ってくれる相棒にそんな言い方がよくないですよ!どうしてこんな面倒な人になったんでしょうかねー?子供じゃないんですから気に入らない相手であってもコミュニケーションをちゃんと取る事は必要だと思いますよ?これから戦争が始まるというのに何故切嗣君は縛りプレイしてるんですか?僕がいなかったらどうするつもりだったんですか?あまりに見てられないのでつい干渉しちゃいましたよ―

「うるさい黙ってくれ……セイバー、このロクデナシをどうにかできないかな?君を召喚してから四六時中喧しく喋っていて鬱陶しくて仕方ないんだが」

 

虚空から聞こえてくる謎の声に衛宮切嗣はうんざりした表情を浮かべてどうにかできないかセイバーに尋ねるが、セイバーは申し訳なさそうな顔をして自分には何もできないと答えた。

 

「すみません切嗣、私にはどうする事もできません。どうも私がサーヴァントとして召喚されたのを察して干渉したようですね……アクイラさん、切嗣も嫌がってますしもう少し静かにしてもらえますか?」

―えー、いやですよ。貴方達放っておいたら全然コミュニケーションを取らないじゃないですか。いやアルトリア君は悪くないですけど切嗣君がダメダメすぎて放置できませんよ。それとロクデナシ扱いは酷くないですか?ロクデナシなのはマーリンさんの方ですよ?……いや事実じゃないですか。円卓の皆さんもブリテンの子供達もコンモドゥス君も貴方の事はロクデナシだと認識を一致してましたよ?いやそんな落ち込まなくてもいいじゃないですか。あーもう、後で冬木のお土産を差し入れしますから機嫌を直してくださいよ

 

ペチャクチャ喋る自称天才魔術師兼大魔女に対して切嗣は真顔で返事をする。切嗣はこの胡散臭い存在をまったく信用しておらず性質が悪いロクデナシだと確信していた。

 

「事実だろう?神代の時代から世界各地を放浪して自分の思うがままに好き勝手に生きている奴なんてロクデナシ扱いも当然だよ。父親の許可も得ず幼いコンモドゥスを誘拐した一件は擁護不可能だ。当時の光景を無理矢理見させられたが、傍から見れば幼児を洗脳して誘拐した最低な奴じゃないか」

―フフフ……酷い事を言いますね。まあ客観的に見て事実ですから仕方ないですけど。まあいいじゃないですか、コンモドゥス君は気にしてないと言ってましたよ?―

「いやよくないだろ」

 

開き直る自称天才魔術師兼大魔女……アクイラに対して切嗣は深い溜息をつきストレス解消の為に煙草を吸う事にしたのであった。

 

 

 

 

 

その後もペチャクチャ喋るアクイラを無視しつつ切嗣は今後の聖杯戦争をどう戦うべきか考え込んでいた。

 

(予定通りアヴァロンの鞘を触媒にしてアーサー王をセイバーとして呼び出す事ができた。彼女の願いについてはどうでもいいが、僕やアイリに素直に従ってくれるからよしとしよう。比較的従順でこちらの指示に従ってくれる事についてはとても助かるな)

―って切嗣くんは考えてますよ!よかったですねアルトリア君!中々の高評価じゃないですか!―

「む、そうですか。ありがとうございます切嗣。貴方の信頼を裏切らないよう全身全霊を尽くす事をここに誓いましょう」

 

(……それにセイバーのステータスや宝具は非常に強力だ。聖剣エクスカリバーに殆どの攻撃を跳ね返す事ができる竜鱗の鎧……それにただえさえ高いステータスと対魔力スキルが鎧によって更に強化されている。攻守ともに完璧だ。セイバーを正面から撃破できるサーヴァントはいないと確信できる)

―まあ普通ならいないでしょうねー。今のパーフェクトアルトリア君を正面突破できるとすれば神話を代表する大英雄クラスでもないと無理ですよ。父さんやヘラクレスさんくらい強くないと厳しいでしょう。アキレウスさんも……まあいけるでしょうかねー?―

「やはりヘラクレスさん達は別格の存在ですね。あのコンモドゥスさんが絶賛するだけの事はあります」

 

(……ならばセイバーはアイリと一緒に囮として行動させ、隙を見せた他の参加者のマスター達を僕が排除すればいい)

―ふーん、まあ普通に考えれば悪くはないでしょうね。僕としてはアルトリア君から離れて単独行動なんてアサシンやキャスターの格好の獲物だし正気の沙汰ではないと思いますが、まあ切嗣君の好きにすればいいと思いますよ?僕は助言しかできませんからね―

「私は切嗣の指示に従いましょう。これから始まるのは戦争なのですから私も不意打ちや卑怯な手を使う事はある程度容認しますし、無辜の民を無闇に巻き込むのでなければ私は反対しません」

 

「……そうか。セイバーが思ったよりも話がわかるタイプでよかったよ。でも勝手に心を覗くのはやめてくれ。アイリ、この魔女を追い払うにはどうすればいいのかな……?神社にお祓いでも受ければいいのかな?」

「お、落ち着いて切嗣!貴方らしくないわよ!?」

 

心をズケズケと覗かれた切嗣は思わず遠い目をしてお祓いに行けばいいのかとぼやき、妻のアイリスフィールは必死に血迷った夫を宥めていた。

 

―このお節介焼きな天才魔術師兼大魔女の僕を悪霊扱いするなんて失礼な人ですねー。僕は善意で助言してあげてるんですよ?僕から助言を受けられる機会なんて滅多にないんですよ?時計塔の魔術師達が知ったら血涙を流して嫉妬されますよ?切嗣君は自分が本当に幸運だったと自覚するべきですね!―

「ああそうかい、確かに僕は幸運なのかもしれないな。でも僕はお前から助言をもらわなくても上手くやっていけるさ。わかったら少し静かにしてくれ……いや本当に静かにしてくれ。トイレに行く時も喋ってくるのはやめてくれ頼む」

―ハァ、わかりましたよ。確かにデリカシーがなかったかもしれませんね。じゃあ暫く黙っておきましょう―

 

ようやく静かになったのを確認した切嗣は胸をなでおろしつつ、この聖杯戦争で必ず勝ち残り世界平和を成し遂げてみせると改めて誓うのであった。

 

「や、やっと静かになった……あの魔女の事は無視してこれからは聖杯戦争に集中するとしよう。この戦いで僕は聖杯を手に入れて世界を平和にしてみせるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

―……えー、そういうわけでですね母さん、切嗣君とアイリスフィールちゃんは今の大聖杯の惨状について何も知らないみたいです。当然二人の娘さんのイリヤちゃんも何も知らないです。なのであの三人と切嗣君の助手さんは見逃してあげてくれませんかねー?―

―ふーん、まあいいよ。他ならぬ可愛い息子の頼みだし粛清リストから彼等の事は外しておくよ。でも大馬鹿野郎共の一部を見逃せとは驚いたね。情でも移ったのかなー?―

 

―あー、まあ、はい。切嗣君は頑固で性格が捻くれてますが哀しき過去持ちで世界平和への思いは本物ですし、アイリスフィールちゃんやイリヤちゃんは善良ないい子達だとわかりましたからね。流石に母さんの粛清に巻き込まれるのは可哀想だと判断しました。あ、でも父さんとお祖母様の墓を荒らした連中を粛清する事については僕は反対しませんよ。むしろ応援してますので!―

―うんうん、わかったわかった。後の事は私に任せておきたまえよ!じゃあねアクイラ、偶にはアイアイエー島に顔を出しなよー?―

 

 

 

 

 

 

―はーい、わかりました!今度行きますね!それでは……………あーよかった!ギリギリ彼等の命が助かりましたね!まあそういうわけでアルトリア君、申し訳ありませんが彼等を守る為に茶番に付き合ってもらえますでしょうか?―

「ええ、かまいません。私の願いを叶える事ができないとわかったのは少し残念ですが、今を生きる切嗣達の命を優先すべきだとわかっていますし、道化になるのも許容しますよ」




アルトリア:幼少期にコンモドゥスと出会い仲良くなる。そしてコンモドゥスから熱心に布教されたせいでヘラクレスファンになった。原作より五年程長く生きれた。コンモドゥスから聖剣(偽)と竜鱗の鎧をもらいパワーアップしており、バサクレス相手なら余裕で耐えられるくらい強くなっている。ただし魔力消費は上がった模様。アクイラからアインツベルンのやらかしを聞いてドン引きしていた。

アルトリアの願い:過去に戻り最後まで残ってくれた忠臣達と共に戦い抜く事。ブリテンを存続させたい気持ちはそこまでないようだ。

コンモドゥス:泉の妖精さんとラブラブ生活を送っている。アルトリアの行く末を知って同情し、もう必要のない聖剣と鎧を譲っていた。聖杯戦争?コンモドゥスは今の生活に満足してるので召喚される事はないよ?

アクイラ:知り合いのアルトリアが召喚されたので興味本位で覗いたらろくにコミュニケーションを取らない切嗣を見て我慢できず干渉する事にした。



次からは第三章もとい最終章となる予定です。

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