もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら 作:名無しのマネモブ
「おい聞いたか、あのアルケイデス殿が王様に仕える事になったという話」
「知ってるよ。というか俺見たんだよ、アルケイデス殿がマカリオス様と一緒に宮殿に入ったのを。遠くから見てたんだがあの御二人はとても目立つからすぐにわかったぞ」
アルケイデスとマカリオスの闘いから数日が経過しミュケナイ王都は落ち着きを取り戻していた。二人の闘いの余波で破壊された場所は修復作業が始まっており、避難から戻ってきた人々は平和が戻ってよかったと安堵つつ話に花を咲かせていた。
「しかしスゴい闘いだったなぁ、大地が大きく揺れていて最初はこの世の終わりだと勘違いしちまったよ」
「ハハ、お前が部屋の片隅で震えてたのは覚えてるよ」
「いやお前だって神々に必死に祈ってただろうが……遠くから見ていたがあれが大勇士達の闘いなのか、本当にスゴかったな」
「ああ、そうだな」
修復作業に駆り出された兵士達は手を動かしつつ数日前に激闘が繰り広げられた平原……いや
「あそこはどうするんだろうな?」
「どうしようもないだろ。元々ただの平原だったし、それよりも修復しないといけない場所は幾らでもあるから放置するんじゃないか?それよりここの修復を終わらせないと」
「おっと、そうだった。宮殿前の修復を完了させるよう急かされてるし早く終わらせないとマズイな。王のご機嫌を損ねて処刑されるのはゴメンだ」
兵士達は話を切り上げ修復作業に集中する事にした。だが街道のて追いかけっこをする子供達を見て何とも言えない顔をする。
「ぎゃおーボクはアルケイデスだぞ食べちゃうぞー!」
「うわーアルケイデスだ!アルケイデスがでたぞー!」
「きゃーたすけてーマカリオスさまー!」
「うわーんこわいよー!」
「なあ、あれ止めなくていいのか?アルケイデス殿に聞かれたらマズイんじゃないか?」
「う、うーん、子供の言う事だしアルケイデス殿も怒りはしないだろうさ……多分」
狂乱したアルケイデスはミュケナイの子供達に怖い怪物として恐れられお化け扱いされていたのであった……ちなみに数十年後のミュケナイでは「悪い事をすると大男に食べられる」という子供への脅し文句が定着していたが、大男がアルケイデスの事を言っているのかは不明である。
「よし、あの化け物はいないな。化け物は今何をしている?」
「はい、マカリオス様の屋敷に滞在する事にしたようです」
「そうか、マカリオスが監視しているのならいい……さて、貴様達をここに集めたのはあの化け物について話し合う為だ」
兵士達が呑気な様子で雑談していたのとは対照的に、ミュケナイの宮殿ではエウリュステウス王と家臣達が深刻な表情を浮かべ今後どうするべきかを話し合っていた。
彼等の頭を悩ませていたのは新しく臣下になったアルケイデスの事についてである。比類なき武勇を持つ大勇士が臣下になったのだがエウリュステウス王達はまったく喜ばず厄介者が来たと忌々しい表情を浮かべていた。
「化け物によれば十の難行をこなす必要があると言っていたが、ただの仕事では神々も認めないだろう。貴様達はあの化け物でも達成するのは困難であろう難行を今すぐ考えろ!」
「か、かしこまりました。ですが王よ、あの気狂いの言葉を本当に信じるのですか?」
エウリュステウス王の命令に従いつつも家臣達はアルケイデスの言葉を信じられずにいた。彼等からすればアルケイデスはいきなり発狂して王都で大暴れした危険人物であり、いくら強くても信用できず疑ってしまうのは無理もない話であった。
「奴はアポロンの神託を受けたという事ですが本当だとは思えません」
「私も気狂いの化け物など一欠片も信じておらぬ。だが貴様等は天から降り注ぐ光を見たというではないか。神々の命を受けているのは確かなのだろうよ」
家臣達の言葉に同意しつつも、エウリュステウス王は渋い顔をして言葉を続ける。
「それにマカリオスの証言もある。半神の彼奴が大神の声を聞いたと言うのなら、化け物が私の家臣として仕えるのは大神の意向という事だ……マカリオスは愚かで強いだけの阿呆だが私に嘘を言った事は一度もない」
エウリュステウス王としてはアルケイデスを臣下にするのは本当に……本当に嫌で仕方なかったが、最高神ゼウスの意向であれば人間が拒否する事はできない事は理解していた。
「我々にできる事は十の難行を化け物に命じ、さっさとミュケナイから出て行ってもらうだけだ。わかったら化け物に課す難行の内容を早く考えるのだ!急げ!」
「は、はい!」
家臣達を急かしたエウリュステウス王は忙しく働く家臣達を見つつ考え事をしていた。
(あの化け物が失敗して死ぬのが一番なのだが……難しいだろうな。大神から見込みを受けている奴が並大抵の事で死ぬはずがない)
エウリュステウス王は認めたくなかったがアルケイデスが十の難行を制覇するだろうという確信を持っていた。そしてエウリュステウス王を更に不快にさせていたのはアルケイデスが真の支配者だという噂話についてであった。
「あの化け物が真の王だと?馬鹿馬鹿しい、強いだけの気狂いに王の資格などあるものか」
エウリュステウス王は心底忌々し気な表情を浮かべアルケイデスを酷評する。思わず口に出ていたが家臣達は指摘するような度胸はなく聞こえない振りをしていた。
「私が、私こそが生まれながらに選ばれし王なのだ。大神より認められ、半神の下僕を遣わされた私が真の王なのは揺るぎない事実だ。気狂いの化け物などに王の座を渡すものか!」
自分の地位に固執するエウリュステウス王はアルケイデスには決して王座を渡さないと強く誓う。アルケイデスの強さを見てもここまで強気になれるのは自分の地位が最高神ゼウスのお墨付きをいただいているのもあるが、何よりもアルケイデスに対抗できる家臣がいる事が大きいだろう。
「……でもあの化け物とは対面したくないな。用がある時は家臣達に対応させよう」
しかし根が臆病なエウリュステウス王はアルケイデス本人に会う度胸は一切なく、アルケイデスの応対については部下に任せる事にしたのであった。まあ狂乱したアルケイデスを見たらトラウマになるのも仕方ないだろう。狂乱アルケイデスを見てトラウマにならないのは英雄と呼ばれる人間くらいである。
「まあいい、化け物に勝てるようマカリオスには研鑽に励むよう命じた。彼奴は愚かだが真面目だし真剣に励む事だろう。いつかあの化け物を倒してほしいものだ」
自分が信頼する部下がアルケイデスを倒してほしいとエウリュステウス王が本気で願うなか、当のマカリオスはというと……
「アルケイデスよ、頼みがある。我が王からお前を倒せるくらい強くなれと命じられたのだがどうすればいいのだろうか?」
「いやそれを私に聞くのはマズイのではないか?」
屋敷で寛いでいたマカリオスは困った顔を浮かべ、どうすればアルケイデスより強くなれるのか本人に聞いていたのであった。もしエウリュステウス王が見ていたら頭を抱えた後マカリオスを制裁していただろうが、ここにはマカリオスとアルケイデスしかいないので大丈夫だ、問題ない。
「そうか?お前は私よりも強いし強くなれる秘訣を知っていると思ったのだがなぁ」
「まあ私としては隠し事をされるよりはいいし、助言くらいなら別にかまわないのだが……ククッ、わかっていたが正直な奴だな貴様は」
FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。
ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
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