もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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新章となる続きです。最終章となります。


マカリオスとトロイア戦争
大戦争の準備とマカリオス


神々と巨人達の一大決戦……ギガントマキアが終結してから十年以上の時が経過していた。オリュンポスの神々を打倒し新たな支配者になろうとした巨人達は半神二人の活躍によって殲滅され、その後ガイアが起こした強大な竜も倒され封印された事で神々を脅かす存在はいなくなっていた。

 

オリュンポスの神々は自分達の地位を守り切った事に満足しつつギリシャ世界の管理を行っていたが、自分達の世界に人間達が増えすぎた事に対して頭を悩ませていた。そして大地の女神ガイアからの苦情を受けた大神ゼウスは予定していた人間達の、勇士達の間引きを目的とした大戦争の準備を進める事にしたのであった。

 

―ふむ、アキレウスは無事大勇士として成長したようだ。あれなら役目を果たしてくれる事だろう……だが少し強くなりすぎたようだ―

 

天から世界を眺めていた大神ゼウスは大戦争の主役となるアキレウスが大勇士として見事に成長したのを見て満足しつつも、自分の想定よりも強くなったアキレウスを見て少し悩んでいた。

 

―今のアキレウスならばヘラクレスやマカリオスともある程度戦いが成立するだろう。しかし、あれでは他の勇士達では対抗できんぞ―

 

ヘラクレスやマカリオスと共に戦い二人に並び立つ大勇士になると誓ったアキレウスは成人した後も一心不乱に鍛錬を続けており、並の勇士では瞬殺されてしまうくらい強くなっていた。今のアキレウスを人間達の戦争に投入すれば一方的な展開になると考えた大神は眉間に皺を寄せて考え込む。

 

―仕方ない、対抗馬としてもう不要となったあの二人を投入するか。だがヘラクレスはまだ生きているが今は呪いと病に冒されて戦える状態ではないし大戦争の時まで生きられないだろうな。キルケーが管理しているマカリオスの方は健康を保っているし使えるか……よし、マカリオスを投入しよう。大戦争が始まる頃には年老いてアキレウスでも戦えるくらい衰えるはずだ―

 

そして大神ゼウスはギガントマキアが終わって不要になった半神二人の片方を大戦争に投入する事を決意したのであった。

 

 

 

 

 

「おい!この道で本当に大丈夫なのか!?というかこの計画は本当に大丈夫なのか!?」

「うるせぇぞ!さっきから何度も聞きやがって!大丈夫だ、俺の情報と勘を信じろ!」

 

大神が大戦争の準備を進めている頃、ミュケナイの国境近くでは馬に乗った男達が必死な表情を浮かべて馬を走らせていた。なにやら大きな袋を背負った男達は後ろを何度も振り返りながらミュケナイから出国しようとしていた。

 

「お前も聞いてるだろ!?今日はエウリュステウス王の誕生日で宮殿で盛大な宴が開かれていて、ミュケナイの守護者は宴に出席していてすぐには出てこれねぇ!だから国境付近でガキ共を攫っても捕まらねぇよ!そしてガキを攫ってからすぐに国境を出てミュケナイから逃げ出せばミュケナイの守護者も追ってこねぇはずだ!」

「で、でも、ミュケナイの守護者はともかく噂の大魔女に見つかったら……」

「落ち着け!ガキを数人攫ったくらいで魔女が干渉してくるわけねぇだろ!というか普通に考えてみろ!たかが村のガキを数人攫ったくらいでミュケナイの守護者が出てくるわけねぇだろ!?」

 

男達は人攫いであった。普段は他国で人を誘拐し奴隷として売り払う事を生業としていたが、ミュケナイ王都で宴が行われると聞いてチャンスだと考え子供達を攫っていたのだ。不安を覚える仲間をリーダー格の男が落ち着かせつつミュケナイから一刻も早く出ようとする。

 

「よし!この道をまっすぐ突っ切ればミュケナイを出れるぞ!頑張れ!後少しだ……!?」

 

もう少しでミュケナイから脱出できると明るい顔をしていた人攫い達であったが、大きな地響きと共に道の途中に山が出現して通り抜ける事ができなくなってしまう。

 

「お、おい、なんだよこれ?いきなり山が生えてきて道が閉ざされちまったぞ!?」

「あぁ……終わった……」

「国境を抜ける道は塞いだ。もう逃げられんぞ。諦めて子供達を解放しろ」

「えっ、えぇ……!?ミュ、ミュケナイの守護者かよぉ!?」

 

呆然とするリーダー格の男と何かを察して全てを諦めた顔を浮かべた仲間であったが、彼等の目の前に筋骨隆々な体格をした大男が突如として現れた。

 

「ど、どうやってここに!?」

「走ってきた」

「王都からここまで!?いや速すぎるだろぉ!?……う、うごくギュピィ!?」

「あ、兄貴ィ!?」

 

ミュケナイの守護者……マカリオスが雷光を身体に纏って自分達に近づいてくるのを見たリーダー格の男はパニックになって子供達を人質にしようとするも、マカリオスが一瞬で距離を詰めてきて軽く小突いた事で気絶してしまう。泡を吹いてビクビクと痙攣するリーダー格の男であったが、命に別状はないので大丈夫だ、問題ない。

 

「おい、そこのお前。子供達を解放しろ。あの男と同じようになりたいのか?」

「あ、はい」

 

マカリオスから脅された人攫いは抵抗する気力もなく素直に子供達を解放する。そして気絶したリーダー格の男と一緒に大人しく縄で縛られた人攫いはとある疑問を尋ねる事にした。

 

「あの、なんでわざわざミュケナイの守護者である貴方が出張ってきたんですか?」

「?……子供達が助けを求めていると妻から聞いたから急いで助けに来たのだが、何か問題でもあるのか?」

「そ、そうですか」

 

不思議そうな顔を浮かべるマカリオスを見て単純に子供達を助けに来ただけだと察した人攫いはミュケナイの守護者は随分とお人好しなんだなと他人事のように考えていたのであった。

 

 

 

 

 

「わー!マカリオス様だ!ミュケナイの守護者様だー!」

「すごーい!おっきいー!」

「助けてくれてありがとう!」

 

人攫い達から解放された子供達はキラキラした目でマカリオスを見つつ助けられた事に感謝していた。

 

「うん、君達は皆無事なようだな。よかった、じゃあこの山を元の場所に戻すとしよう。危ないからちょっと離れていなさい」

「うわ!山が持ち上がってるー!」

「すっげー!」

 

子供達から感謝されたマカリオスは笑顔を浮かべながら逃走阻止の為に使った山を元の場所に戻す事にした。道を塞いでいた山が軽々と持ち上げられる光景を見た子供達はマカリオスの怪力に感心する。

 

―私のマカリオスよ、不届き者達は捕まえたのか?―

「はい我が王よ。人攫い共は全員拘束しておりますのでこれから来る兵士達に引き渡します」

―うむ、それでよい。しかし数年に一度はこういう阿呆な輩達が出てくるものだな。私の威光や貴様の存在を知っていながらミュケナイに手を出すとは救いようのない阿呆共だ。世の中には貴様よりずっと愚かで阿呆な人間が少なからずいるとは嘆かわしい事だ……ではさっさと戻ってこいマカリオス―

 

大魔女キルケーの魔術を経由して事の経緯を知ったミュケナイの支配者であるエウリュステウス王は人間の愚かさを嘆きつつマカリオスに帰還するよう命じる。

 

「かしこまりました我が王よ。あ、でも子供達を親元に返さなければ……」

「わー!王様!王様だって!」

「エウリュステウス様だ!僕達の王様だよ!父さんがミュケナイが平和で僕達が安全に暮らせるのは王様がいるお陰だって言ってたよ!」

「うおー!ありがとう王様!」

 

マカリオスとエウリュステウス王の会話を聞いていた子供達は自分達が幸せに暮らせているのは王様のお陰だと無邪気に感謝する。

 

―ク、クク、中々見る目がある童達ではないか……そうだとも。私は大神ゼウスからミュケナイの王に任ぜられた生まれながらの支配者なのだ!―

「「「す、すっげー!」」」

―フハハハ!そうだろうそうだろう!よし、見る目がある童達は特別に宴に招待してやろうではないか!貴様等は本当に幸運な童達だな!―

 

子供達から純粋な称賛を聞いたエウリュステウス王は機嫌を良くし、戯れで子供達を自分の宴に参加させてやる事にした。

 

「おお、よかったな君達。では妻のキルケーに宮殿まで俺と一緒に転移してもらおうか。皆俺に掴まるんだ」

「「「はーい!」」」

 

マカリオスは子供達と共にミュケナイ王都の宮殿まで転移する……その後子供達は宴に出てきた様々な御馳走を堪能した後、大魔女キルケーに転送してもらい親元の所へ帰って行った。そして子供達は帰宅する際に色々な手土産を持たされていたが、キルケーが考案したマカリオスの手形の跡がついた名前入りの石板を子供達は特に気に入り、家の家宝として大事にするのであった。

 

マカリオスの手形とサインがついた石板は数千年の時を経て現在は大英博物館とギリシャの国営美術館にて展示されているが、噂ではもう一つ石板が残っているとされるも真偽は定かではない。

 

 

 

 

「あの子達喜んでいたな。しかし俺の手形の跡がついた石板なんかであんなに喜ぶとは思わなかったよ。キュケオーンお代わり」

「はいはい、いっぱいお食べよ旦那様」

 

一仕事終えたマカリオスは屋敷に帰宅した後、妻のキルケーが作るキュケオーンを美味しそうに食べつつ子供達が喜んでいてよかったと呑気に考えていた。

 

「そりゃあそうですよ。大神ゼウスの血を引く半神の偉丈夫の父さんの手形付きサイン石板とか誰だって欲しいと思いますよ?あの子供達も幸運でしたねー。一生の思い出になったでしょうね!」

「そうかしら?人攫いに攫われて怖かったと思うけど」

「いやいや姉さん、父さんに救出されて王様の宴にも参加してお土産まで持たされたんですよ?間違いなく最高の思い出になりましたよ!」

 

人攫いに攫われかけた子供達がトラウマになってないか心配するイェラであったが、弟のアクイラは何も問題ないだろうと笑う。和やかな雰囲気で食事をするマカリオス一家であったが、やがてマカリオスが先日届いた手紙の事を思い出す。

 

「ああそうだ、ヘラクレス殿はもうすぐミュケナイに来るそうだが大丈夫なのだろうか?」

「大丈夫だよ旦那様、ヘラクレスはヒュロス君や家族を連れてミュケナイの国境付近まで来ているよ。明日にはミュケナイに入れるだろうね」

「そうか、では明日出迎えに行かなければな。しかしヘラクレス殿がミュケナイに来るのは本当に久しぶりだな。神前競技が終わったらすぐ出国してしまったからなぁ」

 

マカリオスは懐かしげな様子で当時を振り返るが、ふとヘラクレスの健康状態が気になりキルケーに尋ねる事にした。

 

「なぁキルケー、ヘラクレス殿は、その」

「ああ心配しなくていいよ。良妻賢母な大魔女の私から見てもヘラクレスの容態は安定しているしすぐには死なないと思う。まあ後三年くらいは大丈夫かなー?」

「そ、そうか。そうかぁ……まさかヘラクレス殿が病に冒されるとはなぁ」

 

ヘラクレスの容態は安定しているが余命は短いと聞いてマカリオスは思わず悲しげな表情を浮かべてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

「……うん、ヘラクレスさんを出迎える為に父さんも早く寝たようですね。ところで母さん、大神が準備を進めてる大戦争に父さんも参加させられそうなんですが大丈夫なんですか?」

「おや、察していたのかな?流石はアクイラだねー、イェラはその顔を見る限り気づいてなかったみたいだね。大丈夫大丈夫、大戦争がどんな結末を迎えようとも旦那様の魂は私の物だからね!ミュケナイでの穏やかな生活も悪くなかったけど、やはり私はアイアイエー島で旦那様とラブラブ生活を送りたいから喜んで大神の求めに応じたよ!いやー楽しみだなー!アイアイエー島で思う存分愛し合ってさぁ、旦那様を念願の豚に変えて愛でたり愛し合ったりしてさぁ。あーっ今からとっても楽しみだよ!」

 

「うん、色々衝撃的な発言ばかりで理解が追いつかないけど、やっぱりお母さんの性癖は理解できないわ……お父さんの事を心の底から愛しているのに豚に変えて愛でたいってどういう事なの……?」

「姉さん、母さんが異常性愛者なのは以前からわかっていた事じゃないですか。僕としても母さんの性癖は理解できませんが、本人達が幸せそうなら黙って見守るべきだと思いますよ?それと母さん、一応聞いておきますけど父さんを豚に変えて愛でる件は父さん本人の了承を得ているのですか?」

 

「当たり前じゃないか!君が喜ぶなら俺は豚になってもいいと笑顔で受け入れてくれたよ!かーっつらいなー!私の事をとことん愛してくれる旦那様がいてつらいなー!……あ、そうそう。ずっと豚にするわけじゃないし本人の意思で人間に戻れるような調整をするからイェラは心配しなくていいよ!」

「いやそういう問題なの……?」

「まあいいじゃないですか姉さん、本人達が納得してるなら何も言う事はないですよ。僕達は素直に祝福しましょう」




アキレウス:成長して大勇士になった後もヘラクレスとマカリオスに並び立てるよう真面目に鍛錬を続けている。普通の勇士ではまったく歯が立たない程強くなった。

ヘラクレス:死亡原因であるヒュドラの毒矢を神々に引き渡した為死んではいないが病気と呪いのせいでズタボロ。詳しくは次話で書きます。

マカリオス:相変わらず呑気に過ごしているが本人が知らない内にトロイア戦争に参加する事になった。死後はアイアイエー島に行く事になっているが本人は全然気にしていないし妻が喜んでくれるなら豚になるのもかまわない夫の鑑である。


というわけで最終章となりました。今後も毎日投稿できるよう頑張ります。
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