ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
〜人造迷宮クノッソス〜
「よく来たなぁ?歓迎するぜ、化物共」
闇の奥から現れる、
「お前が同胞達を売り払っていた密猟者か…!?」
「ほー、そんな事も知ってるのか?ああ、そうだぜ、てめえ等のお仲間を捕まえて金に換えていたのは俺だ。
「貴様ぁ…!」
ディックスはリド達の殺気をも心地よさそうに受け止める。
「ちなみに『俺』じゃなくて『俺等』だけどな?」
ディックスの発言を合図にぞろぞろと他の
「…!」
「ざっと見てもてめえ等の方が俺達よりも数は多いが……その大切なお荷物を全部庇えるか?」
ディックスの言う通り、解放されたモンスター達は弱りきっている。五体満足の異端児達も彼等を庇いながらでは全力で戦えない。この広間に誘い出したのも、入って直ぐ襲いかからなかったのも、傷ついた同胞達と言う枷を異端児達に嵌めて身動きを取れなくする為だった。狡猾な男の嘲笑に、リドとグロスはギリっと牙を鳴らした…瞬間。
「ぐあっ!?」
「あ?」
通路がある方向、包囲網を形成していた狩猟者の一人が突如爆発し倒れる。リドが目線を移すと、暗闇の中から赤く光る矢が次々と飛んできて、狩猟者達を倒していた。そして、矢が途切れると…。
「――リドさん!」
「なっ、ベルっち!?」
ベルとフェルズが到着する。リドが驚愕し、他の異端児達も驚愕の表情を浮かべた。
「あの時の小僧…!?貴様、なぜ来た!」
「今は止せ、グロス!」
自分達に追従してきたベルにグロスが反発するが、リドが手で制す。顔を上げるリザードマンはベルと見つめ合い、引き返しを促すかのような視線を送った。
「おいグランてめぇ、しっかりバレて侵入されてるじゃねぇか。扉閉めたんだろうな?」
「しっ、閉めたぜディックス!?嘘じゃねえよ!?俺はモンスター共を入れた後、ちゃんと…!」
ディックスの凍てついた声に、禿頭の男は必死に弁明する。異端児達の背後に陣取りながらも矢の爆撃から免れたグランは、ベルとフェルズの正面で自らの手の中にあるインゴットを見下ろした。
「あれは…!」
声を漏らすベルの横で、フェルズもまた同じ造りの魔道具を取り出す。狩猟者達の中で動揺が広がった。
「ああ…そう言う事か。ったく、奪われたのは何処の馬鹿だ?やっぱバラ撒くもんじゃねえな」
フェルズの手の中にある魔道具を見て、ディックスもだいたいの経緯を察したようだった。挟み撃ちを嫌ってグラン達が横に逸れて移動、相手集団に合流する中、ベルとフェルズは異端児達に駆け寄る。
「ミスター・ベル……」
「地上のお方…助けに、来てくれたのですか?」
「っ…!」
床に座り込みながら、レットに支えられるフィア。身体中に刻まれた痛々しい打撲傷。鎖は千切られているものの、下半身には未だに不釣り合いなほど大きな枷がまだ嵌められている。その光景は吐き気に直結する倒錯感をもたらす物だ。弱々しく見上げてくるフィアの瞳に、ベルは言葉を失う。
「……で?何時まで隠れてるつもりだよ。さっきの矢の下手人さんはよ?」
「…!!」
ディックスの言葉にリドが目を凝らすと、通路の暗闇の中にもう一人の人影があった。
「あれ?バレちゃった?」
「ロイっち…!?」
「ロイ、貴様もか…!?」
暗闇の中から黒色の外套を身に纏った男が現れた。
〜ロイ視点〜
「あれ?バレちゃった?」
「ロイっち…!?」
「ロイ、貴様もか…!?」
キッショ、何で分かるんだよ。闇に溶け込んで矢を放ったのに……いや、普通にバレるか。
「いやぁ遅くなってごめんねリド。もうちょっと早く来れたら良かったんだけど。」
「ロイっち…!ベルっちも、何で来ちまったんだ…!」
「俺は5年もタダで飲み食いさせてもらったし、友達だからかな。流石に何もしないのはダメでしょ。」
「僕は…貴方達を、ウィーネを助けたい!」
ま、来るなって言われて来てる時点で恩を仇で返してるも同然なんだけどね。それでもリド達は大切な友達だからね。しょうがないね。
「ロイ…?それにその結界魔法は…てめえ、
「御名答。ていうかあれ?知ってると思ってたんだけど。既にウィーネちゃんをリド達に引き渡す時から見張ってたでしょ?」
「いや、そうだがよ。まさか生きてるなんて思わねぇだろ。」
「それもそうか。」
十数年もギルドとヘルメスファミリアを欺ける奴等何だから、俺の正体ぐらい即座に見抜いてくると思ってた。ま、ヒントが少なすぎたか?
「あーあこれはやべぇな…やべぇが…面白くなってきたな」
「変態だ…まあ気持ちは分かるけど」
「ハッ、俺と同じくとことん冒険者らしいな?
冒険者なんて自分を追い込んでナンボですからね。あまりやり過ぎると死ぬけど。というか非公式の二つ名で呼ぶなよ。嫌いなんだぞそれ。散々イジられた。
「まさか、此処までの空間もあるとは…」
そして横で注意深く周囲を観察しているフェルズ。
「【
「そう言うお前は、
靴と石板が擦れ合う音を立てる狩猟者達と異端児達が、一触即発の空気を作り出す中会話を続ける二人。
「単刀直入に聞こう。ここはダイダロスの遺産で間違い無いのか」
「ははっ、流石に気付いてるか。考える通りだと思うぜ」
やっぱりね。
「……いつから使っていた?いや、何処で此処の存在を知った?」
「知るも何も――先祖代々押し付けられてきたもんだ。
「先祖……子孫!?」
「な…ダイダロスの系譜だと言うのか!?」
あ〜…そう言う…なるほどね。
「法螺じゃねえよ。何なら――証拠を見せてやる」
ディックスがゴーグルを上にずらす。……『D』か。
「これがダイダロスの血統を示す証だ。クソったれの始祖の血を一滴でも引いてる人間は、この目を持って生まれてくる」
「……うわキッショ。じゃあそのオーブに埋め込まれているのは…。」
「ああ。俺達ダイダロスの子孫達の目玉だ。此処の扉は俺達の目に反応するようになっててな。死体からくり抜いて鍵代わりにしてる」
ベルとフェルズが硬直している間に、目の前の男は此処の名を告げた。
「『人造迷宮クノッソス』――ダイダロスが子孫に完成を委ねた、阿呆みてぇな作品だ。」
クノッソス…ねぇ。
〜星屑の庭 団欒室〜
「……!」
アリーゼが団欒室の窓際を忙しなく右往左往している。輝夜はソファに座り込み俯き、ライラはテーブルで仕事道具を整備していた。
「……団長、落ち着けよ」
「でも…!」
「いや、5年前は…アレだったけどさ、それでもロイが簡単に死ぬ男じゃないのは知ってるだろ?」
動き続けるアリーゼをライラが諭す。その言葉でアリーゼは窓際のソファーにとりあえず座った。その時、チャイムが鳴る。
「……ん?誰だ?」
「ロイ…ならチャイムなんて鳴らさずに入るだろうし…。」
輝夜の言葉にアスタが反応する。確かに、ロイならばチャイムを鳴らさずに入ってくるだろう。
「私が行く。」
「…まあ良いけどよ。」
輝夜は玄関に向かった。
〜玄関〜
「伝令です!」
「この声は…」
玄関の扉を開けると、そこにはロキ・ファミリアの
「わざわざ来るとは…何の用だ?ラウル」
「輝夜さん、クノッソスに動き有りっす。詳しくはフィン団長に聞いてほしいんですけど…とにかく、ダイダロス通りに。」
「!今か…分かった。団長達も呼ぼう。直ぐに出る」
「お願いします」
不安に駆られながらも団欒室に戻る。
〜団欒室〜
「団長。フィンから、クノッソスに動き有りだそうだ。ダイダロス通りにロキファミリアが展開する。我々も…」
「…分かった。イスカとマリューに、ダイダロス通りに向かうよう伝えて。私達は…リオンとロイ以外は、全員でダイダロス通りに向かうわ。アストレア様、行ってきます!」
いってらっしゃい。とアストレアは微笑みながら手を振る。しかし、主神も何処か落ち着かない様子。
「よし。じゃ、二人には私が伝えてくるぜ」
「お願いライラ。皆、準備して!」
皆が立ち上がる。各々の部屋に準備をしに行くのだろう。しかし…。
「あれ?行かないの輝夜?」
「あ、あぁすまない団長。今行く」
輝夜は皆より数拍遅れて動き出す。その様子をアストレアは心配そうに見ている。自らの胸のざわめきと、輝夜の様子を重ねているようだった…。