もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。


トロイアで歓迎されるマカリオス

「マカリオス殿、よくぞ、よくぞトロイアに来てくだされた。貴方のような大勇士が味方になってくれるとは本当に心強い。トロイアに住む者達を代表して感謝しますぞ」

「あ、頭をお上げくださいプリアモス王よ。トロイアの王たる貴方がわざわざ俺の為に頭を下げるなど」

 

 戦場に撒かれた山を全て撤去したマカリオスはアキレウスと別れた後、ヘクトールに案内されトロイアに入城していた。門を通り抜けた先でトロイアの王であるプリアモス王から真剣な表情で感謝されたマカリオスは思わず恐縮する。

 

「俺のような暴れる事しかできない阿呆の為に王である貴方が直接出迎えられるとは恐れ多いです」

「何を言いますか、マカリオス殿が来てくれたお陰でトロイアの民は希望を持つ事ができたのです。ほら聞こえるでしょう、貴方を歓迎する民衆の声が」

 

 そう言ったプリアモス王の後ろには城門前に集まったトロイアの市民達が歓声に沸いており、ミュケナイの守護者マカリオスの到着を盛大に喜んでいた。

 

「マカリオス様だ!ミュケナイの守護者様がトロイアに加勢してくれたぞ!」

「大勇士マカリオス様万歳!彼がいるならばあのアキレウスだって怖くないぞ!」

「トロイアは見捨てられなかったんだ!ああ神々よ感謝いたします!」

 

 膨大な数の連合軍に包囲され孤立無援となっていたトロイアに伝説の大勇士の一人が援軍として来た事はトロイアにとって大きな朗報であった。昨日まで不安げな様子を浮かべていた市民達は目を輝かせて無邪気に喜んでおり、トロイアを守る兵士達も武器を打ち鳴らして大いに士気を上げていた。そんな市民や兵士達の様子を見たマカリオスはトロイアに来てよかったと微笑む。

 

「おお、スゴイな。俺が来た事でここまで喜んでくれるとはよかった」

「そりゃそうですって。あの世界的に有名なミュケナイの守護者が援軍に来てくれたとわかれば民衆や兵士達が歓喜するのは当然ですよ……父上、マカリオス殿は長旅と先程までの戦闘で疲れているでしょうし宮殿に案内するべきかと」

「うむ、そうだなヘクトール、お前の言う通りだ。ではマカリオス殿、どうぞこちらへ」

 

 そしてマカリオスは市民や兵士達から歓声を浴びる中プリアモス王に宮殿まで案内されるのであった。

 

―お疲れ様です父さん、依頼の件は本当にありがとうございました!―

「おおアクイラか、お姫様は大丈夫なのか?」

―はい、先程まで狂喜乱舞してましたがようやく落ち着いてくれましたよー……というより喜び疲れて眠っちゃったといいますか。嬉し泣きしすぎて顔がぐちゃぐちゃになってます―

「うーむ、勇士を一人殺したくらいでそこまで喜ぶとは一体何があったのだろうか?」

―うーん、僕も詳しく聞きたかったのですが、カサンドラさんはすごく言いたくなさそうだったので聞くのはやめましたよ。未来では一体何が起きてたのでしょうかねー?―

 

 

 

 

 

 その後トロイアの宮殿にて盛大な歓待を受けたマカリオスは少し休んだ後、今後についてどうするべきかプリアモス王達と会議する事にした。

 

「……ではマカリオス殿はヘクトールの指揮下に入ると?本当によろしいのですか?」

「ええプリアモス王よ、俺はヘラクレス殿やアキレウスと違って暴れる事しかできない阿呆です。トロイアを代表する勇士であるヘクトールなら俺を効率よく運用できると思っております」

「いや大勇士の貴方を部下にするって滅茶苦茶恐れ多いんですが」

 

 トロイアの総大将ヘクトールの指揮下に入る事をあっさり受け入れたマカリオスに対してプリアモス王とヘクトールは思わず恐縮していた。そんなプリアモス王達を見てアクイラは苦笑してしまう。

 

「お二人とも大丈夫ですよ。父さんは器が大きいというか、底が抜けているというか、まあとにかく懐が広い人なので多少無茶振りされても全然平気ですから。異常キュケオーン愛者で異常性愛者な母さんとおしどり夫婦になれる人なんてこの世界を見回しても父さんだけですよ!」

「それ褒めてるのかなぁ?自分の両親に対して言う事ではないとオジサンは思うんだけどなぁ?」

「褒めてますよ!」

 

 笑顔で断言するアクイラを見てヘクトールは何とも言えない顔をしつつも会議を続ける。

 

「と、とにかく、マカリオス殿にはアキレウスの相手をしてもらいます。アイツを抑える事ができるのはマカリオス殿だけですし、奴を抑える事ができればトロイアにも勝機はあります。俺達は遊撃部隊として連合軍を掻き回してやるつもりです」

「うむ、わかった。それがいいと思う。確かに今のアキレウスを抑えられるのは俺だけだろうしな。昔は足が速いだけの子供だったのに、今では山を持ち上げられる程立派に成長していたからなぁ」

「ええ、本当にアイツ滅茶苦茶強くなってましたよねぇ。俺じゃ足止めするのがやっとでしょうね」

 

 ヘクトールとしては連合軍の中で一番強い大勇士であるアキレウスをマカリオスに抑えてもらい、自分達は遊撃部隊として連合軍を翻弄するつもりであった。アキレウスが山を軽々と持ち上げトロイアに投げつけていたのを見たヘクトールは、マカリオス以外にアキレウスを抑える事はできないだろうと確信していた。

 

「そう自分を卑下しなくてもいいと思うぞ。君ならアキレウスとも辛うじて戦えるし勝機も微かにあると思うのだが」

「いや無茶言わんでください。今のアイツは竜の血を浴びた事で不死身の肉体が更に強化されているって聞いてますよ?そんな化物に俺みたいなオジサンがどうやって戦えばいいんですか?」

 

 マカリオスの慰め言葉を聞いたヘクトールは思わず真顔になってツッコミを入れてしまうが、それを見たアクイラがヘクトールでも勝機は辛うじてあると説明する。

 

「大丈夫ですよヘクトールさん!アキレウスさんは踵が弱点だそうなのでそこを攻撃すれば不死性もなくなってヘクトールさんにも勝ち目がありますから!……まあでも母さんが言うには今のアキレウスさんの踵を傷つけるには神造製の武器が必要ですし、仮に不死性がなくなっても竜の血を浴びたアキレウスさんの肉体は滅茶苦茶固いままなので人間の作った武器では攻撃が通らないそうですけどねー」

「いやあそれ無理じゃないかなぁ……?あの俊敏に動くアキレウスの踵を狙って攻撃しろって時点で無理じゃないかなぁ?というか不死性失っても人間の武器じゃ攻撃が一切通らないとか実質不死身のままじゃないか?ちょっと反則過ぎないかとオジサンは本気で思うんですけど?」

「お、落ち着くのだヘクトールよ。気持ちはよくわかるがマカリオス殿の前で醜態を晒してはならんぞ!?」

 

 アキレウスの理不尽ぶりを知ったヘクトールは思わず頭を抱えてしまい、見かねたプリアモス王がヘクトールを落ち着かせようとするのであった。

 

「ふぅむ、今のアキレウスは本当に強くなったのだなぁ……しかしその不死身の肉体に俺の拳は通用するのだろうか?」

「あ、それは心配いりませんよ父さん!大神から受け継いだ雷光の力を拳に込めて殴ればアキレウスさんにも攻撃が通ると僕と母さんは確信してますので!」

「おぉそうか!それならよかった」

「……マカリオス殿は本当に規格外なんですねぇ」

「うむ、そうだなヘクトールよ。彼がトロイアの味方になってくれた事を神々に感謝せねば」

 

 

 

 

 

 マカリオス達が今後について会議を続けている頃、連合軍では一体何が起こっていたかというと……

 

「これはどういう事だ!?あんな化物がトロイアに味方するなんて聞いてないぞ!?話が違うではないか!」

「ああ、あのミュケナイの守護者がトロイアに加勢するとわかっていれば私は連合軍に参加しなかったよ」

「我が国が誇る勇士があっさり殺されてしまった……あれが大神の血を引く半神の実力だというのか」

 

「ええい静まれ!静まらんか!」

 

 話が違うと抗議し騒ぐ諸国の王や勇士を総大将アガメムノン達が必死に宥めていた。勝ち戦だと油断していたところに突如として山が降り注ぎ、その後突撃してきたマカリオスによって勇士達が蹴散らされた光景を見た彼らは余裕をまったく失っており、そのまま連合軍を抜けそうな様子であった。

 

「落ち着くのだ諸君!こちらには大勇士アキレウスがいる!アキレウスならばあの化物を必ずや討ち取る事ができるだろう!諸君らはアキレウスの事が信じられないと言うのか!?」

「ああ、確かにアキレウス殿は無双の大勇士なのだろう。それは我々も疑っていないさ」

「だがアキレウス殿が決着をつけるまでにどれだけの被害が出ると思っているのだ?今の時点で兵士達の三割があの化物が投げつけた山に押し潰されて死に、生き残った兵達も少なくない数が脱走しているのだぞ?」

「我々に至っては国を纏める王が戦死されてしまった。もう戦いどころではないのだ……アガメムノン殿、申し訳ないがロリクスは連合軍を抜ける。アイアス王が戦死されたので早急に次の王を立てねばならないし、兵達も完全に怯えていて使い物にならない状態だからここに残っていても我々は役に立てないだろう。すまない」

「ッ!?ま、待て!」

 

 マカリオスが暴れた結果甚大な被害を受けた連合軍は激しく動揺しており、下手をすれば空中分解するかもしれない状況であった。実際指導者を失ったり大勢の兵士達が死んだ幾つかの国は連合軍を抜けて帰国しようとしており、アガメムノン達は必死に思いとどまらせようとしていた。そんな騒々しい様子を眺めていたアキレウスはつまらなそうな顔をして鼻を鳴らす。

 

「フン、あんな有様で戦えるのか?臆病者が戦場に残っていても邪魔なだけだし向こうの好きにさせればいいだろうに」

「俺もそれには同意見だが……あーあ、どいつもこいつも辛気臭い顔してやがる。勇士達はまだ戦う意思があるが、兵士達はもうダメだな。完全に心が折れてやがる」

 

 アキレウスの言葉にピロクテーテスは同意しつつ周囲の惨状を見回す。連合軍に降ってきた山は全て撤去されていたが、周囲を歩く兵士達の顔は暗く今にも逃げ出しそうな様子であった。持ち場を守る兵士達は山を投げつけてくる化け物に対して自分達に何ができるというのかと諦観している様子を見せていた。

 

「アキレウスが来てくれたお陰で規律がギリギリ保たれているが、マカリオス殿の姿を見ただけで逃げ出しそうだなぁ。お前が早急にケリをつけてくれないと本当にヤバいぜ?」

「ああ、心配するな。俺が必ずマカリオスを打倒して連合軍を勝利に導いてやるよ。大勇士として誓うさ……………だからあの毒矢は使うんじゃないぞ?」

「おお怖い怖い、そんな怖い顔しなくてもいいだろうに。安心してくれって」

 

 アキレウスから睨まれたピロクテーテスはおどけつつもアキレウスの決闘を邪魔するつもりはないと話す。

 

「総大将殿やオデュッセウス達はお前がマカリオス殿の気を引いている内にヒュドラの毒矢を使って確実に仕留めたいと考えているようだが、俺はお前達の決闘に水を差すつもりはないさ。そんな事したらお前に殴り殺されるとわかっているしな。お前の健闘を祈ってるよ」

「そうか、それならいい」

 

 ピロクテーテスの言葉を聞いたアキレウスは頷いてアガメムノン達の様子を眺める。相変わらず騒々しく騒いでいた王や勇士達であったが、とある話題になると揃って何とも言えない表情を浮かべる。

 

「ところでメネラオスを暗殺した下手人の捜索なのだが」

「御言葉ですがアガメムノン殿、そんな事をしている場合ではないと思うのですが」

「そうです、メネラオス殿を暗殺したのは恐らくトロイアの刺客でしょう」

「いやぁ残念でしたなぁ。本当に残念ですなぁ」

 

「……メネラオスの遺体は死後にできた損傷の跡があったが心当たりのある者は?」

「さぁ?わかりませんな。なにせあの時はミュケナイの守護者が暴れていてそれどころではなかったので」

「逃げ出した兵士達に偶々踏まれただけでは?お気の毒に」

「アガメムノン殿、我々はマカリオスという強大な敵に対して一致団結して対抗せねばなりません。下らない犯人捜しなどする余裕などないと思われますが?」

 

「……………チッ、ハァ、そうだな。では次の議題についてだが」

 

 総大将アガメムノンの弟であるメネラオスが暗殺された一件についてアガメムノン達は話し合うも渋い顔をしており、深く追及する事なく次の議題に移ろうとしていた。

 

「おいおい、仮にも連合軍の重要人物が暗殺されたというのにそれでいいのか?」

「いいんじゃねえの?クソ野、メネラオス殿が死んだのは自業自得だろ。暗殺者にあっさり殺されるのが悪いのさ!」

「……まあそれもそうか」

 

 あっさり別の話題に移った事にアキレウスは思わずツッコミを入れてしまうが、ピロクテーテスはヘレネーを虐待していた男が死んだ事を喜んでいた。そしてメネラオスが死んだ事に喜んでいたのはピロクテーテスだけではなく周囲では堂々と祝杯をあげる勇士達までいた。そんな様子を見たアキレウスはこんな有様で連合軍は本当に大丈夫なのだろうかと少しだけ心配するのであった。

 

「いや堂々と酒盛りしていいのか?総大将に見られたら処刑されても文句は言えないぞ?」

「まあ大丈夫だろ!今の連合軍は余裕がまったくないし、貴重な戦力を減らすわけにはいかないから総大将殿も見逃してくれるだろうさ!」




マカリオス:トロイアから熱烈歓迎され恐縮していた。現状アキレウスに対抗できる唯一の存在としてアキレウス係を任される事になった。

プリアモス王:トロイアの王。孤立無援なトロイアに大勇士が援軍として来てくれた事に心から感謝しマカリオスを出迎えていた。

ヘクトール:トロイアの実質的なアキレウスの理不尽さをネタバレされて思わず頭を抱えるも、すぐに気を取り直して戦いの準備を進めた勇士の鑑。愛用の槍を使えば今のアキレウスの踵を貫く事はできる模様。

お姫様:とある国の王が死んで狂喜乱舞した後、喜び疲れて眠っていた。ちなみにアクイラとパリスが彼女を宥めるのに苦労していたとか。

アキレウス:グダグダな連合軍の様子を見て呆れる。ピロクテーテスがヒュドラの毒矢を持っている事を知り余計な事はするなと釘をさしていた。

ピロクテーテス:アキレウスの気持ちを考慮し決闘を邪魔するつもりはない模様。本音を言えば自分の手で仕留めたいがアキレウスの邪魔をすれば殺されるとは理解している。それよりもメネラオスが死んだので祝杯をあげ、酒盛りにも参加する事にした。

アガメムノン:怖気づいた諸国の王達を必死に説得している。メネラオスの件については下手に追及すると連合軍の結束が揺らぐと判断しそれ以上調査する事はなかった。アキレウスには大いに期待しているようで彼の意志を最大限尊重している。その為アキレウスもアガメムノンに従う事に一応不満はないようだ。

連合軍:アキレウスが駆け付けた事でギリギリ敗走する事はなかったが被害は甚大である。特に兵士達はマカリオスの事が完全にトラウマになった模様。それとメネラオスが死んだ事を受けて何故か一部の勇士達が酒盛りしていたが見逃されていた。



というわけで最終章となりました。今後も毎日投稿できるよう頑張ります。
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