もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。今日は用事があるので早めに投稿します。


マカリオスとトロイア戦争①

マカリオスがトロイアに加勢し連合軍を襲撃した時から時間は少し遡る。

 

 

 

 

「我が王よ、トロイアのヘクトール第一王子から手紙が届きました。かつての恩を返す為にトロイアに加勢したいのですがよろしいでしょうか?」

「うむ、貴様は年老いても阿呆なままだな、いや本当に阿呆だなぁ……まあ勝手に出て行かなかったのは偉いと思うぞ、うむ」

 

 トロイア戦争が勃発した直後、真剣な表情でトロイアに加勢してもよいかと確認するマカリオスを見たエウリュステウス王は怒る事なく呆れかえった様子で溜息をついていた。

 

「一応聞いておくが貴様がいない間ミュケナイの守りはどうするつもりだったのだ?」

「王の警護については妻のキルケーに任せようと考えておりました。妻も了承してくれましたし、それにイェラもおりますので王の守りは万全かと思いまして」

「おおそうか、確かに大魔女とイェラが警護するなら私の安全は確保できるだろうな。貴様なりに考えたようだなぁ……で?貴様がトロイアに加勢したら最悪の場合ミュケナイが滅ぶかもしれないと考えられなかったのか?」

「えっ?」

 

 怒る気力もなく呆れかえっていたエウリュステウス王はマカリオスに対して懇切丁寧に説明する事にした。

 

「よいか?貴様はこの私の臣下でミュケナイを代表する大勇士なのだ。貴様が個人的な理由でトロイアに加勢しようとしても、世間はミュケナイの王である私がトロイアを助ける為に貴様を派遣したと判断するだろう。そうなればその後どうなると思う?」

「わ、わかりません」

「ミュケナイはトロイアに加勢したと判断され周囲と敵対関係になるだろう。貴様という抑止力がいないのをこれ幸いと考えミュケナイに侵攻してくる輩も出てくるかもしれんな。貴様の我儘のせいで私や国民に迷惑がかかるのだぞ?」

「な、なんと!?」

「いや普通に考えればわかるだろうが阿呆め」

 

 自分がトロイアに加勢すれば王やミュケナイに迷惑がかかると知ったマカリオスは驚き、それを見たエウリュステウス王は再度溜息をついて説明を続ける。

 

「それにトロイアが攻められているのは自業自得ではないか。如何なる事情があったとしても国の王子が他国の王の妻を奪って帰国するなど滅ぼされても文句は言えんだろうに。トロイアは今すぐ小娘をメネラオスに返した上で、小娘を連れ去った王子の首を連合軍に引き渡せば一応国は残るだろう。だが意地を張って戦うというのであれば滅亡するしかないだろうな。そして国よりも小娘を選んだ愚か者達の為に私は貴様を派遣するつもりはないぞ。諦めよ」

「は、はい」

 

 真顔で説明するエウリュステウス王に気圧されたマカリオスは、王の仰る事は御尤もだと納得しヘクトールに申し訳ないと思いつつもトロイアに加勢するのを諦めようとしたのだが……

 

―ちょっと待ってもらおうか―

「「ッ!?」」

 

 オリュンポス十二神の一柱であるアポロン神が二人の会話に割り込んできたのであった。

 

 

 

 

「ア、アポロン神!?い、如何されましたか……?」

―エウリュステウス、君はマカリオスがヘクトールに受けた恩を知らないのかな?大勇士たるものがかつて受けた恩を返さないなんて酷いのではないかな?―

 

 オリュンポス十二神がマカリオスをトロイアに加勢させる為に割り込んできた事に気付いたエウリュステウス王は戦々恐々としつつもどうにか反論しようとする。

 

「し、しかしアポロン神よ!これはマカリオスだけの問題ではありませぬ!ミュケナイの王としてマカリオスの我儘に国を巻き込むのを認めるわけには!」

―うんそうだね、それで?―

 

「……そ、それに!連合軍の総大将アガメムノンは私の親戚です!マカリオスがトロイアに加勢すれば私の親戚が危険にさらされるのです!」

―うんそうだね、それで?―

 

「……マ、マカリオスを派遣すればミュケナイがトロイアに加勢したと周辺国家が判断するでしょう。そうなればミュケナイが戦火に巻き込まれる事になるかもしれないのですが……」

―もう既にミュケナイはトロイアに加勢しているじゃないか。マカリオスの息子アクイラ君が数千の小鳥を使ってメネラオスの悪口を世界中に言いふらしていたのは君も薄々と気付いているはずだが?―

 

「……」

―君が協力できないと言うのならアクイラ君の一件を連合軍に暴露するし、頑固な君が協力的になれるようちょっとした()()をしてもいいかもしれないねぇ?……エウリュステウス王よ、オリュンポス十二神の名において命じる。マカリオスをトロイアに派遣し連合軍と戦わせよ―

 

「……………ハイ、カシコマリマシタ。タダチニマカリオスヲトロイアニ派遣イタシマス」

―うん、よろしい―

 

 自分に拒否権がない事を悟ったエウリュステウス王は最終的に諦めた表情を浮かべてアポロン神の要請を受け入れる事にした。

 

「も、申し訳ありません我が王よ。私の我儘がここまで大事になるとは思っておりませんでした」

「うむ、本当にな……私のマカリオスよ、こうなれば仕方ない。早急にトロイアに向かい連合軍を撃滅してすぐに帰還するのだ!よいな!」

「はい!」

 

 半ば自棄になったエウリュステウス王はすぐにトロイアに向かい連合軍を撃滅するようマカリオスに命じる……こうしてミュケナイの守護者マカリオスはトロイアに加勢する事になったのであった。

 

 

 

 

「というわけですまないキルケー、ミュケナイを出ていかなければならないのだ。このキュケオーンを食べたら急いでトロイアに向かわなければ。俺がいない間イェラと一緒に王の警護を頼むぞ」

「わかったとも、気をつけていってらっしゃい旦那様。お出かけ用の道具はそこに用意してあるからそれを持ったらすぐに出かけられるよ!それと保存のきくキュケオーンを持たせてあげようじゃないか!……そういえば旦那様は生まれてからずっとミュケナイにいて、これが初めての出国になるのかな?」

「ああそうだな、ミュケナイの外を出るのはこれが初めてだよ」

 

 自分の屋敷に戻り出発の準備をするマカリオスはキュケオーンを食べつつトロイアについて思いを馳せていた。

 

「トロイアか、噂を聞く限りプリアモス王の統治によってミュケナイ程ではないが栄えているそうだな……ヘクトール君は元気にしているだろうか?」

―あ、ヘクトールさんは元気ですよ!父さんを巻き込む事になって申し訳ないと僕に謝っていましたね!―

「む、そうか。それはよかった。でもヘクトール君が謝る必要はないぞ。恩を返すのは当然だし俺は君をまったく恨んでいないと伝えておいてくれ」

―はいはいわかりましたよー!―

 

 会話に割り込んできた息子のアクイラの言葉を聞いたマカリオスはヘクトールが元気にしているのを知り喜ぶと、キュケオーンを食べ終えいよいよ出発しようとする。

 

「じゃあキルケー、行ってくるよ」

「うん気を付けてね旦那様。ところで旦那様はどうやってトロイアに行くつもりなのかな?」

「走っていくつもりだ。今から全速力で走り続ければ夕方にはトロイアに辿り着くそうだからな。アクイラ、誘導を頼めるか?」

―任せてください!―

 

「うん、よろしく頼む。それとイェラは何処にいるんだ?」

「あー、イェラはソフィアちゃんと一緒に魔術の修行中だねー。後で私から伝えておくから安心していいよ」

「そうか、わかった。キルケー、俺を王都の外に転移してくれ」

「いいともさ!」

 

 娘のイェラと別れの挨拶ができない事を少し残念に思いつつもマカリオスは屋敷を出る事にした。キルケーの転移魔術によって王都の外に転送されたマカリオスは全身に力を入れると……全速力でトロイアに向かって走り始めたのであった。

 

 

 

 

「さぁて旦那様も行った事だし、アイアイエー島でラブラブ生活する為の準備を進めないとね!ヒュドラの毒矢も予定通りピロクテーテス君に渡されたみたいだし計画は順調に進んでいるようでよかったよ!いやー楽しみだなー!アイアイエー島に行ったら旦那様と思う存分イチャイチャして、旦那様を豚にして思う存分愛でてあげるんだー!」

―うーん、すごくいい笑顔浮かべてますね母さん。父さんが二度とミュケナイに戻ってこれない事がそんなに嬉しいのですか?―

「……?何を言っているのかなアクイラ?この戦いが終われば大手を振って旦那様とアイアイエー島でイチャイチャできるんだから嬉しいに決まっているじゃないか」

―あ、そうですか。でも父さんや姉さんに伝えず勝手に進めるのは流石によくないと思うのですが―

「大丈夫大丈夫!全てが終わった後で説明すればいいさ!私の旦那様なら笑って受け入れてくれるよ!イェラについてはソフィアちゃんが説得するから問題ないしね!」

 

 

 

 

「おお、ミュケナイの外はこうなっていたのか。初めて見る景色ばかりだ」

 

 キルケーとアクイラが呑気に会話している頃、全速力で走り続けているマカリオスは初めて見る景色に少し感動しつつトロイアに向かっていた。凄まじい速さで走り続けるマカリオスの姿は非常に目立っており旅人や他国の市民達が何事かと驚きつつ目を向けてきたが、マカリオスは他人の視線を気にせずマイペースに走っていた。

 

「しかし連合軍か。世界各地から兵士や勇士達が集まっているというが、どういう風に戦えばいいだろうか?」

 

 久しぶりに人間同士の戦争に参加する事になったマカリオスは昔初陣で他国の軍勢と戦って勝利した記憶を思い返すが、あの時は力任せに暴れて蹂躙していたのを思い出したマカリオスは苦笑する。

 

「ダメだ、まったく参考にならんな。適当に突撃して適当に暴れてただけじゃないか……………いや、待てよ。別にそれでいいんじゃないか?俺は腕力と足の速さしか取り柄のない阿呆なのだし、ヘラクレス殿のように巧妙な戦いなんてできないしなぁ……よし、やるか」

 

 少し考えた末にマカリオスはいつも通り腕力でゴリ押しする事を決意する。そしてマカリオスは道案内してくれているアクイラにある事を尋ねる。

 

「アクイラ、トロイアまで後どのくらいだ?」

―もう少しです!もう少しでトロイアが見えてきます!―

「そうか。ならアクイラ、トロイアの近くで山が多くある地形は知らないか?牽制の為に山を幾つか投げつけようと思っているんだが」

―あ、それはいいですね!山を投げれば勇士達はともかく兵士達はいくらか減らせますからね!じゃあ近くの山脈地帯に案内します!―

 

 アクイラの案内でトロイア近くの山脈地帯に到着したマカリオスはキルケー特製の水薬を飲んで一息入れると、山脈地帯からトロイアを包囲する連合軍を見下ろした。トロイアを完全に包囲する膨大な連合軍の数を見てマカリオスは感心しつつ、すぐ傍にあった山を軽々と持ち上げる。

 

「おお、すごい軍勢だなぁ……うん、これなら大まかな狙いでも連合軍の何処かに当たるだろう。トロイアに落ちないように気をつければいいだけだな。ならばっ、これとっ!これもっ!そしてこれとそれ!ついでにこいつと、おまけにこれだっ!」

 

 そしてマカリオスは持ち上げた小さ目の山を連合軍に向かって投げつけ、続けて近くにある幾つかの山も連続で投げつける事にした。投げ出された山達は恐ろしい勢いで連合軍に飛来し、その圧倒的な質量で連合軍の兵士達を押しつぶしていく。

 

「うん、牽制にはなったな!ではもう一度山を幾つか投げつけてから突撃するとしよう!」

―うわぁ、スゴイ事になってますね。こんな事ができるのは父さんだけですよ―

「そんな事はないぞ。これくらいの事ならヘラクレス殿だって簡単にできるだろうさ」

―あー……まあそうですね。元気だった頃のヘラクレスさんなら余裕でできるでしょうね。なんなら死にかけのお爺さんになった今でも山を持ち上げる事はできそうですねー……―

 

 マカリオスの言葉を聞いたアクイラは確かにヘラクレスなら同じことができるだろうなと思わず遠い目をするも、首を振って意識を切り替えマカリオスにある頼み事をする。

 

―あ、そうだ父さん。これから連合軍に突撃するのなら僕の指示に従ってください。優先して倒してほしい勇士の人がいるのですよ―

「別にかまわないが、その勇士とは一体何者なんだ?」

―いや、そこそこ強い勇士なのですが、とあるお姫様からその勇士さんを確実に殺してほしいと熱心に頼まれてましてねー。まさか土下座されるとは思いませんでしたよ……ええと、お願いできますか?―

「ううむ、何やら事情があるようだなぁ。まあいい、アクイラの指示に従おう。ではこの山を投げつけたら行くぞ!」

 

 アクイラの依頼に首を傾げながらもマカリオスは牽制の山を投げ終えた後、一気に走り出して連合軍に突撃するのであった。

 

 

 

 

「なぁ、これは夢なのかなぁ?俺はもしかして立ったまま寝ているのかなぁ?」

「残念だがこれは夢じゃない、現実だよ……俺も夢だと思いたいぜ」

 

マカリオスが最初の牽制で複数の山を投げつけた直後、連合軍の兵士達は自分に向かって飛来してくる山達を見てポカンとした表情を浮かべていた。

 

「なぁ、山ってあんな簡単に投げていいものなのかなぁ?というかあれをくらったら死ぬよなぁ?」

「ああ、死ぬだろうな。勇士達ならともかく、ただの兵士でしかない俺達は確実に死ぬだろうよ。まあ一瞬で押し潰されて即死するだろうから苦痛はないんじゃないか?」

「……俺まだ死にたくないなぁ」

「そうか、俺もだよ」

 

 現実を受け入れられず茫然自失となる兵士の一人に対して同僚は無表情のまま相槌を打つ。そして飛来した山達が連合軍の陣地に落ちて大勢の兵士達が押し潰されるなか、会話をしていた兵士二人は幸運な事に直撃を免れ生存していた。

 

「あれぇ?俺達生きてるぞぉ?……………なぁ相棒、俺達はまだ死ぬ運命じゃないって神々は仰っているみたいだし一緒に逃げないか?俺達がここにいたところで山を投げつけてくる化け物に対してできる事なんか何もないだろ」

「お前もそう思うか?よし、じゃあ逃げるか」

 

 続けて飛来してくる山達を見た兵士の二人組は真面目な表情を浮かべて武器を投げ捨てた後全速力で逃走する事にした……連合軍では二人と同じような考えを持った兵士達が続出し逃げ出そうとする者が相次いでいたが、生存本能に従い逃げ出そうとするのは生物として当然の事であり、彼らを責めるのは酷な話だろう。

 

「お、王よ!兵士達が、兵士達が持ち場を離れて逃げ出しています!ダメです!止まりません!」

「持ち場に戻らせろ!見せしめに数人程殺してもかまわん!ッ!?や、奴だ……マカリオスだ!?」

 

 パニック状態になり逃げ出そうとする兵士達を諸国の王や勇士達が必死に押しとどめる中、マカリオスが稲妻の如き速さで連合軍に突撃する。マカリオスは全身に稲妻を纏い全速力で駆け出す事で衝撃波が生まれ、道中にいた不幸な兵士達が吹き飛ばされるか感電死していく。そしてとある国の王の目の前まで来たマカリオスは彼を両手で掴み拘束する。

 

「は、速い!?ミュケナイの守護者は私より速いとでもいうのか!?は、離せ貴様!」

「すまない、貴方に恨みは一切ないが貴方を殺すよう頼まれたのだ。じゃあ死のうか」

「ヒッ!?や、やめ」

 

 王の言葉を無視したマカリオスは両腕に力を入れて王の身体を引っ張る。山を持ち上げる怪力に人間の身体が耐えられるわけもなく王はバラバラに引き裂かれ絶命したのであった。

 

「よし、依頼はこれで完了だ。これでよかったのかアクイラ?」

―はい、ありがとうございました父さん。王女様もすごく喜んでます……いや落ち着いてくださいよカサンドラさん。この勇士さんが死んだのがそんなに嬉しいんですか?え?人面獣心の糞野郎を殺してくれてありがとう?いやそこまで言いますか……?一体この勇士さんは未来で何をしたのですか?

 

 

 

 

 

「うわぁ、ロリクスのアイアスの野郎が何もできずに八つ裂きにされたぞ。まあほぼアキレウス並みの速さで距離を詰められてヘラクレス爺さん以上の腕力で掴まれたらどうしようもないよなぁ。でもアイツ性格はクソだけど結構強い奴だったんだがなー……流石ヘラクレス爺さんが認めた大勇士マカリオス殿だな!」

「いや呑気に感心してる場合か!」

 

 自軍の高名な勇士の一人があっさりと惨殺されたのを遠くから眺めていたピロクテーテスは素直に感心していたが、隣にいたオデュッセウスからツッコまれていた。

 

「ピロクテーテス!あの矢を、ヒュドラの毒矢を使え!あの矢ならあの化物にも通用するはずだッ!」

「落ち着いてください総大将殿、今ここから射っても当たりませんって。あのマカリオス殿の素早さを見たでしょう?」

 

 総大将アガメムノンの悲鳴のような命令を聞いてもピロクテーテスは平然としており、毒矢を使う状況はこの時ではないと判断していた。

 

「ここから射てもあっさり躱されるだけだ。ヒュドラの毒矢は数本しかないから無駄射ちはできませんし、一度躱されたら毒矢の存在がマカリオス殿にバレて俺を優先的に警戒するようになるでしょう。そうすれば毒矢を射る機会が殆どなくなりますが総大将殿はそれでよろしいので?」

「ッ!だ、だが悠長に待っている余裕などないだろうが!今この瞬間にもあの化物は勇士達を一方的に殺しているのだぞ!?貴様はあれが見えないのか!?」

 

 顔面蒼白になったアガメムノンが指さした場所ではマカリオスを討ち取らんと世界各地から集まった勇士達が我先に挑んでいたが、マカリオスはまったく焦る様子を見せず次々と返り討ちにしていた。

 

 マカリオスが手足を振る度に勇士の頭は弾け、胴体が両断されていく。頭を掴まれて握りつぶされる者もいれば、両手で掴まれ断末魔の叫びを上げて引き裂かれる者もいた。腕に覚えのある勇士達が成す術なく蹂躙されるのを見たアガメムノンは生まれたての小鹿のように震え恐怖する。

 

「おー、スゴイな。技もクソもない純粋な筋力と素早さで蹂躙してやがる。いや違うな、技を使うまでもないと思われてるのか。まあ確かにそうだろうなぁ、ゴリ押しでどうにでもなるんだから技を使う必要なんかないか。あの状況だったらヘラクレス爺さんも同じ事をするだろうなぁ」

「呑気に感心しとる場合かぁ!?」

「いや落ち着いてくださいって。っと、こちらに来るつもりのようだ」

「ヒ、ヒィッ!?……………ううん」

 

 各国の勇士達を蹴散らしたマカリオスが自分達に視線を向け本陣へ駆け出そうとするのを見てしまったアガメムノンは、あまりの恐怖に耐えられず失神するのであった。

 

「あ、気絶しやがった……まあ無理もねぇか。あの血まみれのマカリオス殿を見たら大抵の男はビビり散らすだろうしなぁ」

「なんだピロクテーテス、怖いのか?少し小刻みに震えているぞ」

「ハッ、まさか。これは武者震いさ。アキレウスが来るまでにマカリオス殿を討ち取ってやるぜ!そういうわけでオデュッセウス、すまんが俺が矢を射る機会を作ってくれないか?」

「ああ、任せろ。ここにいる勇士達に協力してもらうさ」




エウリュステウス王:トロイア戦争に関わるつもりは一切なかったが、アポロン神に脅迫もとい説得され諦めてマカリオスを派遣する事にした。まあマカリオスならすぐに連合軍を蹴散らせるだろうと信じているようだが、その後について考えると頭が痛くなる模様。

キルケー:アイアイエー島ラブラブ計画が順調に進んでいるのを確認して上機嫌になる。愛しの旦那様をアイアイエー島に送る手筈は既に整っているが、エウリュステウス王についても色々と準備をしているようだ。

アクイラ:開き直ってトロイア側に味方している。トロイアからマカリオス宛に手紙がすぐ届いたのはアクイラのお陰である。父親が大暴れするのを見て流石は僕の父親だと喜びつつ、人面獣心の糞野郎が死んだ!と狂喜乱舞するトロイアの王女様を必死に宥めている。天才魔術師兼大魔女なので王女の予言も素直に信じるのだ。

マカリオス:牽制で山を投げつけた後は連合軍に突撃し腕力と素早さでゴリ押ししている。0.9アキレウスの速さで距離を詰めヘラクレス以上の腕力で殴るか掴んで引き裂けば殆どのモブ勇士は死ぬのでゴリ押しでも何も問題ないのだ。次話では有名どころの勇士達と戦う事になるが引き続きゴリ押しするだろう。

兵士二人組:混乱に乗じて逃げ出し命からがら故郷に帰還した。その後二人は戦争はこりごりだと農民として慎ましく暮らし子や孫に囲まれ大往生した模様。

連合軍:牽制で飛んできた山のせいで大勢の兵士が押し潰されたが大丈夫だ、問題ない。世界各地から集められた勇士達もマカリオスに対抗できず返り討ちにされたが、死んだのはモブ勇士達ととある国の王だけなので大丈夫だ、問題ない。士気が崩壊して兵士達が逃げ出しているがこの後アキレウスが駆けつけるから大丈夫だ、問題ない。

トロイア:自分達を包囲する連合軍が突然飛んできた複数の山に押し潰されたのを見て困惑するが、ミュケナイの守護者が援軍に来た事を知り市民達は歓喜していた。



というわけで最終章となりました。今後も毎日投稿できるよう頑張ります。
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