もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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番外編となる続きです。今回は以前投稿した「とある未来での一幕」とは無関係の話となります。


【IF】良妻賢母な大魔女の第四次聖杯戦争?中編

「そうか、臓硯殿は亡くなられたのか」

「ああ、糞爺はキルケーさんに塵一つ残らず浄化されたよ。糞爺の葬式は当主の兄貴が準備を進めている。葬式にはお前も参列してくれ」

「うむ、承知した。遠坂家の代表として参列しよう……それと間桐家に養子に出していた桜についてなのだが」

 

 

 

「桜ちゃんか、糞爺が地獄に行った事で間桐家は魔術師として終わったが心配しなくていい。桜ちゃんはキルケーさんに保護され弟子になったからな。お前もそれなら納得するだろう?」

「おお、世界に名高い大魔女の弟子になれたのか。それは素晴らしい、アイアイエー島の大魔女から指導されるとは僥倖だ。あの子は魔女として大成できるだろう。父親として安心したよ」

「へぇ、あっさり受け入れるんだな。というかキルケーさんに操られてたのにやけに冷静だな時臣」

 

 

 

「常に余裕を持って優雅たれ、我が家の家訓だよ。まあ、お恥ずかしい話だが操られた直後は見苦しく狼狽していたのだがね。何せ何もわからない内に自分のサーヴァントを令呪で自害させていたのだ。これは現実ではなく夢だと思いたかったが、現実は残酷だな。戦う前に勝負が決まっていたとは」

「……」

「まさか儀式に直接干渉できるサーヴァントが召喚されるとは完全に想定外だ。私は、いや、聖杯戦争を作り上げた開祖達は甘く見ていたのだろうな。神代の魔術師の実力を」

 

 第四次聖杯戦争に参加したキルケーが召喚された直後に大聖杯を掌握し小聖杯も無事確保した事を雁夜から聞いた御三家の一人……遠坂時臣は神代の大魔女の実力を知って溜息をつく。

 

「いや、普通に考えればわかる事だ。神代の、それも歴史に名を残した凄腕の魔術師ならば儀式の掌握など容易か。いくら開祖達が精魂込めて作り上げた儀式とはいえ所詮現代の魔術儀式など神代の大魔女からすれば大した物ではないのだろう」

「……」

「そして儀式を掌握できる実力があるのなら態々他のサーヴァントと戦う必要はない。マスターを直接操り令呪でサーヴァントを自害させればいいだけか。ハァ、戦う以前の問題だったのだな」

 

 自分の敗北を素直に受け入れた時臣を雁夜は馬鹿にする事はせず静かに見ていた。雁夜からすれば時臣はいけ好かない人間であったが、何もできずに敗北したのを見て思わず同情していたのだ。

 

「大聖杯は完全に掌握され、小聖杯も確保された。もはや儀式は御三家の物ではなくなったのか」

「ああ、聖杯はキルケーさんの管理下だ。キルケーさんは受肉して大聖杯から解放されたし俺達、いや現代の魔術師や聖堂教会はもう手出しできないだろうな」

 

 そう言った時臣と雁夜は視線をとある場所に向ける。そこには……

 

 

 

「久々の現世も悪くないな。わざわざ俺を呼んでくれてありがとうキルケー、いやこの姿だとお姉ちゃんだな」

「それはよかった。モスコス君も今の身体が気に入ったようでなによりだよ。旦那様の鍛え抜かれた身体もいいけどモスコス君の子供の姿もいいよね。でも旦那様にお姉ちゃんと言われるのがこれほど快感とはねー、フフフこれは癖になりそうだよ!」

「そうか、君が、いやお姉ちゃんがそこまで喜んでくれて俺も嬉しいよ」

 

 

 

「あ、そうだモスコス君、新婚旅行についてだけど何処に行きたいかな?王道のハワイ?熱海?それとも故郷のギリシャ?ああでもホムンクルス共を殲滅するついでにドイツに行ってもいいかも。んー悩むなぁ、もういっその事全部見て回るのもいいかもしれないね!」

「うーんそうだな、お姉ちゃんと一緒に行けるのなら何処へ行っても楽しいだろうが……でもお姉ちゃんの弟子になった桜ちゃんの指導を優先するべきじゃないか?」

「大丈夫大丈夫!桜ちゃんの指導には私の分身で対応させるし、現世でぶらぶらしているアクイラも桜ちゃんの教育に参加させるつもりだからね!ホムンクルス共の代理で参加したマスター達を見逃す代わりに育成を手伝わせる予定なんだよ。本当は皆殺しにするつもりだったんだけどねー」

 

 

 

「おお、アクイラも来てくれるのか。あの子も一緒に見てくれるのなら桜ちゃんも立派な魔女になれるだろうな。そういえば俺を現世に呼び出して受肉させるための魔力は何処から調達したんだ?魔術の事はよくわからないが俺を現世で受肉させるのは相当大変だったんじゃないか?」

「ああそれはねー、小聖杯に溜まった魔力を使ったのさ。ウルクの英雄王様を排除した後にサーヴァント一騎分で足りるか心配だったから、キャスターを自害させてもう一騎分調達したんだよ!キャスターのジル・ド・レェ君は精神がおかしくなってて放置していても絶対碌な事しないと確信したからねーさっさとお帰り願ったのさ!ちなみにマスターの方は操って警察に自首させておいたよ!」

「そうか、ありがとう。俺の為にそこまでしてくれるなんてお姉ちゃんは優しいな。俺はお姉ちゃんが妻になってくれて本当によかったと何度も思うよ」

「フフッ、どういたしまして!じゃあ今日はもう夜遅いし身体がちゃんと動くか確認する為に鍛錬()を少ししてから寝ようじゃないか!」

 

 

 

 そこには人目を憚らず盛大にイチャつくマカリオス夫妻がいた。完全に聖杯を私物化しているが良妻賢母な大魔女が管理しているので大丈夫だ、問題ない。

 

「……フゥーーーーッ、常に余裕を持って優雅たれ、常に余裕を持って優雅であるのだ私よ……!そうだ、ポジティブに考えるべきなのだ。神代の大魔女と敵対したが命は助かったのだし、娘の桜は大魔女の弟子になる事ができた……この幸運を喜ぶべきなのだろうな、うむ」

「おお、心が強いなお前。葵さんが結婚相手に選ぶわけだよ」

 

 心が折れる事なく前向きに考えようと努力する時臣を見た雁夜は、流石葵さんが選んだ男だなぁと思わず感心していた。

 

「まあなんだ、御三家で動けるのはお前だけだし後始末を頑張ってくれ」

「いや、間桐にも手伝ってほしいのだが」

「すまないが無理だ、間桐の実権を握っていた糞爺は死んだからな。三流の俺や、お飾りの当主の兄貴では何の役にも立てないだろうよ」

「ぬぅ」

 

 引き続き会話していた時臣達であったが、最終的に時臣が意を決した表情を浮かべてキルケーにある事を確認する。

 

「キルケー殿、聖杯が汚染されているという事ですが本当なのでしょうか?」

「そうだよー?大聖杯は私の呪いと第三次聖杯戦争でホムンクルス共が呼び出したアンリマユの呪いが充満して混ざっている黒色聖杯になっちゃってるねー。私や神代の大魔術師ならともかく、現代の人間達じゃ絶対に扱えない代物だよ。信じられないのなら実際に見に行こうか?」

 

 キルケーの言葉を聞いた時臣は天を仰いで深い溜息をついた後、もう一度尋ねる。

 

「……なるほど、つまりアインツベルンが二度もやらかしたせいで大聖杯はまともに機能しておらず、仮に私が勝ち残っても根源に至るのは不可能だったと?」

「そうだね!」

 

 笑顔で断言するキルケーに対して時臣は余計な事をしてくれたアインツベルンに対して思わず怒りを募らせてしまい、それを見ていた雁夜は時臣に深く同情していた。

 

「アインツベルンめ、なんという事をしてくれたのだ……!」

「落ち着け、お前がやらなくてもアインツベルンはキルケーさんの怒りを買って滅亡が確定しているから安心しろ」

「うんうんそうだね、ホムンクルス共は私が処分するから時臣君は心配しなくてもいいとも!とりあえず聖杯戦争はもう続けられないし私の方から参加者達に連絡を入れておこうじゃないか」

 

 肩を震わせる時臣を見たキルケーはケラケラ笑いつつ、大魔術を軽く行使して聖杯戦争の終了を宣言する事にした。

 

 

 

 

―やあやあ、みんな聞こえてるかなー?私は良妻賢母な大魔女キルケーだよ!今回の聖杯戦争は私が大聖杯の支配権を完全に握ったので君達の勝利は皆無となりましたー!いやー残念だったねー!まあホムンクルス共がやらかしたせいで優勝しても君達の願いを叶える事はできないんだけどね!ほらこれが証拠の汚染された大聖杯だよ。みんな見えてるかなー?―

 

―おや、いきなりの展開で何が何だかわからないって感じだね?じゃあマスター君達とサーヴァント達は……気をつけ!休め!気をつけ!休め!……うん、よろしい!とりあえず君達の生殺与奪の権は私が握っている事はわかってくれたかな?―

 

―本当ならこのまま君達を操ってサーヴァント達を全員自害させてもいいんだけどね?今日はもう遅いし明日の昼まで猶予を残してあげるよ。その間にお別れをすませておいてね。いやー私って優しいなー!流石世界に名高い良妻賢母な大魔女だなー!あ、逃げようとしたり無駄な事をしようとしたら即座に呪殺するからね?―

 

―何でこんな状況になっているかって?それはアインツベルンのせいかな。あのホムンクルス共は私の旦那様の墓を荒らした上に、身の程知らずにも神霊のアンリマユを呼ぼうとして無様に失敗して大聖杯を汚染させたからね!恨むならホムンクルス共を恨んでね!詳しい説明は明日の朝にするから今日はもう解散しようか!それじゃあおやすみー!―

 

 

 

 

「これが歴史に名を残した神代の大魔女の力なのか。全てが桁違いだ……私は本当に幸運だったのだな」

「そうだな。善意で処分された糞爺やこれから殲滅されるアインツベルンと違ってお前と遠坂家は無事なんだから素直に喜ぶべきだと思うぞ。厄ネタと化した大聖杯もキルケーさんが管理してくれるんだからな」

「ああ、君の言う通りだな」

 

 アイアイエー島の大魔女の力を見た時臣と雁夜は自分達は幸運だったのだと再確認し安堵の溜息をつくのであった。

 

「でも仮にキルケーさんが呼ばれてなかったらどうすればいいんだろうな?現代の魔術師だと対処できないしどうしようもないぞ」

「ふむ、その場合は一度諦めて次の聖杯戦争の時に大聖杯に干渉できるキャスターを呼び出すしかないだろうな。たとえば魔術王ならばどうだろうか?」

「いやそれ無理じゃないか?キルケーさんを見る限りたとえ令呪があっても神代の大魔術師を制御できる気がしないんだが。今回みたいにキャスターに私物化されるのがオチじゃないか?」

「……君もそう思うか」




遠坂時臣:なんだかんだ敗北を受け入れていた心が強くて優雅な人。アインツベルンのせいで聖杯戦争で根源に至るのは無理だと断言された可哀想な人でもある。とりあえず命は助かったし娘の桜は大魔女の弟子になれたからヨシ!とポジティブに考える事にしたようだ。弟子の綺礼については次話で書きます。

間桐雁夜:心が強い時臣を見て感心していた。後始末が終わったらルポライターに戻るつもりのようだ。当主の兄も魔術師を引退するらしい。

キルケー:小聖杯を使って旦那様を呼び出し受肉させた事で目的を達成する。ウキウキな様子で新婚旅行は何処に行こうか旅行雑誌を熱心に読んでいる模様。旦那様がいるから多少ブレーキが利いているが、もしモスコスがいなかったら聖杯戦争の参加者達は全員あっさりと自害させられていた事だろう。とりあえず受肉した夫と一緒に夜の鍛錬()を楽しむ事にした。

小聖杯:キルケーの物になった。小聖杯を抜かれたホムンクルスは雁夜の提案で軽く処置をした後元の場所にリリースされた。今のアイリスフィールはただの銀髪人妻でしかない。

キャスター:なんちゃってキャスターのジル・ド・レェがキルケーに対抗できるわけもなくあっさり自害した。相手が悪かったのだ。

聖杯戦争の参加者達:次話で書きます。




今後も番外編で色々と書くつもりですが、これからは毎日投稿は止め投稿間隔は大分遅くなると思いますのでご了承ください。

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