爺さんの家に怪しい少女がいた   作:灰のスシ

3 / 7
3話

飲み込まれる。その言葉に想像以上の悪寒を感じた。比喩であることは分かっている。しかし、なぜかその言葉に非常に強い恐怖を確かに感じた。俺はそんなに感受性の強い人間では決してない。であるのに関わらず、その言葉にここまで強い感覚を覚えた。

 

 

 

「ふふ、ごめんなさい。少し脅しすぎたかしら。でもそのくらいの心構えでいなさい。」

 

 

 

ルーは背を向けリビングへ行く。

 

 

 

「荷ほどきをしましょう。手伝うわ。」

 

深呼吸をする。心が落ち着いていくのを感じる。

 

「そうだな。今行く。」

 

 

 

 

 

「そう言えば、今まで結構な時間この家にいたつもりだったが、どうして俺はルーのことを見たことがなかったんだ?」

 

「ああ、それは私があの人間と仲が良くなかったためね。と、言うよりも人間とまともに話すのはあなたが初めてよ。普段は姿を消しているの。」

 

「仲が良くなかった?姿を消す?」

 

色々分からないことばかりである。

 

「こうやって姿を消せるの。」

 

 

 

黒い粒のように体が分解するようにルーの体が消えた。

 

「こうやって、ね。」

 

 

 

背後に浮かび肩を掴んできた。

 

 

 

「透明になりながら言葉を話すことは出来ないのか?」

 

「できないわ。だって口がないのだもの。あと、透明になっているわけではないわ。姿を見えなくしているのよ。」

 

「?一緒じゃないか?」

 

「違うわ。まだ詳しいことを教えるつもりはないけど。」

 

「そうか。じゃあ仲が良くなかった件については聞いても大丈夫か?」

 

「うーん...ま、いいでしょう。私の存在は人間と共にありながら相容れない存在だから。それをどこぞの誰かが封印まがいのことをしたのよ。それでこんな風になってしまったのよ。」

 

「へー」

 

うまく理解できず、空返事をしたのがばれたのか、

 

「ちなみにこんな風にしたのはあなたのおじいさんよ。」

 

「爺さんが!?」

 

「ええ、この家はそういったものの倉庫になっているわ。人間を滅ぼすことが可能なものがいくつもある。」

 

 

 

じっとルーを見る。触ろうとしてみると。するとするりと避けられた。

 

 

 

「何乙女を触ろうとしているのよ。」

 

「いや、話から察するにルーもその一つなんだろ?信じられないというか...」

 

「ふふ、いいわ。あなたはそのままでいて。」

 

 

 

ルーは怪しげに微笑む。

 

 

 

「な、何をするつもりだ?」

 

「ふふ、別に何もしないわよ。もう、私のことをどうとも思わない人間がいることが...いいなと思っただけよ。」

 

 

 

嬉しそうな顔だった。俺の頬にルーの手が添えられる。

 

 

 

「あなたは、そのままでいて。」

 

 

 

その声色は何故か重くて、優しくて、そして酷く寂しそうだった。

 

 

 

「...はいはい。そろそろ荷解き進めようぜ。先延ばしにしたらいつ終わるか分からなくなる。」

 

 

 

なぜかそれが妙に照れくさく感じた。

 

 

 

「...ふふ、そうね。」

 

「そう言えば、ルーって飯食えるのか?」

 

「あんまりたくさんは食べないけど、少しなら食べれるわ。もともと食事は必要ない体だから。」

 

「おっけー。なら後で軽く何か作るわ。」

 

 

 

そうして奇妙な二人暮らしの生活が始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。