ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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うっ頭が(トラウマ)

 

〜人造迷宮クノッソス〜

 

「――おいっ!」

 

静けさが包む広間に、鐘の音が響く。ベルの拳に銀色の光が募り、輝いた。静けさ…静寂、鐘の音……うっ頭が(トラウマ)

 

何溜めてんだてめぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

ディックスが絶叫し槍を振り被る。が、させない。

 

「おらっ!」

 

『グルアアッ!!』

 

「っ!どけぇっ!!」

 

槍の攻撃をメイスで捌き、動揺した隙をリドのシミターが刈り取る。あれから三対一で攻め立てているものの、決め手が足りないのでベルのスキルに頼る事になった。それにしてもチャージって見ないスキルだよね。

 

あああああああああああああっ!!

 

「――がぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

炸裂。凡そ20秒に渡る蓄積(チャージ)が、ディックスの胸元に突き刺さった。黒檻の山に吹っ飛ぶ。

 

「っ……うっ…!?」

 

…って反動付きか。ベルも右腕を抑えて蹲った。

 

『――ァ?』

 

「グロス…!」

 

呪詛(カース)が解けたか…!」

 

ラーニェとフェルズが駆け寄る。暴走していた異端児達も、カースが解けて正気に戻った。リドの目からも光は消え、今度こそ全員元通りだ。

 

「やったんだな!ベルっち!」

 

「………」

 

「いや、自分からカースを解いたんだ。ステイタスが下がった状態で受けたら気絶だからな」

 

「マジか…!」

 

三人でディックスに詰めていく。端からはグロスもゆっくり動き出した。

 

「がっっ……あ、痛えぇぇぇぇぇえええ!!」

 

ディックスは満身創痍。ベルのチャージで胸骨が逝ったのか、血反吐を吐きながら槍を支えに立ち上がった。

 

「ちくしょうっ…!ぶっ殺してやる…!!」

 

紅い目を光らせ、こちらを睨みつけてくる。だが、殺したいのはあっちだけでは無い。

 

「こちらの台詞だ」

 

「っ!!」

 

後ろから石竜(ガーゴイル)が爪を振り下ろす。転がって何とか避けたディックスだが、異端児達に完全に包囲された。

 

「同胞達にしてきた事、償ってもらうぞ…!」

 

「お、おいッ、止せ!」

 

リド達とベルに囲まれ、ディックスは狼狽え、飛び退りながら逃げ惑う。一件小物っぽいが……うーん、正直Lv.5に到達できる冒険者がやると胡散臭いんだよなぁ…動けるようにしておくか。

 

「待てっ、待てって!死んじまうだろうがっ、そんな事したら!」

 

本当に小物のような言動で奥に逃げるディックス。…おい待てその方向にはウィーネが…。

 

「そんな事したら――壊れちまうぜ?」

 

「「「っ!!」」」

 

あれは、ヴィーヴルの涙…!アレを額に戻せればウィーネを助けられる!

 

「そんなに大事なら…返してやるよっ!」

 

間に合うか…!?

 

「ッッッ!!」

 

「てめぇが行くか!黒衣の蛮族(ブラック・バルバロイ)!」

 

っ……っと!何とかキャッチ!工事中の縦穴に投げ込まれていた。落ちてたら探せなかっただろう。危ね…。

 

「じゃあ、コイツはどうだ!?【迷い込め、果てなき悪夢(げんそう)】!フォベートール・ダイダロス!!」

 

っ!?マズい、ソッチは…!

 

「ウィーネだ!止めろっ!!」

 

「――っ!!」

 

「ヤベっ!!」

 

リドとベルがウィーネに駆け寄る……くっそ間に合わん!!

 

――アアアアアアッ!!

 

「「なっ…!?」」

 

余りにも淀みない流れ作業にグロスとフェルズが驚愕する。最初からこのつもりだったな…!?

 

「仕上げだ」

 

ディックスがヒビ割れたゴーグルを捲りあげ、目を出すと刻印を光らせ扉を開けた。……まさか。あの先は…!

 

「そら、行っちまえ」

 

『――ッッ!!』

 

扉の先、急な階段を駆け登るウィーネ。ッち…!!ヤバい、ヤバすぎる!!地上は…!!

 

「貴様、何をした!?」

 

「俺の呪詛(カース)は人数を制限すりゃある程度、見せてやる幻覚も操作できる。――ベル・クラネル、今頃あの竜女(ヴィーヴル)はお気に入りのお前の幻覚を追いかけてるぜ!この先は地上への直通、あんな化物が突然街に出たら即始末されちまうだろうなぁ!?」

 

「「「「「っ…!?」」」」」

 

全員が息を呑む。その様子に満足したのか、ディックスは別の扉を起動させた。

 

「ディックス・ペルディクス!!」

 

「おっと!!俺に構ってないで、早く竜女(ヴィーヴル)を追いかけてやるんだな!!ははははははははははははははははっ!!

 

フェルズが衝撃波を放つが回避。リドが追いかけるも寸前で扉が閉まり、そのままディックスは別の扉の奥に消えていった。くっ…!

 

「ラーニェ!!傷ついた奴等下げて一旦待機!!」

 

「良いだろう!」

 

取り敢えず負傷者は行かせられない。地上に居る戦力は此方よりも圧倒的に上。足手まといにしかならない。

 

「リド、グロス、ロイ!!」

 

っ!レイ達も来た!ボロボロだが…動けはする!

 

「レイ、レットに鍵を!レットはアステリオスに鍵を届けろ!」

 

「了解しました!」

 

「ベル、フェルズ!俺達でウィーネを追うぞ!リド、グロス、此処は任せる!!」

 

「ま、待ってくれロイっち!」

 

「待たない!!」

 

リドの言葉を切り捨てて3人で階段を駆け登った。早く止めないと…!

 

 

 

〜異端児視点〜

 

ロイ達が階段を駆け登って行った。

 

「…リド、どうする気だ?ロイは任せると言ったが…」

 

「決まってんだろ!」

 

「えぇ…追いかけましょう」

 

「だがな…。ロイに散々聞かされているだろう?地上には我々より強い冒険者が多く居る。今の万全で無い我々が行っても…」

 

「らしくねぇなグロス!このままロイっち達に任せっきりで良いのか?ずっと助けてもらうだけで良いのか?俺っち達が地上に出たら…確かに余計ないざこざを起こすかもしれねえ。でも、あの3人に何かあったら今度は俺っち達が助けてやらねえと!」

 

「……ついでに、念願の地上も見れるんだぜ?」

 

「馬鹿者。この時に……」

 

「ですが、行くのでしょう?」

 

「……。」

 

レイの言葉にグロスが押し黙る。

 

「ロイと出会って…もしかしたら、って期待していた私がが居た…それから5年間生活を共にして…そして今、彼等が私達を助けてくれた。その事実が堪らなく嬉しい」

 

頬を染め、微笑みながら、彼と一緒に練習した人語で歌人鳥(セイレーン)は内心を吐露する。そしてその気持ちは、他の異端児達も同様だった。雄叫びや甲高い声を挙げ、後を追いかけようと意志を伝えてくる。口を閉ざしていたグロスは、背の翼を広げた。

 

「……ロイとフェルズは兎も角、あの小僧には任せておけん」

 

怪我の度合いを見て残る者と行く者を分けた彼は、翼を打って宙に浮き、階段へと向かった。笑みを浮かべるリドとレイも彼の後に続く。

 

「なぁ、グロス?人間にも信じられる奴が居るだろ?」

 

「……まだだ。もしもの事がある、ロイも…まさかあれ程強いとはな。奴は元々胡散臭い所があったが…益々信用できん」

 

「は?」

 

「どうどう…抑えてくれレイ。ま、しかしそうだよなぁ…特訓には付き合ってたけど、ロイっちが彼処までやるとはなぁ。」

 

「……はぁっ。実は私も、正直驚きました。増援のつもりで此処まで来たので、更なる戦闘も考えていたのですが…全て終わらせているなんて」

 

「あっという間だったぜ?すげぇよなぁ。」

 

その場に居ない彼の賛辞を口にしながら、異端児達を引き連れてリド達は階段を昇った。

 

 

 

 

〜奥の通路〜

 

「あぁ、クソったれ、痛え…!」

 

クノッソスの通路を、一人の男が身体を引き摺りながら進んでいた。名はディックス・ペルディクス。先程ベル・クラネル達に敗れ、命からがらこの通路に逃げ込んだ男である。

 

「っち…化物共、それにあのクソガキ共……絶対ぶっ殺してやる…!」

 

ディックスは手記と瞳を頼りに、治療道具一式がある地下拠点(ホーム)を目指していた。【イケロス・ファミリア】は彼を残して全滅。捕獲していた異端児達も奪い返された。この醜態と屈辱は何倍にもして返してやると誓い…歩を進める。

 

「……?」

 

ふと、振り返る。何時も住み慣れた迷宮の空気が変わった気がしたのだ。分厚い壁に遮られた暗闇が、辺りを包む静寂が…本当のダンジョンかのような、不気味な雰囲気を出していた。

 

「っ…!?」

 

オリハルコンの扉を何枚も超え、追手の存在すら気にかけず、ただひたすらに本拠を目指していたディックスの背筋が凍る。

バカな、そんな筈は。扉は確かに閉めた、此処まで来れる筈が…!背中に突き刺さる()()()殺気を感じ取ったディックスは、気付けば身体中の悲鳴を無視して走り出していた。

 

「っっ…!!」

 

記憶にある順路を辿っているにも関わらず、何時までも同じような景色が目に飛び込んでくる。自らが扉を閉めれば、別の何処かで扉が開くような音。狂気の名工が造った迷宮は、ディックスを終わらない悪夢へと確実に誘っていた。そして……。

 

「――――」

 

ディックスの足が、止まった。これまでと同じような、何の変哲もない一本道。突然、その闇が揺らぐと…其処には黒き二足歩行の猛牛と、その肩に乗った紫紺のドレスを纏った少女

 

「みぃつけたぁ…!」

 

「……」

 

少女は猛牛の肩で口を三日月状に裂き、猛牛は鼻を鳴らす。ディックスの表情は完全に凍りついた。

 

「なっ…何だ、何なんだてめぇらは…!?」

 

「ん〜…?貴女を殺しに来た、怪物かな?」

 

「ざけんな!こんな所で…があっ!?」

 

ドレスの少女が素早く飛び降り、圧倒的な速度でディックスの足を抉る。ディックスはその場に崩れ落ちるしか無かった。

 

「っ……!?」

 

「せーかーい。私の…元はと言えば、足かな?」

 

「っぐぉ…!!」

 

激痛に目を開き、相手の獲物を見るしかできない。それはナイフと言うには余りにも長く、それでいて剣と呼ぶには余りにも生物的な曲線を描いていた。青黒く光る、爪が加工された武器のようなものをディックスに突きつける少女。

 

「ま、コレでおしまいだね!私はダーリンに会いたいから、さっさと死んで?」

 

「ふざけんな!【迷い込め、果てな」

 

男の顔が真っ二つにずり落ちる。次の瞬間には物言わぬ肉塊に成り果てていた。呪詛の使用すら許されない、圧倒的な速度。自らの死を認識できないまま、男は沈黙した。数々の異端児達を嬲り、殺してきた人間の、惨めで、何よりも呆気ない最期だった。

少女は爪に付いた血を振り落とし、武器を虚空に投げ捨てる。

 

「…さ、行こっ!アステリオス!」

 

「……惨忍な女だ」

 

猛牛は少女を肩に乗せ、進み始める。

 

 

「……ふふっ。楽しみだなぁ…待っててね…ダーリン…♡

 

 

ロイの背中に悪寒が走った。

 





〜原作との相違点〜

ラーニェ→くっころ系アラクネ。主人公の情報提供でグロスがウィーネの護衛を原作よりも増員、結果人数差を警戒したディックスがさっさと呪詛を使用し、眠らされて捕まった。毒液は普通に戦闘でやった。生存√突入。

グラン→イケロス・ファミリアのハゲ。スキルでステイタスが上がった主人公に倒され、そのままクノッソスに置き去りにされる。地上には出ない。

アストレア・ファミリア→主人公が骨に特攻して生存√。この世界ではモンスターフィリアの警備に抜擢、無事食人花騒動に巻き込まれている。ただ、街のパトロールもあるので基本的にそっち優先。ロキ・ファミリアに要請された時のみ出撃する形。

ロキ・ファミリア→アストレア・ファミリアと協力して食人花の件を調べている。持っている情報は原作と大差ないし、アストレア・ファミリアも同様。

27階層の悪夢→どっかの蛮族が闇派閥相手に暴れ散らかしたせいで闇派閥が人手不足を起こし、そもそも起きてない。フィルヴィスさんは普通にエルフの中堅冒険者として某旅人の神所属となっている。

紫紺のドレスを纏った少女→(一応)オリキャラ。メインヒロイン()。正体は察してください。

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