ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
〜人造迷宮クノッソス〜
「まあ、良い――モンスター共に喰われちまえ」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
直後、別の異端児に吹き飛ばされたリド達が襲いかかって来た。
「不味い!?」
「っ!」
真っ直ぐに突進してきた異端児を受け止める。っ、流石に強い。かなり飛ばされた…Lv.3で真正面から相手するもんじゃないな。
「っはあっ!」
「っ…ラーニェナイス!」
「此処は任せろ!」
ラーニェにリド達を任せる。とはいえラーニェは防具無しだ。ポーションで回復しているとはいえ万全では無く、あまり無理はさせられない。気絶している狩猟者のロングソードを剥ぎ取って投げ渡し、俺は前に。目標は…。
「【
「了っ!」
「はいっ!」
幻惑系の
「来るのか、【リトル・ルーキー】、【
「ステイタスは下がってんだろ。代償が必要だもんな?」
「あぁ、クソ、バラすなよ!」
魔法と
「っ!」
「はあっ!」
迫りくる暴徒を吹き飛ばし、二本目のメイスを抜いてニ鎚流でディックスに突撃する。
「奴を倒せ、ベル・クラネル、ロイ!」
フェルズの声が響いた瞬間、ナイフと槍、メイスが衝突し火花を散らす。甲高い金属音、舞い散る火花の中で戦闘が始まった。
〜リヴィラの街〜
「おい!生存者だ!」
「無事か、返事をしろ!?」
ガネーシャ・ファミリア本隊から離れて街で救助活動を行なっているモダーカ達救助隊。道端に倒れているエルフや瓦礫の下敷きになってしまっているドワーフを見つけては救助し、治療を施していた。
「ひ、ひでぇ…」
とある宿屋跡に辿り着くと、モダーカは惨殺された複数の骸を見る。どれも血の海に沈み、顔での判別ができない程に遺体の損壊が激しい。
「………?」
見るも無残な同業者に立ち竦んでいたモダーカだったが、不意に現在地より眺望できる断崖の景色に目を奪われる。
彼が見たのは大草原の中心、19階層に繋がる中央樹から現れたモンスターだった。黒い四足獣に跨る、白い塊。遠目なので確信はできないが、恐らく
「……やばい」
モダーカの口から不意にそんな言葉が漏れる。そして、彼の身体は完全に時を止めた。
「やばい、やばいっ…やばいやばいやばいっ!?」
「おいっ、どうした!?」
「逃げろ、団長達も連れ戻せ!?」
「何言ってんだ!?」
「テイムなんて言ってる場合じゃないっ!?」
半狂乱になったモダーカはほかの団員に詰め寄る。
「
〜人造迷宮クノッソス〜
「本当にLv.3か、てめえ。どういう
「っ…!」
戦場の奥で破砕音が響く。其処では二人のLv.3と一人のLv.5が激戦を繰り広げていた。ベルのナイフを槍を振り回して防ぐディックス。
「っお…危ねえな。だが、お前Lv.4じゃなかったか?その割には鈍いが…どういう訳か弱体化してるらしいな?」
「言うなよ気にしてるんだぞ…っ!」
っち。二人がかりでも攻めきれない。ナイフの連撃は槍で弾き、メイスの一撃は避けてくる。流石にベテラン…上手いな。
「っらあっ!」
「遅いぜ」
「っぐっ!?」
槍の柄で弾き飛ばされる。っと…!
「アアアアアっ!」
「雑魚はお呼びじゃないっ!」
「…!」
呪詛の影響で暴徒と化した狩猟者を一撃で伸す。スキルを活かすなら先に狩猟者達だけを全滅させてからディックスに襲いかかりたい所だったが…そうしてる間に暴れている異端児達がどうなるか分からない。あまり時間をかけるのはマズい。
「っ…」
ポーションはさっき体力回復の方は異端児達に配ってしまったので残り少ない。精神力を回復するポーションは俺のスキルの都合上、多めに持ってきてる為にまだあるが…。
「っはあっ!!」
休憩完了。地面を蹴ってベルに連続で槍を叩き込んでいるディックスにメイスを打ち込む。
「っ…ぐっ…!?…やるじゃねぇか。ステイタスは弱体化しても実力は本物だな。」
「耐えてるくせによく言うよ…っ!」
背後から打ち込んだので直撃は避けられたものの、それでも一撃入れられた。
「おらよっ!」
「ふんっ!」
「おっと…!」
槍を素早く反転させて突いてきたディックスを、メイスで横から柄を小突き、軌道を逸らして対処する。
「はっ…どういう目してやがる」
「同じファミリアの先輩方が怪物揃いなもんでねっ…!」
「っと。ま、それもそうだな。等級Sのファミリアで扱かれてたらそうもなるか」
「っ…!」
メイスで殴りかかるも、石突で弾き返される。やっぱり槍の間合いはヤバイな…!
「はああああっ!!」
「危ねえな」
「ぐっ…!?」
ベルが背後から強襲するも柄で払われる。リーチの差は厄介だ。
「おらおら!もっと行くぞっ!」
「っ!ぐっ!はっ!」
「ははははははははははははっ!」
ディックスの猛攻にベルが追い詰められていく……いや、違う。何か狙ってるな?
「そらよっ!」
ついに体勢を崩したベルに向かって放たれる、無慈悲な一撃。……お?
「!!」
やるな。身体を翻して槍を回避、そのまま槍のリーチの内側に侵入した。そしてナイフを突き立てようとする…が、ディックスは素早く腰のバトルナイフを抜き、ベルの腹めがけてカウンターを仕掛けた。
「させないよっと」
「おっ……と!危ねえ危ねえ」
素早くボウガンから矢を射撃。2人を離れさせる。
「大丈夫か?」
「っ…はいっ…!」
だが、相手も待ってくれない。
「良いぞ、お前等。続きだ」
槍での猛攻が続く。2対1なのに攻めきれない焦燥感、背後で響く暴走した異端児達の叫びが焦りを生む。
「ぐうっ…!?」
「っ…!」
二人纏めて地面に転がされ、槍の穂先での薙ぎが迫る。咄嗟に回避するも、ベルが掠ってしまう。
「気を付けろよ?この槍にも呪詛がかかってる。一度傷がついちまえばポーションだろうが魔法だろうが塞がりはしねえ。解呪しない限りな」
「!」
カースの厄介な所はただ効果が強力なだけでは無く、解呪の手段が限られている事にある。ベルが頬を拭っても血が止まらないように、早く戦闘を終わらせなければ失血死しかねない。
「怪物共はいくら痛め付けようが、その内治っちまうからなあ。商品として出すには、塞がらねえ傷を与えて動けねえようにするのが手っ取り早い」
ベルが何か気になる事があったのか、顔に閃光を走らせる。
「もしかして……ダイダロス通りに居た『バーバリアン』は…」
何それ。俺初耳なんだが。
「おいおいおい、てめえ、アレにも会ってたのか!」
唖然とするベルに、ディックスは口角を吊り上げて言う。
「そうだぜ、あのデカブツは俺達が捕まえたもんだ。しっかりとこの槍で斬り刻んでおいたんだが……出荷する前に
「……!」
「追おうにも崩れた地下通路の先に消えてな。放置するわけにもいかねえ、探させていた」
ベルが顔を歪ませる。どうやらリド達よりも先に異端児に会っていたようだ。だが、その時は異端児の存在を知らなかったから、そのまま…。
「あれで痛い目に遭ったからなぁ、
……あー。やっぱムカつくなコイツ。いちいち言動が癪に障る。ま、生まれた時からこんな陰気臭い所で育てば無理ないか。
「どうして……」
「ん?」
「どうして、モンスター達を、傷付けるんですか…?」
「言っただろう、金がいるって」
「本当に、それだけの為に…!?」
「そこに関しては是非俺も聞きたいね。この迷宮の建造に多額の資金がいるのは事実だろうけど、それだけじゃないだろ、お前?」
「……」
ディックスが一度口を閉じる。そして…、狂気的な笑みを浮かべた。