もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。


束の間の平和と大戦争の気配①

「いやぁ平和だねぇ。ミュケナイは何時も通り栄えているし、娘は妻と一緒に楽しそうに魔女の修行に励んでいるし、何よりヘラクレスは健在でまだまだ死にそうにないとは素晴らしいな!」

「いやおかしいだろう……なんなんだアイツは。あれ程の呪いと病に蝕まれても一向に死ぬ気配がないし小康状態を維持し続けられるとかおかしいだろう。何度かこっそり診断してみたが何故生きているのか全然わからんぞ」

 

 

 

「ハハハハハ、君はヘラクレスを甘く見たな。ヘラクレスは十二の難行を成し遂げギガントマキアでも無類の活躍をした勇士の中の勇士なんだ。たかが呪いと病に冒されたくらいで死ぬわけがないじゃないか。だってヘラクレスなんだぞ?ヘラクレスなら気合いで耐えられるんだよ!」

「なんだその滅茶苦茶な理屈は?ヘラクレスだから耐えられるとか意味不明だぞ……だが、イアソンの言う事に納得してしまいそうだよ……ヘラクレスだものなぁ」

 

 

 

「うむうむ、君もようやくヘラクレスの素晴らしさを心で理解できたようだね。私の親友は世界最強の大勇士なんだ。呪いや病気なんかであっさり死ぬような奴じゃないのさ!……ところでアスクレピオス、神々の一員になった君が下界に降りて大丈夫なのか?」

「極短時間の顕現なら問題ない。僕だって偶には少しぐらい愚痴を吐きたい時があるさ」

「まあ別に愚痴を聞くのはかまわないが、何故私なのだ……?」

 

アキレウスが結婚してから数年後、何時も通り平和で繁栄しているミュケナイでは客将となったイアソンが、元アルゴノーツで現在は神となっているアスクレピオスの愚痴を聞いていた。久しぶりの再会にイアソンは喜びつつも、アスクレピオスが何とも言えない顔を浮かべて愚痴を言うのを見て少し困惑していた。

 

「ああ、深い理由はない。あの何時死んでもおかしくない半死人の奴がどうして小康状態を保ちながら生きているのか僕にはわからなくてな。奴の親友である貴様なら何かわかるかもしれないと思ったのだが期待外れだったな」

「深く考えなくてもいいと思うがなぁ?普通の人間なら即死する症状でもヘラクレスなら余裕で耐えられるというのは当たり前の事じゃないか?」

「いやその考えはダメだ、それは思考の放棄だ。僕はヘラクレスの身体を調べ上げて奴の身体の秘密を解き明かしてみせるぞ」

「お、おぅ……?」

 

先程とは一転して熱意に燃える目をしたアスクレピオスにイアソンは少し引きつつも、神々の一員になっても相変わらず変わらない奴だなと思わず苦笑するのであった。

 

「神になっても君は相変わらずだなぁ、でも今の君がヘラクレスに干渉して大丈夫なのかい?」

「あまり大丈夫ではないな。オリュンポス十二神の……すまない、これ以上は言えない。とにかくヘラクレスには干渉するなとは言われているし、隠れて診察するのも本当はマズいのだが、医術の進歩の為なら危険を冒す事に躊躇いはないとも」

「うん、君は本当に変わらないなぁ。相変わらず医術第一みたいで安心したよ」

 

 

 

 

 

イアソンがアスクレピオスと再会してなんだかんだ旧交を温めていた頃、ミュケナイ王都の外で何時も通り鍛錬に励んでいたマカリオスは彼らしからぬ難しい顔を浮かべていた。

 

「……ううむ、やはりそうだ。山を持ち上げるのに以前よりもほんの少しだけ重く感じている。持ち上げる山の大きさは変わっていないのに」

「あーそれは加齢による衰えだねー。旦那様ももう若くはないし仕方ない事だよ。いくら半神とはいえ人間である以上老いは避けられないからね」

「むむむ、それは困るなぁ」

 

ニコニコと微笑む妻のキルケーの言葉を聞いてマカリオスは考え込む。唯一の取り柄である腕力と脚の速さが衰えたら自分には何が残るのだろうかと焦りを見せるが、そんな夫の様子を見たキルケーは苦笑してマカリオスに抱きつく。

 

「旦那様は心配性だなー、そんな心配しなくても大丈夫だよ。確かに今後旦那様は年老いて衰えていくばかりだけど、たとえ痩せ衰えたところで並の勇士なんか一蹴できるくらい強いのは変わらないし、王様も旦那様を切り捨てる事は絶対にないから安心していいとも!」

「そ、そうかな?」

「そうさ!私が旦那様に一度でも嘘を言った事があるかい?」

「……うん、確かにそうだな。君の言う通りだな」

 

キルケーの言葉を聞いたマカリオスは安心して肩の力を抜く事にした……確かにキルケーはマカリオスに対して嘘を言った事はないものの隠し事は結構あるのだが、マカリオスは気づいてないので大丈夫だ、問題ない。

 

「ありがとうキルケー。君はいつも俺を導いて助けてくれるし支えてくれるな。俺なんかよりずっと賢いし、長生きなのに若くて綺麗なままなんてスゴいなぁ、君と結婚できて本当に俺は幸せ者だ」

「フフン、旦那様から褒められると悪い気はしないね。あ、でも私をお婆さん扱いしたらいくら旦那様でもちょっと許さないよ?」

「え?お婆さん?いや永遠のお姉さんじゃないのか?君はずっと若くて綺麗なお姉さんだと俺は思っているけどな」

「お、お姉さん?……………そっか、そっかぁ!うんうん確かに私は永遠のお姉さんだねぇ!まったく旦那様はいつも嬉しい事を言ってくれるなぁー!このーこのー!」

 

夫の本心からの褒め言葉を聞いて顔を赤くしたキルケーは、照れ隠しで軽い呪いを込めた杖で夫を叩く。軽い呪いといっても常人なら即座に豚になる代物なのだがマカリオスにはまったく効いてないので大丈夫だ、問題ない。

 

「思えば君と結婚してから随分時が経ったよ。あんなに小さかった子供達も随分と大きくなったし」

「そうだねー、イェラもアクイラも大きくなったよねー。アクイラはもう完全に独り立ちしちゃったし時が経つのは早いよねー。まあイェラは無理矢理身体を縮めているから昔とあまり外見は変わってないけど。イェラはいずれ孫の顔も見せてくれるだろうね!あー楽しみだなー!初孫が生まれたら赤ちゃん豚にしていっぱいいっぱい愛でようと決めてるんだー!」

 

「ハハハ、孫か。確かに楽しみだなぁ……この前ヘラクレス殿に孫が生まれたが本当に可愛いのだろうな。あのヘラクレス殿がデレデレになっているのが送られてきた手紙を読むだけでよくわかったしな」

「あー、あの手紙すごかったよねー。初孫の可愛さを延々と書いていて手紙がすごく分厚くなっていたよねー。でもあのヘラクレスがねぇ……あの厳つい顔が孫の前ではデレデレになっているなんて想像できないよ」

「キルケーもか、俺もだ。でもヘラクレス殿が比較的元気そうで俺は嬉しいよ」

 

ヘラクレスの変わりようにマカリオス夫婦は苦笑しつつも、ヘラクレスが今なお生きている事を喜ぶのであった。ちなみにヘラクレスが送ってきた手紙はマカリオスが大事に保存しており、その後数奇な運命を辿りつつも現代にまで残っていたという。

 

「でも不思議だな、ヘラクレス殿はまだまだ死ぬ気がしないし、初孫どころか曾孫が生まれてもヘラクレス殿はその時生きてそうな気がするんだが」

「う、ううーん、まあ、確かに旦那様の言う通りヘラクレスが死ぬ気配はまったくないよねぇ……おかしいなぁ……女神に強力な呪いをかけられた上に病に蝕まれているのに全然死にそうにないんだけど……なんなら旦那様やアキレウスより長生きしそうなんだけど……ううんどういう事なのかなぁ……?」

「まあヘラクレス殿だからな!」

「そ、そうかぁ……そうだねぇ……ヘラクレスだものねぇ……タフという言葉はヘラクレスの為にあるんだねぇ」

 

 

 

 

「チィ、あの化け物めしぶと過ぎるだろう。死ぬと言われて数年経ったが死ぬ気配がまるでないぞ?」

 

マカリオス達が呑気に喋っていた頃、ミュケナイの宮殿ではエウリュステウス王がヘラクレスが一向に死なない事に舌打ちしつつ愚痴っていた。

 

「ううむ、大魔女の定期報告では化け物は死ぬ事はなくても徐々に衰弱しているようだ。去年の時点で杖なしでは歩けない程に衰えているそうだし私のマカリオスの敵ではない……はずだ、うむ」

 

エウリュステウス王はヘラクレスが徐々に衰弱している事に一安心しつつも、ヘラクレスへの対策を考える事にした。

 

「刺客を送る……あの化け物を殺せる刺客などこの世に存在するのか?それに化け物とヒュロスの小僧にミュケナイを奪う野心はない事は確認済みだ。こちらから刺激してわざわざ敵対させるなど救いようがない阿呆のやる事ではないか……なら今まで通り放置しておくべきだな。時間は私の味方だ。時が経てば経つ程化け物は衰えていくし、化け物が寿命を迎えて死ねば私の勝ちとなるのだ」

 

そして暫く考えた結果エウリュステウス王はヘラクレスに対して引き続き関わらないようにする事を決めた。余計な事をしてヘラクレスを刺激するなど愚か者のやる事だと考えたのだ。

 

「うむ、そうだ。健康な私と、神の呪いと重い病に冒された化け物では確実に後者が先に死ぬはず……死ぬは……死ぬといいのだがなぁ……ま、まあよい。とりあえず後で大魔女に頼んで化け物の様子を確認するとしよう」

 

その後もエウリュステウス王は政務を行いつつ考え事をしていたが、ある書類に目が留まり読む事にした。

 

「ほう、私の親戚のメネラオスがヘレネーという女と結婚したのか……たかが女一人の為に世界中から求婚者が集まったそうだがどうでもいいな。私には関係のない事だが一応祝いの言葉を送っておくか」

 

書類を読んだエウリュステウス王は心底どうでもよさげな様子を浮かべる……書類には「ヘレネーが他人に奪われた時は求婚者達は全員協力してヘレネーを取り返す」という誓約について記載されていたが、エウリュステウス王は自分には関係のない話だと思い他の書類に目を向けるのであった。

 

 

 

 

 

―キャッキャッ―

―おぉ~〜〜よしよし。お前は本当に可愛いなぁ〜〜っ。お前は私を超える大勇士になれるとじいじは確信しているぞっ!―

―ハ、ハハハ……その、父上、流石にそれは無理だと思うのですが―

 

「お、おいキルケーよ、この男は一体何者だ?赤子を抱えてデレデレになっている好々爺にしか見えないぞ?あの化け物によく似ているが化け物がこんな顔をするわけがない!」

「王様落ち着いてよ、今映っているのは間違いなくヘラクレスだよ。まあ信じられない気持ちはわかるけどねぇ……いや本当に変わりすぎでしょ……後で旦那様達に見せよっと」




マカリオス:年を取って徐々に衰えているが相変わらず大山を持ち上げられる程強い。初孫を溺愛するヘラクレスの様子を見て幸せそうでよかったなぁと呑気に考えていたとか。

キルケー:マカリオスから見れば非常に賢くてとても優しい最高な永遠のお姉さん。お姉さん呼びされたキルケーはその後暫く上機嫌であったとか。夜の鍛錬()で試しにお姉ちゃん呼びさせて満更でもなかったようである。初孫を楽しみにしている。

ヘラクレス:タフを超えたタフな大勇士。相変わらず呪いと病に蝕まれているが死ぬ気配が一向にない強き者。ヒュロスが気を利かせて頑張ったお陰で孫の顔が見れてデレデレになる。デレデレになったヘラクレスを見たヒュロスは最初は困惑するも今では苦笑している。ちなみにデレデレになったヘラクレスの映像を見た知人達は皆「誰だコイツ」と呆然となり困惑してしまったようだ。

ヘラクレスの手紙:マカリオスが大事に保管していた物。後に現代で触媒として利用され無事ヘラクレスが召喚されるも、何故かヘラクレスはものすごく渋い顔をして手紙を回収した後聖杯戦争で無双し手紙と一緒に帰還していた。

エウリュステウス王:初孫にデレデレになったヘラクレスを見て困惑し宇宙猫になっていた。ヘレネーの件?デレデレヘラクレスのインパクトが強すぎて完全に忘れてしまった模様。



というわけで最終章となりました。今後も毎日投稿できるよう頑張ります。
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