ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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おのれディ……ダイダロス!

 

〜人造迷宮クノッソス〜

 

「ここが、ダイダロス通りに繋がって…!?」

 

「まあ、そう考えれば辻褄は…」

 

合うよなぁ。こんな秘密通路が地上まで繋がってるなら、誰にも目撃される事なく囚えた異端児達を輸送できる。

 

「ああ、間違い無いだろう。我々に気づかれることなく異端児達を地上に運び出し、オラリオから密輸する…此処が地上に繋がっているなら、全ての辻褄が合う。恐らく、都市門の検問を素通りする都市外(そと)への地下経路も備わっている筈だ」

 

ここの構造はまさに複雑怪奇。十字路や別れ道など、規則正しくはあるものの圧倒的な数と配置で人工の迷宮と化している。

 

「『ダイダロス通り』に繋がっている根拠は、先ほどの壁に刻まれていたサイン」

 

「『ダイダロス』か」

 

唸るようにしてフェルズが頷く。

 

「奇人ダイダロス…神々が降臨を果たした転換期、バベルを始めとした今のオラリオの礎となる建造物の数々を築きあげた名工だ」

 

1000年前だからな。フェルズが生まれるよりも前…とんでもなく昔の人だ。

 

「外界に初めて『神の恩恵(ファルナ)』をもたらしたウラノスの、数少ない眷属だったと聞く」

 

「!」

 

「へぇ…」

 

ウラノスのねぇ…。

 

「ウラノスの神意を受け、オラリオに貢献を果たしていたが…ダンジョンに足を踏み入れてからというものの、次第に言動がおかしくなっていったようだ。それこそ、『奇人』と称される程に……そしてある日を境に、ウラノスの前から、オラリオから完全に姿を消した」

 

自らの知識と現状を照らし合わせるかのように、フェルズは説明を続ける。

 

「『ダイダロス通り』はもとより、都市に張り巡らされた旧式の地下水路など、彼の遺産はギルド内でも問題になっていた。覚えはないか二人とも?都市の何処かに存在する迷路の如き複雑怪奇な領域を」

 

「そういえば…」

 

「あるな」

 

暗黒期じゃ、闇派閥を追っていたらいつの間にか地下水路でした、なんて良くある事だ。それくらい彼処は複雑で迷いやすく、オラリオの犯罪の温床だった。まあ此処と言い地下水路と言い、ダイダロスの遺産は犯罪者にとってはそれぐらい優秀だったって事なんだが。

 

「我々は以前から、『バベル』以外のダンジョンへの入口がある事も考慮していた。無論、『ダイダロス通り』も調査を進めていたが……クソっ」

 

「フェルズさん…?」

 

「はっきり言おう。この領域は我々の想像を遥かに超えている」

 

名工への畏怖を語る三人の前に、新たな扉が現れる。フェルズがベルから受け取った鍵の魔道具をかざすと、閉ざされていた扉は再び開いた。そして通り過ぎる瞬間、フェルズが壁に向かって衝撃波を放つ。二人は何事かと壁を見ると…破壊された石板の奥には、傷一つない金属壁が露出していた。ロイが近づいて確かめる。

 

超硬金属(アダマンタイト)…」

 

「あぁ。先程通る途中、劣化した箇所から金属の煌めきが見えた。この領域は超硬金属(アダマンタイト)の上に石材を重ねることによって構築されている」

 

超硬金属(アダマンタイト)の価値は採掘された場所や純度にも影響されるが、ダンジョンで採れる物は硬度が高く高値で取引される。無論稀少金属(レアメタル)の一種であり、そう簡単に入手できるものでは無い。それが贅沢に壁に使われているとなると…。

 

「要所を守るオリハルコン製の扉に、アダマンタイトで造られた通路…この鍵の魔道具が無ければ、よしんば発見できたとしても侵入も脱出も困難だ」

 

フェルズが突き出していた手袋(グローブ)を握り締める。

 

「ダンジョンに接続する人工領域の創造…信じられないが、このような作品を造れるのは昔日の奇人(ダイダロス)しかいない」

 

しかし、疑問もある。最低でも地上からダンジョン18階層分もの深度に、たった一人で、このような広大な空間を造る事が可能なのか。さっき言った使われている金属の稀少性もそうだが、いくら何でも無茶が過ぎる。

 

「この領域がどれ程の規模なのかは分からない。彼のダイダロスと言えど、一人で造る事は不可能に等しい。だが―――」

 

一度言葉を切ったフェルズは、先に続く暗闇を睨みつけていた。

 

「我々が探し求めていた負の根源は、確かに此処にある」

 

人工的に造られたダンジョンのもう一つの出入り口。関係者以外立ち入る事ができないギミック。此処がイケロス・ファミリアのアジトである事はもはや疑いようが無い。フェルズが声を震わせて言葉を絞り出す。

 

「遂に見つけたぞ、ウラノス……!」

 

 

 

〜地上 迷宮都市オラリオ 〜

 

ロキ・ファミリアは現在、団長の指示によりギルドには悟られないよう、ダイダロス通りに秘密裏に進軍している。

 

「……」

 

「アイズ?おーい」

 

「ちょっとどうしたの?これから何だからしっかりしてよね?」

 

「…ごめん」

 

「まったく…どうしたの?らしく無いわよ?」

 

その進軍途中の部隊の中、中核となる幹部の中に『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインは居た。最近の何処か落ち着かない様子をアマゾネス姉妹…ティオナとティオネに指摘され、アイズは更に肩を落とす。

 

「……私のスキルが疼いてるの」

 

「スキル?此処は地上よ?モンスターが居ないのにあなたの復讐姫(アヴェンジャー)が発動するわけないじゃない。」

 

「違う。私の、もう一つのスキルが…」

 

「…もう一つのスキルって、あの?でももう機能してないんでしょ?」

 

「うん…。もう、動く筈ないのに…」

 

「ねぇ、前から気になってたんだけどアイズのその…もう一つのスキルって何なの?何で機能してないの?」

 

「それ、は……」

 

ティオナの質問にアイズが口を開こうとしたその時、翡翠色の長髪が動いた。

 

「喋りすぎだぞアイズ。そこから先は秘密と言っただろう。ただですら希少なスキルなのだから」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「ちぇっ」

 

もう少しで聞けそうだった所をリヴェリアに邪魔され、不貞腐れるティオナ。だが、少しの違和感も覚えた。

 

『何でもう動かせないスキルを隠してるんだろう?』

 

動かせないなら開示しても良いのに。そう思ったティオナだったが、いくら頭を捻っても出てこない答えにいつしか飽きてしまい、其処で思考を打ち切った。

 

「ま、いっか!」

 

 

 

 

〜人造迷宮クノッソス〜

 

いくつもの影が、魔石灯の光が照らす石畳の上を過っていく。様々な足音の後に続き、尾を引きずる音や羽音まで続いた。20を超えるモンスターの大進行である。

 

「同胞の匂いは近いぞ!進め!」

 

嗅覚が鋭い巨猪(バトルボア)を頭に置きながら、ガーゴイルが叫ぶ。進撃するモンスターの集団、異端児達は同胞の匂いと一本のか細い糸を辿り、迷う事なく歩を進めていた。

 

「リド、進行方向の扉が全て開けられてっ…誘き出されています!」

 

「分かってる、レット!けど、行くしかねぇ!」

 

己の後方に続くレットの進言に、リドは装備している剣の柄を握った。階層東端の岩壁が突如破れ、奥に口を開けた扉を発見したのが先刻。此処が敵のアジト、もしくは罠だと悟りながらもそれでもこの領域に飛び込んだ。歯止めの効かない怒りと同胞を取り戻すと言う使命感に突き動かされる異端児達は、やがて終点に辿り着く。

 

「此処は…!?」

 

石段を駆け上がると、これまでの通路とは比較にならない程の開けた空間が目に飛び込んできた。直方体の形状。幅は100M(メドル)以上あり、奥行は優にその倍はある。天井も高く、まさに広間と呼ぶのが適切な空間だった。そんな中、リドやグロス達の視線は正面に釘付けになる。

 

「皆さん…!」

 

「っ…皆…!」

 

無数の檻に入れられているのは、ウィーネと共に連れ去られた半人半鳥(ハーピィ)人蜘蛛(アラクネ)だけでは無かった。半人半蛇(ラミア)半人半蛸(スキュラ)人魚(マーメイド)…多くの見た目麗しい人型のモンスターと、宝石獣(カーバンクル)を始めとした稀少種(レアモンスター)。痛めつけられた痕跡を残すモンスター達は例外なく檻と繋がる鎖に束縛されている。手前の檻では、半人半鳥(ハーピィ)のフィアが格子に縋り、人蜘蛛(アラクネ)のラーニェが中でぐったりしていた。

 

「――ッッ!!」

 

異端児達は体毛を逆立てながら、身体の芯で煮え滾るモノを感じながら、一斉に走り出す。

 

「檻を壊せ!同胞達を解放しろ!!」

 

グロスが叫びながら檻を破壊する。他の異端児達も各々の得物を振り下ろし、或いは力任せに格子を捻じ曲げていく。四肢を縛り付ける鎖も外され、囚われていたモンスター達はようやく檻の外に解放された。

グロス達が一心不乱に檻を壊す中、解放されていくモンスターの中には既知の異端児も居れば、知らないモンスターも居た。共通している事と言えば、瞳に理知の光を宿している事と、自力で檻を破れない程に衰弱している事だけだった。

流れていく時間。助けを求める声は途切れず、無数に並ぶ檻の数は0になる事は無い。弱り果て崩れ落ちる同胞達を抱きとめながら、異端児達は檻の破壊音を大広間に響かせていく。

 

「ラーニェ、ウィーネはどうした!?」

 

「分からない…。呪詛(カース)から目を覚ました時には既に居なかった」

 

「私は見ました…あの、奥です…!」

 

リドの手で助け出されたフィアが傷ついた身体に鞭を打ち、奥の暗がりを羽で指す。リドはレットにフィアを任せると、大広間の奥に駆け出した。

 

「――感動の再会だな」

 

そして、そこで。頃合いを見計らっていたかのように、白々しい拍手の音が鳴り響く。

 

「っ…!?」

 

「よく来たなぁ?歓迎するぜ、化物共」

 

悪意の暴蛮者が現れた。

 

 






ちなみにこの世界線のアイズ、原作よりもちょっとだけ強いです。



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