もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。


助言を受けるマカリオスと鍛錬と余興

「そうだな、一番確実なのは高名な人物に師事する事だろう」

「師事、かぁ」

「うむ、我流でそこまで鍛え上げた事は称賛するが、やはり我流では限界がある」

 

アルケイデスはマカリオスへの助言として強くなるには誰かに師事するのが一番だと伝える。

 

「我流でそこまで強くなれたのだ。よき師に教われば更なる高みに行けるさ」

 

それはアルケイデスの本心からの言葉であった。大賢者ケイローンの指導を受けた自分とほぼ互角に戦える程の男が見様見真似の我流で強くなったと聞いて感心していたが、それと同時にマカリオスの才能に驚き惜しんでいた。

 

(末恐ろしいな、だがこれ程の男が奴隷生まれという出自だけでまともな指導を受けられないとは……あまりに惜しい)

 

目の前の男が頭の出来はともかく自分に比肩する才能があると理解したアルケイデスは、善意でとある提案をする事にした。

 

「なあマカリオスよ、ケイローン殿に師事してみないか?」

「えっ?」

「それ程の才能を我流で終わらせるのはあまりにも惜しい。私から紹介するから心配しなくてもいい」

 

困惑するマカリオスに対してアルケイデスは善意で言葉を続ける。

 

「ケイローン殿は元奴隷というだけで差別するような御仁ではない。貴様程の男が指導を乞うならばケイローン殿も喜んで技を伝授するだろう」

「う、ううむ。お前の提案は嬉しく思うし、かの大賢者の指導を受けられるのは魅力的だが……」

 

アルケイデスが善意で提案してくれているのを察したマカリオスは彼の好意を嬉しく思いつつも、自分は大賢者に師事する事はできないと申し訳なさそうに断る。

 

「だが申し訳ない、俺は家臣として王をお護りしなければならないのだ。王のお傍から、ミュケナイから離れる事はできない」

「むぅ、そうか、それは仕方ないな」

 

マカリオスの言い分にアルケイデスは惜しみつつも納得する。大賢者ケイローンの指導を受けるにはミュケナイを離れる必要があり、エウリュステウス王の家臣でミュケナイの守護者と称されるマカリオスが勝手にミュケナイを出る事はできないのは当然だと理解していた。

 

……もし仮にマカリオスが乗り気であっても主君のエウリュステウス王は絶対に認めないだろうし、それに周辺国家への抑止力として機能しているマカリオスがいなくなれば周辺国家は好機と見てミュケナイに干渉をするのが確実なのでケイローンへの弟子入りはどの道無理なのであった。

 

 

 

 

「そういうわけでアルケイデス殿を超える為にはどうすればいいのかアルケイデス殿と話し合っておりました」

「……………フゥーーーッ、うむ、そうか。あの化け物に話すなと言わなかった私の落ち度でもあるな。貴様が愚かで阿呆なのは知っていたのだから言い含めなかった私も悪いか……貴様は後で制裁するとしよう」

「も、申し訳ありません」

 

 

 

 

アルケイデスが最初の難行を課されてミュケナイを旅立った後、マカリオスは何時ものように鍛錬を行っていた。

 

「ふん!うおぉ!」

「ほぉ、精が出る事だな」

 

そして鍛錬するマカリオスの近くではエウリュステウス王が護衛を侍らせ興味深い様子でマカリオスの鍛錬を眺めていた。全身から汗を流しつつ身体を鍛えているマカリオスを見てエウリュステウス王は気になっていた事を聞いてみる事にした。

 

「マカリオスよ、貴様は最近こうやっている事が多いが、あの化け物に勝てる算段はあるのか?」

「はい我が王よ!アルケイデス殿に勝てるよう考えた末の鍛錬でございます!」

 

エウリュステウス王の疑問に対してマカリオスは自信を持って答える。

 

「私は頭が悪くあまり器用ではありません!今までの戦い方を変えたところで上手くいかずアルケイデス殿には勝てないでしょう!」

「自分で頭が悪いと認めるな阿呆が。いや貴様が愚かなのは私も知っているが……それで?どうするつもりなのだ?」

 

自分が頭が悪いと開き直るマカリオスにイラつきつつもエウリュステウスは話を続けるように急かす。

 

「なので私は自分の強みを活かす事にしようと決めたのです!大神からいただいたこの身体を鍛え上げ十全に使いこなせるようにすればいいと!」

「それで化け物に勝てるのか?」

「はい!この前の闘いではアルケイデス殿の技量に終始押されておりましたが、腕力と素速さについては僅かに私の方が上でした!なのでその二つを優先的に鍛えようと考えまして!」

「ふうむ、なるほど」

 

マカリオスの言い分を聞いたエウリュステウス王は少し納得した様子を見せる。

 

「小細工に頼らず自分の方が秀でている部分を鍛え上げて勝つという事か。愚図な貴様にしては考えているではないか」

「ありがとうございます!」

「まあ勝てる算段があるのなら私から言う事は何もない。引き続き研鑽に励むといい……だが」

 

納得したエウリュステウス王は少し悩んだ末に、ずっと気になっていた事を尋ねる事にした。

 

「貴様は何故山を持ち上げているのだ?」

「筋力を更に上げようとすれば生半可な負荷では足りないので!こうしてミュケナイの近くにあった山を持ち上げてみようかと思いまして!」

「いや山を持ち上げるって普通は無理なのだぞ?しかもそれ程の大きな山を持ち上げるなど……貴様なら天空を支える事だってできるかもしれんなぁ」

 

臣下の出鱈目ぶりを見て思わず遠い目をするエウリュステウス王だったが引き続きマカリオスの鍛錬を見学する事にした。

 

……目の前で山が持ち上げられてもエウリュステウス王は微塵も動揺していなかったが、それは度胸がついたからではなくマカリオスが自分に危害を加えるわけがないと確信し信頼している証なのだろう。

 

 

 

 

「御覧ください!脚力も鍛えた結果、以前よりも脚が速くなりました!これならアルケイデス殿と再び闘う事があっても遅れを取る事はないかと考えております!」

「おおそうか。それは良い事だが……」

 

雷光を纏い全力疾走したマカリオスは自信満々な様子で断言する。エウリュステウス王はマカリオスの言葉に安心しつつも何とも言えない表情で指摘する事にした。

 

「速すぎてまったく見えなかったし違いがまるでわからんぞ。おい、貴様等は何かわかったか?」

「も、申し訳ございません我が王よ。我々もマカリオス様の動きを目で追う事ができませんでした」

 

マカリオスの動きが速すぎて視認できなかったエウリュステウス王は護衛の兵士達に聞いてみるが、兵士達も何が起きたのかわからず困惑した様子を見せていた。

 

「ええい役立たず共めが!クビにしてやろうか!フン、まあいい。貴様が私に嘘をついた事はないし脚が速くなっているのは事実なのだろう。これからも慢心せず精進しろよ」

「はっ!」

 

最終的にエウリュステウス王はマカリオスの言葉を信じる事にした……マカリオスの速さはアルケイデスを超え後のトロイア戦争で大活躍する大英雄に匹敵するレベルであったがエウリュステウス王が気付く事はなかった。まあエウリュステウス王は勇士ではなく王なので気付けないのを責めるのは酷である。

 

「おおそうだ、いい事を思いついたぞ!」

 

その時ふと名案が浮かんだとエウリュステウス王は笑みを浮かべる。

 

「おいマカリオス、数日後に隣国から使者が訪問するのを覚えているか?」

「はい我が王よ」

「うむ、それでだな……使者を饗す時に貴様に余興をやってもらう事にした」

 

 

 

 

「……信じられん」

 

数日後、ミュケナイを訪問した隣国の使者達が目の前に広がる異常な光景を見て絶句し全員が顔を青褪めさせていた。

 

「や、山が、山が動いている。いや、一人の大男が山を持ち上げて動かしてる!?」

 

彼等が見たのはミュケナイ近郊にある大山がたった一人の男に持ち上げられ動かされている光景であった。理不尽な光景を見た使者達はエウリュステウス王の前で思わず顔を引き攣らせてしまうが彼等を責めるのは酷であろう。

 

「ハハハ、そう怯えなくてもよい。ただの余興だ。大神から賜ったマカリオスは従順で大人しいからお前達に危害は決して加えぬよ。何処ぞの強いだけの気狂いとは違うのだ」

 

エウリュステウス王は予想通りの反応が見れたと満足気に頷くと余裕に満ちた表情を浮かべる。

 

「見ての通りマカリオスは怪力無双だが、奴は脚もすこぶる速いのだよ……そら、来い私のマカリオス」

 

山が元の位置に戻されたのを確認したエウリュステウス王が指を鳴らすと、直後にエウリュステウス王の前にマカリオスが跪いていた。

 

「あ、あの距離を一瞬で……!?」

 

稲妻の如き速さをもって参上したマカリオスを見た使者達は、ミュケナイの守護者は怪力だけでなく脚も速いのかと戦慄する。マカリオスが元奴隷である事を知っている使者達は内心見下している者もいたが、マカリオスの理不尽な強さを直接見て思わず恐怖に震えてしまう。

 

そんな使者達を見たエウリュステウス王は愉悦の笑みを浮かべるとマカリオスを労る事にした。

 

「お呼びですか我が王よ」

「うむ、見事な余興だった。そこの客人達も貴様の力を見て盛り上がっておったぞ。今後客人達を饗す時の恒例行事にしてもよいだろうな!」

「はい、王の御命令があればいつでもやります」

 

エウリュステウス王は震える使者達を見て自分の目論見通り上手くいったと得意満面の笑みを浮かべ、マカリオスは主人が無邪気に喜ぶのを見て我が事のように嬉しく思うのであった。

 

 

 

 

……その後帰国した使者達は怯えた表情を浮かべつつマカリオスの脅威を語り自分達の王に必死に警告していた。最初は信じなかった王もいたが他の国でもミュケナイに送った使者達が揃ってマカリオスの余興について語ったので、最終的には周辺国家の全ての王が危機感を持つ事になりミュケナイに手出しする事はなくなったのだ。

 

そしてミュケナイはエウリュステウス王の統治の下大いに繁栄し平和を謳歌する事になる。後世ではエウリュステウス王の個人的な評価はお世辞にも高くはなかったが、ミュケナイを安定して統治し繁栄させた業績は当時から認められており、統治者としては有能だったと評価されていたのであった。




FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。

ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。



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