もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。

通算UAが二十万を超えていました。こんな小説を読んでいただきありがとうございます。


イアソンとメディア

「ヘッ、ヘラクレスはぁ、俺が見た中で最強の大勇士でぇ、世界を見回してもヘラクレスより強い人間なんていないと断言できてぇっ」

「ええそうね、ヘラクレスは最強よね」

 

「あのアルゴー号の大冒険の中でもヘラクレスは異次元の活躍だった。彼はどんな危機にも冷静に対処して俺を守ってくれた最高の部下だった。ヘラクレスがいればどんな困難でも乗り越えられると安心できた。俺の最高の部下であり親友なんだ!」

「ええそうね、貴方はすぐに調子に乗る性格だし捻くれてるけどヘラクレスへの信頼と友情は本物よね」

 

「ああそうだ、俺は今でも彼の事を親友だと思っているよ。彼と一緒に冒険できた事は俺の誇りだ……うううっ……そんな、そんな親友があんなに痩せ細ってしまうだなんてぇっ」

「ええそうね、昔のヘラクレスを知っていたら今の姿を見たら衝撃を受けるのは当然よね。貴方程ではないけど私も心にくるものがあったわ」

 

「わかってくれるかいメディア!俺はヘラクレスの為に何かできる事はないだろうか?……そうだ、そうだよ!今こそアルゴノーツ達を再び呼び集めればいいんだ!ヘラクレスの危機を救う為なら全員とはいかなくても結構な人数が集まってくれるはずだ!あっ、そうだ!別にアルゴノーツ達を招集しなくてもアスクレピオスさえ呼び出せればヘラクレスを蝕む病なんてすぐに治す事ができるじゃないか!ハ、ハハッ、そんな簡単な事も思いつかないとは俺も随分慌てていたようだな!フハハハハッ!」

「落ち着きなさい、今からアルゴノーツ達を呼び集めても間に合わないわよ。それにアスクレピオスはもう死んでるのを忘れたの?今の彼は神々の一員になってるから呼んでも来てくれないでしょうね……あ、やっぱり来れないのね。それに呪いについては専門外だしオリュンポス十二神の一柱から手を出すなと厳命されてるから手助けできないし薬も渡せない?……それじゃあ仕方ないわねぇ。いや貴方が悪いわけじゃないし謝らなくてもいいわよ

「そ、そんなぁ」

 

 

 

 

 

「ふむ、あの化け物にもここまで心配してくれる友がいたのだな」

「そうだねー、イアソン君は性格が捻くれてて高慢で伝説の勇士とは思えない程小物だけど、仲間思いだしヘラクレスへの友情は本物なんだよね」

 

宮殿に招いた客人……アルゴノーツを率いた伝説の勇士イアソンが衰弱した様子の親友を見て年甲斐もなく泣き喚き動揺するのをエウリュステウス王とキルケーは呑気に眺めていた。

 

「ちょっと叔母様、私の夫を愚弄するのはやめていただけます?」

「おやごめんね」

 

イアソンの妻であり自分の姪っ子のメディアがムッとした顔をしているのを見たキルケーは軽く謝罪しつつも面白そうな表情を浮かべていた。

 

「うんうん、アルゴー号の冒険が終わった後に放浪して結婚したのは聞いてたけど夫婦仲はよさそうだ。途中で破局すると思ってたんだけど嬉しい誤算だね。姪っ子がなんだかんだ幸せそうで私も満足だよ」

「ええ、お陰様で。叔母様には感謝しておりますわ」

「いやいやどういたしまして。それと叔母様呼びはやめてほしいんだけどなー。お師匠様と呼んでおくれよ」

 

イアソンとメディアが夫婦を続けている事を喜びつつも叔母様呼びは止めてほしいとキルケーは要求するが、メディアは軽く笑って拒否する。

 

「フフ、何か問題でも?私から見て叔母様なのは事実ですし叔母様呼びは当然ではないかしら?」

「おやおや、メディアも変わったねー、昔みたいな無邪気で純真な性格じゃなくなったみたいで私も悲しいよー」

「当たり前でしょう、今の私はイアソンの妻で娘の母親なのよ?子持ちの人妻が夢見がちで考えなしの馬鹿な小娘のままでいられるわけないでしょうに」

「……うん、まあ確かにその通りだね。あの頃の性格のままだとイアソン君と娘ちゃんが可哀想だもんね、うん」

 

妹弟子だった頃の純真で色々とブッ飛んでいた性格のメディアを思い返しキルケーは、社会の荒波に揉まれ多少擦れた性格になった今のメディアの方が絶対にいいと思わず真顔で頷いてしまう。

 

「スゴい失礼な事を言いますわね……王よ、私の夫がお見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。夫は今激しく動揺しておりまともな思考ができない状態ですので用意された部屋に下がってもよろしいでしょうか?」

「うむ、よいぞ。親友が衰弱した姿を見て動揺してしまうのは無理もない事だ。ゆっくり休むがよい」

「感謝いたしますわエウリュステウス王よ……さあ貴方、一度部屋に戻りましょう。ソフィア、お父さんを支えてあげて」

「はい!」

 

 

メディアは泣くイアソンを引きずりながら娘も連れて三人で部屋を退出する。それを見ていたエウリュステウス王は感心したような表情を浮かべていた。

 

「ほぅ、甲斐甲斐しく尽くすものだな。イアソン殿はよき妻に恵まれたようだ」

「王様もそう思うかい?今のメディアは私程ではないけど良妻賢母をちゃんとやってるよね!夫のイアソン君の事を愛しているし、娘のソフィアちゃんも愛情を持って育てられているのがすぐにわかったよ。人は変わるものだねー」

 

姪っ子が良妻賢母として立派に成長しているのを見てキルケーは嬉しく思いつつも、かつてのメディアについて思い返し遠い目をする。

 

「いや本当にあの子の教育は大変だったよ……仲良くなりたいと言って魔術礼装をぶっ刺してこようとしたし、事あるごとに纏わりついてきて精神的疲労で背中の羽が抜け落ちてハゲそうになっちゃったよ」

「うむ、そうか。貴様も苦労したのだなぁ」

「それに修行を終えて私の元を離れてコルキスに戻った後も色々やらかしたしねー。いくら正気ではなかったとはいえイアソン君を逃がす為に実の弟を八つ裂きにしたのは私もちょっと引いたよ」

「うむ、なるほど!イアソン殿の為なら家族に手を上げる事も辞さない一途な愛を捧げる素晴らしい美少女だったのか!イアソン殿はコリントスにて王家から婚姻を持ちかけられた時毅然とした態度で拒否したと聞いておるが、国よりも自分に尽くしてくれる彼女を選ぶのは当然の事だな!……ところでキルケーよ、そろそろマカリオス達を呼び寄せた方がいいのではないか?」

「あ、そうだね!イアソン君の醜態を見てつい忘れてたよー」

 

メディアの過去を聞いたエウリュステウス王は余計な事を考えたら制裁されると無心でキルケーやメディアを褒めつつ聞き流す事にしたのであった。

 

 

 

 

 

「うぐぐぅ……」

「もう、そろそろ泣き止みなさい。久しぶりにヘラクレスに会えるんだから笑顔を浮かべないとダメよ?」

「無茶を言うなぁ……」

 

(ハァ、まったく。相変わらず世話が焼ける人だわ。この人は私がいないとダメね。でも見栄っ張りなこの人が人目を憚らずこんなに泣きじゃくるなんて、今でもヘラクレスの事は大事な親友だと思っているのは本当なのね)

 

客人用に与えられた部屋で泣き続ける夫を宥めつつ妻のメディアは世話が焼ける夫だと微笑む。そんな両親の様子を一人娘のソフィアはニコニコしながら眺めていた。

 

「お父様とお母様って本当に仲良しね!いいなぁ、私も素敵な旦那様と一緒になりたいわ!国の王女様よりも愛するお母様を選んだお父様みたいな人がいい!」

「……………アー、ウン、ソウダネー。ワタシノメディアハサイコウノツマダヨー」

「ウフフ、そうね。貴方にもいずれ素敵な伴侶が見つかるわよ」

 

キラキラした目で国よりも女を選んだ父親を称賛するソフィアに対して、イアソンは何故か目を逸らしつつ片言で返事をし、真相を知っているメディアは思わず苦笑してしまう。イアソンがコリントスでの婚姻の申し出を断ったのは自分への愛の為ではない事を知っていたからだ。

 

(まあ実際は叔母様の制裁を恐れてコリントスの婚姻を拒否したのだけどね……でもあの時は嬉しかったわ。叔母様への恐怖があったとはいえ王女より自分を選んでくれたんだから。その後気を利かせてくれたコリントスの王家が私とイアソンの結婚式を用意してくれたし彼等には頭が上がらないわね)

 

当時を思い返していたメディアは懐かしそうに笑う。あの時の結婚式は素晴らしい思い出として記憶に残っていた。

 

(あの時の夫は私と結婚する事に内心渋々だったけど、今では私と娘にそれなりに愛着が湧いたみたい。フフ、長年一緒にいて流石に情が湧いたのかしらね)

 

自分がイアソンから曲がりなりにも愛されている事を察しており、自分が望んでいた形とは違うが自分だけの愛を手に入れた事にメディアは満足していた。

 

「叔母様には本当に感謝してるわ」

「「え?」」

「ああごめんなさい、何でもないわ」

 

自分とイアソンを繋ぎ止めた叔母のキルケーに感謝したメディアはなんだかんだ自分は幸せだと笑顔を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだお母様!イェラお姉様って素敵な方よね!私イェラお姉様ともっと仲良くなりたいの!ねえお母様!お母様のあの刺したら仲良くなれるっていう短剣を貸してくれないかしら!」

「ダメよ。そんな事したらダメよ!絶対にダメよ!?そういう形で仲良くなるのはよくないと思うわよ!?」

「えーそんなあ」

「うん、ソフィアは昔のメディアに本当によく似ているなぁ。血の繋がりを強く感じるよ……やはり親子なんだなぁ」




イアソン:大魔女キルケーがメディアの叔母だと知っていたため、メディアを雑に扱ったり捨てたりしたら大魔女から制裁されると思い込み恐怖する。メディアの事はそれなりに大切にしつつ放浪していたが、コリントスで諦めてゴールインした。国よりもメディアを選んだ男としてそれなりに有名になった模様。今では情が湧いたのか妻と娘の事はそれなりに大事にしている。娘のブッ飛んた性格については母親譲りだなぁと乾いた笑みを浮かべているようだ。

メディア:キルケーのお陰でイアソンから捨てられず無事に結婚し良妻賢母している。コリントスの事は結婚式を用意してくれた恩人達だと感謝しているようだ。娘の教育についてはどうすればいいのか頭を抱えている。聖杯戦争?夫が呼ばれたらサポートする形でついていくけど、自分は聖杯への望みとかないから召喚には応じないよ?

ソフィア:イアソンとメディアの一人娘。母親譲りの美貌と魔術の才能と性格を持っている行動力の化身。両親の事は恋愛結婚した理想の夫婦だと尊敬している。イェラの事は優しくて素敵なお姉様だと非常に気に入った模様。

コリントス:この世界では滅亡しなかった。王女よりメディアを選んだイアソンを見たコリントスの王が感心してイアソンとメディアの結婚式を用意してくれた。



イアソンとメディアの話は番外編で詳しく書く予定です。

というわけで最終章となりました。今後も毎日投稿できるよう頑張ります。
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