もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。


大神ゼウスの決断と頭を悩ませるイアソン夫妻

―ううむ、アキレウスめ、相変わらず武者修行に没頭しているようだ―

 

天から世界を見下ろしていた大神ゼウスはアキレウスの成長ぶりを見て喜ぶ……事はなく渋い顔をしていた。

 

―今のアキレウスはヘラクレスやマカリオスには劣るが十分に強い。マカリオス以外の他の勇士達ではまともに対抗するのは難しいだろうな……ううむ―

 

将来予定している人間達の大戦争にて活躍してもらう予定のアキレウスが、当初の予定以上に強くなっている状況を見て他の勇士達が対抗できるのだろうかと大神ゼウスは頭を悩ませる。

 

アキレウスは全国を旅する中で怪物達を退治し続けた結果、数々の戦利品を身に纏い強くなっていた。竜の血を全身に浴びた事で不死身の肉体が更に強化され、唯一の弱点であった踵も人間が造った武器では攻撃が通らず弾き返される程に頑丈になっていた。その上に怪物達の血肉を貪欲に喰らい取り込み続けた事で、アキレウスは怪力を手に入れ山をも持ち上げる事も可能となっていたのだ。

 

―うむ、そうだな。嫁を宛がって落ち着かせるとしよう。これ以上アキレウスに強くなられたら困る……アキレウスはケイローンの所に行くつもりのようだ。ケイローンにはアキレウスをその場に留めておくように命じておくか―

 

そして大神ゼウスはアキレウスに嫁を宛がい家族を作らせる事で、来たるべき大戦争の時まで暫く大人しくさせようと決断するのであった。

 

 

 

 

 

「ミュケナイはいいところだな。平和で市場は活気に満ちて人通りも多く治安も抜群にいいし、何よりも市民達は皆笑顔を浮かべている」

 

大神ゼウスがアキレウスに嫁を宛がう事を決意した頃、ミュケナイに滞在しているイアソン夫妻はミュケナイ王都を見下ろしていた。誰も飢える事なく市民達が明るい顔をして生活しているのを見たイアソンは自分の夢である理想の国そのものではないかと感嘆し、ミュケナイを統治するエウリュステウス王の手腕に感心する。

 

「エウリュステウス王の政治手腕は大したものだよ。大神ゼウスから認められた王は伊達じゃないのだなぁ」

「そうね、今まで色々な国を訪れたけどミュケナイが一番平和で繁栄しているわね。やはりミュケナイの守護者がいるからこの国はここまで繁栄しているのかしら?」

「まあそれはあるだろうな。ヘラクレスとほぼ同等の実力がある大勇士のマカリオス殿がこの国を守っているから市民達は安心して生活できるのだろう……それにエウリュステウス王は俺の想像以上に賢明な人物のようだ」

 

イアソンの称賛に妻のメディアは同意しつつも、ミュケナイが繫栄している大きな理由はとある大勇士がいるからではないかと話すが、イアソンは国を治める指導者であるエウリュステウス王が優秀なのだろうと考えていた。

 

「ヘラクレスに匹敵する武勇を持ち自分に絶対の忠誠を誓う大勇士が臣下にいても傲慢にならず国を統治し続けるなんて。凡庸な人間だったらほぼ確実に調子に乗って暴君となるだろうし、他国を侵略して国を拡大させようとしていただろう……その誘惑を振り切り長年に渡って国を安定して統治し繫栄させた時点でエウリュステウス王は間違いなく賢王だと俺は思っているよ」

「ええ、確かにそれはそうね」

 

お世辞ではなく純粋にエウリュステウス王を称賛するイアソンの言葉にメディアは納得しつつ、この捻くれた人がここまで素直に他人を褒めるのは珍しいなと少し驚いていた。その後もイアソン夫妻は引き続き会話を続けていたが、とある話題になると二人は何とも言えない表情を浮かべる。

 

「うん、色々話したがミュケナイで客将としてエウリュステウス王に仕えるのは悪くないと思う。ここならソフィアを安心して育てられるだろうさ」

「そうね、貴方の言う通りだわ。ミュケナイには叔母様もいるし、あの子が魔女として成長するにはこれ以上ない素晴らしい環境だと私も思うわ」

 

一人娘であるソフィアについて話し合う二人はこの平和なミュケナイなら娘を安心して育てられると信じていたが、二人にはある悩みがあった。

 

「ただいま!お父様!お母様!あのね、私イェラお姉様と一緒に遊んでたんだけど、私決めたの!私はイェラお姉様をお嫁様にする!お姉様の為に毎日キュケオーンを作ってあげたいし、その為に私魔女になりたいの!キルケーお義母様に師事して絶対に魔女になるわ!いいでしょ!?」

「そ、そうか、そうかぁ…………夢を見つけた事はいい事だな!うん!俺は応援するぞ!」

「貴方落ち着いて!これは止めなきゃダメな夢よ!?」

 

一切の曇りもないキラキラした目で同性のイェラと結婚すると宣言する娘を見たイアソンは乾いた笑みを浮かべて肯定するが、妻のメディアはどうやって色々とブッ飛んた性格の娘を説得しようかと頭を抱えてしまうのであった。

 

「ああもう、どうしてこの子はこんなに性格が私に似ちゃったのかしらぁ……思い込みの強さと押しの強さは昔の私そっくりだわ……そんなところ似なくてもいいのにぃ」

「いやそんなに嘆かなくてもいいと思うがなぁ?ソフィアは君のいい所をしっかり受け継いでると俺は思っているよ。まあちょっと純粋すぎるとは思うけど」

「そ、そうかしら?……う、嬉しい事言うわねぇ、もぉっ!

 

 

 

 

 

―……ってイアソン君は言ってたよー。よかったね王様、中々高評価みたいじゃないか!―

「ククッ、そうかそうか。イアソン殿は人を見る目があるようだな」

 

イアソン夫妻が娘のソフィアと一緒に緊急家族会議を開いて家族で話し合った翌日、ミュケナイの宮殿でキルケーからイアソン夫妻の会話について報告を受けたエウリュステウス王は笑みを浮かべていた。キルケーに命じて二人の様子を探っていたエウリュステウス王であったが、アルゴノーツ達を率いた伝説の勇士から高評価だったと聞いて上機嫌となる。

 

「うむ、貴様の報告を聞く限り私の地位を狙っていないようだしイアソン殿を客将にしても問題ないようだ」

―まあ今のイアソン君は結婚して子供もいるからねー、相変わらず自信過剰で調子に乗りやすい性格だけどもう若くないし昔に比べたら大分落ち着いたみたいだよ。妻と娘に対する愛情は捻くれてるけど本物だしね!―

「なるほど、年を取り家庭を持って落ち着いたか。まあよく聞く話だな」

 

結婚して夫となり父親となれば落ち着くのは当然かとエウリュステウス王は納得する。その後もキルケーの報告を聞いていたエウリュステウス王であったが、イアソン夫妻の一人娘であるソフィアの一件を聞いた王はなんとも言えない顔をしていた。

 

「イアソン殿の娘は貴様に弟子入りして魔女になりたいのか。まあ貴様が弟子入りを認めるなら私にそれを止める理由はないし好きにすればよいと思うが……貴様はそれでいいのか?」

「ん?何か問題なのかな?」

「いや、彼女は貴様の娘のイェラに並々ならぬ想いを抱いているようだが大丈夫なのか?」

「ああ、それが気になるのかい?アハハ、王様は遅れてるねー」

 

ソフィアが同性のイェラに対して非常に強い好意を抱いている事にエウリュステウス王は困惑し思わずそれでいいのかと問うもキルケーはまったく気にしておらず笑っていた。

 

「ソフィアちゃんはいい子だよ。私から見ても中々見所がある子だし、魔女としての才能は母親譲りで磨けば光るものがあるし、魔女としての才能はアクイラ程じゃないがイェラ以上の逸材だね。まあ性格については母親譲りだけど両親が必死に矯正したのか大分マイルドになっているし大丈夫だとわかったから私も魔女としてソフィアちゃんを一人前の魔女に指導するのはやぶさかでないよ!それに私の姪っ子も娘がやらかさないか心配して一緒に魔術の修行をする事になったし負担も半減するだろうからソフィアちゃんを弟子にするのは全然かまわないとも!そして何より評価できる点は私の作るキュケオーンの素晴らしさを理解している事だね!ソフィアちゃんからキュケオーンの作り方を教えてほしいと頭を下げられた時は幼女も魅了してしまうとは流石私のキュケオーンだと我ながら自分の作るキュケオーンの素晴らしさに感動したけど、同時にイェラの為にキュケオーンを作ってあげたいというソフィアちゃんの純粋な気持ちに感心して娘をよろしく頼むと思っちゃったよ!いやー楽しみだなー!いずれ孫の顔が見れそうで楽しみだなー!」

「……そうか!それはよかったな!私も二人の仲を応援しようではないか!」

「おっ、わかってくれるかい?やはり王様は話の分かる人だねー!」

 

キルケーの怒涛の言葉の洪水を聞いたエウリュステウス王はキルケーが長話を始めた直後に無心となり、話を聞き終えて大魔女の言葉を肯定していた。長年の付き合いの結果余計な思考をしないで相手を無条件で肯定する術を得たエウリュステウス王は賢王とはいかないまでも処世術に長けた王であった。

 

「そういえば貴様以外の家族は了承しているのか?」

「ああ大丈夫だとも、私の旦那様は笑って受け入れてたしアクイラは面白そうだから応援すると言ってたよ。イェラはちょっと困惑してるけど、あの子純粋な好意と押しに弱いし、いずれソフィアちゃんを受け入れるだろうねー」

「そ、そうか。まあ、うむ、貴様や家族が認めていてイェラも嫌がっていないのであれば部外者の私が口を挟むつもりはないさ。好きにすればよい。しかし流石に女同士だと孫の顔は見れないのではないか?」

「えっ?別に女同士でも子供は作れるよ?魔女なら簡単な事だよ?」

「そ、そうかぁ……………魔女とは本当に何でもありなのだなぁ……」

 

お前は何を言ってるんだと不思議そうな顔をするキルケーを見たエウリュステウス王は魔女の出鱈目さを再確認し思わず遠い目をしていた……その後ソフィアは大魔女キルケーに正式に弟子入りし母親のメディアと共に一人前の魔女となるべく修行に励む事になる。笑顔のキルケーから丁寧に指導されたり、憧れのお姉様であるイェラに纏わりついたり、マカリオス一家に歓迎されたり、頭を抱えたメディアから何度もツッコミを入れられたりしつつもソフィアは健やかに育っていくのであった。




イアソン:結婚して子供が生まれてから落ち着き、若い頃のような立ち振る舞いはなりを潜めた。妻の尻に敷かれつつもなんだかんだ幸せそうにしている。メディアについてはまだちょっと怖いがいい所も知っているようだ。娘の夢については相手方が認めているのならまあいいか!と受け入れる事にした。

メディア:夫については世話が焼ける人だと思いつつも支える良妻賢母。もし他人が夫を愚弄していたら無言で呪うくらいには愛情がある模様。イアソンの何気ない発言にときめいていたが、もしかしたらソフィアに弟か妹ができるかもしれない。いい機会なのでキルケーの下で魔術の修行をしつつ娘がやらかさないか見張っている母親の鑑である。

ソフィア:優しくて綺麗なお姉様に好意を持った。魔女になれば女同士で結婚してもOKだと知って魔女になる事にした行動力の化身。

エウリュステウス王:キルケーの報告を聞いて色々とツッコミたい気持ちを抑えつつ無条件に肯定していた理解のある王様。大神ゼウスから認められし王は神代の時代に多様性を認めていた賢王()なのだ。



次回はアキレウスについて書きます。
というわけで最終章となりました。今後も毎日投稿できるよう頑張ります。
感想・評価くれると嬉しいです。
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