ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
〜人造迷宮クノッソス〜
「っらあっ!!」
「ガ…!?」
メイスで最後の狩猟者を叩きのめす。フェルズの方も加勢して何とかなった。後は…。
「っ…大丈夫か、ロイ」
「お前の方がボロボロだろ…寝てろよラーニェ」
「問題無い…っ」
流石に万全じゃない状態でリド達+狩猟者達の相手は厳しかったようだ。リド達は…未だ暴れているものの、何とか同士討ちに誘導してこっちにヘイトが向かないようにした。
「ロイ、ベル・クラネルは…」
「知らん。ディックスと一緒に奥に消えた」
「追うか…いや、皆の手当てを…」
「これ以上の精神力の消費は避けたい。待つぞ」
フェルズには最悪の場合を考えてやってもらう事がある。此処で倒れるような事は避けたい。ベルを待つしか…。
「…!何か来る。怪我人下がれ!」
「っ!またか…!」
「…!」
傷ついた異端児達を下げ、俺とフェルズは構える。出てきたのは…。
『ァ…ァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』
「ウィーネ!!」
ベルと………ウィーネか!?アレが!?
「…!額の宝玉が無い!」
「っち!暴走してる…ディックスは!?」
「生きてるぜぇ?」
暗闇から相変わらず…いや、少し負傷したディックスが出てくる。
「やれやれ。死ぬかと思ったぜ。だが、これで分かったろ、ベル・クラネル!!コイツらは怪物だ!手を取り合える?笑いあえる!?コレを見ても同じ事が言えるかぁ!?」
『ルゥゥゥゥぅぅぅぅァァァァァァッ!!』
「ぐうっ!?」
「ベル!」
ベルが竜の尾で薙ぎ払われる。くっそ、ポーションの瓶が割れた!
「殺されかけたろ!?ヴィーヴルにも、リザードマンにも!それが怪物!それが化物!目を覚ませ!ベル・クラネル!お前もだ、ロイ!!楽になっちまえよ!!」
「……二人とも…!」
『るぅぅぅ…ウぅぅぅゥゥゥゥゥゥゥゥッ…!』
ウィーネが呻く。確かに…そうだ。殺されかけた。何度も。俺の目の前に広がっているのは、血と殺戮のみ。笑顔など何処にもない。俺が確かに友情を育んできた奴等は、居ない。
「どうせ成り行きで此処に居るんだろう!?楽になっちまえ!」
成り行き…確かにそうだ。5年前に助けてもらって、今日の今日まで考えずに生きてきた。3つ目の選択肢は作れそうにない。『選択する時が来た』…か。
「うぉぉぉぉぉあっ!!」
「っ!ああっ!?」
ディックスに殴りかかる。選択する…するまでもない。もう決めている。ウィーネは…
『ルウぅ…!』
「…!」
『るぅぅぅぅぅぅっ…!』
「ウィーネ…!?」
『べるぅぅぅ…!』
…叫んでいる。探し物を、大切な物を。宝玉よりも大切な、少年の姿を探している。だから…
「ウィーネ…」
『――――――――ァァッ!!』
「っう…!!」
ウィーネが巨体を翻し、再び近づいたベルを弾き飛ばした。
「っ、ははっ!おいおい、何とかしないとそのまま死んじまうぞぉ!?」
「良いんだよ!」
「っと…邪魔すんじゃねえ!」
ディックスが高笑いしている所にスキルで上がったパワーを押し付ける。
「……ウィー、ネ」
弾き飛ばされる。
「ウィー…、ネ」
叩きつけられる。
「ウィーネッ…!」
何度打ちのめされようと、ベルは向かって行く。
『アアッッッッ!!』
「っ…ぁ…!」
遂に爪が振り下ろされるも、鎧が止める。…あ、ヴェルフ作かなアレ。魔剣造れる鍛冶師ならヴィーヴルの爪を止められる鎧も造れるだろうし。
「…じょうぶ、だよ」
ベルが必死に笑顔を作る。
「だい…じょうぶだよ」
『――――』
涙を流し、暴れるウィーネをそっと抱き寄せた。しかし…。
『ぁ…ァァァァァァァァァァア!!』
「ウィーネ…ッ!」
恐慌状態に陥ったウィーネは再び暴れ出す。っお…!?
「フンッ!」
「ぐッ!?」
「あーあ…白けたぜ」
っち…弾き飛ばされた。やっぱりLv差はデカいな。
「ったくよぉ…期待外れも良いとこだぜ。化け物に絆されてるんじゃねえぞクソガキ共!」
「っ!」
「くっ!?」
休む間もなく紅槍の薙ぎ、突きが襲ってくる。
「化物は化物だろうが!てめえらがどんな理由で絆されたのかは知らねえが!興味もねえ!化物は化物!化物に気をおかしくして、どうするつもりなんだ!?えぇ!?」
槍の刺突の嵐の中、ディックスは激昂する。
「化物を助ける義理が――価値が何処にある?」
価値ねぇ。
「「はあっ!!」」
息を合わせて槍の突きを左右に回避。穂先をナイフとメイスで止め、根本の柄ごと力任せにへし折った。
「なっ――」
「誰かを救う事に、人も怪物も関係ない!!」
呪いを宿した穂先が宙を舞い、彼方に転がる。驚愕するディックスに、ベルが言葉を投げつけた。
「助けを求めてる!!それで十分だ!!」
白き少年の決断に、自らで出した答えに周囲が沈黙した。
「ベル・クラネル、君は……」
フェルズが呟く。それと同時に、暴れていたリド達にも変化が起きた。あるモンスターは肩を揺らし、あるモンスターは胸を上下させ…ガーゴイルは目を見開き、リザードマンは瞳から雫を落とした。
「…――お前、偽善者だな!」
ディックスはその答えを聞き、口角を吊り上げて襲いかかる。
「ならお前は人もモンスターも救うってのか!?誰も彼も助けるってのか!?」
「っ!!」
「無理だろぉそりゃあっ!?ガキでも分かるぜ!?」
穂先の無い槍とバトルナイフで、ディックスは猛攻をかける。……今っ!!
「っ!!!またお前か、
「また俺だよ。
間に割って入り、バトルナイフを弾き飛ばす。
「てめえも助けるってのか!?助けを求めてる奴を、誰も彼も!?無理だろ…いや、知ってるだろお前は!あの7日間で、お前は思い知った筈だ!偽善者だなぁ!」
「偽善者って言われても、俺は助けるよ。全員は無理でも、それでも一人助けられるなら。それに…お前は、無理だからやめるのか。無理だから、何もしなくなるのか?」
「……あ?」
「そうやって全て抗うことをやめてきたから、お前は欲望に身を任せるしかなくなったんじゃないか?血に反抗した?いいや、求める事に素直になった……結局お前もダイダロスと同じだ!血に抗えてない!!」
「……!」
「お前も立派な、
「てめぇっ!!」
乗せられたディックスが猛攻を仕掛けてくる。結界の強度も心許ない。避けるしかないな。
「っ!っと!ほっ!」
「死ねっ!」
「っ!?」
!ダメだ避けきれん。当たる…!
「ありがとう――」
アレは……。ディックスの背後に赤い鱗が輝く。
「ベルっち、ロイっち」
「なっ――ぐぉっ!?」
ディックスが気づき、慌てて回避しようとするも遅い。ロングソードが振り下ろされ、鮮血が飛び散った。
「て、てめぇっ!?」
「……リド?カースはどうした?」
「リドさん…?」
目は未だに紅く光っており、カースの影響から脱していないのは明らかだ。だが、確かに今俺達を助けた。
「分かんねぇ…分かんねぇけど、ベルっち達の言葉を聞いたら訳の分かんねえ力なんて吹き飛んじまった。ありがとうな…!」
「……はぁっ。なら、皆でやるとするか」
「……はい!」
「そうだな!」
さーてと。
「決着だ」
「殺ってみろっ!!」
3対1だ…確実に行く。