もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。


マカリオスとトロイア戦争③

怒り狂うマカリオスが連合軍を襲撃しアキレウス達が迎撃した時から時間は少し遡る。

 

 

 

 

「我が王が、死んだ?」

「はい」

 

 息子アクイラから自分の主君エウリュステウス王が討ち取られた事を聞かされたマカリオスは、当初は現実を受け入れられず困惑した様子を見せていた。

 

「いや待て、おかしいだろう。王のお側にはキルケーとイェラがいたはずだ。あの二人を倒して我が王を討ち取るなど不可能だろうに。それにミュケナイにはイアソン殿達もいるのだぞ?何かの間違いなのではないか?」

「父さん、残念ですが事実です。王様はヒュロスさんに討ち取られたのです」

「……………」

 

 突然の凶報を聞いて呆然自失となるマカリオスの周囲ではプリアモス王達も困惑した様子で顔を見合わせていたが、ヘクトールだけは真剣な表情を浮かべマカリオスを注視していた。

 

「あ、あのマカリオスさ、モガッ!?モガモガ」

「パリス、静かにしろ。今はマカリオス殿を刺激するな……!」

 

 呆然としたマカリオスを見たパリスが心配して話しかけようとするのを阻止しつつ、ヘクトールは状況を整理しようと考え込んでいた。

 

(あの大魔女殿がやられた?いくらヒュロスでも、仮に伝説の大勇士ヘラクレス殿がいても、本気を出した大魔女殿を倒しエウリュステウス王を討ち取るのは困難だろうに。しかし展開が早すぎる。まだマカリオス殿がトロイアに来てから十日程しか経ってないんだぞ?事前にミュケナイを攻める準備をしていたとしてもこれは……いや、まさか、大魔女殿がヒュロスと繋がっていたのか?それならこうも短期間で決着がついたのも納得できるが、だが大魔女殿がそんな事する理由がわからないな。確証が持てない以上、迂闊な発言はできないが……ッ!?マズい!)

 

 ヘクトールは冷静に思考しつつマカリオスの様子を油断なく観察する。呆然自失となっていたマカリオスが全身に雷光を纏いプリアモス王に向き直るのを見て、父親を庇うべくパリスと一緒に前に出るがマカリオスは暴れる事なくプリアモス王に話しかける。

 

「プリアモス王よ、申し訳ありませんが、頭を冷やす為に、外に出ようと思います」

「う、うむ。しかしマカリオス殿、一体何処に行かれるのだ?」

「連合軍に、少し、八つ当たり、しようかと。アクイラ、プリアモス王をお守りしろ」

「は、はい」

 

 アクイラにプリアモス王の護衛を任せ、身体に纏う雷光をより激しく光らせたマカリオスは一度深呼吸した後、稲妻の如き速さでトロイア宮殿を飛び出し連合軍へ吶喊したのであった。

 

「……ふぅ、父さんのあんな姿初めて見ました。でも怒りに任せて暴れないでくれよかったですよ。ここで暴れられてたらトロイアが滅亡していたでしょうね」

「ご、ごめんなさい!僕が、僕がマカリオスさんをトロイアに呼ぼうと提案してなければこんな事には!」

「いえ、謝らなくていいですよパリスさん。パリスさんが提案しなくても父さんはトロイアに加勢する事になっていたでしょうし」

「いやいや、エウリュステウス王が討ち取られたのは我々の責任だよ……マカリオス殿だけ戦わせるわけにはいかないし俺も出撃するから援護を頼むぞアクイラ殿」

 

 

 

 

 

 

 

「我が王が、死んだ。ヒュロス君に討ち取られそうだ」

「う、うむそうか、それはお気の毒に」

 

「俺は今すぐにミュケナイに戻ってその情報が真実なのかを確認したい。だがお前達を放置してミュケナイに戻る事はできない」

「いや、戻ってもいいと思うのだが?トロイアの事が心配ならば暫くの間停戦してもかまわんぞ?」

 

「いや、そういうわけにはいかない。この猛り狂う感情をどうにか処理したいのだ……そこでだ、この憤りをお前達をぶつける事にした」

「あの、マカリオスよ?我々もヒュロスの若造に利用された被害者であってな?その憤りはヒュロス本人にぶつけてほしいのだが?」

 

「ふうんああそうか、じゃあこれからお前達を殺す……!」

「やっぱり説得は無理であったかぁ」

 

 連合軍の総大将アガメムノンは一縷の望みをかけてマカリオスと交渉してみたが、予想通り話が通じなかったのを確認し思わず天を仰いでいた。

 

「あの若造がぁ……我々に厄介事を押し付けおってからにぃ……!」

「落ち着いてくださいアガメムノン殿」

 

 ヒュロスへの怒りを募らせるアガメムノンを落ち着かせつつオデュッセウスは耳打ちする。

 

「貴方のお陰で少しだけ時間は稼げました。ピロクテーテス達は配置についています」

「む、そうか。ではアイアスはアキレウスの援護をさせろ。他の勇士達も全てアキレウスの援護に回せ」

「よろしいのですか?」

「かまわん、アキレウスが倒れたら化物に対抗できる者はいないし後は一方的に蹂躙されるだけだ。一騎打ちを邪魔されてアキレウスは不満だろうが、あの化物を倒すのが最優先だ。化物を倒したらアキレウスには私から謝罪するさ」

 

 アキレウスがやられたら連合軍は蹂躙されるだろうと確信したアガメムノンは、勇士達に自分を護衛させるよりもアキレウスを全力で援護させるべきだと考えオデュッセウスに指示を出していく。そうしている間にマカリオスが雄叫びをあげて周囲に無差別に襲いかかるが、アキレウスが即座に迎撃していた。

 

「ッ」

「これは、凄まじいですな。今までとは雷光の規模が違う……!」

 

 アキレウスとマカリオスが打ち合った直後、周囲に強烈な電撃が拡散し周囲にいた不幸な兵士達を巻き込んでいく。凄まじい速さで闘う二人は一箇所に留まらず縦横無尽に飛び回り、戦いの余波だけで連合軍を蹴散らしていた。

 

「アキレウスが押されているのか。どういう事だ、今まであの化物は手を抜いていたのか?……いや、違うか」

「はい、恐らく今のマカリオス殿は自らの肉体を傷つける事に躊躇いがないのでしょう。あの凄まじい雷光は周囲だけでなく自らも焼いているように見受けられます」

 

 アキレウスが防戦一方となっているのはマカリオスが肉体のリミッターを外し、自分が破滅しても問題ないと自棄になっているからだとオデュッセウス達は察していた。

 

「あの凄まじい勢いは長続きしないでしょう。アキレウスには時間稼ぎをしてもらい、マカリオス殿が息切れをするのを待って反撃に出てもよいでしょうが……」

「フン、その息切れとやらは何時やって来るのだ?半日後か?明日か?今の時点で勇士や兵士達が戦いに巻き込まれ多大な被害が出ているのが貴様には見えんのか?呑気に息切れするのを待っていたら連合軍が全滅するだろうな」

「ええ、そうですな。ここは危険だとしても、アキレウスの反感を買う事になったとしても打って出なければなりません」

 

 アガメムノンの言葉を肯定したオデュッセウスは早急にマカリオスを倒すべく周囲の勇士達に指示を出す事にしたのであった。

 

 

 

 

「チイィッ!?」

 

マカリオスの雷光を纏った拳を防御して受け止めたアキレウスは、自分の骨が軋む感覚と身体を走る強烈な電撃に不快感を覚えつつもマカリオスの猛攻を捌いていた。

 

「いやスゲえなアンタ!俺の不死身の肉体でもここまで効くとはなぁ!他の奴等じゃ一撃で即死するだろうよ!」

「オオオオオォッ!ガァッ!」

 

 アキレウスの称賛を無視したマカリオスは咆哮し電撃を撒き散らし周囲の勇士や兵士達を殲滅していく。世界各地から集められた精鋭達がなす術なく殺されていくのを見て流石はヘラクレスに匹敵する大勇士だとアキレウスは感心しつつも、猛り狂うマカリオスの様子を注意深く観察していた。

 

(何時もとは戦い方が全然違うな。素手で暴れる以外に雷光を使って周囲を殲滅していくとは。これは、半神の力、いや、大神ゼウスの権能の一部なのか?おいおい滅茶苦茶だな。確かにこの力があれば武器なんか必要ないよなぁ)

 

 マカリオスが手に集めた雷を放ち周囲の兵士達を薙ぎ払っていくのを見たアキレウスはまるで大神そのものではないかと思わず乾いた笑みを浮かべるが、何故今までそれを使わなかったのかと疑問を覚える。

 

(ん?……そうか、この力はマカリオスでも扱いきれないのか)

 

 そして観察を続けた結果マカリオスの身体に幾つか火傷のような跡があるのを発見したアキレウスは、雷の力を使えばマカリオスの身体も傷つけるのだろうと当たりをつけていた。

 

(時間をかければマカリオスの肉体が耐えられず倒せるだろうな。まあそんな悠長に待っている余裕なんかないんだが……このままだと連合軍が敗走するぞ。というか今の時点で兵士達が逃げ出してやがる)

 

 完全に戦意喪失し怯えた様子で武器を投げ捨てて逃げ出す兵士達を見たアキレウスは、今すぐにマカリオスを仕留めないとマズいと判断し、自分が持つ最大火力でマカリオスを倒す事にした。

 

「しゃあねえ、反撃をもらう覚悟でいくか……行くぜ!クサントス!覚悟を決めろ!」

「き、気軽に言ってくれますなぁ。あれに突っ込めとは我々に死ねと申すのですかな?……ああもう、わかりました。わかりましたとも!」

 

 アキレウスは神々から与えられた戦車に乗りマカリオスに向かって突撃する。全身から雷光を発するマカリオスを見て神馬の一頭は自棄になりつつも主人の命令に従い一気に加速する。自分に向かって突撃してく戦車を見たマカリオスは迎撃しようと静かに待ち構えていたが……

 

 

 

 

 

 

「今だ、射て!」

 

 

 

 

 

 自分に向けられて放たれた複数の毒矢に対して瞬時に反応し迎撃する。

 

「……ヒュドラか」

 

 一本目の矢は身体から雷を発して撃ち落とし、二本目の矢を素手で掴み取るマカリオスであったが……

 

「そこ、だぁ!」

「ッ!?」

 

兵士達の黒焦げの死体に紛れ接近していたピロクテーテスが飛び出し、マカリオスが迎撃の為に発した雷に身体を激しく焼かれながらも弓から手を離さず、必殺の一撃であるヒュドラの毒矢を放ちマカリオスに命中させたのであった。

 

 

 

 

 

「あぁ、刺されちゃったよ。まあ旦那様ならものすごく苦しむけど即死はしないし大丈夫だけど。後は旦那様が倒れたら急いで回収してアイアイエー島に帰って治療しなくちゃね!」

「ふーむ、神々にも通用する猛毒を受けても即死しないとは大したものだなぁ…………うむ?なあキルケーよ。マカリオスの奴が光り輝いておるのだが大丈夫なのか?」

「えっ、いやちょっと待ってよ!?まさか旦那様ったら連合軍を道連れにする気ぃ!?その技はやめてーーーッ!」

「ええい落ち着け、落ち着かぬか。マカリオスをアイアイエー島に連れて行く為に貴様は色々と準備をしてここにいるのだろう?生娘のように動揺するでない。落ち着いて対処するのだ」

「そ、そうだね。王様の言う通りだね」




というわけで最終章となりました。もうすぐ本編が終わる予定です。今後も毎日投稿できるよう頑張ります。
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