もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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本編最終話です。


トロイア戦争の終結と神代の終わり

「僕は痛いのや人を傷つける事が嫌いです。戦いよりも歌を歌ったり皆と笑い合ったりする方が好きなんです」

―うんそうだね、戦争も終わったし君は何も心配せずのんびり過ごせばいい―

 

「でも僕を助けてくれたあの石像さんのような立派な筋肉をつけたいです。叔父様やお父様の言う通り真面目に鍛錬をするべきなのでしょうか?」

―いいや、君は今のままが一番だとも。ああ、私の可愛いアムノス……君は本当に幼い頃のパリスにそっくりだな。いや、ヘレネーの面影もあるしパリス以上に可愛いねぇ……君はあの二人が作った最高傑作だと私は確信しているよ!―

 

「エヘヘ、アポロン様からそんなに褒められるなんて嬉しいです。わかりました、アポロン様のお役に立てるよう僕は頑張って鍛錬しようと思います!」

―うん、私の為に頑張りたいという気持ちは嬉しいけど止めてくれないかな?君の素晴らしい美貌が鍛錬で台無しになるなんて私は絶対に認めないからね?―

 

 第一次トロイア戦争が終結してから十年の歳月が経過し、第二次トロイア戦争もトロイアの勝利で終結していた。トロイアの宮殿の中庭では幼い王子であるアムノスが羊のぬいぐるみを抱えつつ戦争が終わった事を無邪気に喜んでいた……よく見ると羊のぬいぐるみが喋っているがアムノスに害はなく、むしろアムノスを溺愛して加護を与えているので大丈夫だ、問題ない。

 

「戦争が終わってくれて本当によかったです!でも連合軍の人達はどうして撤退してくれたのでしょうか?」

―総大将のアガメムノンが病気で倒れてしまったからね。元々戦争が長引いて厭戦気分が蔓延していたところに、最後の大攻勢に失敗した挙句総大将が倒れてしまったら戦意を維持する事なんてできないさ―

「あの石像さんのお陰ですね!あの木馬さんを追い払ってくれたマカリオス様の石像さんには感謝しないといけませんね!……でもあの木馬さん、木馬なのに身体が金属でできてましたし変形して人型にもなってましたけど、一体どこが木の馬だったのかなぁ?」

―ううん、言われてみれば確かに……少なくとも木はまったく使われてなかったねぇ?―

 

 連合軍が最後に繰り出してきた木馬()について首を傾げつつも王子と羊のぬいぐるみは幸せそうに雑談していた……その後トロイアの幼い王子であるアムノスは祖父や両親や叔父、そして周囲の人間達から大層可愛がられつつ絶世の美貌を誇る美少年に成長する。成長したアムノスは穏やかで優しい人格者として周囲から愛され、やがて父親の知人である年上の女性と結婚し幸せな家庭を築く事になる。二人が結婚すると聞いた父親のパリスは何故か何とも言えない表情を浮かべていたが、最終的に結婚を認めて笑顔で祝福していたという。

 

―ん?おや、おやおや、アイアイエー島からわざわざトロイアに来たのか。なるほど、トロイアの結末が気になったのかな?……まあいい、かなり弱体化しているし暴れるつもりもなさそうだから、わざわざちょっかいを出す必要もないか―

「アポロン様?」

―いや、なんでもないよ私のアムノス―

 

 

 

 

 

「父上、ようやく終わりましたな」

「ああそうだなヘクトールよ、トロイアを守り切る事ができたようだ」

 

 アムノスが戦争が終わった事を無邪気に喜んでいる頃、玉座の間ではヘクトールとプリアモス王達が肩の力を抜きつつトロイアの今後について話し合っていた。

 

「最後の大攻勢も失敗し総大将が倒れた以上、連合軍はもうトロイアを攻めてくる事はないでしょう……これでトロイアの復興に本腰を入れられる」

「うむ、そうだな。トロイアは存続したが長きにわたる戦いで国が荒廃してしまっておるからなぁ。折角国を守り切ったのに荒廃したままではいかんだろう」

 

 長きにわたる戦乱で荒廃したトロイアの復興に頭を悩ませている二人であったが、やがて会話が一段落するとプリアモス王は真面目な顔でヘクトールを見据える。

 

「さて、トロイアの復興について考えるのはここまでにしよう。ヘクトール、お前の即位式の準備は進めておるし数日後に即位式を行う事にするからお前も準備しておくのだぞ?」

「あの父上、以前から申しておりますが早すぎませんか?父上はまだまだ壮健ではありませんか」

「いやいや、私もいい歳だし退位しても許されるさ。それに連合軍との戦争が終わって安心して気が抜けてしまってな、何時ぽっくり逝くか自分でもわからないから生きている内にお前に王位を譲る事にしたのだ……誰よりも活躍した第一王子のお前がトロイア王になるのは誰もが納得しておるし、市民達も安心するだろう」

 

 トロイア軍を率いて連合軍と戦い勝利したトロイアの守護者ことヘクトールが次のトロイア王に相応しいとプリアモス王は確信しており、他のトロイアの王族や市民達も全員賛成していたのでヘクトールの即位は確定事項であったのだ。プリアモス王の言葉を聞いたヘクトールは溜息をついた後真剣な表情で次のトロイア王になる事を受け入れたのであった。

 

「わかりました、非才の身ですが謹んでお受けいたします」

「うむ、それでよい。これからはトロイアの王として頑張るのだぞ?ああそれと、破壊されたマカリオス殿の石像だが市民達から修復するよう嘆願がきておるのだがどうするべきかのぉ?」

「……あそこまで粉々になってしまっては一から造った方がいいかと」

「むぅ、まあ確かにそうだな」

 

 

 

 

 

「おぉ、ここの屋台は無事だったのか。うん、相変わらずここの串焼きは美味しい。君の作るキュケオーンには負けるが美味しいな。また食べられる事ができてよかったよ」

「へぇーそれはよかった。しかしトロイアに行きたいだなんてモスコス君にしては珍しい我儘だね。やっぱりトロイアの行く末が気になったのかなー?」

「ああ、俺が関わっていた戦争がどうなるのか気になってしまってな。我儘言ってすまないなキルケー」

「コラ!ここではお姉ちゃんと呼ぶように言ってあるでしょ?」

「あ、ごめんなさいキルk、お姉ちゃん」

「うん、よろしい!」

 

 連合軍を撃退し平和が戻ったトロイア王都では、姉弟らしき二人の旅人が大通りの露店を巡り歩いていた。モスコスと呼ばれる弟らしき少年は呑気な様子で食べ歩きをしており、それを姉らしき美少女はニコニコとしながら眺めていて傍から見れば仲のいい姉弟であった。

 

「トロイアが滅亡せず国を存続できてよかった。ヘクトール達が頑張ったのだな」

「まあそれもあるけどモスコス君の働きのお陰だからね?最初に君が連合軍相手に大暴れして数を大きく減らしてくれたお陰だよ。それとミュケナイのヒュロス君達が頑張ってくれたのもあるし」

「うん、流石ヘラクレス殿だな!」

「そうだねぇ……流石ヘラクレスだねぇ……この世界で一番強い大勇士は間違いなくヘラクレスだろうねぇ」

 

 自分の友人である大勇士が相変わらず出鱈目な強さをしている事に感心しつつ二人はこの世界の今後について話し合う。

 

「キr、お姉ちゃんが言ってた通りこれからは人間の時代になるのか?」

「そうだねー、モスコス君やヘラクレスやアキレウス君みたいな大勇士はもう必要とされてないし、空気中のマナの濃度も下がる一方だから戦いは小規模な物になっていくだろうねー……まあ私達にはもう関係のない事だし別にいいよね!」

「ああそうだな、俺が今更出てきた所で迷惑をかけるだけか。じゃあ予定通りこれからはアイアイエー島でゆっくり過ごそうか。それにイェラもそろそろ家族を連れてアイアイエー島に向かうつもりのようだし出迎えてあげないとな」

 

 自分の出番はこの世界にはもうないのだと素直に受け入れたモスコス……マカリオスは大人しくアイアイエー島に帰って静かに暮らす事にしたのであった。

 

「でもアイアイエー島に帰る前にアクイラに会ってから我が王への土産を購入せねば。しかし折角の外出の機会なのに我が王は何故アイアイエー島に残られたのだろうか?」

「うーん、今の王様は色んなしがらみから解放されて落ち着いてるし、アイアイエー島で隠遁してる方がいいって本人も言ってたし別にいいんじゃない?それに現世に出て知人と再会したらややこしい事態になるからねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………あれ、おかしいな?向こうにヘラクレス殿がいてこちらを凝視しているんだが。俺達の姿は以前とは大きく変わっているはずなのに気付くとは。というか何故トロイアにヘラクレス殿がいるのだろうか?」

「あー、ヘクトール君の即位式に参列する為にミュケナイから来ていたみたいだねー。しかし相変わらず元気そうだなー、ヨボヨボに年老いているのに今のモスコス君じゃ勝てないくらい強いとかおかしいでしょ……あ、手招きしてる」

「ううむ、これは断れないな。お姉ちゃん、俺の代わりにヘラクレス殿に説明してくれないか?」

「うんいいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<人物紹介>

●アムノス

→パリスとヘレネーの一人息子。パリスとヘレネーの美貌を引き継いだパーフェクトショタでありアポロン神も溺愛しているようだ。最初パリスは敬愛する大勇士の幼名を付けようとしていたがアポロン神が強硬に反対したのでアムノスになった。優しい両親の事は大好きであり、叔父のヘクトールについてはトロイアの守護者として尊敬している。

 

●プリアモス王

→トロイアの王として国を守り切った後、一安心してヘクトールに王位を譲り引退した。

 

●ヘクトール

→この世界では生き残りトロイア王となった。第一王子でトロイア軍を率いて国を守り抜いた大勇士なのでトロイア市民はヘクトールがトロイア王になる事は当然だと受け入れ歓迎していたとか。後世ではアキレウスのライバル扱いされている。

 

●パリス

→ヘレネーと仲睦まじい夫婦として過ごす。愛妻家として後世ではそれなりに評価されている。

 

●カサンドラ

→クソみたいな予言を阻止する事が出来て狂喜乱舞した後は平穏な人生を送った。運命を変えてくれたマカリオスには心から感謝しており、第二次トロイア戦争で破壊されたマカリオス像の再建を熱心に後押ししていたようだ。

 

●トロイア

→第一次・第二次トロイア戦争を乗り切り存続する事ができた。成功した原因としてはヘクトール達の頑張りもあるが、とある二人の大勇士の活躍が大きいだろう。

 

 

 

 

●アガメムノン

→意地でトロイアを攻めていたが病気に倒れ失意の内に帰国。この世界ではパリスよりヒュロスの方が嫌いになった模様。それとヒュロスの父親についてはマカリオスと同じ化物だと畏怖の念を覚えたようだ。

 

●オデュッセウス

→第二次トロイア戦争も無事生き延び、愛する妻の元へ帰国する事にした。ちなみに第一次トロイア戦争が終結した時に一度帰国していたらしい。アイアイエー島に立ち寄る一件については番外編で書く予定です。

 

●ピロクテーテス

→勇士を引退した後は故郷で隠遁する。マカリオスを倒した勇士と後世では評価されており、聖杯戦争ではヒュドラの毒矢を宝具として使う強力なアーチャーとして召喚される事になるだろう。

 

●アキレウス

→第一次トロイア戦争後は療養して傷を癒した後、ミュケナイ攻防戦や第二次トロイア戦争で大いに活躍する。ヒュロスの父親やアマゾネスの筆頭戦士など強敵と戦う事が出来て満足気だったが、筆頭戦士との夜の決闘()の件で息子に呆れられ妻に詰られていたとか。ギリシャ神話No.2の大勇士として後世では評価されている。アキレウスの事は番外編で書く予定です。

 

 

 

 

 

●ヒュロス

→新たなミュケナイ王としてミュケナイを統治し国を守り抜いた名君として後世ではそれなりに評価されている。即位してから二十年後息子に王位を譲った後は、生まれた孫を父親と一緒に溺愛していたとか。

 

●ヘラクレス

→若き頃は十二の難行を成し遂げたが、老いてなお盛んな大勇士として、ギリシャ神話でぶっちぎり最強の男として後世に名を残す。曾孫の顔を見たときは呪いと病と歳には勝てず流石に寝たきり状態であったが、その状態でも一分程度なら全盛期の実力が出せた模様。曾孫の顔を見て満足気な顔を浮かべた後、もう思い残す事はないとして半年後に老衰で大往生し、死後は神々の一員となった。

 

●エウリュステウス王

→この世界では賢王として評価されている。アイアイエー島で隠遁生活を送っているが、歳を取って落ち着いたのと色んなしがらみから解放された結果、性格は穏やかになってツッコミ役となっているようだ。それと大往生したヘラクレスについては「あの男は本当にスゴイ奴だったな……」と素直に感心していたとか。

 

●イェラ

→色々と思うところはあるが最終的に伴侶と仲直りし家族全員でアイアイエー島で穏やかに暮らす事にした。イェラの話も番外編で書きます。

 

●アクイラ

→トロイアの宮廷魔術師として活動している。ヘクトール王が死去した後は宮廷魔術師を辞めて世界各地を旅する事にした。彼の話も番外編で書きます。

 

●キルケー

→夫と一緒にアイアイエー島でラブラブ生活を送っている。良妻賢母な大魔女として世界的に有名となったが、気に入らないと呪いをかけてくる大魔女として現代の人間や魔術師達からは恐れられているようだ。夫にお姉ちゃんと呼ばれる事が気に入った模様。

 

●マカリオス

→ギリシャ神話No.3の大勇士として名を残す。隠居した後は別に鍛える必要はないと妻から説得された事で子供の姿のままのんびりと過ごしているが、でも夜の鍛錬()は妻の求めもあって頑張っている。偶に外に出る時はモスコスと名乗りキルケーをお姉ちゃんと呼ぶようにしているようだ。今後もアイアイエー島で妻と一緒に仲良く過ごしていく事だろう。




というわけで本編が完結しました。元ネタはとある掲示板で建てたネタスレでしたがパートスレにせずハーメルンで書く事にしてよかったと思います。内容が色々とツッコミどころ満載だとは自分でも思いますが、毎日仕事の合間や休日に楽しく書いて投稿できましたし、無事に本編完結まで書く事が出来てよかったです。それと一度使ってみたかった匿名設定も今回初めて使いましたが中々いい感じでした。

今後も番外編で色々と書くつもりですが、これからは毎日投稿は止め投稿間隔は大分遅くなると思いますのでご了承ください。

それでは皆さん、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。
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