もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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番外編となる続きです。今回は以前投稿した「とある未来での一幕」とは無関係の話となります。


番外編
【IF】良妻賢母な大魔女の第四次聖杯戦争?前編


 西暦1994年、極東の島国の地方都市冬木にて新たな聖杯戦争が始まっていた。何でも願いを叶えるという聖杯を巡って7人のマスターがサーヴァントを使役し殺し合う戦争は今回で四回目になろうとしていた。冬木の御三家の一つである間桐家では、間桐家の養子になった桜を助けようと間桐雁夜が聖杯戦争に参加しサーヴァントを召喚する。本来の歴史では何も成せず死んでいく雁夜であったが……この世界では異なる展開を迎えることになるのであった。

 

 

 

 

「はいはーい、これから君のサーヴァントになるアヴェンジャーのキルケーだよ。君はとりあえず私が現世に留まる為にマスターとして頑張ってもらおうか。あ、でも心配しなくてもいいとも!私が全部やるから君はこの屋敷でゆっくりしてればいいからね!とりあえず身体は治しておいたよ!」

「あ、はい、わかりました」

 

 どうしてこうなった、と間桐雁夜は困惑した表情を浮かべて大魔女の言葉に相槌を打つ。すっかり痛みが消えた身体に違和感を覚えつつも雁夜は何故このような状況になっているのか考えるが、考えても全然わからないのでとりあえず後回しにする事にした。

 

「あ、なんでこんな状況になってるのかって?それはねー、そこのお爺さんのせいかなー?」

「ヒ、ヒィッ……」

 

 大魔女から視線を向けられた老人……間桐臓硯は激しく恐怖しこの場から逃げ出そうと藻掻くも周囲に張られた結界のせいで逃げる事が出来ずにいた。自分や桜を苦しめてきた臓硯が恥も外聞もなく逃げ出そうとしているのを雁夜は他人事のように見ていた。

 

「臓硯君はさぁ、最初から今回の聖杯戦争に勝つつもりはなかったんだよ。聖杯に異常が起きてるのを察して様子見するつもりだったみたいだねー。君を聖杯戦争に参加させたのは君が苦しむ姿を見て愉悦したいからであって、聖杯戦争で優勝するとは一欠片も考えてなかったみたいだね!」

「そうか、まあ、この糞爺ならやりかねないな」

「そして臓硯君が君に与えた触媒は王様の物でね、本来なら王様が呼ばれるはずなんだけど……聖杯の現状を知った王様が召喚されるのを拒否したから代わりに私が参加する事にしたのさ!ちょうどいい機会だし受肉して旦那様と現世で存分にイチャイチャ生活してみるのもいいかなと思ってるんだけどいいかな?」

「そうですか、俺は桜ちゃんが保護されるのなら貴方を邪魔するつもりは一切ないですよ」

「おおよかった、君は物分かりがいいなぁ!大丈夫、桜ちゃんは私の弟子にするから安心していいよ!大魔女として誓おうじゃないか!」

 

「な、何を勝手な事をしておる!?令呪だ、令呪を使え雁夜!この女を早く自害させ」

「はいはい、その臭いお口を閉じようねー。それじゃあ介錯してあげるね!」

「ムッ!?ムググゥ!?」

 

 キィキィ鳴いていた臓硯があっさり拘束され生殺与奪の権を握られているのを見た雁夜は溜息をついて大魔女の好きなようにさせる事にした。令呪を使えば即座に自分が殺されると確信していたし、そもそも自分や間桐家の人間を散々苦しめてきた臓硯を助ける気持ちなど微塵もなかったからだ。

 

「悪いな糞爺、三流で不出来な俺にこの場でやれる事なんて何もないよ……まあ、なんだ、糞爺の葬式は俺と兄貴でやっておくし、後で念仏くらいは唱えてやるから勘弁してくれ」

「あ、お別れの挨拶終わった?じゃあ浄化するねー」

「ギィヤアアアァーーーーー!?」

 

 そして大魔女キルケーが繰り出した炎によって間桐臓硯は妄執と魂を焼き尽くされ、雁夜はそれを静かに見ていたのであった。

 

「じゃあな糞爺、あっけないもんだ。でも貴方にここまで敵視されるだなんて糞爺は何をやらかしたんです?」

「えっ?いや別に臓硯君には怒ってないんだけどなー、見るに堪えない程魂が腐ってるのを見て善意で介錯してあげただけだよー?」

「えっ?善意で殺したんですか……?」

 

 

 

 

「はい、これでおしまい。桜ちゃんの治療も全部終わったよ」

「ありがとうございますキルケーさん」

 

 その後、桜の治療を終えたキルケーに礼を言った雁夜は今後どうするべきか尋ねる事にした。

 

「あの、キルケーさん。今後の事について確認したい事がありまして」

「なにかな?」

「桜ちゃんの事です。あの糞爺が死んだ事で間桐家は魔術師として完全に断絶しました。もう桜ちゃんが間桐家の養子になる必要はありませんし、俺個人としては桜ちゃんを葵さんの所へ返してあげたいのですが……」

「あー、それは止めた方がいいよ?仮に家に帰っても別の家に養子に出されるだけだろうね。それに桜ちゃんの素質は非常に素晴らしいから一般人として暮らす事は諦めた方がいいかな?」

「そ、そうですか」

 

 伝説の大魔女から桜が類稀な素質を持っており、魔術を知らず平穏に暮らす事は無理だと断言された雁夜は思わず頭を抱えてしまう。そんな雁夜を見たキルケーは苦笑して落ち着かせていた。

 

「安心したまえ、約束通り桜ちゃんは私の弟子となり魔女として育成するからさ!この良妻賢母な大魔女の私に指導されるだなんて物凄い幸運な事だよ?一人前の魔女になればわざわざ手を出してくる命知らずなんて……まあそんなにいないだろうね!」

「いや、確かに世界的に有名なアイアイエー島の大魔女の弟子になれば桜ちゃんも安全なのはわかりますけど」

 

 キルケーの言葉を聞いて多少落ち着いた雁夜は、聖杯戦争をどう戦うつもりなのかキルケーに確認する。

 

「あの、聖杯戦争なんですが、本当に俺は何もしなくてもいいんですか?令呪のサポートならできると思うのですが」

「大丈夫大丈夫!私は戦争をするつもりはないからね!」

「えっ?」

 

 キルケーの発言に雁夜は唖然とした表情を浮かべてしまうが、キルケーはケラケラ笑いつつ言葉を続ける。

 

「これでも私は慎重派でね、前回ホムンクルス共を制裁した時に聖杯戦争のシステムについては調査していたんだ。その結果聖杯戦争について完全に把握してあるのさ!大聖杯の場所も把握済みだし、大聖杯を経由して小聖杯やサーヴァント達に干渉する術もあるからね!サーヴァント達の生殺与奪の権は私が持っているから、君はヘラクレスが同乗しているアルゴー号に乗ったつもりで安心して待っていればいいよ!」

「えっ?えっ?」

「ああ魔力については心配しなくてもいいとも!魔力自体は大聖杯に既に集まっている物を拝借すればいいからね。私も何も知らずに召喚されていれば大聖杯の掌握は難しかっただろうけど、以前召喚された時に気まぐれで調査しておいてよかったよー。いやー世の中何が役に立つかわからないものだね!じゃあ雁夜君は桜ちゃんと一緒にのんびり待っててくれたまえ!大丈夫、すぐ終わるからさ!」

「えぇ……?」

 

 気楽な様子でその場から転移したキルケーを見送った雁夜は状況がまるで理解できず大いに困惑していたが、とりあえず桜が不幸な目に遭わなければいいかと思い直し、それ以上深く考えるのをやめる事にしたのであった。

 

 

 

 

「いやーついに来たねェ大聖杯。しかし酷いものだねー、私の呪い以外にも汚染されているじゃないか」

 

 冬木の柳洞寺がある円蔵山、その地下の大空洞にある大聖杯にやって来たキルケーは大聖杯の惨状を見て失笑していた。かつて自分がかけた呪い以外にも第三次聖杯戦争にてアインツベルンが呼び出したアヴェンジャー……アンリマユによって大聖杯が汚染されていたからだ。

 

「あのホムンクルス共は余計な事しかできないのかなー?これじゃ聖杯戦争に勝ち残っても願望器としてはまったく使い物にならないよ?私や噂の魔術王でもないと使えないだろうねー。まあそれはともかく、これだけ魔力があれば問題ないね。じゃあ始めようか!」

 

 キルケーは勝手知ったる様子で大聖杯に接触すると魔力を拝借し始める。その間にも大聖杯が警告するように光り輝いたり、大聖杯に混じっているアンリマユから干渉されていたがキルケーは涼しい顔で作業を続行する。

 

「私の呪いについては私に効くわけがないし問題ないけど……おーっ怖いなぁ、弱いくせに私を汚染しようとするなんてもしかして君は身の程知らずの馬鹿なのかな?あのホムンクルス共じゃないんだから無駄な事は止めた方がいいよ?私を染める事ができるのは旦那様だけだからね!あ、そうそう知ってるかい?旦那様は胸より尻の方が好きなんだよ?夜の鍛錬()でも旦那様はねー……」

 

 吞気な様子で惚気話をしつつ作業を進めるキルケーであったが、ふと視線を感じて振り向く。

 

「おや?これはこれは、かのウルクの英雄王が聖杯戦争に参加していただなんてねー、こんな汚物を超えた汚物を欲しがるとは物好きだなー。でも残念でした、この大聖杯は私が掌握したからね!貴方ができる事はもう何もないよ?それに大聖杯の魔力を少し使って貴方のマスターも操る事ができたし、貴方の生殺与奪の権は私が持っているのさ!うん、じゃあそういうわけで死のうか!」

 

 

 

 

「令呪をもって命じる!アーチャーよ自害せよ!重ねて命じる!自害せよアーチャー!最後の令呪を使って命じる!さっさと自害し座に帰れアーチャー!」

「……………ハァ、下らぬ茶番であったな」

 

 

 

 

「ヨシ!英雄王はお帰り願ったようだね!じゃあもう私を止める存在は誰もいないわけだし、さっさと受肉しようか!」

 

 最大の障害が排除できたのを確認したキルケーは上機嫌な様子で作業を続行する。大聖杯から拝借した魔力が一定以上溜まったのを確認したキルケーは魔力を練り上げ儀式を行う。一瞬だけ閃光が起こった後、そこには受肉したキルケーが自分の身体を確かめていた。

 

「まあこんなものかな?大聖杯も完全に把握したし、後はホムンクルス共が持っている小聖杯の確保だけだ。旦那様の受肉は小聖杯を確保してからだね。じゃあ一度雁夜君と桜ちゃん達の所に帰ろうか!」

 

 一仕事終えたキルケーは自らの勝利を確信した様子で鼻歌を歌いつつ間桐家に帰還するのであった。

 

 

 

 

「というわけで私の受肉は終わったよ!大聖杯も完全に掌握したしこの戦い私達の勝利だね!」

「お、おぅ……時臣の奴も気の毒になぁ」

 

 帰還したキルケーから話を聞いた雁夜は何もわからない内に操られて自分のサーヴァントを自害させた遠坂時臣に思わず同情していた。いくらいけ好かない奴だとしても戦いの土俵に立つ事も出来ずに操られたと聞けば雁夜が同情してしまうのも無理はないだろう。

 

「ま、まあそれはともかく、キルケーさんも無事受肉したみたいですし確かにこちらの勝利は確実みたいですね。俺は何もしていませんし聖杯はキルケーさんが全部使ってください」

「へー、君は謙虚な人間だねー。もう少し欲をかいてもいいと思うよ?」

「いえ、いいですよ。本当に俺は何もしてませんからね……糞爺から渡された触媒を使ってサーヴァントを呼ぼうとしただけですし」

 

 雁夜は苦笑して聖杯はキルケーに渡すと宣言する。痛みから解放され冷静な思考を取り戻した雁夜は殆ど何もしていない自分が聖杯を使う権利などないと理解していたのだ。

 

「その代わり桜ちゃんの事はよろしくお願いします。桜ちゃんが平穏に暮らせるのなら俺は何も要らないですから」

「うんうん任せたまえ!良妻賢母な大魔女の面子にかけて、桜ちゃんは私が立派な魔女に育ててあげるからね!」

 

 雁夜の言葉を聞いたキルケーはニコニコと微笑みつつ魔法陣を構築していたが、やがて真顔になって魔術儀式を行う。

 

「うん、よし、そこにいるのか……………ほいっと!はい小聖杯の確保完了!私達の勝利確定!」

「えっ?」

「えっ?」

 

 魔法陣を起動させたキルケーは予定通り小聖杯の確保が出来た事に満足気な顔を浮かべる。そして魔法陣の中心に突如として転移された銀髪の美女を見た雁夜は一体何が起きたのかわからず茫然自失となるのであった。

 

「えっ?え?ここは何処なの?貴方達は一体誰なの!?」

「あ、あのキルケーさん?そこの女性は一体?」

「ホムンクルス共が用意した小聖杯だよ!今から小聖杯を抜き取るから不要な肉体は雁夜君にあげるね!好きにしていいよ!」

「えぇ……?」




キルケー:アヴェンジャーとして召喚された。聖杯戦争?別に戦う必要ないですよね?と大聖杯に干渉して乗っ取る事に成功し受肉した。大聖杯を掌握し小聖杯も確保できたので勝利はほぼ確定した。この戦い、我々の勝利だ!このまま旦那様も受肉させてラブラブハネムーンする予定。

間桐雁夜:なにがなんだかわからないまま救済された人。身体を蝕んでいた蟲は全て除去され冷静な思考ができるようになっている。とりあえず桜ちゃんが無事ならいいかと深く考えない事にした模様。自分は何もしてないので聖杯はキルケーに譲る事にした人間の鑑である。

間桐臓硯:キルケーの善意で浄化された。よかったね!

エウリュステウス王:キルケーから冬木の聖杯の惨状を聞いてドン引きしており参加を拒否する。もし参加していた場合の願いは「ヒュロスを制裁する事」である。ちなみに呼ばれた時の肉体はTS慎二の物になるようだ。まあ女体化した王様なんて型月世界では大して珍しくもないだろう。

大聖杯:キルケーに掌握されてしまう。アンリマユが必死に抵抗するも勝てなかった。

英雄王:禁断の令呪三度打ちに敗北する。その時の英雄王は怒りを通り越して無になっていた模様。

遠坂時臣:何もわからない内に操られ英雄王を自害させてしまい茫然自失となる。その様子を見た弟子は同情しつつも愉悦の笑みを必死に抑えていたとか。

小聖杯:あったよ!アインツベルンの造った小聖杯が!という事でキルケーの転移魔術によってゲットされた。相手が悪かった。まあ大魔女の息子兼娘が何とか止めてくれるだろう。



今後も番外編で色々と書くつもりですが、これからは毎日投稿は止め投稿間隔は大分遅くなると思いますのでご了承ください。

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