ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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ピタ・ゴラ・スイ〇チ!

 

〜ロイ視点〜

 

レイには冒険者達の足止めをお願いした。シャクティさんを説得する手もあるが…今は時間が惜しい。余計な混乱を招いて負傷者を増やすかもだしな。

 

「さーてと…」

 

フェルズとベルは何処だ?音で辿ろうにも今はそこらで戦闘が起きている。せめて異端児達の誰かが吠えてくれないと…。

 

オオオオオオオオオオオオオオオーッ!!

 

!しめたリザードマンの声!リドだ!声の聞こえた方にダッシュ。

 

「……ってあれ?」

 

「ロイさん!」

 

「ロイ!?やっと見つけた…!」

 

ベルに…リオンが居る。何で!?

 

「リオン…何で此処に居るんだよ…」

 

麗傑(アンティアネイラ)に聞いたのです。貴方達が闇派閥…イケロス・ファミリアの奸計に巻き込まれているかもしれないと。ロイ、クラネルさん。一先ずガネーシャ・ファミリアの所まで戻りましょう。孤立するのは危険です」

 

「あー…悪いリオン、俺達ちょっと追いかけなきゃいけない奴が居てさ。だから…」

 

「ダメです。クラネルさんは元より…。ロイ、貴方はまだ本調子では無い筈です。ステイタスも以前より低いですし、この件にこれ以上関わればLv.5、暴蛮者(ヘイザー)が出てくる可能性があります。万が一に備えて、此処は引くべきです」

 

「ごめん、マジで引けないんだ此処は。先に帰っててくれ」

 

「そう言ってギルドの時のように有耶無耶にするつもりですか?残念ながら私も引けません。アリーゼやアストレア様に貴方の監視(サポート)を任された身として、私には貴方の身の安全を最優先にする義務があります」

 

「……」

 

…ダメか。せめてアストレア様だけでも事情を話して許可でも取り付けてくるべきだったか?

 

「あの、リューさん…」

 

「…何でしょう」

 

「行かせて、もらえませんか?」

 

「…できません」

 

「お願いします!今すぐ追わなきゃ、ダメなんです!」

 

「……クラネルさん、ロイ。貴方達が何を思ってモンスターを追いかけようとしているのか、私には分からない。ですが、私は…これ以上、件の派閥に貴方達を関わらせたくない」

 

抑えきれない激情をその瞳に宿しながらも、これから起こる事を危ぶむかのように、いつか見てしまった光景を恐れるかのようにリオンが手を差し伸べてくる。初めて会った頃とは何もかもが変わった、その手で。

 

「地上に、帰りませんか?」

 

リオンと視線を交わす。…だが、乗る訳には行かない。此処で楽な方を選ぶ訳には行かない。目線を逸らし、一歩下がる。

 

「そうですか……」

 

「ごめん」

 

「…止めても無駄なのでしょう。これを」

 

リオンがポーチを差し出してくる。ベルと一緒に中身を覗くと、ポーション類と謎の魔道具が入っていた。

 

「私も、討伐隊の危機を退けたら直ぐに向かいます。行きなさい。」

 

ベルと一緒に走り出した。

 

 

〜人造迷宮クノッソス〜

 

「ディックス、モンスター共が此処に近づいてるらしい」

 

「バロイ達がリヴィラで吐きやがったか…殴り殺してやりてぇが、あぁ、もうとっくにくたばってそうだなぁ」

 

小さな空の黒檻に腰掛けるディックスは、笑みを崩さない。この状況を愉しんですらいる。

 

「グラン。『扉』開けてこい」

 

「おっ…おいディックス、良いのか?モンスター共を此処に入れちまって…」

 

ディックスがグランに手のひら程の球体を投げ渡す。

 

「ガネーシャの連中も近くに来てるんだろ?モンスター共がうろついて変に怪しまれる方が面倒くせぇ」

 

ゴーグルの男は嗤う。

 

「招待してやろうじゃねぇか。化け物共を」

 

悪辣な表情で喉を鳴らす。

 

「狩り尽くしてやる」

 

 

〜大森林 東端〜

 

「グロス!」

 

「遅いぞリド!」

 

蜥蜴人(リザードマン)石竜(ガーゴイル)率いる異端児達に追いつく。多くの異端児達が水晶の柱や茂みの中など死角になりそうな所を血眼になって探している。が…。

 

「『扉』は!?見つかったか!?」

 

「ダメだ見つからん!囚われている同胞に呼びかけても答えは返ってこない!」

 

焦りを隠せないグロスが叫ぶ。リドも探すものの、同じ風景が続くばかりで少しの違和感も見つけ出せない。

 

「クソっ…!」

 

やはり騙されたのか。疑念がリドやグロス達を脅かす中、彼等が思い出したのは男の最期の言葉……『()()()()()お前等じゃ行けない』だった。

 

「――リド!」

 

赤帽子を被ったゴブリン――レットが驚愕と共にリドの名を呼ぶ。レットが指差す方向に目線を移すと…。

 

「アレは…!?」

 

 

 

〜ロイ視点 大森林 東端付近〜

 

「フェルズ!」

 

「フェルズさん!」

 

「ロイ、ベル・クラネル!君達も来たか!」

 

木々がうねる森の中を二人で駆け抜けていると、黒衣の人物が目に写った。同じ方角を目指す魔術師(メイジ)と並走する。

 

「無事だったか!」

 

「はい!」

 

「あの程度じゃ死にはせんさ」

 

並走しながら言葉を交わし、情報交換を始める。

 

「グロスと接触したが、ダメだった。同胞を取り戻すと言って…やはり、例の密猟者が彼等の逆鱗に触れたようだ」

 

「僕もリドさんに会いました!でも…」

 

ベルがリドとの会話内容をフェルズに伝える。ウィーネが攫われた事、異端児の仲間達が殺された事…全てだ。

 

「主犯はイケロス・ファミリアで間違い無い。レイ曰くウィーネの移動の際は護衛を増やして対応したらしいが、幻惑系の呪詛(カース)で同士討ちさせられてダメだったって言ってた」

 

「幻惑系のカースか。通りで肝心のステイタスについての情報が無い筈だ」

 

元々ディックス・ペルディクス本人の情報は裏で出回っていた。が、肝心の実力に関してはレベル以外は不気味なぐらいに情報が無かった。

 

「あの、僕聞いたことしかないんですけど…。カースってそんなに凄いんですか?」

 

「魔法よりも強力な効果を持つ物が多い。だが…」

 

「それ相応の代償もある。基礎アビリティの低下とかな」

 

ぶっちゃけ取り回しなら魔法の方が良い。モンスターとの戦闘でステイタスの低下は致命的だ。

 

「まあでも、脅威である事には変わらないんだよなぁ」

 

「そうだな。特に異端児達のような集団相手では…」

 

幻惑系のカースは珍しいものの、全くないわけでもない。俺がアストレア・ファミリアで夜の巡回を担当してた頃も、闇派閥にはそう言うカース使いがしばしば居た。まあ俺の場合カースも結界で弾けるから困った事はなかったんだけど。

 

「人間なら魔道具とかスキルで対策できるんだがな、異端児達じゃ対策のしようがない」

 

「じゃあ、早く行かないと…!」

 

「その前に『扉』だが…」

 

「噂をすれば…だな。着いたぞ」

 

18階層の東端に着く…?

 

「居ないな」

 

「異端児達が居ない…バカな、消えた」

 

破壊の跡はある。が、肝心の姿が何処にも…うーん。

 

「あの大集団が簡単に消えるとかありえんだろ。何かギミックがある筈」

 

「ロイの言う通りだ。彼等は目立つ」

 

「でも、どうやって……!?」

 

その時、ベルが腰から提げていた、リオンから貰ったポーチの一部が光り始める。ベルが慌ててポーチを弄ると、丸いインゴットの塊が出てきた。

 

「ベル・クラネル、それは…」

 

魔道具(マジックアイテム)?」

 

球体の中心には共通文字や神聖文字とも違う『D』と言う記号が埋め込まれている。ん〜…。

 

「ちょっと適当に動いてみてくんね?」

 

「は、はい…?」

 

ベルが球体を持ったまま前後左右に動くと、光が明滅した。これは…。

 

「探知機…か」

 

「ああ。ベル・クラネル、光が強くなる方へ」

 

「はい!」

 

魔道具を頼りに、反応の強くなる方向に進んでいく。すると、岩壁に辿り着いた。

 

「……やっぱりアレか?隠し扉的なアレか?」

 

「そう考えた方が良いだろう。二人とも、下がっていてくれ」

 

ベルと一緒にフェルズの後ろに下がる。フェルズは右腕を突き出し、壁に当てた。そして、衝撃波を炸裂させる。

 

「…!!」

 

「お?」

 

「これは…」

 

衝撃波によって岩壁が崩れると、そこには闇に包まれた謎の通路が。だが…。

 

「…人工物じゃん。」

 

「ああ。ダンジョンの組成ではない」

 

三人で暗闇に足を踏み入れ、進んでいく。岩壁は既に修復が始まり、ゆっくりと閉ざされる。

 

「『オリハルコン』不壊武器(デュランダル)の材料にもなる、最硬金属(アダマンタイト)をも超えた最硬精製金属(マスター・インゴット)

 

「破壊するのは無理か…」

 

「ああ。だが…」

 

フェルズがベルに目配りする。ベルが魔道具を突き出すと、重厚な『扉』が開いた。

 

「信じられない…こんな物がダンジョンに?」

 

扉の先には魔石灯がぽつぽつと光っている。通路の果ては見えず、奥まで薄闇が続いていた。

 

「………」

 

取り敢えず扉は開いた。が…何でリオンがこんなの持ってるんだ?団長達は知ってんのか?いや、それはありえない。だったらウラノスがアストレア・ファミリアに今回の件を隠す必要が無い。つまり、これはリオンの独断か…?

 

「…聞くしかないか」

 

これが終わったら聞くしかない。リオンも俺程では無いが単独行動するからな。…フェルズが壁を調べている。

 

「…『ダイダロス』」

 

ダイダロス…あのダイダロスか?バベル造ったって言う…。じゃあ、此処は…。

 

 

 

〜星屑の庭 団欒室〜

 

「……取り敢えず、状況を教えて?アリーゼ」

 

「はい…アストレア様」

 

アストレア・ファミリア本拠、星屑の庭。ロイがダンジョンで『扉』を見つけたのと同時刻。団欒室には重苦しい雰囲気が立ち込めていた。理由は…。

 

「…ロイが居なくなりました」

 

ロイが居なくなった。普通、等級Sのファミリアともなると一団員の為にここまで深刻な空気になる事は無い。だが、このアストレア・ファミリアの場合は別。そもそもの団員の数が少ない上に、居なくなったのが(本人の自覚があるかは置いておいて)幹部格の、前科持ち(一回死んだ男)だからである。

 

「……何処に行ったか、見当はつく?」

 

「……間違いなく、」

 

迷宮(ダンジョン)です」

 

アリーゼの言葉に輝夜が被せる。何時もの猫かぶりはもはや無い。

 

「リオンに聞きに豊穣の女主人に行ったら、肝心のリオンも居なかった。麗傑(アンティアネイラ)と何処かに行ったらしいが、恐らくダンジョンだろう」

 

「ダンジョンは今、ガネーシャ・ファミリアに封鎖されています。あのエルフもロイも中となると…正直お手上げです」

 

持ち前のフットワークで情報を集めようとしたライラだったが、情報源まで居なくなってしまえば無意味だった。輝夜も中央広場(セントラルパーク)まで行ってみたが、既に討伐隊も出発した後。広場を封鎖しているガネーシャ・ファミリアの末端の団員達が討伐隊の編成まで把握している筈も無く…情報は無かった。

 

「……待つしか無いわ。ロイを信じて」

 

「でも…」

 

「大丈夫よアリーゼ。ロイは必ず帰ってきてくれる」

 

「………おい、大丈夫かよ?輝夜」

 

「…………あぁ」

 

アリーゼと輝夜が青い顔で俯く。彼女達の脳裏には30階層の悪夢が蘇っていた。

 

 

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