ゲヘナ学園所属の男子生徒がいろんな生徒に重い矢印向けられていく話   作:コウハクまんじゅう

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実働部隊の日常

 

 翌日。

 風紀委員会に入った通報に対処すべく、イオリと共に現場へと向かっていたのだが…

 

「石切お前、昨日万魔殿の人間と2人で会ってたそうだな。やっぱりお前は信用できない!今日から私が監視するからな。不審な動きをすればすぐ委員長に報告するぞ!」

 

 案の定、敵意マシマシに吊り上がった目でこちらを睨みつけ、何かしでかそうものなら容赦なく鉛玉をぶち込んできそうな雰囲気を醸し出している。

 やはり昨日の出来事は学園中に広まっていたようだ。後でチアキから『記事にはしていないのでご安心を』とモモトークが来たが、広まるにはあの騒ぎで十分だったようだ。

 

(クソッ、とんでもねぇ返し方してくれたな万魔殿。)

 

 胸の内で悪態をつきながらも、まずは身の潔白を証明しなければならない。苦しい状況だが主張しなければ。

 

「ヒナに誓って、何もやましいことはねぇ。」 

 

「嘘つけ!こ、ここ恋人みたいにピッタリ寄り添っておいて何もないわけあるか!」

 

「んな風に伝わってんのか!?というか寄り添ってるというか向こうから─」

 

「だ、黙れ!こっちに来るな!」

 

「あの、イオリ先輩、そろそろ着きます…」

 

「え、ええ!?もうこんな所まで来たのか!?ああもう!総員戦闘態勢!」

 

 イオリに敵意向けられるわ後輩に情けない姿見せるわ、ついてねぇ。だがこれ以上情けない姿を晒すわけには行かない。俺はホルスターから銃を引き抜きレバーを跳ね上げた。

 

 今回もまた温泉開発部が騒ぎを起こしているようだが、いつもとは様子が違うらしい。というのも、周辺の不良を抱き込み、大人数で破壊活動をしているらしい。

 

「数はァ?温泉開発部と抱き込んだ不良合わせて100はいるんだったか?ったく、一体どこからかき集めてきたんだそんな数」

 

「こっちは3個小隊で来てるんだ。さっさと制圧するぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

□■□

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、イオリ先輩!敵の火力が強くて進めません!」

 

「こちらα分隊、被害拡大!」

 

「β分隊押されています!」

 

「……さっさと制圧すんじゃ無かったかァイオリ?」

 

「う、うるさい!あんな奴ら、本気を出せばすぐに…!」

 

 現在、温泉開発部と抱き込まれた不良を相手に交戦中。当初はさっさと片付くかと思ったが意外と抵抗激しく、俺たちは暴れ回っている本隊に未だ近づくことができずにいた。

 

「ロケランに手榴弾類が多く揃ってるな。まったく、鬱陶しいったらありゃしねェ…イオリ、ここは頼むぜ」

 

「いつものか?」  

 

「ああ。」

 

 短く言葉を交わすと、俺は建物の裏手に回り込んだ。そこから温泉開発部の裏を取るべく、建物の切れ目から外を確認しつつ駆け足で進んでいく。

 

「ここだ。」

 

 体の向きを変え、全速力で走り出す。

 建物同士の隙間から飛び出した瞬間に抜刀し、ノールックで刀を左右に振るう。瞬く間に3人斬り伏せた。

 

「うわああ!?」

 

「な、なんだ!どっから現れたんだ!?」

 

「お、鬼だ!鬼が出た!」

 

 悲鳴を意に介さず、ホルスターから銃を引き抜くと間髪入れずに引き金を絞った。乾いた発砲音と悲鳴と共にドサリ、と鈍い音が響く。

 レバーに手を突っ込んだまま遠心力に頼ってぐるりと銃を一回転させ、排莢。引き金を絞った。また一人倒れた。

 

「く、クソ!調子に乗─」

 

 マズルフラッシュを焚かれる前に体を反らして射線から外れつつ、刀を振るって残りを斬った。

 

「あァ…いいねえ」

 

「まったく、いつもながら無茶するよな」

 

 刀を振るう悦楽に浸っていると、俺に注意が向いて弾幕が薄くなった隙に前進して残りの不良を蹴散らしたイオリたちがやってきた。

 

「これが一番合ってんだ。さっさと残りを片付けるぞ」

 

「同然だ。行くぞ!」

 

 周囲の風紀委員達を伴い、奥の方で爆発を繰り返し、もうもうと黒煙を上げている場所を目指し真っ直ぐに突き進んだ。

 

 

 

 

 

 

□■□

 

 

 

 

 

 

「刀男に火力を集中しろ!奴を近づかせるな!」

 

 案の定、本隊に接触するのと同時に大量の手榴弾とロケランがお出迎え。過剰とも言える火力の前に身動きを封じられ、進路を塞がれてしまった。

 しかし俺に火力を集中しているしわ寄せで、少しずつ風紀委員達の前進を許している。

 

「前進して蹴散らせ!」

 

「クソッ、刀男はいい!まずはあの銀髪の風紀委員をやれ!」 

 

 流石にこれ以上進まれるのはまずいと判断したのか、弾丸の雨の標的が先陣を切って突っ込んだイオリの方へと変わった。

 

「はっ、その程度で私をやれると思うなよ!」

 

 遮蔽物の間を巧みに縫って近づいてくるイオリに、温泉開発部と不良達は翻弄されっぱなしだ。たまに射撃を挟み込むことによって完全に敵の注意を引きつけているのも、彼女がやり手であることの証左だ。

 

「だが、少し突っ込みすぎだなありゃ…イオリ!そこら辺で止まれ!罠かもしれ─」

 

「ハッ、あっさり掛かったな。まずは目障りな指揮官を吹き飛ばしてやる」

 

 全てのロケランの砲口が一斉にイオリの方へと向いた。間髪入れずに全砲門から火が吹き出し、ロケットがイオリに向かって一直線に突っ込むのが見えた。

 まずい。そう考える前に体が動き、弾を食らいつつも強引に前進しイオリの腕を掴み寄せてなんとかロケランの射程圏外ギリギリへ逃れる。

 

「石切─」

 

「伏せろ!」

 

 イオリを抱きしめ、背中を盾に爆風から守る。

 一拍遅れて、背中を熱風と瓦礫が叩きつける感触が襲った。

 

「…あーいてて。イオリ、怪我は?」

 

「わ、私は無い…けど、石切は─」

 

 イオリは俺の腕の中で身をよじって顔をこちらへ向けた。視線の先には、弾を受けて破けた制服の中から顔をのぞかせている痣に向けられていた。

 

「俺はいいんだよ、慣れてる。それよりかわいい顔に傷がついたらどうすんだ」

 

「な!?かっ─」

 

 2人のすぐ側を銃弾が通り過ぎたことにより、軽口を叩く時間は終わりを告げた。目線だけで会話をすると、同時に違う方へ跳んで遮蔽物の影に転がり込む。

 

 幸い、俺たちが注意を引きつけたお陰で他の風紀委員達が前進し温泉開発部を押しているようだ。

 

 さっきの一斉射撃で弾を使い切ったらしく、ロケラン要員は慌てて退却していった。それに伴い他の部員や不良達も退却を始めた事で前線は崩壊。部長のカスミも、俺が来たことで泣き喚いて使い物にならなくなり本隊も退却。残党を捕縛していくことで騒動は収まった。

 

 

 

 

「あー疲れた。」

 

 道の端に座り込んで弾込めをしていると、イオリが無言で隣に座り込んできた。昨日のイロハで軽くトラウマになっていた俺は他所へ行くため銃床を地面に突き立て立ち上がろうとした。

 

「…ありがとう」

 

「えっ?」

 

 腰を上げる中途でピタリと止まる。え?今なんて言った?俺が困惑して硬直していると、ヤケクソ気味に叫んだ。

 

「だ、だから!…助けてくれて、ありがと…」

 

 両腕で抱え込んだ足に赤面した顔を半分埋めて、目だけこちらを流し見ている。よく見れば顔だけでなく、とんがった耳の先端まで羞恥で真っ赤に染まっていた。

 

「…ハハ、イオリが礼言うところなんか初めて見たわ」

 

「わ、私だってお礼くらい言うに決まってるだろ!…あと、疑ってごめん。石切だって体を張って戦ってくれてるのに…」

 

「まぁ、情報に惑わされんようもう少し賢くなるこった。バカのまんまじゃあ、悪い奴に騙されるからよ」 

 

「なっ!?私がバカだって言いたいのか!?」

 

 さきほどまでのしおらしさはどこへやら。同じ赤面でも全く違う意味合いで頬を染めたイオリはライフル片手にこちらへ迫ってくる。

 

「まァ、素直とも言えるがな。正直見てて危なっかしいとは思うが、嫌いじゃない。お前の長所だとは思う。」

 

「…唐突にそういう事言うの、ズルいと思うぞ。なんか…怒るに怒れな─」

 

「まぁでも今のイオリは視野狭いわすぐキレるわすぐ騙されるわで弱点だらけでもあるけどなー」

 

「お前は私をどうしたいんだ!?」

 

「ハハハ、コロっコロ表情変わんのが面白くてなァ〜つい転がしたくなっちまったわ」

 

「〜〜!!やっぱり気に入らない!もう限界だ、死ね!」

 

 バン、という乾いた炸裂音と共に地面からアスファルトの破片が舞い上がった。続いて響き渡ったかん高い金属音によって、空薬莢が転がったのだと鼓膜に伝わってきた。

 

「うおっとと、イオリがキレた。逃げろー」

 

「待て、このッ!」

 

 うしろから飛んでくる弾を避けながら、俺たちは学園への帰路に就いたのだった。いててっ、イオリのやつマジで当てやがった。

 

 

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