ゲヘナ学園所属の男子生徒がいろんな生徒に重い矢印向けられていく話 作:コウハクまんじゅう
ようやく余裕ができてきたので、また投稿していきます!
ちょっと目を離した隙にお気に入り登録伸びまくってて仰天しました…
多くの方々に読んでいただけているようで、感謝感激雨あられで御座います!今後とも、拙作をどうぞよろしくお願いします!
目まぐるしく後方へ流れてゆくビル群を眺めている内に、あっという間にミレニアム自治区へ着いた。
AIが内蔵された改札を通り抜け、往来するロボットや獣人、生徒達の波の合間を縫って外へと出る。
右を見ればネオンの看板。
左を見れば巡回ドローン群。
生命体が生み出す温かさ、生活感、それらが入り込む余地が一部たりともないハイテク世界は、疲れている体には少々刺激が強かった。
「うー…慣れねェ〜。目がチッカチカする…えーっと、俺が乗るバスは…」
目の前の景色から逃げるようにスマホを立ち上げてこれから乗るバスを確認していると、駅前に広がるバス停に続々とバスが入ってきた。
「ミレニアムサイエンススクール行き…こいつか。」
空気が抜けるような音と共に開かれた扉。
袋に包まれた愛刀を改めて肩に掛け直し、乗り込もう足を踏み出した矢先。
(……ん?)
どこからか飛んできた、視線。
獲物を狙う鷹のような殺気に思わず足が止まる。
「…おっとっと。」
段差に躓くのを装い、足が止まったのを誤魔化す。
と同時に、瞬き一つの間に視線を巡らせて周辺を確認する。
「……。」
ああ、
根拠はない。姿も見えない。しかし断言できる。
長年培われてきた勘が、磨かれてきた感覚が告げてくる。
狙撃手か?尾行か?いずれにせよ、俺は誰かに視られている。
座席に腰を落ち着け、愛刀を体の前へ持ってくる。ホルスターに収まっている散弾銃に弾を込め、いつでも引き抜けるようにストックに手を添える。
(こりゃあ、先生には先行っててもらうしかねぇか。)
ため息交じりにスマホを取り出し、変わらず注がれる視線を意識から追い出した。
□■□
発車してから数十分。バスは渋滞に見舞われていた。どうやら今日はついていないらしい。
窓越しながらも、視線は依然として肌に突き刺さってくる。恐らく、移動しながらこのバスを、俺を、追跡しているのだろう。
既に先生には、遅くなるので先にアリスの元へ行くよう連絡を入れていた。
謎の追跡者に関しては、無用な混乱を招くと判断して伝えていない。
(次の駅までもう目と鼻の先…このまま足止めを喰らうより俺が走った方が速いな。尾行も巻ける。)
そう判断するや否や、俺は停車ボタンを押した。
タイミングよくバスも動き出し、さきほどまでの停滞が嘘のようにスムーズに進んだ。
首を長くして待っていたバス停が、もう目の前だ。
一瞬、このまま乗っていればよかったのではと後悔するものの、既にバスは停車し、ドアも開いている。ここで「やっぱりやめときます」なんて言えるわけもなく。渋々スマホを取り出す。
支払い機を通してAIが電子決済を終え、運転手の顔を見ようと顔を上げた。
しかし、そこに運転手はいなかった。
「ほォ、ミレニアムじゃバスまで自動化が進んでんのか。」
技術の発展ぶりに舌を巻きつつ、俺はバスを降りた。
乗客を降ろしたバスは次の停車駅へ向けて再び走り出していった。
去り行くバスの尻を見送っていると、反対側の車線を走る別のバスが見えた。
通り過ぎていくバスの運転席を、特に意図もなくちらりと見た。
─運転席には、獣人の運転手がいた。
「……うん?」
通り過ぎるのは1秒にも満たない時間だった。ゆえに、己の目の錯覚を疑ったが、あれはたしかに運転手が乗っているように見えた。
「…たまたま、自動運転バスに乗り合わせただけ…なのか?」
ふと、目の前を通り過ぎていく車の群れに目が移った。
ついさきほどまであれほど渋滞していたというのに、嘘のように流れている。
もしあのままバスに乗っていたら、この流れに乗れていたのだろうか。
「……ついてねぇー。」
ハァ、とため息をついて後頭部を引っ掻くと、改めて意識を集中させた。
依然として、視線は注がれていた。なんともまぁ熱心なこった。しかし、校舎に着いて先生と合流できてしまえば手出しできまい。
「兎も角、校舎に行かねぇとな。時間は…良し、まだあるな。」
スマホで時間を確認した流れで地図アプリを立ち上げる。現在地を確認、画面をスワイプさせて校舎の位置を─
「石切くーん!!」
「え?」
ドドドドッ、とこちらへ駆け寄って来る足音が耳に届く。声の方向へ振り向く前に、その場でつんのめりそうなほどの衝撃が背中に加わった。
「おわッ!?」
「久しぶりー!元気にしてた?」
背中に突進してきた声の主の方へ顔を向けると、そこには、アリスが暴走した際に助けに来てくれたメイド軍団…C&Cだったか?のうちの一人がいた。
けれどあの時とは違い、今は制服を着ていた。
名前は…名前は…知らん。けれど、ハッキリと覚えているのが─
「で、でッッ…」
「んー?」
天真爛漫に笑う彼女。
その笑顔は見る者を和ませ、何時間でも見ていられる。
しかし男であるならば、目線は自ずと下がってしまうのは自明の理。
メイド服のときでさえ大暴れしていた双丘は制服でも健在で、むしろ制服を着たことで更に危うくなったというべきか…。
そんな爆弾が、思いっきり密着している。
俺の、背中に。
「…………」
あの時も、俺はこの果実に絞め落とされて意識を失った。
めっちゃ柔らかかったな、いい匂いしたな、アコもこんぐらいあったっけかな、叶うならもっかい…
「おーい!」
「ッは…!?」
「あ、戻ってきたかな?おかえり!」
「た、ただいま…???」
「今日もミレニアムにいるんだね、石切くん!」
「え、ま、まぁ。先生のお伴で…」
「先生?先生も一緒なの!?いいないいなぁ、羨ましい!アスナもついていっていい!?」
「いや、これから合流すると言うか…」
目をキラキラさせ、こちらにグイグイ近づいてくる。その勢いに俺は完全に押される他なかった。
「ちょっ、アスナ先輩!何してるんですか!?」
そんな俺に救いの手は差し伸べられた。
アスナ先輩、と呼ばれた少女の向こうから、カーディガンを身に纏ったメガネの少女が駆け寄ってきた。
たしか、彼女もC&Cの一人の…こちらも名前は知らない。
「アカネ!石切くんがね、これから先生に会いに行くんだって!」
「え、ええ?あ…。はぁ…アスナ先輩、また任務のこと忘れていますね…」
「ええっと…?」
目線で助けを求めると、少女は察したようにメガネを掛け直し、密着していた少女を引き剥がした。
「その…あの時以来ですね、石切さん。改めまして、私は二年の室笠アカネと申します。」
「私は三年の一ノ瀬アスナだよ!」
ニコニコと楽しそうに笑うアスナと対象的に、アカネは困ったように眉を下げている。
「二人とも、なんでここに?」
「買い物の途中です。今日は予定が空いているので…」
「へぇ、二人は仲良しなんだなァ。」
「うん!とっても仲良しだよ!石切くんも私たちと仲良し、しよ?」
「そうしたのは山々だが、今は先を急いでる。また今度な。」
「えー、そっかぁ。残念。」
「…ところで、石切さんは何用で?」
「ちょいと先生の手伝いをな。これからミレニアムの校舎に行くところだ。」
「では、私たちがミレニアムをご案内しましょうか?」
「それいいね!石切くん、ミレニアム不慣れだろうし。私達が色々教えて上げる!抜け道とか〜美味しいお店とか〜、遊べる場所とか!」
「え、いいのか?」
「もっちろん!」
「はい。」
渡りに船とは正にこのこと。正直、地図アプリ片手に街を進むのは少々不安だった。
しかし、この間共に戦った人達が案内してくれるというのなら、これほど有難いことはない。
俺はこの提案に飛びつくことにした。
「それじゃあ、頼んだ。」
「おっけー!まっかせて!」
そう言ってアスナは、俺の右腕に飛びついてきた。当然、豊かに育った
「!!?あ、アスナ、腕組む必要は…」
「いいえ?」
むにゅん。
そんな擬音が鳴っているのではないかと錯覚する。
俺の左腕には、アカネが密着していた。
「不慣れで、広い異国の地で、迷子になってしまっては大変ですから。私達がしっかりとついておりますので♪」
俺の腕を抱えるように抱きつき、眼鏡の奥は淑やかに細められている。
あっ、外見以上に大きいのか。こりゃたまげたなぁ。などと最低なことが頭をぐるぐると巡り、完全に思考が止まってしまった。
「ほらほら、はやくいこっ!」
「えっ、あ、ああ……」
アスナに強烈に腕を引っ張られ、半ば引きずられるようにして道案内が始まった。
─俺は気づくべきだった。
二人が接触してきた段階で、今まで肌に突き刺さっていた視線が消え失せていたことに。
□■□
「あそこのスイーツ店は美味しい穴場でねー、C&Cのみんなともよく食べに行くんだ!」
「私のイチオシはパフェです♪あの店のパフェはどれもボリュームたっぷりで、特にストロベリー&チョコレートがオススメです。」
「そうかァ、いつか風紀委員会の皆と来てェなあ。」
道案内が始まってからというもの、二人にスイーツ店や遊びに来るのに最適な店などを教えてもらいつつ、俺達はミレニアムの校舎へと向かっていた。
─…向かっている、はずだ。
「なぁ、二人共。」
「…?はい。」
「うん?どうしたの?」
この嫌な予感を予感で終わらせたい願望から、俺は突っついてみることにした。
「店紹介もありがてぇが…着くまであとどれくらいだ?時間も迫ってきてるからさァ。」
まだ時間に余裕はあるけどな。と言い添える。
「大丈夫大丈夫!近道はいくらでもあるし、間に合うよ!」
「確かに。人通りも少ねェし、滅多に車両も通らないだろうな。それこそ、ここで戦闘が起こっても誰にも気づかれないくらいにはなァ。」
「ふふふ♪面白い冗談ですね。ええ、とっ…ても。」
すう…と眼鏡の奥の瞳が細くなっていった。こころなしか、瞳の奥に宿る光が鋭くなり、腕を掴む力が強くなった気がする。
「だろォ?今日は冴えに冴えてんだわ。…ああそうだ。C&Cってネルとアカネとアスナ。あともう一人いたよな。でっけぇ対物ライフル持ってる…」
「んー、カリンのことかな?」
「そうか、カリンというのか。さっきから…いや、ミレニアムに来てからずっと俺に熱烈な視線を送ってきているのァ、ひょっとしてその子だったりするか?」
途端、二人の足が止まった。
「ずーっと人気のない場所を永遠にぐるぐるしてるなァ〜〜こんなところで何する気なんだァ??」
「「………」」
推測が、確信に変わった。
「…なァ─」
─殺気。
首を僅かに回して背後を確認する。
後方約200m、そびえたつ高層ビルの窓。小さく何かが光った。
「っぱ聞いてるよなァ〜、誰だってそうする。俺だってそうする。」
「……だったら、どうしますか?こちらとしては…手荒な真似は、できれば避けたいのですが。」
「私はどっちでもいーよっ!」
「煽らないでください、先輩。」
二人のやり取りを他所に、目だけを動かして周辺を確認する。
右にアスナ。左にアカネ。後ろにはカリン。
これまでの情報をもとに推測するに…先生との合流を妨げている?俺と先生が合流することで、何か不都合なことが?
「そろそろ時間も良い頃合いなんだ、通してくんねぇか。」
「大変恐縮なのですが、それをさせるわけにはいきません。」
「俺と先生が合流すると不都合だからか?」
「そんな感じ!」
「なんで?」
「お答えしかねます。」
いよいよ空気が張り詰めてきた。
後ろからの視線も痛いほどに突き刺さってくる。
「……」
意を決して、刀を抜くべく体を捻ったその時。
遥か後方から銃声が鳴り響いた。
「「ッ!」」
同時に、二人は腕から離れ、各々の銃に手をかける。
腕を包んでいた柔らかな感触の喪失を嘆く間もなく、袋に包まれたままの刀を、弾丸の軌道に置く。
ガンッ、と鈍い音と衝撃が刀から背中へ伝わり、すぐ近くに置かれていたゴミ箱が跡形もなく粉々になった。
「カリンの狙撃を見切った…!?」
「あははは!おもしろーい!どうやったの!?」
「アルちゃん思い出すなァ。一流は狙ってくるところが分かりやすくて助かる。」
体を狙撃手方面に向け、刀の柄だけ袋から取り出し、抜刀。
ほぼ同時、さきほど確認した窓にマズルフラッシュを確認。数百メートル離れていてもなお聞こえる銃声に身を引き締める。
続いて飛んできた二発目の真芯に白刃が食い込み、対物ライフルのどデカ弾丸が真っ二つに裂かれる。
「ボルトアクションじゃないな。続けて撃ってこれるもんなァ。」
「ッ!!」
間髪入れずに、アカネの拳銃が唸りを上げた。
一発は鍔が弾いたが、残りは手の甲を掠り、腕にめり込む。
「アスナ、いっくよー!」
体を捻った勢いそのままに、水平に薙ぎ払った刀が空を斬る。
「ああ?どこ─」
次いで右足首に衝撃が訪れ、 左足首も呼吸を合わせて衝撃に晒される。
下を見下ろせば、滑り込んできたアスナとアカネの綺麗で肉付きの良い足が、俺の脛にめり込んでいた。
「めっっちゃ足綺麗ェ!!イオリとはまた違った良さあるなァ!いてて…」
「あれ?不意打ちなのにー!」
「真っ向から部長と殴り合えるだけありますね…ッ」
足元から飛び退き、素早く銃撃に移った二人から弾丸の雨を浴びる羽目になった。
刀で捌こうとするも、待ってましたとばかりに入れ込んできた狙撃に後ずさる。
─コツン
「コツン?」
踵を見れば、いつの間にか手榴弾が。
視線を移すと、アカネがニッコリしながら大量の手榴弾をどこからともなく取り出している姿が目に入った。
「ああー…くそっ─」
手榴弾が炸裂し、爆音が轟く。視界が一瞬の強い光と煙に埋め尽くされ、鉄片が石礫のようにペチペチと肌を叩く。
周囲に広がる硝煙の匂いを吸い込むと、体の奥底から熱が滾ってくるのを感じ取った。
「…時間がねェ。お前ら倒さにゃ進めねェ。と来れば、やることは単純明快だ。」
ホルスターから散弾銃をするりと引き抜く。
愛刀を軽く一振すれば、たちまち煙が逃げ出した。
煙の向こうでは、リロードを終えた2人が銃を構えているのが目に入った。
「少し遊んだらァ」
再開の