吸血鬼が爪でルーをひっかこうとする。が、そこを黒い粒が防ぐ。そしてルーは手から黒い球を出し、その球が吸血鬼に向かって飛んでいく。その球を吸血鬼が爪で切り裂く。
「はぁ...」
ルーは溜息をつく。
「終わったわ。帰りましょう。」
...何を言っているんだこの幼女は。
「いや、一発しか当たっていないじゃないか。」
「えぇ、それで終わりよ。」
「何を言っている!相手をしなければそこの男を」
いきなり吸血鬼の目が曇り始めた。
「あ、な、あ...」
吸血鬼の白い肌に黒い斑点が現れ、地面に倒れ伏してもがき始める。非常に苦しんでいると傍から見て一目瞭然であった。...そして、
「が...ぁ...」
白目になり体の至る所が膨れ上がり、遂に声も発さなくなった。
「...死んだ...のか...」
ルーはふっと微笑む。
「忘れて頂戴。あなたには刺激が強かったわね。」
周囲の光景がくずれていく。
「...私はそういう存在なのよ。これでも力は5分の1程度の力しかないけど...それでもあんな存在を簡単に殺すことができるの。」
ルーは悲しそうな顔をしてこちらを向く。そして背を向け、俺より前を歩き出す。その背中があまりにも寂しそうで、思わず肩を掴む。
「そんな顔をするなよ。」
「...私が怖いでしょう?」
「ある意味それは最初からだろう。今更だ。」
「最初?」
「断ったら、なんて俺が言った時だ。あの時にもう既に脅されていたからな。」
「...ふふ、実際にその力をみてもあの時と同じっていうの?」
おかしそうに微笑む。
「ああ、変わらないだろう。それに、お前は少なくとも俺と向き合って、必要なことは教えてくれるし、あいつを殺したのも俺のためだろう。」
ルーの言っている情報、そして、あいつの言葉をすべて真とするなら、俺は本当に殺されていただろう。出るにはあいつを倒すしかなかった。そしてあの吸血鬼曰く、あの空間には意図して引きずり込まれた。ただの人間の俺には太刀打ちできなかっただろう。だからこそ、
「俺を守ってくれてありがとうな。」
間違いなく、命を救ってもらったのだから感謝をしよう。
「ふふ...なぁに、こんなに私に入れ込んで。そんなに私、あなたの好みだった?」
「...そういう冗談、言うんだな。」
「照れ隠しよ。察して頂戴。」
もうルーの顔に陰りはなかった。
「それも、悪くないかもしれないわ。」
「?」
「ふふ、気にしないで。」
いたずらっぽく笑い、前を歩く。
「帰りましょう。」
まだ力が抜けきっていないのか、青白い色が抜けきっていない髪が夕陽に照らされていた。
考える。それにしてもどうして俺はあんなに惨い死体を見て、あまり何も感じなかったのだろうか。ルーがそばにいたから?...いや、違う。いや、部分的にはあっているか。気づいている、これが適応するということだと。俺はもうルーから逃れることはできないのだと。