ゲヘナ学園所属の男子生徒がいろんな生徒に重い矢印向けられていく話 作:コウハクまんじゅう
「そーれ!あはははっ」
楽しげな笑い声に不釣り合いな銃声が響き渡る。
最小限の弾丸だけ弾いて強引に懐へ飛び込み、一閃。
「わわっ、危ない!」
口ではそう言いながらもしっかりと躱して距離を取り、置き土産に残弾を全て撃ち込んでくる。
「それ、当たったらどうなるの?」
「確かめてみたらどうだ?」
「うーん、どうしようかな…」
「アスナ先輩!?」
「あはは!冗談だよ、冗談!」
向かってきた弾丸を払いつつ冷静に分析する。
アスナの動きは、訓練された動きを状況に応じて出力する兵士のそれではない。
自前の直感とセンス、その場限りのアドリブに全振りした虚を突く戦い方。やりづらいことこの上なく、非常に─
「─滾るぜ…!」
「石切くんもワクワクしてるんだ。アスナもね、今すっごくワクワクしてる、よッ!」
「あ、アスナ先輩、制服で蹴りは、その…」
目の前を銃のストックが横切り、続けて飛んできた真白の生足が顎にめり込む。
その際、めくれ上がったスカートの奥に見えてしまった布については…言葉にするのは野暮というものだろう。
(滾るぜ…!!!)
発砲、ストックの殴りつけ、蹴り、なんでもありの連撃をいなしつつ、さきほど焼き付けた光景の解像度を上げることに脳の八割以上のリソースを使っていた。
(ギリ視界にゃ入った…が、白か?いや、黒??クソッ、腐ってんのかよ
「まだまだいっくよー!」
流し損ねて顎に入った蹴りによろめく間も無く、乾いた炸裂音が立て続けに鳴り響き、鉛玉の嵐に晒される。
この程度ならば叩き落とせる。
そんな考えを見透かしていたように、目の前にピンが抜かれた手榴弾が落ちてきた。
続けて地面に手榴弾が転がる音が四方より耳に届き、爆発。無数の鉄片が身体をぺちぺちと叩き、熱波が裾を焦がす。
「ナイス、アカネ!」
装填された弾倉がカッチリはまる小気味よい音が響き、硝煙の晴れぬ内に乱れ撃ち。
すぐさま右へ跳ぶが、まるで見えているかのように追従してくる。
これも勘だと言うのなら恐ろしいなと笑いがこぼれる。
「あーダメダメダメ。今は集中しなくちゃあな。」
この続きは帰ってからすると心に固く誓い、鉛玉達の追撃を受けつつ駆ける。
(転がってきた位置からしてこっちのほうか?)
硝煙を抜けると、おかわりの手榴弾を懐から取り出しているアカネがいた。
「ビンゴ。」
「!?ど、どうやって位置を─」
「ふふ、勘だ。」
「そんな、馬鹿な…」
火力支援と前衛の援護を担うアカネ。
隙あらば爆弾の雨を降らせてくる上、本人の格闘技術も侮れないときた。
(っぱ、アカネから片付けるのが吉ってところか。)
弾倉を込め終えたばかりなのか、コッキングも終えていない。
─好機。
縦二連の銃口がアカネを捉える。この距離ならば、いくら戦い慣れたエリートと言えどダウンは避けられまい。
アカネの名を呼びながら慌てて駆け寄って来る足音も聞こえたが、到底間に合わない。
「まず一人。」
軽やかに、2回。
弾いた引き金と時を同じくして発砲炎が花開く。
炸裂した鉄片達は、寸分の狂いなく目標へ到達するはずだった。
直後、銃身にめり込んできた弾丸さえなければ。
遅れて鳴り響いた銃声を聞いて真っ先に思い浮かべたのは、狙撃担当の…カリン。
「…硝煙、晴れてないんだがなぁ。」
狙いをそらされ、アカネの代わりに吹き飛んだ壁を呆然と見つめる。
「発砲ギリギリに間に合わせて軌道を逸らせる。しかも硝煙立ち込めるこの状況で、とは…良い腕してんな。」
「当然です。カリンの狙撃の腕はキヴォトス一ですから。」
「予測不能な前衛、とにかく荒らす中衛、百発百中の狙撃手が受け持つ後衛。連携の練度も個々の実力も申し分ない…と。ハハ、良いチームだ。」
「あははっ!ありがと!石切くんもとっても強いよ!」
「『空崎ヒナの懐刀』からお褒めに預かるとは、光栄です。」
「…え?知らん…何それ…」
「おや?ゲヘナではこの異名で通っているのでは?」
「それ俺がしばいた不良が勝手に口走ったんじゃねぇのか?」
「では『鬼』は?」
「あ、それはあるわ。」
「あるんですか…」
そんな話をしている間に態勢を立て直したアカネが手榴弾を片手に銃を構える。合流したアスナの銃口もこちらを向いている。
さきほどのマンションか、はたまた別の位置へ移動したのかは知らないが、カリンもこちらを捕捉しているだろう。
「すっごく頑張ったけど、流石に厳しいんじゃない?もう終わりにしてスイーツでも食べに行こうよ。きっとそのほうが楽しいよ!」
「魅力的ではあるが、今回ばかりは乗れねェ。悪いな。」
「では、少しの間おとなしくしていて貰いましょう。すみません、これも任務ですので、あしからず。」
銃口がこちらを向き、引き金に指が掛かった。
引き金にかけられた指がだんだんと倒されていく。
完全に倒される直前、俺は躊躇なく散弾銃をアスナへぶん投げた。
「……えっ!?ちょ、ちょっと待っ─」
「アスナ先輩!」
「悪いねィ。大人しくしててくれよなぁ」
「くっ…!」
拳銃をかざして防ごうとするアカネに刀を振り下ろし、拳銃を押し込んだ勢いのまま袈裟斬る。
銃を投げつけられ、態勢を崩したアスナへ返す刀で斬りつける。
ギリギリで防がれるも、地面に落ちた散弾銃を掴んでストックを叩きつける。アスナの持っていた銃が宙を舞った。
「終い。」
風切り音が通り抜け、地面に倒れ込む鈍い音が響いた。
□■□
「ふぃ〜…久々に熱くなったな。散弾銃、大丈夫かな…故障したらイオリに合わせる顔が…」
建物の物陰へ身を潜め、散弾銃の動作を確認する。
早く先生に合流せねばと考える傍ら、なぜC&Cが自分に矛を向けてきたのかが分かりかねていた。
「たしか任務っつってたか…俺が遅れることで得する奴がいるってことか?」
そいつが誰なのか。なぜ俺が遅れることで得をするのか。ここまで派手にドンパチやることも許容している事を鑑みるに、相当俺を警戒しているということ。
そこまで考えて、新たな疑問に辿り着く。
「…そもそも、C&Cは依頼を受ける相手を選ばないのか?」
ここまで凄腕の戦闘集団を、そんじょそこらの不良や企業が雇えるとは思えない。恐らく、相当に格のある人物だろう。
「まぁ、俺が考えても分かるわけねぇか。」
散弾銃に異常が無い事を確認して胸をなで下ろすと、ホルスターへ収めた。
立ち上がって壁から顔を僅かに出して確認すると、アスナとアカネはまだ伸びていて動けそうにない。
気になるのはカリンの位置だが…前衛が倒された今、できることはそう多くはないだろう。
─やはり、このままミレニアムの校舎へ行くのが得策か。
そう判断するや否や、建物の間をつたってその場を離れた。
「待たせちまってるよなァ〜〜…先生、アリス。今行くからな。」
本当ならば建物の屋上を飛び移りながら一直線に校舎を目指したかったところだが、そうすればカリンに狙撃され放題となる。
流石に百発百中の対物ライフルの狙撃を躱しながら移動するのは骨が折れる。
「アルちゃんみてぇに、普通の口径なら多少食らいながらでも強引に突っ込めるんだがなァ。」
ぼやきながら地図を表示したスマホ片手にひた走る。
今更ながら、先生に一報入れてから走るべきだったかと気づいた時、一通のモモトークが届いた。
足を止めずにモモトークを開くと、送り主の欄には『先生』の文字が。
そこでようやく立ち止まってモモトークを立ち上げる。
『達也?今どこ』
『ちょっといいかな。』
─心臓が凍った。
「やッべ先生キレてる!!」
大慌てで入力ボックスをぶっ叩き、震える指でキーボードをタップする。
途中何度も指が滑り、そのたびに文字を修正する手間がかかり更に焦りが募る。
あの温厚で気さくな先生の怒った顔を想像するだけで冷や汗が噴き出てくるようだった。
『すみませんちょっと来る途中ごたついて─』
なんとか震える指を奮い立たせ、文章が完成しそうになったその時。
『アリスが、連れて行かれた。』
「……は?」
□■□
現在、校舎に到着した俺は、先生やゲーム開発部からアリスの身に何が起きたのかの顛末を聞き終えたところだ。
この場にはヴェリタスの他、復活したアスナとアカネを含むC&Cもいた。
曰く、アリスは世界を滅ぼすために作られた魔王だと。だから、アリスのヘイローを破壊するため、セミナーの会長とやらに連行されたのだと。
「アリスちゃん、自分は勇者じゃないって。仲間を危険にさらした自分は魔王で、みんなを守った石切さんが勇者だって…だ、だからっ、自分が消えるのは、当然だって…」
“ミドリ…”
しゃくりあげながら泣きじゃくるミドリに寄り添う先生。その様子を見ながら、頭の中でアリスの言ったことを反芻する。
「…俺が勇者、か。壊すしか能がないのは、俺だってのに。」
“…達也?”
「アリスが世界を滅ぼす魔王だぁ?んな訳ねェだろうが。」
そう断じると、モモイが目を輝かせて飛びついてきた。
「そうだよね!?達也なら絶対そう言ってくれると思ったよ!」
「達也さん…」
「アリスさんの攻撃を真っ向からねじ伏せた人が言うと説得力が違いますね。」
「こ、コタマ先輩」
何やら騒いでいる周囲は一旦置いておき、事態を把握するべくC&Cに向き直った。
「それで、有事の際に備えてネルだけ呼んで、残りのC&Cは俺が邪魔するのを防ぐために差し向けられた…だったか?」
「…はい。恐らく、そういうことだったのでしょう。」
苦虫を噛み潰したような表情で頷くアカネ。他のC&Cのメンバーも同様に顔を顰めている。
「ちっ…あたしはチビどころか、C&Cも守れなかったのか。全部あいつの掌の上かよ。」
「リーダー、気に病むことはない。そもそも、交戦は最終手段だった。」
「石切さんを先生とアリスちゃんに一定時間近づけないことが依頼だったので、結果的に依頼は遂行できました…が。」
「こんなの、依頼を遂行したって喜べないよ!リーダーをいじめるなんて許せない!石切くんと戦えたのは楽しかったけど!」
「あ、アスナ先輩…」
「ハハ、そこは俺も同意見だな。ネル、C&C強かったぜ」
「…ハ、当たり前だ。」
ネルは僅かに気勢を取り戻して笑ったが、他のメンバーはそうでもないらしい。
ぷくりと頬を膨らませたアカネがいの一番に抗議してきた。
「何度も爆発に巻き込まれても平然としていたのに、そう言われても皮肉にしか聞こえませんっ」
「同感。私の狙撃もほとんど見切られていた。」
「撃っても全然効いてる感じしないの!リーダーみたいだったよ!」
「ハハッ、流石だな。なんたって、あたしが認めた男だからな。」
ネルはうし、と両頬を叩くと顔を上げた。
「んで、どうする?詳しい事情はわからねぇが、アリスが攫われたのだけは事実だ。」
「当然!救出しに行くよ!!」
声を張り上げたのはモモイだった。その声に呼応して、ヴェリタスが、C&Cが、ゲーム開発部が、視線を寄せた。
声に出さずとも、皆の意思は一つのようだ。
“…わかった。それじゃあ、アリスを連れ戻す方法を考えようか。”
「先生!」
「先生…!」
形は成った。先生を、モモイを中心に、部活動の垣根を越えてまとまった。
「…熱が高まってきたなァ。正直いまだに頭がついていけてねぇが、俺もやるぜ。」
袋に包んだ愛刀に腕を乗せ、心意気を示してみせる。皆の視線が移り変わり、こちらに注がれた。
「さて、先生。何から始めるんで?」
そうして先生に目を向ける。
しかし、先生の反応は微妙であった。気まずそうに苦笑いを浮かべ、頬を指先で引っ掻く。
“あー…その、達也のことなんだけど、ね。”
「……え?ええと…?」
「いや、お前はダメだろ」
「え゛」
戸惑いの内にネルにバッサリ切り捨てられる。頭をガツンと殴られた感覚に陥り、一瞬思考が止まる。
「な、なんで???」
「なんでって…他所の学園の奴が首突っ込んできたら外交問題になっちまうだろうが。」
「……あ。」
─失念。
今更になって気がついたが、俺はゲヘナだった。ここにいるのだって、先生に呼ばれて同行しているから。ただそれだけなのだ。
正直、政治は苦手なので深くは分からないが、それでも他学園の問題に必要以上に首を突っ込むのは良くないと分かる。
「え…じゃあ俺は出禁…ってことか……?」
瞬時に頭の中に考えが巡る。
ヒナに頼む。…何を?どうやって?
『ちょっと殺されそうな他学園の友達助けるためにドンパチしてきます。』なんて言った日にはどうなるか。
他の風紀委員に知られてもまずそうだ。万魔殿なんて以ての他だろう。
思考がぐるぐると巡り、失意に沈んでいると先生が口を挟んできた。
“実は、それを解決できる策があるんだ。”
「……え??」
またもやマヌケな声が出る。
学園間の政治問題に発展しかねないこの状況を打破できる策が、先生にはあるらしい。
これには沈黙を保っていた皆もざわめき、戸惑いを隠せない様子。
またもや皆の注目を集める中、先生は1枚の書類を取り出した。
何やら細々とした説明文と空欄がいくつか。特に目を引いたのは、「連邦捜査部シャーレ仮入部届」という文字。
その書類を見て、先生の考えにたどり着いたらしい者の息を呑む音が聞こえた。
先生は悪戯を思いついた幼子のようにニヤリと笑い、衝撃的な一言を放った。
“達也をシャーレに加入させちゃいます!”
「「「「……え?」」」」
一同の間抜けた声が、ロビーを通り抜けた。
越えられないとは言っていない。(国語0点)
石切の立ち絵描いてくださる方募集してます(小声)
石切の刀、銃(散弾銃とウィンチェスター)について資料集作るべき?
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やってくれ、必要だろ。
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(本編を)書け!書けぇええっ!!